2013年7月31日水曜日

三脚のことなど…、その後(1)

いくらなんでも、もう今月は書けないだろうと「来月もヒトツよろしく」などと結んだんだが、アップル関連と違い、さすがにデジカメネタとなるとモチベーションは高い。

前回は、機種選定までの経緯を後々の反省材料とするべく綴ってみたんだが、思わず大作君になっちまった。

とりあえず、購入前の調査において各方面で語られていた評価と、実際に使ってみた各機種の使用感に若干のズレみたいなものを感じたので、追記として補足することにした。

ただし、SIGMA DP シリーズのユーザ以外はあまり参考にはならないので、念のため。

今回の選択した機種における、ネット上での情報の多くは大体において、SIGMA DP シリーズより遙かに大きく重たい一眼レフ+望遠レンズを使用しているユーザによるモノが大半を占める。

一般的なコンパクトカメラユーザにとっては、何れも不必要で過剰な製品であると思う。なにせ 5~10kg 越えの耐荷重を謳う製品に、高々 500g 程度のコンデジを載せているんだから、文字通りオーバースぺックの極みである。

一応一眼レフに分類される Olympus E-620 で使用しても、高価な製品を使用したことによるメリットが、明確に画質に現れるわけではない。撮影アングルの自由度や操作感はさておき、バーゲン品との差は目糞鼻糞レベルでしかないのだ。

所詮、ピクセル単位で解像していない機種では、夜景でも撮らない限りその恩恵には気付かない。少なくとも日中 1/250 秒以上のシャッター速度が得られる状況では、ミラーアップしようがしまいが、遅延レリーズしようがしまいが、ぶっちゃけブレていようがいまいが、大して違わないんである。

ネットでのフォビオン画質の評価に、現像ソフトによるシャープネスがかかりすぎているために解像感があるように見えるだけである、などというピンボケな戯言をたまに見かける。

実際にやってみれば判るが、本当にピクセル単位で解像していなければ、いくらシャープネスをかけても、解像感が上がるどころか潰れるだけであり、モヤモヤの画質をどう捏ね繰りまわそうが、決してクリアな画像にはならない。

だいたい、そんな比較に凝った被写体は必要ない。乾いたアスファルトの道路を2~30メートルの距離から撮影すれば一発で判ることだ。ちゃんと解像していなければ、実物より色も薄くのっぺりとした描写にしかならない。(ま、そのせいで人肌には向いているんだろうが、それをメリットとして受入れるのは難しい)

元々有りもしない情報から作り出されるものは、単なるデッチ上げに過ぎない。目一杯大きめに撮っておいて縮小をかけて誤魔化すしか手はないから、やたらに高画素化に邁進するわけで、端からフォビオンとピクセル等倍で勝負しようというのは、どだい無理な話である。…ぶっちゃけ過ぎな余談である。

一般的にブレが発生しやすくなるシャッター速度は、その根拠は知らないが[1/焦点距離]以下と言われており、SIGMA DP シリーズでもこれを下回ると警告が表示される。ところが、実際はその倍の速度でもピントは合っているはずなのに、ピクセル等倍で見ると何となく甘いなあ、と感じることがある。(ボケの判断に用いられる、許容錯乱円径が関係するのかもしれない)

特に DP3 Merrill の場合は顕著で、手持ちではよほどしっかり構えていないと 1/250 秒でもあぶない。最も解像する F5.0~5.6 あたりで遠景などを撮ろうとすると、ちょっと陰ったり曇ったら要注意であり、まったく油断も隙もあったもんではない、のである。

したがって、購入前に予想したとおり三脚必修せめて一脚というのが、ここ数ヶ月使用してみて感じたことである。そういう観点から評価してみようと思うが、いかんせん以前の機材が酷すぎたことと、オレ様が納得して選んだんだからまちげえねぇという、自画自賛な思い入れから甘めの評価にはなると思う。

で、今回はまず Manfrotto 190CXPRO3 である。

カーボンとはいえ、さすがに全伸高 146.0cm クラスともなるとそれほど軽くはない。雲台とカメラ本体の高さを考慮すれば、よほどの大木でない限り、大きく腰をかがめる必要はない。もちろん、1.29kg は軽いのだろうが、雲台の 400g を含めれば 1.7kg 近いので、以前のお勤め品アルミ三脚 Velbon CX 440(3WAY 雲台込)の 1.2kg と比べりゃ、たぶん比べちゃイカンのだろうが、当たり前に重たい。

ただ、立てた時のシッカリ感は比較にならない。ガンとして動かない、岩である、巌である、…かのように感じる。(←これも比べちゃイカンのだろうが、あくまでも比較であり感覚だからね)

