2013年8月31日土曜日

撮影と現像のパラメータについて

SIGMA Photo Pro 5.5.2.0.0 (15277) 

標題の SIGMA Photo Pro は、SIGMA DP Merrill 用の X3F RAW Data に対応した、現時点で唯一の現像ソフトである。


しつこいようだが、またまたまたカメネタである。さすがに商売が絡まないとなんも気兼ねなく書けるせいか、我ながら驚いている。


ま、そうは言っても一応 OS X 用のソフトウェアであることから、全くマックと関係のない話ではない。まいどのことながら、SIGMA DP シリーズのユーザ以外には全く参考にはならないので、念のため。


現時点で唯一、と言い切ってしまうが実はもうひとつ Iridient Digital が、“Iridient Developer” という X3F RAW フォーマットをサポートしたマック対応版を出している。(http://www.iridientdigital.com)


フリートライアル版もあるので早々に試してみたが、マックらしいインターフェイスになっている割になんか使い難いのである。英語版だからというだけでなく、多少出来が悪くとも既に SIGMA Photo Pro に体が馴染んでしまったせいかもしれない。


現時点でのバージョンは 2.2 で、価格も日本円で ¥8,092 と決して高いわけではない。が、残念ながら未だ正式版の購入には至っていない。


SIGMA Photo Pro 自体、他社の現像ソフトに比べれば機能的には劣るし、動作も不安定なところはあるが、あまり高機能過ぎるよりちょっと足りないぐらいの方が手に馴染むという、ソフトウェア全般に感じている個人的ポリシーな事情もあって、SIGMA Photo Pro を使い続けている。(シグマユーザはタダだしね)


最近のアップルはアホ過ぎて、X3F RAW に対応する可能性は全く期待できないし、もはや期待さえもしていない。現状では Corpus Callosum Corporation (http://www.corpus-callosum.com) の「X3F.qlgenerator」および「X3F.mdimporter」という古いプラグインが、ファインダ上でのクイックルックを実現してくれるので、当面はさほど不便を感じない。


したがって、シグマユーザが愛情をもって文句を言い続けていれば、SIGMA Photo Pro だってもっと使いやすくなるに違いない、という観点から到達した結論なんだが、はたしてどこまで進化できるかはシグマ次第である。(以前にしぐまと心中だ、という決意表明もやっちまった手前、そう簡単に浮気も出来まい)


そんなわけで、今回は撮影時のカメラ設定とSIGMA Photo Pro について書いてみる。


SIGMA DP Merrill ユーザ以外には全くワケがわからんことだと思うが、カメラ本体と現像ソフトにも一応個人的なデフォルト値を設定している。

撮影時の感度は原則 ISO100 固定で、絞り優先またはプログラムモードによるオートブラケット(EV±0.3)で、手持ち撮影ではタイマー無しの3連写、三脚の場合は2秒タイマーによる3連写を基本として、カスタムモードC1、C2に設定。C3にのみ ISO Auto の3連写を設定。

可変(ISO Auto)といっても、感度の上限は ISO200 に設定、1/3段(125、160)刻みという、ほとんど気休めでしかない。DP Merrill にとっては、ノイズが気になりだす許容上限感度なんだから情けない、が致し方あるまい。

DP1 Merrill では単写の場合、絞り優先を使うことが多いが、DP3 Merrill は単写で使用することは滅多にない。

ちなみに、カラーモードはすべて風景(Landscape)で、ホワイトバランスは原則オート(AWB)である。いずれも DP1 Merrill & DP3 Merrill 双方で、同じ設定にしている。
また、現像ソフトには彩度(-0.2)、シャープネス(-0.5)をデフォルト値として設定し、モノによってはシャープネスゼロに相当するという噂の値(-1.0)まで下げる場合もある。


晴れ(DayLight)固定が無難という意見もあるようだが、SIGMA Photo Pro 5.5.2 は色温度の表記機能さえもないタコなんで、微妙な色温度の変更はできない。オートホワイトバランスの自動可変機能を利用した方がカラーバランスを大きく変更しなくて済む場合が多いので、オート(AWB)を設定している。バージョンアップにより、以前と比べてホワイトバランスもだいぶマシになったと、いうのもその理由。

ま、たまに大コケすることもあるが、そんな時はまずプリセットのいずれかに変更してみて、マシなものからカラーバランスを調整する。あまり極端にカラーバランスを変えると、たいてい何処かに犠牲が出るからだ。

参考までに、SIGMA DP Merrill のホワイトバランスと各カラーモードは以下のような設定になっているらしい。
カッコ内の略記はあくまでも個人的な表記であり、蛍光灯とアルファベットで被ってしまうフラッシュをストロボライト(SL)と表記せざるを得ない点など、結構クルシイ。

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 ホワイトバランス(SIGMA DP Merrill)
 日陰     :約 8000K(SH)
 フラッシュ  :約 7000K(SL)
 くもり    :約 6500K(CD)
 晴れ     :約 5400K(DY)
 蛍光灯    :約 4100K(FL)
 白熱電球   :約 3000K(TL)
 ================================
[カラーモード:彩度の高い順]
 1.風景    :Landscape(L)
 2.ビビッド  :Vivid(V)
 3.スタンダード:Standard(S)
 4.ポートレート:Portrait(P)
 5.ニュートラル:Neutral(N)
 ================================

また、各カラーモードを補正した場合はだいたい以下の順に彩度が変化するらしい。
以下の数値はシグマユーザにはお馴染の maro さん家からのパクリを自分なりに並べてみたものである。(毎度、貴重な実証結果を公開して頂き、お世話になっております)

