2014年4月29日火曜日

鉄撮りの練習:其の六(山陽本線熊山)

総集編に時間を取られて、先月からの鉄道写真が溜まってしまった。

こちらも前回と同様に、あまり鮮度が落ちる前に晒しておこう。

鉄撮りの練習も、回を重ねること六回目にもなると、まるで練習の成果が出ていないのでは意味がない。

そろそろ、イマイチシリーズばかりではまずかろうとは思っているので、多少は上達したところも披露したいのは山々なれど、無い袖は振れないのだ。

ま、それでも撮影条件が良ければどんなヘタクソが撮ってもこれぐらいにはなる、という程度のモノは撮れているような気がする。

未だ、ドヤ顔で晒せるようなものは無いので撮り合えず、鉄撮りの練習ちょっとはマシになったかなシリーズ、の前座である。

なにせ、楽隠居ができる身でもない。そうそう撮影のために遠征もできないが、足腰に無理がきかなくなる前に一度は遠方にも出掛けてみたいとは、常々考えている。

少しでも絵的にマシになればと思い、いろいろなロケーションを探索しているが、出来れば近場で済まそうとする横着心も邪魔をして、それなりの景観で妥協することも多い。

また、あまり多くの機材を持ち出しても設置や撤収のことを考えると、つい必要最低限で済ませる方法を画策してしまう。最近、SLIK 500G-7 の出番が多いのは、そんなことも原因となっていると思う。

体力の衰えとともに、難行苦行の類いは出来れば避けたい。そのため、フルセットが活躍できるのは、車からそう離れていない場所に、落ち着いて陣取れる場所が見つかった場合など、かなり甘えたシチュエーションに限られる。

そんなわけで、今回訪れたのは一連の鉄撮りシリーズを始めるきっかけとなった、最初のサンライズエクスプレスの撮影場所である、熊山〜和気間の線路脇だ。

キリンビール岡山工場のある万富駅の隣、熊山駅から1〜2キロ和気寄りにある、見晴らしの良い直線区間、というよりカントもついた長いS字区間である。

この日は、総集編の物撮り用にオリンパス E-620 & SLIK 500G-7 も持参した。SIGMA DP Merrill シリーズでは撮れない、80mm 以上の画角のテストも兼ねている。

だが、いつものポジションから望遠ズームの望遠端 150mm(換算:300mm)で何枚か撮ってみたものの、電柱の間隔がより詰まってしまうだけで、あまり芳しいものではない。

列車に集中した写真には良いのかもしれないが、もう少し被写体までの距離がとれる場所からでないと、風景写真としては成り立たない。せめて、俯瞰で撮れる高さまで上がれば、少しは電柱も目立たなくなるのだろうが、残念ながら羽が生えているわけでもない。

空にはトンビが、そんな苦労をあざ笑うかのように優雅に舞っている。あいつの視点なら、この場所はさぞや良い景観に見えるだろうに。

おい、これ貸してやるから、その場所からちょっと代わりに撮ってきてはくれまいか、などと考えながらトンビの写真を撮っているうちに、ふと線路の南側にある山の斜面が目についた。

あそこまで上がれば、何とかなるかもしれないと思い、線路をくぐって通っている細い通路の先まで行ってみる。斜面に近い場所は、どこも2mほどの急な石垣になっていて、脚立でも持ってこない限り登れそうもない。

少し上の方にも、何段かの石垣が積まれており、なんとなく獣道的な踏み均したような跡が見えるが、問題はそこまで到達する手段がない。とても、カメラ3台と機材一式を担いで上がる根性も体力もないので、諦めて帰りかけた。

線路に近い場所まで戻ってみると、石垣が切れているところに、土砂崩れになりかけたような場所がある。伸び放題の雑草に囲まれているが、姿勢を低くすれば登れないこともなさそうだ。

よしよし、ちょこっとチャレンジしてみるかと考え、車まで戻って準備にかかる。

あそこからの距離なら望遠でもイケるだろうし、ズームなら画角はどうとでもなる。撮り合えず、ロケハンということで SLIK 500G-7 に ZUIKO Digital 40-150mm/f4.0-5.6 を付けた E-620 を取付たまま、せめて片手だけでも自由になる態勢でアタックをかけたのである。

だんだんと陽気は良くなってきたとはいえ、まだそれほど汗ばむ季節でもない。だが、ほんの5m も上がったところで、すでに汗だくになっている。途中で何度となく休憩をはさみながら、やっとの思いで少し開けた場所にヘタリ込んだのだ。

息が整うのを待って辺りを見回してみると、何とか周りの枝に邪魔されないポジションも取れそうだ。しかし、ファインダを覗く姿勢にはちと無理があり、三脚の真横の斜面に並んで座る態勢しかとれない。