巷の評価は、兄貴分の 055CXPRO の方が圧倒的に良いが、間違っても 600mm の大砲など生涯使うことはないので、これはこれで十分過ぎるぐらいである。(そんな金がありゃ三脚だって買い足すし、たぶんシェルパも雇う)

なにより、190 シリーズの評価ポイントが個人的に高いのは、その実売価格でありコスパである。上位の 055 シリーズがもう少し安けりゃ、多少なりとも評価が変わる可能性もあるが、実売2万円以上の差は感じない。

Manfrotto 055CXPRO3:29.2/24.8/20.4 (mm)
Manfrotto 055CXPRO4:29.2/24.8/20.4/16.0 (mm)
Manfrotto 190CXPRO3:24.8/20.4/16.0 (mm)
Manfrotto 190CXPRO4:24.8/20.4/16/11.6 (mm)

上記は、各段のカーボンチューブ径であるが、055CXPRO4 を見ると2段目以下は 190CXPRO3 と全く同じであり、最上段に 29.2mm のチューブを一本足したかのようである。全伸高は 170cm 対 146cm であることから、一段辺りの長さも似たようなモノだろう。

したがって、特に四段版の場合すべて伸ばした状態では、三段版の対 190 比較で必ずしも強度が高いのかどうかもあやしいが、少なくとも SIGMA DP シリーズにとっては完全なオーバースペックといえる。

各段の差は 4.4mm であり、後述の6段一脚 SIRUI P-326 が、八層カーボンにより実現している各段 3mm の差に比べると、少し見劣りする。SIRUI と同様の材質なら最下段は 190CXPRO3 でさえ 19mm でも可能なはずで、裏を返せば四段モデル 190CXPRO4 の 11.6mm という極めて細い最下段が、三段モデル並の太さ 16mm で実現できるということである。

ちなみに、P-326 の最上段は 32mm 最下段は 16mm(32/28/25/22/19/16)であり、全伸高 154cm/縮長 38cm/重量419g である。いずれにしても中華恐るべし、という気がしてならない。

振り返って、我が国産の雄ベルボンのジオ・カルマーニュシリーズは、さすがに各段 3mm 差は実現しているようだが、独自規格のシューを搭載した雲台とセット販売が多く、残念ながらコスパに優れるとは言い難い。

事前に危惧されたトリッキーな動きのセンターポールも、緩めたときはオイオイだいぢょうぶかコレ、というほどフニャフニャだが、締めるとバチッと決まるあたりは、それなりの秘密があるんだろう。

ただ、目視のロック状態を確認できることをメリットとして、選択したレバーロック式であるが、某有名動画サイトで見受けられるナットロック式の様にカッコ良く一気伸ばしは、当たり前だができない。

加えて、開脚角度のロックもレバーがさほど大きくない上に、開脚抵抗も意外に大きいのでお世辞にもスムーズとは言い難く、ガバッと開いて水平を出すまでの所作は、よほど腕力に自信のない限りあまり人目につくところではやりたくないものである。(よもや、カメラ片手にやろうなどと決して考えてはならない)

不整地(であることの方が圧倒的に多いが)で、三脚レベルの水平を出すことの手間を考えると、レベリングベースの存在価値も認めざるを得ない。が、贅沢は敵である。(ほとぼりが冷めてから、考えよう)

ま、運用面のトータルな評価に関しては、雲台の占める要素も大きいので、あくまでも縁の下の力持ち的な話にはなるし、三脚自体の問題を論ってもあまり意味はない。雲台を含めた評価については後ほど書こうと思うが、初のまともな近代三脚に触れた感想は、概ね良好である。

少なくとも、SIGMA DP シリーズでの使用においては、強度の点でも全く問題はなく、ネットで言われるほど弱っちい三脚ではない。あくまでも、上位モデルやカテゴリを度外視した無差別級バトルロイヤルな話であること、を念頭に置くべきである。


…ということで、ホントに来月もヒトツよろしく。
2013年07月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.07.31] 三脚のことなど…、その後(1) 〜より転載&加筆修正

2013年7月28日日曜日

三脚のことなど

というわけで、三脚である。

たぶん、低速シャッター時にブレを抑制するのが、その主たる機能である。

従来は軽くて安けりゃいいとお勤め品以外には興味を示さず、手を放してもカメラが地面に落ちなけりゃそれでいい、と考えていた。

だって、ワゴンセールで見かける国産のバーゲン品など千円以下はザラであり、あんなモンに多くを期待すること自体が、スジ違いというものだろう。

ところが、最近 SIGMA DP シリーズを使い始めて、その本来の機能であるブレ抑制の方に興味がわいた。加えて、多様な撮影アングルによる、構図の設定が可能な芸達者なモデルも存在することを知ってからは、ただ軽くて安けりゃいいってもんでもないなあ、と思ったわけである。