やっかいなことに、数値上同等になるはずのレベルであっても、モードが異なると写真に反映される色は同じにはならない。

おそらく各色に関するバランスを変更しているためであろうと察するが、そのパラメータが公開されていないので、実際にやってみるっきゃないのが現状である。

================================
[カラーモード:補正値]
 彩度 カラーモード 設定値
  1.風景     +0.1
  2.ビビッド   +0.1
  3.風景     基準値
  4.ビビッド   基準値
  5.風景     -0.1
  6.スタンダード +0.3
  7.ビビッド   -0.1
  8.ポートレート +0.3
  9.スタンダード +0.1
 10.風景     -0.3
 11.ビビッド   -0.3
 12.スタンダード 基準値
 13.ニュートラル +0.3
 14.ポートレート +0.1
 15.スタンダード -0.1
 16.ポートレート 基準値
 17.ニュートラル +0.1
 18.ポートレート -0.1
 19.ニュートラル 基準値
 20.スタンダード -0.3
 21.ニュートラル -0.1
 22.ポートレート -0.3
================================

したがって、カラーモードを風景(Landscape)、彩度(-0.2)、シャープネス(-0.5)という個人的なデフォルト値は、彩度に関してビビッド(-0.1)とポートレート(+0.3)あたりに相当するはずであるが、当然この両者とも色は異なる。

主に緑の表現が独特な風景モードを好んで既定値としているが、彩度(-0.2)と X3 Fill Light を加えることでたいていの色飽和には対応できているので、たぶんそれほど異質な設定でもあるまいと考えている。

あとは、なぜか設定に保存できないので、毎回手動で行っている倍率色収差補正のレンズプロファイル(+1.0)をお呪いのようにセットし、フリンジ除去に関してはその都度状況に応じてやったりやらなかったり、である。

というのも、マゼンタはまだしもグリーンに関しては、風景の緑に与える影響が大きいので、色相や範囲、適用量などを微妙に変えてみたりしているが、だいたい彼方を立てれば此方が立たずというジレンマに陥ることが多い。特に個人的には、逆光写真が多いのでこのあたりは悩ましい限り。

その時はこれがベストだろうと思っても、他の写真と比較すると不自然に見えたりすることが多々あるし、一枚の写真をあまり長時間見続けていると、いったい何を基準としていいのか判らなくなる。

そのために、毎回カラーチャート(これがまた結構な値段なんだ)を持参して撮影するのもアレなんで、たいていは脳裏に焼き付けた景色の記憶をたよりに、適当な(自分好みの)調整をしているので、概ね色に関してはいい加減にも程がある、のである。

ま、そんなこんなで撮影した写真の中から、これはと思った自画自賛な作品に関してはご当地の地名などを文字入れして、デスクトップピクチャとして作成するというのが、最近のお楽しみとなっている。

遠征の足となっているミニには、三脚一脚を始めとする撮影機材一式、適当なロケーションを見つけてはドッカと腰を落ち着けて撮るためにイスやテーブルなども常用装備となっていたりする。

そのうち、小さなテントや寝袋まで積み込んで、どこか撮影意欲をそそるロケーションを探しに行ってみたいものだと妄想してみるが、はたしていつになったら実現できるやら。


…ということで、今度こそホントに来月もヒトツよろしく。
2013年08月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.08.31] 撮影と現像のパラメータについて 〜より転載&加筆修正
なお、本家には写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

2013年8月30日金曜日

撮影データについて

懲りもせず、またまたカメネタである。

写真ブログなどでよく見かける、撮影データの記述の仕方には、なにか一定のルールはあるんだろうか。


写真サイトに公開する(後悔することもあるが)場合、撮影データなどをさりげなく表記すると、いかにも凝ってます的な演出ができるのでたまにマネしてみるんだが、結構手間だし作法もよくわからんのである。


基本的には、Exif データにある項目を適当に並べときゃいいような気もするが、レンズの焦点距離はそのまま表記するべきか、それとも 35mm 換算値を表記するのが良いのか。現像時に行った補正値は、どこまで記述するべきなんだろうとか。
カラーモードなど、撮影時と大きく変更した場合はどうしたものか、など。

特に露出補正に関しては、まことにもってやっかいである。


撮影時に、こりゃぜってえ飛ぶに違えねえと考えてマイナス補正をかけ、念のためにオートブラケットで EV±0.3 で撮ってみたら、EV+0.3 が最適露出だったりすることはよくある。こんなときは、素直に最も補正量の少ない EV+0.3 のデータ(実際は補正無し)を現像し、露出補正に関する表記も 
EV±0 で何も問題はないだろう。

ところが、逆に EV-0.3 でも露出オーバーで現像時にもう1/3 追加補正をかけた場合、表記としては EV-0.7 と書くべきか否か、である。


それとも単純に足し算引き算で、EV-0.3 & -0.3 で EV-0.6 なのだろうか?PLフィルタなんぞ使った場合、その期待する効果によって角度も変わり、結果的に露出に与える影響を考えだしたら頭が付いていかない。


もっとやっかいなのが、EV-0.3 のデータを現像時に EV+0.3 に補正しても EV±0 のデータと同じ写真にはならないし、EV±0 のデータを EV+0.3 に補正しても、撮影時の EV+0.3 とは微妙に異なるのである。したがって、オートブラケットで撮影された写真の場合、必ずしも補正量が適性であるからといって、素直にそれを採用しないことも多い。