三脚をセットして E-620 の液晶を外側に開いた状態で、ライブビューで確認する。こんな時はバリアングル液晶が便利だが、日差しがけっこう強いので、目を凝らさないとよく見えないのが難点である。

上がってみると、たしかに低い位置から浅い角度で見た印象よりはマシだが、土手を走る県道395号線が意外と目立ってしまい、おまけに日中の交通量はけっこう多い。

ま、日の出前からここまで登って待機するような、さしずめスナイパーみたいな根性があれば、サンライズエクスプレス相手にそれなりの絵も期待できるかもしれないが、…。

しばらく、通過するローカル列車をいくつか撮ってみたが、いまひとつ様になっていない雰囲気が、撮影時点でもわかる。当然、帰宅後にも確認してみたが、その印象は大きく変わることはなかった。

折角ここまで来たのだから、ついでに iPhone による動画も撮ってみるが、所詮手持ちでしかないので、手振れ補正があってもあまり安定しない。例によって、片手で iPhone 片手で E-620 の欲張りモードである。

それでも、幾つかの確認事項は達成できたので、引上げることにした。カメラを載せたまま三脚を畳み、肩に担ぐようにして降り始めたのだ。雑草の少ない所を選んで降りようとするが、小石の多い急坂なので幾度も足を取られそうになる。

途中、ついに足を滑らせ転がっていた岩にしこたま左肘を打ち付けたが、何とかカメラへの被害は及ばずに済んだ。登って来た道(という程のモノは無いが)を戻ったつもりが、知らず知らずの内に石垣のある方へ出てしまった。

ま、上がるのは無理でも降りる位は何とかなろうと思い、石と石の隙間に足をかけようと上から見下ろすと、なんと杭が打ち込んである所が何箇所かある。その杭も、よく見るとかつて線路を枕木に止めるのに使用した、鉄杭ではないかと思われる。

いかにも、鉄オタがやりそうな所業に、そういうことかと笑ってしまった。ここから、どうぞお登りくださいということなのだろう。誰しも考えることは、同じだな。

車に戻って撤収の準備を始めたが、肘の痛みが激しくなってきたので、袖をまくってみると僅かに出血している。なぜか、血を見ると痛みも増したように感じるもので、帰り道はシフトアップ・シフトダウンのたびに左肘に激痛が走る。

しかし、痛みに耐え帰路につきながらも頭に浮かぶのは、もっとコンパクトで軽い三脚と小型の雲台の必要性や、DP Merrill 3台がキッチリ収まるバックパックのことなど、新たな機材導入の口実を探している始末だ。

やっぱこの手の撮影には、膝当てや肘当てなど、通常の撮影機材以外の装備も必要になるなあ、などととんでもないことを考えていたのである。(二度とやらないけどね〜)

とまあ、労多くして実り少ない難行苦行に終わった、春の午後でした。


…ということで、来月もヒトツよろしく。
2014年04月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.04.29] 鉄撮りの練習:其の六 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

2014年4月24日木曜日

4月の定点観測

四月も半ばを過ぎると、陽気も良くなり写真撮影も楽になってくる。

定点観測に向かう途中の田んぼや、畑の周りにもさまざまな花が咲いているが、草花に関してはまるで疎いので、ただ撮ってみただけの写真も多い。

被写体に対して少しは興味がないとコメントし辛いし、不作法な写真に加えて的外れな論評で恥の上塗りは避けたい、という気持ちもある。

せめて絵的に様になっていれば、この一枚といった感じでさりげなく撮影データだけ添えて晒すものカッコいいと思うが、中々そうもいかない。

ぶっちゃけ、植物に関してはそれが様になっているのかどうかさえも、分からないのである。

となれば、事のついでにどさくさ紛れで、まとめて放出するしかない。毎度お馴染のイマイチシリーズ、賞味期限切れの在庫一掃処分とキリンビール4月号だ。

機材関係の総集編を何とかまとめてみたものの、後になってアレはまずかったな、コレも書けば良かったな、などと悔やむことも多い。

物撮りの練習もかねて、現有機材の撮影をしている最中に思い立ったことや、再調整の必要を感じたことなどもあって、幾つかは訂正や補足をしたものもある。

機材の現場検証を主な目的として、たまたま選んだのがこのビール工場である。

岡山から国道2号線を東に25km、備前大橋手前から県道252号線に入り、北へ向かう。大内浄水場を過ぎて吉井川沿いにしばらく行くと、田んぼの真ん中に唐突にそびえ立つ多くのタンクとともに、KIRIN の赤い看板が見えてくる。