先日県北方面に赴いた際、脇道に入って渓流の写真でもと小川の中に入って見たものの、全く自由度のないお勤め品三脚では構図もままならず、悔しい思いをしたばかりである。特にローアングルにおいては、開脚角度がお定まりの古いタイプではどうにもならない。脚を縮めてもセンターポールが邪魔になり、その限界は恐ろしく低い。

残念ながら、地方で写真機材を調達しようと思えば、数多あるKムラか駅前のBカメあたりに限定されるのだが、いずれも店頭品にはロクなものが無いか、またはあっても面白くない値札がぶら下がっている。数年ぶりの購入であるが、以前のようにぶらっと立ち寄った店頭でワゴンを漁るのは、今回から止めにしようと考えた。

例によってネットで情報を仕入れることになるんだが、どのようなジャンルにも通好みの高級品というのがあるわけで、上を見りゃキリがないのは毎度お約束になっている。だいたい、脚と雲台は別々であることが当たり前になっており、裏を返せば個人の好みによりカスタマイズできることが、最大のメリットということなんだろう。

バーゲン品では、三脚を買えば雲台は勝手に付いてくるんだが、それなりの性能および機能であり、使い勝手は二の次、三の次、四の次である。ちょいと向きを変えるだけでも、なかなか思ったようには動いてくれない。(ギクとかシャクという音が聞こえてきそうなモノが多い)

ただ、いろいろ調べていくうちに気がついたのは、カメラ本体に関しては、ほぼ世界制覇を成し遂げたかに見えるメイド・イン・ジャパンが、写真関連の機材となると、どうも様子が違うのである。

脚では、フランス、イタリア、中国などが、雲台では、スイス(フランス?)、アメリカ、韓国、中国などが主流を占め、およそ国産品では良い評判のモノが少ない。(もちろん、カメラおよび機材に関して金に糸目を付けない人向けには、ドイツという選択肢もあるが、あまり現実味はないな)

意外なのは、韓国、中国製なら安いのかと思えばとんでもない話で、高級品の一角を占める様相であり、情けないことに安かろう悪かろうのバーゲン品は、日本製(製造自体は国内とは限らないが)の独壇場のようになっている。国産メーカ製もそこそこの対価を払えば、マシなのが無いわけではないのだろうが、ある程度のグレードを超えると海外製品の方がコストパフォーマンスに優れるモノが多く、どうやらそれが人気の要因らしい。

もう一つの人気の秘密は(って、誰でも知っている公然の秘密なんだが)、シューの規格である。シューといってもシュークリームやシューマッハぢゃない。クイックシューと呼ばれるモノで、カメラ側に取付けていれば、雲台への脱着が楽になるという金具みたいなものである。国産品の多くは各メーカのオラが規格になっており、複数の三脚を持つ者にとっては、鬱陶しいことこの上ないらしい。

その上、デカイ望遠レンズや重たいカメラを多用する連中にとって、雲台に対する締付具合や運用面での利便性を考慮すると、アルカスイス規格というのが定番になっているらしい。各社から、その規格に互換性のある製品が多くラインナップされており、人気(と価格)が高いようだ。

前述の韓国および中国製品もこの規格に則ったモノが多く、悪く言えばパチモンなんだが、製品の出来自体は悪くないらしい。(パチった相手がよっぽど良かったんだろう) 

また、脚以上に雲台には用途に応じてあらゆるものが製品化されており、価格を問題にしなければ選択肢はとてつもなく広い。1WAY、2WAY、3WAY、4WAYと多彩であり、天文関係の写真向けには一見しただけではどのように動作するのか全く判別できないようなモノもあり、見ているだけで結構楽しめる。ただ、その参考上代も天文学的であることが多く、メカ好きの興味だけではおいそれと入手し難い価格設定になっている。(ご参考:Arca-Swiss C1 Cube ¥336,000)

そんな多彩な製品群の中でも人気が高いのは、自由雲台(別名ボール雲台)というヤツで、玉のてっぺんにカメラを取付け、グリグリと方向を変えられるタイプの製品である。

従来使用していたお勤め品には、昔ながらのパン棒と呼ばれる邪魔な棒が付いており、コイツを捻ることで垂直方向だけのロックと解除を制御し、別のツマミで水平のロックと解除をするという、ちょっと考えりゃどこがパン棒だ、チルト棒ぢゃねえかとか、なんで一ヶ所で水平と垂直(パンチルトね)を制御できねえんだ?などと、その操作感が不満の主因になっていた。