ま、あくまでも撮影データなんだから、撮影した時のデータを書いときゃそれでいいや、と撮りあえず考えることにしている。撮影データなど、興味のない人にとってはどうでもいいことだが、自分にとっての記録としての意味合いで極力表記するよう努力してみることにする。(もちろん、すべての写真に対してというわけでもないし、面倒くさいと思ったらやらないけどね)


で、特段の断りの無い限り以下のローカルルールに従って記述することにした。


◎原則として撮影時のデータを表記する。

ISO 感度、絞値、シャッター速度、露出プログラム、撮影モード、ホワイトバランスなど
◎カラーモードを補足事項として表記する場合もある。
カラーモードは現像時に変更する場合があり、結果として写真に大きく反映する
◎露出補正値は、それが意味持つ写真を除いて省略する。
本来の補正量を考えるとなにかと面倒だし、フィルタなんぞ使おうもんなら、もうわけがわからんことになる
◎レンズデータに関しては、35mm 換算値を表記する。
DP Merrill シリーズの場合、機種で焦点距離は決まっているし、カメラ本体(≒撮像素子)と切り離して考える意味はない

一例を挙げると以下のようになるが、@以降が撮影データで最後のカラーモードのみ現像時に設定変更した、最終的なモノというパターンである。


SIGMA DP1 Merrill 28mm F2.8 @ISO200 f5.0 2.5sec PAE AWB Foveon Classic Blue

SIGMA DP3 Merrill 75mm F2.8 @ISO100 f5.6 1/250sec AAE AWB Landscape

当面、気が変わらない限りこのルールに従って表記します、という決意表明でした。



…ということで、ホントに来月もヒトツよろしく。
2013年07月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.08.30] 撮影データについて 〜より転載&加筆修正

2013年8月29日木曜日

デジタル時代のカメラの進化

懲りもせず、またもやカメネタである。

カメラがデジタルになった時、まだフィルムは今より元気だったし、デジアナ入り乱れてつい最近(といっても、6〜7年前かな)までは、玉石混交の時代を通ってきた。

現在主流のデジカメ撮像素子のサイズの元になった、APS (Advanced Photo System) というフィルムの規格も、昨年あたりに終演を迎えたようだ。

自身最後のフィルムカメラである、CONTAX T2 を買った頃にはまだ無かったが、その後の CONTAX Tix では採用された規格であり、いわゆるハーフサイズなフィルムを使用する。従来のフィルムに対して、数多くの便利な機能を持っていたが、昔から画質面でハーフサイズというのはあまりイメージが良くない。

オーディオ業界でいうLカセットみたいなもんで、どちらもさほど価格的なメリットが大きかったワケでもない点や、大ヒットしたわけではないところも、ちょっと似ているような気がする(いや、似てないか…)。しかし、DAT や Hi8(8mm)、MD よりもマイナーなイメージがあるから、やっぱLカセットだろう。

いまでこそ、35mm フルサイズデジカメもいろいろな種類が選べるようになってきたが、フィルム時代は積極的に選ばない限り、フルサイズが当たり前だった。APS も本当に画質面でデメリットがあったのかどうかは、使ったことがないので知らないが、たぶんイメージで損をしていたのだろう。

その点、デジカメはいきなり 35mm フルサイズからスタートしなくてよかったと思う。ま、高価すぎて営業政策的にムリがあるだろうが、進化の過程にある電子機器でもあり、サイズの問題は技術面でなんとかなるという目算も合ったに違いない。撮像面が小さくなったおかげで、レンズ設計は楽になり高画質をより低価格で実現できる結果にもなっていると思う。

かつて、カメラ、レンズ、フィルムという三位一体で写真撮影という趣味が成り立っていた時代には、フィルムの存在が永遠であるかのような前提が、暗黙のうちにあったはずだ。

もちろん、その先の DPE、フィルムの現像(development)焼き付け(printing)引き伸ばし(enlargement)をすることも、時代と人によっては趣味の延長であっただろう。今なら、RAW 現像、カラープリンタ(大判プリンタ)、大型モニタ観賞などがそれにあたる。

モノクロ時代はさておき、カラーフィルムになって以来この DPE に関する作業は人任せにせざるを得ない時代に比べると、現在はコンピュータのおかげでより個人的な趣味としての範囲が広がった。

トリミングやカラー調整などを始め、編集・加工・レタッチなど思いのままであるし、その結果をネットで公開することで、より多くの人の目に触れる機会を作ることは、今では比較的簡単にできる。

従来は、大きく引き伸ばしてパネルに設えたところで、せいぜい自室に飾るぐらいしかなかった個人趣味も、見てもらえるかどうかは別として披露する手段を得たことによるメリットは計り知れない。

しかし、そんなネットに公開された写真をわざわざプリントして見ることはない。よほどの写真好きでもないかぎり画面が最終的な結果であり、それが全てであると言っても過言ではあるまい。プロの撮ったリッパで素晴らしい写真でさえそうなんだから、他人のましてやアマチュアの写真をよほど気に入ったとしても、個人的には印刷まで持っていくことは少ない。

とはいっても、ネットで見かけてハードディスク上に保存されたお気に入り写真は、アマチュア作品と思しきモノが大半を占めるので、好きな写真に関しては、プロ/アマの明確な違いは無いように思う。強いて言えば、カタログなどの商業写真とそれ以外ぐらいの区別だが…。

にもかかわらず、未だにカメラメーカがプリントされることを前提にカメラを設計・製造していることに違和感を覚える。目前に拡がる広大な風景をL版にプリントして何が面白いのかわからない。

