2015年5月26日火曜日

5月の定点観測:2015

何かと、慌ただしい5月だ。

今のうちに、出来ることはやっておかないと後悔しそうなので、少々焦り気味ではある。

だが、先が無いだけに後々に与える影響も少ないし、この先は何が起こっても、全て儲けと考えねばなるまい。 

ま、年寄りの冷や水も、若気の至りに比べりゃ学習機能が働いた分だけ、中々味わい深いモノもあるのだ。

先月に続いて、月末まで引張った定点観測だが、今回は多少季節感もある写真になった気がしている。それより気になるのは、撮影行の足として新たに導入した新人であり、そんな雑談に載せたキリンビール5月号だ。


そんなわけで、前回の原付撮影行以来、怪しげな火種が燻っていたようで、ついに発火点に達してしまった。

第3の営業車として活躍したヤマハのジョグ・ポシェの後継となる原付、厳密には軽二輪という分類になるヤマハ・セロー 250 である。

振り返れば80年代中頃、最後の自動二輪となったホンダ・VF750F 以来、原付スクータを除けば実に30年振りの単車である。また、オフロード車としては、83年頃まで乗っていた、カワサキ・KL250 以来である。

それまでの、2サイクルが主流であったトレールというジャンルに、奇しくも4サイクル単気筒モデル投入のハシリである。その違和感という点に於いては既に刷込済みであったことで、30年の歳月を経ても尚、自然に入っていけたのだと思う。

購入間際まで知らなかったが、このセローというモデルも 1985年の誕生から今年で30周年となるらしい。丁度、自分自身が単車を降りた翌年あたりがデビューだったようで、巡り合わせとはいえ不思議なものである。

もちろん、当時の KL250 に比べても進化は著しいのだが、その経過期間を考慮するなら、ほんのごく僅かでしかなく、まるで4〜5年しか経っていないかのような錯覚さえ起すのだ。KL250 と Serow250、メーカは異なれどパッと見のデザインなど、色を除けば全く変わっていないようにも見える。それ故、却って自然に受入れやすい。

その間には、さぞやありとあらゆる変遷もあっただろうが、おそらく、一周して落着いたところ、80年代中期の原点に戻ったではないかと想像するのである。

また、今回このモデル導入に関しては、それほど迷いもなくすんなり決まった。比較対象となるモデルも探せばあるのかもしれないが、なにせロングランモデルである。無意識のうちに街中で何度か見かけて、すでに深層心理に潜り込んでいたのだろう。

60年代末期、オフロードモデルの新しいジャンルとしてスタートしたトレールも、4サイクル単気筒が主流になる80年代には、すでにスタイルとしては完成していたのかもしれない。

黎明期のトレール各モデルに比べると、荒々しいところなど全く無く、遙かに洗練されているのは事実だが、それが余計に大人し過ぎて物足りなく感じてしまう。

キックスタートしか無かった当時と違い、セルオンリーでキックアームさえも存在しない。それも70年代末期のホンダ・CB750F で既に経験済みではあるものの、オフロードモデルでキックスタートがないのは、ちょっと寂しい。

走り初めてまず感じるのは、遙か昔のデジャヴである。これはいったいなんだろう、ずいぶんと懐かしい気がする、忘れていた何かだが、はて…?

そうか分かった、ホンダのスーパーカブだ。免許も取る前に田圃の畦道で乗った、そして程なく無免許運転で取っ捕まった、あの感動と挫折の記憶が蘇る。

最初に乗ったのは、K氏の親父様所有の古い 55cc カブだが、免許取得後に合法的に乗っていた最初のカブは65cc版だった。ただ、マフラーに少々問題があったので、そこそこパワフルだがまことに煩く、始動も困難を極めた。

しかし、どちらかと言えばセローの第一印象は、その後H氏が新車で購入した 50cc版のスーパーカブのイメージに近い。それは、非力だが異様に静かで、カブがこんなに乗りやすい単車であることは、その時まで知らなかった。

2サイクル単気筒のハジけた魅力も捨て難いが、前回のハーレー・ダビットソンのようなあまり騒がしい単車では、撮影行の、それも透明人間の足としては支障もあるので、用途としては好都合である。

だが、走り初めてすぐに気になったのは、同じ5速トランスミッションでも、ハーレーのそれとは大きく異なるギヤ比である。オンロードをオフロードの違いを考えればごく当たり前のことかもしれないが、ツーリングバイクとしては、その外観ほどの違いがあるわけではない。