かつて、出来の悪い自由雲台を使ったことはあるが、ちょっと油断するとカメラがどっちへ向くか判らない危ういだけの製品で、3WAY 雲台の方がよっぽど安心感があったように記憶している。

ただ、さすがに最近のそれなりのグレードの製品には、テンションのコントロール機能は当たり前に付いており、カメラ本体に手を添え動かしたところで、ピタリと止まるように出来ている。構図を決めてから本格的に締込んでロックするのだが、精度の良い高級品では、ロック/アンロックで殆ど構図が変化しないらしい。

ま、贅沢を言えばキリがないし、贅沢を言えるほど金もないので、贅沢は敵である。

しかし、今回は機種選定にあたってある基準線を設定し、それにそってベストコストパフォーマンスを探る、というアプローチを採ってみた。要するに、ぜってえ譲れねえ線というのを一番下に一本引いて、あ〜これはムリ、叱られるよな〜、というヒンシュクモノの線を上に引くという方法である。(とは言うものの、上の線は結構曖昧で、新たな発見により微妙に揺れ動いたりもする)

で、最下線の第一は、やっぱ重量は軽くしたい。

先日の山中の移動で、体力の衰えは十分に痛感させられたことでもあるので、多少高価になってもアルミよりカーボンだろう。カメラ自体は十分に軽く(様々な武装により、多少重量化されてはいるが)、震動源であるミラーやフォーカルプレーンシャッターもないので、三脚は重いほど良いとされる真当なご意見は、この際無視することにした。

第二は、多彩なアングルに対応できる一芸に秀でた製品を選択すること。

最近では、ローアングル撮影はもとより、まるで体操選手のごとく180度開脚など当たり前で、従来品では(といっても、此方の常識は結構古い時代で止まっているのだが)対応不可能なセッティングにも対応できる製品群が少なくない。センターポールも単なるエレベータだけに留まらない、アクロバットをもこなす芸達者ぞろいである。

第三は、縦横の切替えに雲台の機能だけでなく、カメラ側の対応も考慮すること。

前述のアルカスイス規格の互換製品には、単純なクイックシューだけでなく、各カメラ専用のL型プレートを多く見かけた。ボール雲台のデメリットは、回転の中心が下方にあるため縦横を変更した場合、レンズの中心が大きくズレてしまうことだ。

その度に、三脚本体を微妙に移動して再度水平を出すのは結構面倒であり、両方向に対応したシューがあると運用面において、相当自由度が拡がるはずである。多彩なアングルに対応できる三脚との組合わせを考慮すると、カメラ側にも柔軟な対応が必要となる。

タイムリーなことに、SIGMA DP シリーズに対応した製品も販売が始まったようだ。

第四は、ある程度の精度を持つ製品群からの選択。(キリがねえといいながら、結構贅沢を言っているような気がするが…)

比較的軽量なカメラとはいえ、ボール雲台を選択するのであれば静と動の2点のみでは不十分である。その過程(アングルの移動)の動き方にもある程度配慮したい。また、チルトはさておきせめてパン操作は単独で行えることが望ましい。屋外の使用で、あまり重さと価格が軽そうに見えないギヤ雲台というのもアレだし、いまさら 3WAY 雲台というのもイラつくんで、たぶん探せばあるだろう。

予算の問題から、中華製品が紛れ込むのは致し方無しではある。しかし、後日談ではあるが、その精度と品質の高さには驚かされる。出来は悪くないなどと書いたのだが、どうやらそんなレベルではなく、なぜ国産でこのようなモノが出来ないのか不満と不安にかられるほどである。

コンピュータ業界では、とっくに諦めきってメイド・イン・チャイナ万歳の感があるが、非電子機器が大半を占める撮影機材でさえ、このような状況というのは情けない。

ある程度コストがかけられる高級品市場にも、対抗できる魅力的な日本製品が見当たらないのは…、って冷静によくよく考えてみりゃ今に始まったことぢゃないよな。

我が身を振り返っても、自動車や腕時計をはじめ、オーディオ関連製品などでメイド・イン・ジャパンを最後に購入したのは、遙か昔の記憶の彼方だし、とりあえずシグマは国産だし、 ま、どうでもいいか。