いや、それさえも個人の趣味だから別にケチをつけるつもりはないのだが…。たまに我家の駄猫たちをプリントしてみることもあるが、画質に対する優先順位は決して高くないし、動機はもっと別のところにある。

フィルムの存在が永遠ではないという事実が、カメラの存在に及ぼした影響と似たようモノは、他の業界でもそれほど珍しいことではない。

アナログオーディオの時代には、レコードに対してそれと同じような幻想を抱いていたからこそ、高価なカートリッジやトーンアームに大枚つぎ込んでいたのだと思う。

当時の写真に比べたら、現像の手間もなく手軽に見ることができるという理由でビデオに突っ走っていたころは、アナログテレビや NTSC が永遠に不動の規格であると信じていなけりゃ、やってられないほど熱くなっていた。

バカである。決して後悔はしていないが、やっぱりバカであるとしみじみ思う。

今ではもう装置が無いので再生もできない、VHS やベータ、8mm などのテープメディア。映画など画質の面で既に見る気は失せているし、いずれ再生もできなくなるであろう DVD や CD などのディスクメディア。音質や使い勝手の点で、未だにコンパクトディスクを完全に駆逐してしまうものはまだ無いようだが、もはや時間の問題であることは明白である。

買い散らかした大量のメディアを前にして、そんなことを考える。

デジタルになって、フィルムが撮像素子に置き換えられた時、それはカメラ本体と切り離しては考えられない存在となった。

将来、高画質化が一段落して規格化が進めば、撮像素子の交換などということもできるようになるかもしれない。しかし、光学機器というよりも電子機器として側面が占める割合が大きい現在のカメラ本体に、はたしてどこまで将来的な価値を見いだせるのかはいささか疑問だ。それは古いコンピュータが持つ価値と、たぶん大きく違わないだろう。

昨年、SIGMA DP Merrill シリーズが発表になり、現在は DP3 Merrill までの三台がラインナップされている。以前は、三兄弟全部買いなど到底考えられないことのように感じていたが、そんな所業でさえ真当に見えてしまうのは自分自身の価値観の変化だけでなく、時代の為せる業と言えよう。

少なくとも、カメラと撮像素子を一体のものと捉えるかぎり、レンズとカメラの関係は、以前と同じではなくなっている。過去フィルムの品質向上に努めてきた努力の歴史が、デジカメの登場によりある意味リセットされた現在、デジカメの進化は未だ道半ばであり、まだまだ画質の向上に努めるべき時期にある。

高性能で高価な交換レンズを所有したところで、その性能に見合う撮像素子を持ったカメラに、その進化の過程で巡り合う可能性はそれほど高くないし、第一線で使用できるのはそれほど長い期間でもない。一瞬のタイミング、と言ってもいいくらいである。

実際、野外で撮影している時にレンズ交換ほど面倒なものはない。天候が悪けりゃなおさらで、ボディを交換した方が早いし、シャッターチャンスの面でも有利である。環境が許せば、2〜3台並べて撮る方が遙かに楽で、精神的にも落ち着いて撮影に専念できる。

三脚などの比較的製品寿命の長い写真機材と異なり、電子機器としてのデジカメの進化は想像以上に早い。3年も経てば、古い機種の写真はかなり見劣りする。

2〜3台並べて撮るとしても、あまり世代がかけ離れた組合わせは現実的でないことを考慮すれば、レンズと撮像素子が最適化された同世代の Merrill 三兄弟など、現時点では理想的な存在である。(ま、DP2 Merrill はまだ持ってませんがね)

そんな時代に、ありもしない将来を見越して投資するほどバカなことはない。明日は来るとは限らないし、明るい日である保証はないのだから、フォーカスポイントをあまり遠くに置いてもしかたがない。ことデジタルに関しては、今がよけりゃいいんである。

姑息なキリギリスの生涯こそが最も理想的な生き方(逝き方)に違いない、と確信する今日この頃。


…ということで、ヒトツよろしく。
2013年08月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.08.29] デジタル時代のカメラの進化 〜より転載&加筆修正

2013年8月3日土曜日

三脚のことなど…、その後(2)

とりあえず、マンフロットの三脚については概ね良好である、と結論づけた。

この手の製品に関して、絶対的な基準を持ち合わせているわけもないし、なにせ比較対象が色々な面でアレなだけに、大枚はたいたんだから良くて当たり前。ま、こんなもんだろうというのが、正直な感想である。

どのようなジャンルの製品にも言えることだが、トータルバランスで評価しないとその本来の価値は見えてこない。

シスコンよりバラコン、プリメインよりセパレートというのが、オーディオ製品に対して盲信されていた(そして盲信していた)時代もあったことだし、その是非はともかく趣味人が必ず通ってみる道程のようなものである。

これは、ある意味自身に対する戒めでもあるが、何かに嵌まると価値観が大きく変わることもある。

以前は高いと感じていたモノが、いつのまにかさほどでもないように見えたり、およそ買える訳ないと思っていたモノに対して、気がついたら何かと口実を探していたりと、モノの値段ほど曖昧なものはない。そのことによって、一つステップが上がったような気がするものだが、あとから冷静になって考えると、往々にして只の勘違いであることも少なくない。

お目が高いという言葉があるが、商売人から言われた場合は、まず疑ってかかる必要がある。

ただ単に、高い場所から見れば同じ高さ(値段)も低く(安く)見えるという物理的な結果に過ぎず、物事の本質を鋭く見抜く力である、炯眼(けいがん)とか慧眼(えげん)とは別の意味であること多い。