山々を背景に、白いタンクと赤い看板の目にも鮮やかなコントラストは、この辺りではどこからでも目立ち、ランドマークのようになっている。

その景観は、東に流れる吉井川の土手まで含めば、視野角も120°以上が得られ工場まで 500m 程ある南に拡がる田園風景と相まって、被写体としても十分な距離がとれる。また、その間には視界を遮るモノも少ない。

ま、といっても鉄塔や電柱、電線にはまったく不自由しないのだが、…。

それでも、水平確認にはまことに好都合であり、あまり人目につかない所に機材を展開できるスペースもあって、そこそこ落ち着いた撮影にも向くという、好条件にも恵まれている。

途中には、紅葉を期待して訪れた三谷公園や金剛童子、目先を変えるために不定点観測と称して登った、そして体力の衰えを痛感させられた、三谷山(瀬戸町森林公園)などもある。

また、鉄撮りの練習にはお誂向きな、山陽本線吉井川橋梁(曲がった鉄橋として有名ならしい)や、少し東に足を延ばせば熊山のサンライズエクスプレス(ばかりとは限らないが)撮影スポットなど。

これら全てが、万富駅周辺の半径5km以内にあって、お手軽な割に様々な被写体に遭遇できる、たいへん美味しい地域でもある。まだまだ探せば、興味の対象もいろいろと増えるかもしれない。

岡山県には、国が管理する一級河川と呼ばれる川が三本あり、東から吉井川、旭川、高梁川と並んでいる。

住んでいる場所に、一番近いのは真ん中の旭川だが、県南では街の中心部を流れているため、その支流であるところの百間川も含めて、撮影場所としてはどうしても避けてしまう。

西の高梁川には、川に沿って伯備線も通っているので、県北に向かえば景観の良い撮影スポットも多い。だが、移動距離もぱないので、出掛けるにはそれなりの気合と準備が必要になる。

その点、最も親しみ深いのは吉井川であり、仕事の都合もあって訪れる機会は多い。

適度な田舎の風景もありながら交通の便も良いので、西の高梁川より有利だ。岡山から西へ向かうと信号だらけで、あれをバイパスと呼ぶのは如何なものかと思う2号線も、東方向へは西大寺付近まで信号も無い。

運が良ければ、岡山市内からほんの30〜40分程度で訪れることもできる。ぶっちゃけ、河原で焼肉やバーベキューなどという、ありがちなシチュエーションはやっぱ吉井川に限る、と常々思っている。

赤穂線も通る、南部の河口付近に位置する西大寺や(エクスランの工場はこの辺り)、北東に向かって万富、熊山、和気と小さな町が点在する沿線では、人や交通量も多い岡山市内とは異なり、落ち着いた風景も期待できる。

和気から山陽本線に沿った支流の金剛川、かつてオートキャンプ場やサーキット目当てに通った八塔寺川、未だ訪れたことはないので論評はできない日笠川など、いっぺん行ってみにゃあ、と思う場所も少なくない。

ま、別に観光案内などするつもりは毛頭ないので、それに関連した写真を撮った和気でも熊山でもないが。(←極々、ローカルな駄洒落)

いずれそのうち、川沿いの景観を集めて、川シリーズというのでもやってみるかな。


…ということで、ヒトツよろしく。
2014年04月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.04.24] 4月の定点観測 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

2014年4月15日火曜日

自由への回帰:段落〜終章にかえて

最終的なコストパフォーマンスは、必ずしもコストだけでは向上しない。

それは、何も写真機材に限ったことではない。

仮に、45g×3 パックと 30g×3 パックのひきわり納豆が同じ値段であったとすれば、多い方がお得であることは誰の目にも分かる。コストが同じでも、パフォーマンスで勝るからだ。

ところが、30g×3 パックに、今だけ一個オマケしてお値段据置のお買い得、と言われりゃ一瞬迷う。店頭では、内容量よりパックの数の方が圧倒的に目立つし、期間限定は客を誑かす常套手段である。

また容量表示が、重さではなく個数表示であったりすると、一個当たりの内容量を減らしても決して値上げとは認めないし、増税を機に税込から税抜表示に変更することで、税率以上の便乗値上げにも涼しい顔をしている厚顔無恥な業界である。

そんな狡猾な狸どもを相手に、日々戦いを挑んでいる百戦錬磨の主婦であっても、つい騙されてしまうことだってある。

だが、いくら購入時点のコスパに優れるからといって、電卓まで持込んで賢く立ち回り、そんなモノを箱買いされた日にゃ、お買い得だったと喜んでばかりもいられない。

現実には、見るのも嫌になるぐらいの連チャンになるか、賞味期限内に食い切れず、元々腐った豆なんだからまだまだいけるだろう、と恐る恐る食っちまうかのどっちかであり(結局食うのかよ)、いずれにしても苦痛を伴うことは避けられない。