そんなこんなで、最下線による脚切りの結果、最終的に候補に残ったのが、先ず脚では、
◎ジッツオ(GITZO)エクスプローラシリーズ
◎マンフロット(Manfrotto)190CXPRO & 055CXPRO シリーズ
◎ヴァンガード(Vanguard)Abeo Pro シリーズ
◎ベンロ(BENRO)カーボンネオフレックスシリーズ
◎シルイ(SIRUI)S-N シリーズ
などである。

とりあえず、三脚フェチには評判の高い定番中の定番、ジッツオ(フランス)であるが、価格も分不相応に高いので早々に却下。似たような理由でハスキー(Husky)も却下。しかし、ネットで見るとこの両者、ほんと人気は高いけど、その理由は未だよく判らんなあ。

マンフロット(イタリア)は、実売価格によるコストパフォーマンスは高く、特に軽量な SIGMA DP シリーズにとっては、190CXPRO あたりがお誂向きのように思う。

ベンロ(中国)のカーボンネオフレックスシリーズは、マンフロットと同様に横方向にも展開可能なセンターポールがユニークな製品であるが、実売価格はマンフロットより若干高いようだ。

ヴァンガード(台湾)に関しては、独自のユニークな雲台とのセット物が多く、製品情報の多さの割になぜか評判に関しては、情報が少ない。

最後まで、マンフロットとどちらにするか悩んだメーカが、シルイ(中国)である。まだ、実際の使用者からの情報はさほど多くないが、購入者の評判は一様に良い。

なにせここの製品は、脚の一本を取外して一脚として使用できたり、ローアングル用にショートセンターポールが標準で付いていたり、畳むと完全にフラットになったり、石突きの中にスパイクを装備していたり、センターポールにフックが付いていたりと、細部まで至れり尽くせりである。

おまけに、マンフロットがアクセサリの類いは全て別売なのに、結構立派に見えるバッグまで付属していて、価格は安くもないんだが、お買い得感には優れる。

ただ、そのバッグも三脚にあまりにもピッタリサイズで雲台を付けると入らないなど、結構抜けているところもあって、最近の中華製の脅威だけでなく、ホッとさせる一面も合わせ持つ微笑ましいメーカである。(ただ、他のメーカもあまり油断していると必ずやられるに違いない、と思わせるに十分な品質を持っていると思う)

三脚に関して最終決定の材料となったのは、脚部のロック機構である。あくまでも個人的な思い込みかも知れないが、捻ってロックする(ナットロック)機構は外見からロック状態を確認できないことに対して不安を覚える。人気のジッツオや、ベンロおよびシルイもこのタイプであり、最近ではこちらの方が主流らしい。

マンフロットのレバーによるロックでも、調整を誤ればカックンという事態になり得ることは承知しているが、目視で確認できることの安心感は捨て難い。

これも後日談だが、セッティングにかかる時間は圧倒的にナットロック式の方が早く、特にカーボン三脚においてはロックは確実に行われ、その強度も優れるようだ。

毎度の余談になるが、現状で1万円を切るカーボン製一脚などは、ベンロ、ヴァンガードなどにも存在する。だが、伸高/縮長において有利な6段タイプとなると、シルイ(P-326)がベストだと思う。

価格面では、国産のベルボンやスリックなどにも該当品がないわけではないが、雲台取付が細ネジ(UNC 1/4 インチ)であったり、一脚のくせにレバーロック式であったりと、微妙に個人的なストライクゾーンから外れる製品が多い。

まことに勝手な私見であるが、三脚と違って一脚にはなにより携帯性を重視するので、引掛りの少ないナットロック式の方が都合が良い。また、有る程度以上のグレードの雲台取付ネジのサイズは、太ネジ(UNC 3/8 インチ)が主流であり両対応のものも多い。

もちろんシルイ(P-326)も両対応であり、同社の三脚と同様にゴム脚の先端部分を捻ると金属製石突が顔を出す仕様であるなど、機能面においても価格以上の製品といえるだろう。

操作の点においても、下向きにロックナットをまとめて握って緩めると、自重によってスッと伸びてくれる精密度など、その操作感はマンフロットの三脚以上に高級感があり、ロック機構の動作も予想に反して確実である。

最上段は、 Manfrotto 190CXPRO(24.8/20.4/16 mm) よりも太い 32mm で6段目が同じ 16mm であることから、この一脚を三本使った三脚ならよかったのにと思わせるぐらいである。

しかし、価格も当然 ×3以上になるわけで、190CXPRO3 を上回って 055CXPRO あたりの価格になるだろう。したがって、コスパという点において現時点では 190CXPRO3 の選択に間違いはない、と思いたい。