ましてや、煽てられて幻の階段に登っていることに気付かなければ(または、気付きたくなければ)、受け入れるしかない。それによって、節穴に少しでも眼力が備わるなら、それは授業料である。

「五十を過ぎた男が何かに嵌るとしたら、それは収穫と考えねばならぬ事態である」とは、小田嶋隆の著書にあった言葉だが、そんな事態にあと何回遭遇できるかを考えると、今しばらくハマり続けてみようと思う。

ただ、バランスを崩して階段を転がり落ちないようにと、常々肝に銘じておこう。

[2013.08.09, 16] 追記・補足:Update

閑話休題(前フリが長いのは、もはや定番となっている)

しかし、雲台の値段というのも不可解であるが、デジモノと違い簡単に複製が出来ないこともあって、iTunes Store で購入(使用許諾権?)するモノよりは、なんとなく満足感が得られるような気がするものだ。

富裕層向けのアルカや RRS はほっといて、多少は庶民的に見える中華の製品について書いてみる。

今回選定したのは、サンウェイフォト(Sunwayfoto)とシルイ(SIRUI)である。

ネットで眺めるのはタダとばかりに、良く覗いてウィンドウショッピングしていた RRS のサイトには、あらゆる機種に対応した L型プレートというのがある。SIGMA DP 用にもグリップまで装着できる BDP2 Set というのがあり、当初はアルカ互換のクイックシューというより、グリップ取付用金具ぐらいにしか見ていなかった。

現地価格の $180 という金額もちょっと高いが、なぜか邦貨で4万円近い価格と選択の余地などないひどく限られた流通状況から、アマゾンで取扱いのあった UNX-9121 へと導かれたことは自然の流れであったように思う。(BDP2 Set の現地価格に比べても半値以下だし)

最初の DP3 Merrill 購入前は三脚必修という要件に対して、三脚ならあるぞという認識であったのだから、致し方あるまい。要するに底面に穴さえ空いてりゃ、それで良かったんである。ただ、今となってはアルカ互換になるよう、ちょっと削っといてくれりゃ良かったのにと思わざるを得ない。しかし、それをすると値段は倍以上になるのだろうか?

その後導入した、手持ち撮影がメインの DP1 Merrill は、その画角(換算 28mm)から手振れによる許容範囲も DP3 Merrill ほど了見の狭いことを言わなかったので、ハクバの扱う Flipbac FBG4 という黒いケシゴムみたいな、貼付けグリップで当座は凌げたのである。

しかし、三脚を使用することが多い DP3 Merrill では、E-410/E-620 当時にはさほど気にならなかったお勤め品の使用(仕様?)上の制限が、日々どんどん不満の種として蓄積され、いつ爆発してもおかしくないほどにその圧力を高めつつあった。

一般的に、低価格な三脚には 3WAY 雲台と呼ばれるようなモノが、脚とは分離不可能な形式で取付けられているのだが、パンやチルトではその操作感に不満はあるものの、とりあえず機能はしていた。しかし、ローテイト(縦横の切替え)時には少なからずとまどう。ベルボンは左へスリックは右へと、メーカによって回転方向が違うのである。

これはあくまでも手持ちの場合だが、縦位置撮影の場合右回転だとシャッターが右下に来てしまい、押しにくいだけでなく安定しない。左手でカメラの重量を支えつつ、右手を添えるようにして軽いタッチでシャッターを押さないとブレやすくなる。また、かつての光学ファインダを右目で覗いた場合だと左目の視野が遮られ、直視での比較確認もしにくいので、左回転が基本と親父に教えられたように思う。

だいたい、縦位置グリップやL型プレートで、右側を下にした製品は見たことがないが、カメラの形状や使われ方も時代とともに変わってきているので、最近では必ずしも左回転が絶対的なものではないのかもしれない。

ただ、昔から慣れた方向に統一したいのも人情であり、両者を揃えようと思えば、スリックの場合パン棒(と呼んでいいのか)はカメラ前方に位置することとなり、もともと邪魔な角でしかないものが、見た目も滑稽な絵図を展開するのであった。

加えて、当たり前だがローテイトはレンズを中心に行われるわけではないので、画角の中心を合わせようとすれば、三脚本体を移動する必要がある。持ち上げたら途端に、ユルくヒワヒワの脚は閉じてしまい、再度設置する作業も高級品を使用している連中から見れば、爆笑モノであるに違いない。

もともと水平もいい加減に立てて、カメラ側で適当に水平を出しておきながら文句も言えないのだが、当然パンすればズレるわけで再度調整という繰り返しである。仮になにかの拍子に三脚側の水平がバッチリ出たとしても、超軽量が信条のお勤め品ちょっと触れただけで全体が動いてしまうこともしばしばであり、そんな労力もいとも簡単に水泡に帰するのである。(最悪コケるしな)

そんなわけで、グリップも捨て難いができればL型プレートもセットで安けりゃ嬉しいな、と都合の良いことを考えていた矢先に、サンウェイフォトから、アルカスイス規格互換の PML-DP が発売された次第で、渡りに船とはこのことである。

価格も一応想定内の9千円前後と、価値基準を普段の生活に戻せばたやすく容認できるものではないが、すでに基準は UNX-9121 に移行しているのだから、何も止める要素は存在しない。

となれば、当然雲台についてもアルカ互換に向かって一直線である。

一応、サンウェイフォトにもボール雲台は数多くラインナップされているので比較対象としたが、アルカスイスを意識するあまりその精度と同様に価格まで上昇したかのようである。メイド・イン・チャイナに対するこちらの認識と大きく乖離した価格から、選択には至らなかったが、同じ中華のシルイの製品に付けられた価格には、その感覚近いものがあった。