4〜5速が離れたハーレーには、当初は違和感があったのだが、慣れるとあれはあれで結構快適だったのだ。

トルクフルな大排気量Vツインにとって、1速は緊急時のオマケみたいなもんで、2〜4速の3段ミッションに高速用のオーバードライブが付いている、という感じだろう。これが、ロングツーリングには持って来いの好印象なんである。

そういう観点からみると、セローは全般にローギアードで、6速目が欲しくなる。酷道/険道のガレ場にでも突っ込まない限り、一般的な走り方では1速が緊急時のオマケという点では同じだ。

ラリーやトライアルなどの競技にも、リエゾンの区間というのは存在する。そんな、長距離移動も考慮したセッティングが、あって然るべきだろう。

2004年頃までの、225cc時代には6速ミッションだったらしいが、排気量が 250cc に拡大された2005年以降は、一般的な5速に変更されたようだ。ただ、その5速目は以前の6速目とたいして違わないらしいので、もともとローギアードな味付けだったのだろう。

その後、2008年にインジェクション化されて以降、現在までカラーリング程度の変更しか行われていない。メーカとしては非常に楽チンなモデルであり、そこそこ売れていることに胡坐をかいた、手抜きモデルの典型と言えなくも無いのである。

まあ、この辺りはどの業界でも普通のことなんだろう。メーカとしてのヤマハが、いったいどれだけユーザの声を聞いているのか、実際のところは知る由もないが、およそ要望が反映されているようには見えない。

ある程度の改造自体、ユーザのお楽しみ的になっているのは間違いないところではあるものの、メーカで行った方が良いものも少なくないはずだ。

予備知識も皆無では不味かろうと、事前にネットで調べたことが、所謂セローについて知っていることの全てだったりするのだが、そこで多くのユーザに支持されているのは、やはりツーリングモデルとしての存在である。

自動車保険などの点でも、有利な原付二種ではなく、あえて軽二輪を選択するのは、ある程度高速走行も考慮した、用途からの期待があると思う。

レースなどの競技用車両からのイメージは、メーカの販売戦略には欠かせない重要な要素である。だが、実際に競技用として使用されるのは、販売総数からの割合ではごく僅かであろう。競技に使おうというユーザはほっといても改造するし、それ自体はお手の物であるはずだ。

したがって、本来大半を占める一般的なユーザを前提にしたセッティングを基本とした方が、より評価も上がるだろうし、直ちに掲げたコンセプトがただのイメージに終ることもないはずだ。ただ、製造上部品の共通化などの兼ね合いで、必ずしも当初のコンセプトも、そのまま理想通りに継承されるわけではないようだ。

未だ半月にも満たない、単車にとっても乗る側にとっても、慣らし運転ともいえる時期であるので、あまり迂闊な判断は避けるべきとは思う。が、わずか数百キロほど走ったに過ぎない現時点でさえ、ツーリングマシンとして巡航性能に対する不満の種が、気になって仕方がないのである。

それは、おそらく他の点に於いて、欠点らしいものが感じられないことが、余計に際立たせているのかもしれない。所謂、画竜点睛を欠くというヤツで、ごく僅かな欠点が許せないのである。

長年造り続けられたおかげで、飛び抜けた魅力もない変わりに、大変バランスの取れた完成品に近い、あくまでも近いモデルであるからこそ、多くのユーザに末長く愛されているのだろう。

この点は、SIGMA DP Merrill シリーズとは、真逆な魅力と言えるだろう。

ただ、ここ数年はコストダウンしか考えていない、無意味なマイナーチェンジの繰り返しに終始している。シートやタンクのカラー廃止など、その弊害は少しづつではあるものの、年を追う毎に現われているように見える。

おそらく、ヤマハの開発担当者にも何度か世代交代が行われたであろう、長い歴史をもつモデルである。

願わくば、折角支持してきた者の期待を裏切らないよう、もう少しユーザの要望を取り入れた改良に、メーカが積極的になることだろう。

てなわけで、定点観測もそっちのけで新しい原付にご執心なんである。梅雨に入る前に、もう少し走り回っておこうと考えている今日この頃。



…ということで、ヒトツよろしく。
2015年05月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2015.05.26] 5月の定点観測:2015 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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