ま、何事も経験・体験してみなければ判らないことが多いので、今後の課題としよう。

ということで、脚はマンフロット(190CXPRO)に決定。三段にするか四段にするかは、選定の段階では価格以外(三段の方がちょっと安い)に決定材料がないので、最終的に発注するまでは保留にしておいた。

次に雲台であるが、これはもう脚に比べて、ある程度以上のグレードでは選択肢が多すぎて、結構難航した。精度に関して評判の良いモノの筆頭は、スイスなのかフランスなのかよく判らん、アルカスイス(Arca-Swiss)であり、その互換製品を数多く販売しているのはアメリカの RRS (Really Right Stuff)であるが、いずれにしてもあまり庶民的な価格にはなっていない。

ま、ネットで調べる分にはさほど金もかからないので、一応探ってみた。もちろん、三脚メーカも雲台は各種ラインナップされており、評判の良いモノ価格も安いモノが少なくない。だが、今回のぜってえ譲れねえ(または、譲りたくねえ)線を考慮すると、残念ながら除外せざるをえなかった。(主としてシューの問題だな)

こちらも、最下線による脚切りの結果、最終的に候補に残ったのは、以下のとおり。

◎アルカスイス(Arca-Swis)
◎RRS (Really Right Stuff)
◎アクラテック(Acratech)
◎マーキンス(Markins)
◎カーク(Kirk)
◎フォトクラム(Photo Clam)
◎サンウェイフォト(Sunwayfoto)
◎シルイ(SIRUI)

特に評判の良いのは、Arca-Swiss Z-1 と RRS BH シリーズ。

SIGMA DP2 Merrill を載せた RRS BH-55 の写真を発見した時は、そのカッコよさに思わずグラっと来た。ただ、玉のサイズが Z-1 は 50mm、BH-55 に至っては 55mm という巨艦(巨漢?)であり、完全にオーバースペックである。

その価格と、国内にあまりディスカウントな流通経路もなさそうなので早々に諦めた。だいたい、玉や竿の大きさだけで男の価値が決まるわけではない。(なんのこっちゃ?)

また、同じアメリカ製で、アクラテック(Acratech)というメーカの製品にも興味を持った。その外観は、(たぶん旋盤によるミーリングの跡だと察するが)HRギーガーのデザインかとも思える、エイリアンっぽい不気味なモノで、結構琴線に触れたりする。

有名動画サイトあたりに、ぶっきらぼうなスキンヘッドの社長自らが出演しているビデオが、多数アップされている。(なぜか、インタビューに応えるキミ・ライコネンを思い出してしまう)

こちらも、国内にまともな流通がなく、(あっても設定された国内価格がやたらに可愛くないので、無いことにしておく)さりとて、いきなり B&H あたりで個人輸入というのもハードルが高い。加えて、元々ドル建てでも決してお安くないお値段が、円安のせいでますます可愛げのないことになっている。

ただ、その価格といかにも精密そうな外観の割に、精度がそれほどでもないというネガティブな評判もあって、国内のマニアの間ではあまり盛り上がっていはいないようだ。

ま、それならそれでもっと庶民的なパチモノはないかと探ってみれば、けっこうあるもんだ。

ボール雲台では、Z-1 や BH シリーズに次いで人気が高いのは、マーキンス(韓国)、カーク(アメリカ)などである。しかし、メーカ自体が日本市場をあまり意識していないらしく、国内流通も万全とは言い難い。(サイトにも取説にも日本人に対する配慮は無い)

法外な並行輸入品の価格も少なからず見受けることがあり、結果としてお値段は本家とさほど変わらない。したがって、評判はさておき個人的には積極的に選択するメリットはあまり感じない。

多少マシなのが、フォトクラム(韓国)である。一応日本代理店もあり、アマゾンを含めて正規品の扱いはあるようだ。前述の Arca-Swiss C1 Cube のなんちゃって版と思しきモノ(Photo Clam MULTIFLEX)も本家の半値以下で提供されているが、いかんせん元が元だけに半値程度では庶民のブツ欲を刺激するまでには至らない。(ま実際、そんなモン買ってどうするんだ、という問題もある)

ラインナップは結構充実しているようなので、もう少し現実的な製品群から探してみたものの、やはりあまりリーズナブルとは言えず、それ以上に、国内において購入者の情報がまだ少ない。価格なりの精度は持つのだろうが、今少し静観することにした。

価格の面で庶民的に見えるのは、やはり中華勢である。サンウェイフォト(Sunwayfoto)やシルイ(SIRUI)などの製品は、アルカスイス規格互換の製品を数多くラインナップしている。