安いんだから、ある程度のネガティブな面を受け入れることにさほど抵抗はなかったが、その品質は意外にも良好なものであった。

およそ同価格にある製品といえば、三脚で選択したマンフロットの製品群にも、最下線を設定以前にピックアップしていたものがいくつかある。しかし、色々と条件を付けていく過程で脱落していくものも多く、ぜってぇ譲れねえ線といいながら、一時は条件の緩和も検討したぐらいである。

SIGMA DP シリーズに見合う製品で言えば、ラピッドコネクトを装備する Manfrotto 496RC2 あたりが価格も安く1万円を切っていることから、真当な選択ではあろうが、独立パン機能を考えるとより上位の Manfrotto 498RC2 でないと条件を満たせない。そのサイズと重量は 496RC2 の高さ 10cm(420g)から、12.5cm(610g)と一回り以上に肥大化してしまう。

その点、シルイには G シリーズと、より上位の K シリーズの2つのラインナップがあり、それぞれ G-10/20、K-10/20/30/40 という、用途に合わせて松竹梅どころではない、まことにきめ細かな選択が可能となっている。おまけに、後述の一脚用に L-10 というどこかで見たような、なんちゃって版的な製品も取揃えて、一部のスキもない商品群である。

サンウェイフォトにも、DT-01D50 という一脚用雲台があり、如何にも RRS MH-01 をパチったような L-10 より、デザインはマシに見える製品があるのだが、いかんせんシルイの倍近い価格なんで諦めた。あまり一脚に雲台という感覚は持ち合わせていなかったんだが、たしかにチルトやローテイト方向に向きが変われば、便利かも知れないという欲も出てきた。実際L型プレートと併用すると、バラエティに富んだ撮影スタイルが可能になるはずだ。

今迄は、DP3 Merrill を三脚に据えてじっくり風景を切り撮る合間に、DP1 Merrill の広角でその場の全体像を手持ちで収める、というのがお決まりのスタイルであった。しかし、天候が悪化したり、端から雨天覚悟で出掛けた時などは、19mm(換算 28mm)でも手振れが気になる、低速シャッターを余儀なくされることも多い。

そんな時は、気休めに ISO200 までは上げてみたりもするのだが、なにせ高感度は呆れるほど苦手とする SIGMA DP である。モノよってはモノクロに逃げるという手もあるが、そんな安易な考え方ではロクな写真にならないことは分かり切っている。

カラーに比べて、明暗だけで勝負するモノクロ写真には被写体にパワーが必要だという意見もあるが、それ以上に撮影者の気合いが必要とされているような気がする。

酸っぱい臭いの押入れ現像所が懐かしい昔は、モノクロが当たり前というかそれしか無い、で撮っていたはずなんだが、そのへんのところは未だによく判らんのである。

そのように環境や撮影条件が悪くなったら、三脚を使えということになるんだが、手持ちのフットワークも出来れば失いたくない。ましてや、広角のためにもうひとつ三脚を持参するもの、体力に限界が来つつある身にはツライものある。

そんなわけで一脚、それもカーボンで携帯には軽く短く(縮長 38cm/419g)。しかも全伸高 154cm と十分な高さを確保できる SIRUI P-326 である。脚としての高級感はマンフロットより上であり、その精度と強度にも十分以上に満足できるもので、ムダに伸ばしたり縮めたりが癖になりそうで怖いぐらいだ。

DP1 Merrill には、L型プレート(Sunwayfoto  PML-DP)を奢ったので、雲台(L-10)との組合わせにより自在な設定が可能である。

クイックシュー対応機能の製品であるにもかかわらず、底面/側面ともに細ネジ(UNC 1/4 インチ)用の穴があけられており、シュープレート等に異常があった場合を想定して、ダイレクトな取付けにも対応している。

このあたりも、RRS などには見られない、中華製品ならではのサービス精神の現れであろう。(パチモノには、本物以上により上を目指す気概がある、と貝木泥舟も言っているしな)

しかし、L型プレートとしての機能には不満もない PML-DP だが、グリップに関してはイマイチである。UNX-9121 に比べると、グリップ部分の前方への出っ張りが少く縦方向にも短いので、ちょっと頼りない。あくまでも比較であるが、小指がかかるかかからないかで、安心感が大きく違うものだ。

プレート部分からグリップに至るステーがそのまま真直ぐ太いまま伸ばせば良いものを、変に凝ってボディラインに沿わせるデザインにしたものだから、強く握ると若干たわむのである。全金属製で、普通の使用では強度的に問題はないのだろうが、感覚的には違和感を覚える。(ステアリング強度が不足気味の車で、峠を攻めた時に感じるアノ微妙な感覚って、却って判りずれえだけだな)

また、UNX-9121 はカメラ本体に傷が入らぬようにという配慮から、グリップ裏側にナイロンテープのようなシートが貼付けられているが、PML-DP の裏側は黒塗装のアルミがむき出しである。この点は、サービス不足であり少しは日本製品からもパチッて見習って欲しいものだ。(保護シートの類いに関しては、日本は少し過剰な気もするが)

正しく取付ければ、本体との間に微妙な隙間ができるので接触しない設計なのだろうが、それはあくまでも静的な仕様である。動的には握るとたわむヤワな構造なので、SIGMA のロゴあたりに接触することがある。したがって、ユーザレベルでなんらかの対策は必要だろう。といっても、せいぜいウラ側にセロテープでも貼れば済む程度の問題だが。