前述の SIGMA DP シリーズに対応した L型プレートはサンウェイフォト製であり、国内で RRS 製の似たような製品を購入しようとすれば4万円近い並行輸入品しかなく、まことに面白くない。(元値は $180 程度だったりするし)

その点、Sunwayfoto PML-DP などは、日本のアマゾンでも扱いがあり並行輸入品で7千円程度、正規代理店でも9千円程度で手に入る。(アマゾンでは並行輸入品が、販売開始当初購入できた。しかし直後から在庫切れのままで、再入荷予定はたっていないとのことである。実にラッキーなタイミングだったのかもしれない)

コスパの点においては、サンウェイフォトの上を行くのがシルイである。

アルカほどではないにしても、精度が良いと評判のマーキンス(Markins Q3)は、ボール径 38mm、耐荷重 30kg、本体381g と、その価格も含めて少々オーバースペック気味ではあるが、シルイには同等の K-20X(同38mm、25kg、400g)を始め、K-10X/K-30X など上と下に豊富なラインナップがある。

ましてや、アマゾンでの実売価格はマーキンスの半値以下であることから、当方としては選択の余地などあるはずもなく、SIRUI K-20X に決定。(ほんとは K-10X で良かったんだけど、値段が千円と違わなかったんで…、セコイ話である)

てなわけで、最終的には Manfrotto 190CXPRO3 + SIRUI K-20X + Sunwayfoto PML-DP という布陣になった。190CXPRO ついては三段か四段かで最後まで迷ったが、端から見ればしょうもないことで決まってしまった。それは、三脚を持ち運ぶためのバッグである。

マンフロットのバッグは以前から、アミカ・ショルダーバッグ(50型)というのを使用している。カメラバッグといえば、たいてい黒くてダサいのがお約束のようになっているが、このシリーズにはタブグレーという明るい色も選択でき、見た目もそれほど悪くない上に実売価格も2,500円程度と、大変お買得感に優れる逸品である。

また、これが LH3-01+ HAMA5411 + UNX-9121 + HE-3XA という武装を施され、全長 24cm ×高さ11cm にもなろうかという SIGMA DP3 Merrill がまんまスッポリ&ピッタリ収まるのである。取外し可能な HE-3XA を外してしまえば、素の DP1 Merrill なら、一緒に収めることも可能だし、空いたスペースにはその HE-3XA まで収納できる。

とはいえ、我が DP1 Merrill も同様に Sunwayfoto PML-DP やら UNX-8508 やら UNX-5685 などとフル装備なんで、もともと同時収納は端っから諦めちゃあいるんだけどね。…余談である。

で、その三脚バッグもマンフロット謹製の方が、見た目も収まりも良かろうということで物色していたんだが、最小の 70cm版(MBAG70N 内寸:約65cm)でも、縮長 50cm の四段(190CXPRO4)ではムダに余ってしまうし、如何に丈夫なカーボンとはいえ最下段の直径(24.8 /20.4/16/11.6mm)は箸のように細い。

ネットの情報にも 190 シリーズは三段を選べというのが多く見受けられ、190CXPRO3 にしてみた。しかし、そうすると欲が出るもので、一つ上の 80cm 版(MBAG80N)にはパッド入りの MBAG80PN(内寸:77cm)というのがあり、無造作に車に放り込んでおいても安心な気がして、こちらを選択した。

価格差は、三脚の三段と四段の差額で吸収できる範囲を超えてしまったが、安全・安心のための保険料と考えることで納得しよう。

この時点で既に、アルミ製とカーボン製の重量差などは吹っ飛んでいることに気付くべきであると思うが、いまさら後には引けない男の意地みたいなモノがあることは確かだ。(しっかし、900g 近い重量のある RRS BH-55 など使っている、恵まれた方々はその辺どう考えているのだろうか、興味はあるな。)

以前の、ベルボンやスリックにオマケで付いていたモノはペラペラの袋でしかなく、如何に凝りの無い価格とはいえあまり薄く、早々に破れてしまった。値段を考えりゃ無いよりマシという程度のものでしかない。オマケに頼るはそもそも間違いであることは判っていただけに、今回は奮発したわけである。

届いた当初は、やっぱちょいデカ過ぎだしぃ、立派過ぎ〜に思えた三脚バッグであるが、実際に雲台を装着して一脚(P-326 + L-10)共々収めてみると、それほど大きな余裕はない。開口部は広くトップとボトムのパッドは十分に厚いし、サイドもパッドが入っているので、多少嵩張るもののギリギリ許容範囲というところか。

しかし、三脚だけなら DP Merrill シリーズのカメラ本体を載せたまま収まりそうである。ちょっとした撮影場所の移動程度なら横着が出来るかも知れないので、そのうちにやってみようと思う。

と、まあいろいろと勉強になった感のある、今回の三脚購入騒ぎ。単に耳年増になっただけ、という気がしないでもない。機材を眺めて悦に入る、という年寄趣味も板につきそうな年齢にさしかかってはいるが、やっぱ道具は現場で使ってナンボのもんである。

早速、先日来気になっていた国道429号線付近の林道へ出掛けて、実戦投入してみたわけである。ロケーションとしては、県道からわずか5m程度入っただけのお手軽スポットなんで、景観もそれなりでしかない。

当日は真夏日の晴天で、山中の木陰とはいえ気温も湿度もぱない過酷なシチュエーションであり、撮影された写真から想像できるような清涼感など、微塵もない場所である。もう少し涼しくなってからの方が、たぶん絵的にもマシな写真が期待できたであろうが、せっかくの大枚はたいた新機材だし、それほどノンビリ構えてはいられない。

いきなし新品から最初の使用で、脚を川の中へ突っ込むのはちょっと抵抗があったが、本来このために購入を決意したわけなんで致し方あるまい。まだ不慣れなところもあり、カメラもろともドップンというのは避けたいのでローアングルも多少遠慮がちであるが、概ね満足な使用感が得られた。

実際、もっと盛大に水しぶきがかかるような渓流では、カメラ本体の防塵防滴機能が必修になるのだろうが、あまりそちら方向に突っ走るより、いっそ水中パックみたいなモノの方が結局近道な気もする。

ま、撮影機材のグレードが上がったからといって、結果として写真のグレードが直ちに上がらないのがツライところであるが、こちらも今後の課題であることは言うまでもない。



…ということで、来月もヒトツよろしく。

2013年07月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.07.28] 三脚のことなど 〜より転載&加筆修正

2013年7月13日土曜日

エアコン故障、…というか完死!?

久しく使っていなかった仕事場のエアコンを、そろそろテスト運転しておくかと思い電源を入れたところ、全く冷えない、…どころか、どんどん室温と湿度が上がっていく。

どうやらついに、「夏場の暖房器具」に成り下がったようだ。

何年か前、冷え方に気合いが入っていないようなので、どうせエアコンガスでも抜けているんだろうと、業者にガスの補充を依頼した。「これもう本体交換しないとダメですな。」と言われたんだが、その時から(主に経済的な理由により)エアコンの使用をやめた。

車の方もレンジから今のミニに変わって、一応装備はされているものの、来賓?の送迎などよほど必要な時以外、積極的に使用したことはない。駐車スペースに屋根があることも幸いして(この差は結構大きい)、夏場はだいたい窓全開、首にタオルとペットボトルのお茶で何とか凌いでいる。

オートエアコンが標準装備されたレンジローバーの頃は、ほぼオールシーズンエアコンかけっぱなしという状態で、燃費は4km/L 程度。その上満タンにすると100リッター近いので、あまり庶民的な車ではなかった。

当時は、真夏に冷房設備のない環境に身を置くことなどまったく考えられなかったのだが、慣れれば何とかなるものである。

40年ほど前、単車で事故って真夏に入院したことがあるが、7階の大部屋にも冷房はなかったし、小中高と学校の教室はもちろん、学生時代の下宿先にも冷房設備などあった記憶がない。

昭和50年頃になって、ようやく自室にクーラー(≠エアコン)が設置されたが、あいにくその頃から実家を離れて、長期の下宿生活が始まってしまい、あまりその恩恵を受けていない。(が、その仇を取らんとばかりに、帰省した時にはここは北極かと思うほど、ギンギンに効かせていた)

だいたい、地球温暖化の主たる原因は、巷に溢れるエアコンの室外機が放出する熱である、と個人的には考えている。

ま、どこかを冷やせばどこかが暖まるのは自然の摂理であるが、数億年単位で考えれば、それさえも誤差の範囲に違いない(地球温暖化:常々話を地球規模に持っていくなら、時間の最小単位はせめて一万年ぐらいでないと、地球に失礼だと思うな)

今現在も、扇風機という名の「熱風攪拌機」が数台(うち何台かはオモチャの USB 扇だ)がまわっているだけであり、就寝時はアイスノン必修、起床時はたいてい、汗だくで目が覚めるというという生活である。

以来、起き抜けの全身に感じる怠さもなくなって、体の調子はすこぶる良い。で、エアコンなんかより、まともな三脚が欲しいと思う今日この頃。


…ということで、今月もヒトツよろしく。
2013年07月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.07.13] iエアコン故障…というか完死!? 〜より転載&加筆修正