Flipbac FBG4 を購入前には、貼付けグリップもいろいろと物色し、一時はアルミ製の高級グリップも検討した。しかし、SIGMA のロゴを完全に隠してしまうデザインなので、却下した経緯がある。

個人的には、メーカロゴが半分隠れてしまうような PML-DP の中途半端なデザインの方が気になる。それも、SIG が隠れて MA だけが見えるのは、如何なものかと思う。メーカロゴに対するサードパーティの配慮の無さに腹を立てるのは、マックユーザだけなのかもしれないが。

RRS BDP2 Set のリッパ過ぎるグリップまでパチって無駄にコストを上げる必要もないと思うが、せめてステーをもう少し太くして下に1cm 程度下げれば使い安くなっただろう。 いずれにしても、サンウェフォトがグリップはオマケ程度にしか考えていないのが、ミエミエな仕様である。

ま、そのおかげでメモリやバッテリーの交換は楽である。周りが囲まれたようになって、強度の点では全く問題の無い UNX-9121 だが、バッテリー交換頻度の高い SIGMA DP ではそれが邪魔になり結構なストレスにもなる。

したがって、現状ではアルカ互換のL型プレートでオマケにグリップも付いて、というトータル機能を考えれば、PML-DP を選ばざるを得ない。グリップ重視の DP3 Merrill でも一脚の使用が増えるようであれば、いずれ追加ということになるかも知れないが、改良版の登場を期待したい。

L-10 については、従来 1WAY 雲台を使ったことが無いので微妙であるが、決して握りやすい形状とは言えない。機能としては、こんなもんだろうと思うが、質感はハッキリ言って過剰なぐらいシッカリしている。チルト雲台なんぞ、クイックシューなどと贅沢を言わなければ、安いモノは2千円程度で幾らでもあるが、一様に使用感はイマイチというものが多い。

たぶん、プラス5千円ぐらいのメリットはあったに違いないと思うし、見た目がカッコイイというだけで、Sunwayfoto DT-01D50 にそのまた倍の対価を払う度胸はない。

L-10 を使って不便に感じるのは、トッププレートの取付方向が固定なのでL型プレートと併用するとチルト方向に対して平行にしか装着できない。これだと縦横の切替えは可能だが、ちょい上向きとか下向きにするためには、一脚自体を傾けなければならないことだ。

もちろん、普通のクイックシューを利用すればシュー自体の取付け角度を90度回して対応できるが、少々面倒だしL型プレートとの2段重ねはあまりにもブサイクである。価格の面から全くクラス違いだし、用途が異なるかもしれないが Acratech Long Lens Head のように、トッププレートが簡単に回転できたら完璧だろう。(Sunwayfoto DT-01D50 もヘキサレンチがあれば可能だが、簡単ではない)

ただ、クイックシューにも対応しない安価なチルトトップなどを使えば、いとも簡単に出来てしまうことであり(だって締込むときに適当な向きを選ぶだけだし)、だいたいカメラを外してシューの方向を変えるヒマがあったら、チルトトップにねじ込んだ方が早い。いっそ素直に小型でフル機能のボール雲台を付けてしまう方が、近道だったりする。

一脚での使用には、1WAY 雲台が最適という固定観念に囚われすぎた結果かもしれないが、もう少しその辺は探って見る必要はあるだろう。まだ、特殊な使い方は試していないが、DP1 Merrill + Sunwayfoto  PML-DP + L-10 + P-326 には、今後色々なアングルに挑戦してみようと考えている。

で、本題の SIRUI K-20X である。

当然のことながら、家電量販のデジカメコーナーにも並んでいる、国産のお勤め品などとは比較にならない高級感はある。もちろん、ベルボンやスリックにも高級品はあるんだろうが、注文して取り寄せるほどの気合いは入らない。

残念ながら、田舎町ではアルカはおろかマーキンスさえも目視で発見するのはたぶん不可能であり、やっと見かけた Manfrotto 496 や 498 より、マグでハイドロな 468MGR よりも、見ためだけなら精密感に溢れる外観である。

ネットの写真で見ると、ノブの表面がかなりケバい青色に見えるが、実際はちょっとメタリックなライトブルーである。角度によっては上品にも下品にも見える、微妙なバランスではないかと思うが、嫌いではない。

190CXPRO3 とは太ネジ(UNC 3/8 インチ)を介して取付けられる。若干頭デッカチな感はあるが、小振りな SIGMA DP を載せるとそれがかえってどっしりとした安定感があるように見える。クイックプレート上面と側面にも水準器が備わっており、サイドは水平と垂直に対応した二本のチューブを無理やり詰め込んだサービス満点なプレートである。

実際、縦用は短過ぎて無いよりマシという程度だが、なによりこのサービス精神が大事だと思うな。(今回は特別にアレもコレもお付けして、というテレビショッピングがあると聞いたが、よくは知らない)

ノブによる締付は、レバーに比べるとちょっと手間だが、シッカリ締めたという感覚が得られるので、こちらの方が好みである。標準添付のシューは、TY-60(60×49×10.8mm)という長編方向が 60mm のタイプが付属している。ちなみに、L-10 も同じ TY-60 であり短編の取付部分は 39mm で、規格なんで当たり前だが Sunwayfoto  PML-DP と同様であり、付替える場合も同じ開度で相互に行えるので楽である。

この当たり前のことが、オラが規格のシューを採用している雲台では、なかなかスムーズに行かずストレスの原因となる。三脚を換える度に、シューを付替えていたのではクイックシューとは言えないだろう。(ま、色々と大人の事情もあるのだろうが、そんなもんに付き合ってはいられない)

最初にアマゾンで注文した K-20X には、国内では流通していないはずの、TY-50X が付属していた。長編が 50mm と短いだけの TY-50 と異なり、ストッパーのツメもなく取付けネジはコインがないと手締め出来ないタイプであり、使い勝手は良くない。シルイのホームページでも確認したが TY-50X の記述はなく、再度アマゾンの商品説明の欄を見てもやはり TY-60 と明記されている。

追記:08/09
*8月上旬より販売が始まった新しいGXシリーズには、TY-50、60 に換えてこの TY-50X が付属品となり、別売部品としても流通が開始されるもよう。 また、上位のKXシリーズは従来通り、ストッパーと手締めが可能なリングのついた TY-50、60、70 が付属。今回の付属品に関する手違いが、新しいGXシリーズとどう関係したのかは全く不明。

アマゾンに一応文句を言ってみたら、(これはナイショの話だが)ラッキーなことに別売部品として売られている TY-60 を無料で頂けることになったので、個人的にはこの件はマイナス評価とはならない。

このツッコミのせいで、K-20X は調査のためとして、7月中旬頃しばらくの間販売停止となっていた。卸元の手違いであったことが後に報告されたが、卸がヌルけりゃ売りでカバーするという、かつては対面の店頭販売に期待されていたメリットだったんだが、今は昔だな。

赤字でも頑張るアマゾンはエライ、というちょっと PR な余談である。(実際の経緯はもうちょい複雑だが…、でも事実だからね)

肝心の K-20X(ボール径:38mm)であるが、 このサイズは SIGMA DP には十分過ぎる大きさであり、実際もっと安けりゃ K-10X(ボール径:33mm)でもよかった気がする。

その動きはなかなかスムーズであり、テンションの調節がメインダイアルの中に埋め込まれている定番のデザインである。一度決めたら他そう頻繁に調整するわけでもないので、別のノブで行うGシリーズや、似たような価格の Manfrotto 498RC2 などより使い勝手が良いように思う。また、重量も約400g と軽く 600g 越えの 498RC2 の2/3以下というのもメリットになるだろう。

前回、190CXPRO3 の開脚抵抗が結構大きいことを書いたが、運用面ではカメラを付けたままセンターポール下端を持ち上げてちょっと移動する時などはこれがメリットにもなるので、やはりトータルで検証しないと評価は難しい。

また、購入前の予想通り、やはり独立したパン機能は正解であった。

自由雲台というぐらいだから、自由に動くモノになんでパンが必要かと思われるかも知れないが、チルトに比べると水平方向のフレーミングはわりと頻繁に変えるので、一度出した水平を崩したくないというのが主な理由である。

そうなると、三脚レベルで水平を出さなくてもいいレベリングベースに物欲が湧いてしまうのが、欠点といえるかもしれない。(とにかく水平出すの苦手なんで、そのせいでボツにした写真は多い。たまに iPhone の水準器もあててみたりもするが、イマイチなんでシグマには是非次期機種では、電子水準器を内蔵して欲しい)

相対的な比較はできないが、水平方向にもヌルっとした滑らかさと抵抗をもって回頭できる。ただし、ボール部分のようなフリクションのコントロールまでは出来ないので、あくまでも水平での回転が前提であり、極端に角度を変えた場合は注意が必要である。

この極端に角度を変えた場合が、実はもう一つの理由。

Manfrotto 190CXPRO3 のように、センターポールを横向きにして使用する時は、通常のセット方向だとカメラは縦位置に変わる。この状態でボール雲台の機能を利用して横向きに変更するのだが、そのためには一ヶ所だけ90度に対応した切り欠き部分で起こすことになる。だが、パン機能のないボール雲台では、その切り欠き部分が自分の思う方向にあるとは限らないのである。

通常の垂直で使用している時なら、センターポールを回転させれば問題はないが、アングルを横向きにした時は、センターポールの回転機能は戦車の砲塔のような動きに限定されるので、雲台側で対応しないと、思いどおりのアングルに変更できない。

この場合に、独立したパン機能があると(チルト方向に)自由な角度でセットできるが、前述のようにフリクションは効かない。ちょっとユルメただけでカックンとお辞儀をしてしまうから、あくまでも特殊な使い方になるのかもしれない。

ま、欲を言えばキリがないものであるが、一応、必要な機能はある程度の高いレベルで、実現している組合わせではないかと思う。

実用本位の低価格重視も、一点豪華主義も個人の好みであるが、道具がお粗末だと撮影に対するモチベーションは上がらないし、さりとて限られた予算内で限り無い物欲とどう折合いをつけるか、物事ハマると悩ましい限りである。

そういう点において、なかなか魅せる SIRUI K シリーズ。少なくとも個人的には、精度や使い勝手と価格のバランスに対して、新たな基準が出来たように思う。

全体のバランスとしては、トップのカメラが軽いおかげで非常に安定したもので、以前のそよ風が吹いても…、という状況には遭遇しない。ただ、天気は良くても雲があれば光の加減なんぞ毎分毎秒変化するし、一時風が止むのを待ってシャッターを切るという精神的な余裕も、風景撮影では必要だろう。

じっくり構えて撮るしかない SIGMA DP には、その高画質に見合う少し過剰なぐらいの撮影機材があったほうが、その楽しみも倍増するというものだ。



…ということで、今月もヒトツよろしく。
2013年08月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.08.03] 三脚のことなど…、その後(2) 〜より転載&加筆修正