したがって、現実のコストパフォーマンスと見かけ上のそれには、微妙な差違が生じる場合もある。

ましてや、機材関係の話となれば、10kg の納豆と 12kg のカンピョウは、いったいどっちが得なんだというレベルのバトルロイヤルにも匹敵するのだ。(いや、しないか)

ま、そんなこたあどうでもいいんだが、風呂敷を畳もう。一気に、畳み掛けるように畳むのだ。

あまり話を広げ過ぎると、いつまでたっても終わらなくなるし、今後も試行錯誤は続くと思うので、あくまでも一段落である。

青息吐息でたどり着いた最終回は、標題としてメインテーマに掲げた自由雲台と、現行システムの現時点における総括のようなものである。

昨年の三脚関連機材の一環として導入した、SIRUI K-20X も単独で使用する場合は、十分な精度とパフォーマンスを発揮する。

また、当時は価格面で相当なメリットを持っていたので、最も近い存在であったサンウェイフォトでさえ、直接のライバルとはなりえない価格差であったのだ。

ここ最近では、流通業者の取扱量も増えたのか、価格も至極真っ当と思えるレベルまで下がってきている。だが、遺憾なことに上限と下限の差は、未だに大きくかけ離れており、そのせいで胡散臭さが完全に払拭されたわけでもない。

いずれにしても、最安値が必ずしもベストとは限らないが、個々の価値観にしたがって、納得できる価格の範囲内で購入することが肝要である。

[自由雲台導入とその経緯]
今回新たに導入したのは、いまさらな自由雲台である。

別名ボール雲台と呼ばれる FB-36DLであり、原形はトッププレートが DDC-50 を搭載する Sunwayfoto FB-36、バリエーションには DDH-02i を搭載した FB-36DDHi などもラインナップされている。

個人的なイチオシは、このパンニングクランプ搭載モデル(Sunwayfoto FB-36DDHi)である。

ノーマルの FB-36 や FB-36DL に比べて価格面では若干高いが、コスパという点においては、現時点での差額程度(3千円以内?)であるなら、FB-36DDHi の方がお買い得感はある。

現有機材には、パンニングクランプ(DDH-02i)もあるので、いつでも付替えることは可能だし、ノブ/レバーとの併用タイプ(DLC-42 相当)に興味があったので、あえて FB-36DL 選択した。(公式画像では、レタリングのカラーが DDHi だけセピアチックなのが、ちと気になるが…)

価格も、以前 SIRUI K-20X 購入時とそれほど変わらないが、未だに標準モデル(FB-36)でさえ3万円を大きく超える価格の並行輸入品も見受けられる。アマゾンに限っても、流通に関してはまだまだな製品であることに変わりはない。

自由雲台の不自由度については、過去何度となく言及してきた。それは主に、自由雲台が持つ奔放な自由度が、障害となっていたからである。

レベリングベースによって雲台のベース部分の水平が正確にでていた場合、パンニングは水平を維持したまま可能だが、ティルト方向のアングルを変えた場合、再度水平を調整しなければならない。

それを回避するために、L型プレートの左サイドを利用してノッチ部分にローテイトさせたヘッドに取付けた後、ジンバル雲台のような動作を期待した。

ロックフリーの状態で、フリクションのみに頼って水平を維持したままティルトができるはず、という予想に基づいたアプローチであったが、後述の SIRUI K-20X の仕様により、期待通りにはならなかったのだ。

最終的には、単独でティルトが可能な2ウェイ雲台と、自由雲台並の動作を実現するパンニングクランプの組合せにより、ある程度満足出来る使用感が得られた。

システムを組み上げていく過程で、その基準に問題がないかを機器単位で検証し、必要に応じて微調整を行なうのだが、水平への復帰を容易にするためにも、カメラレベルの水平基準を把握しておく必要はある。

それにより、相性のような曖昧な問題にも対応しやすくなるが、対応できない場合は例外として処理するしかない。

だが、崩したくても崩せないガチガチの岩のようになってしまうと、現実の用途として使いにくい部分も出てくる。

2ウェイ雲台とパンニングクランプの組合せに関しては、前回の写真コメント欄でも言及したが、レベリングベースに水平基準を依存していることのメリットは、例外に対するデメリットにもなり得る。

最終的なカメラレベルの水平といっても、地球に対する水平ばかりでないことは、実際の撮影において遭遇することは多い。

特に、風景以外の被写体においては、写真的なものより絵的なものが優先される場合もあり、水平基準は崩したくないが一時的に変化を付けたい場合、または水平自体さほど意味を持たない場合もある。

問題は、このような例外処理であり、あえて制限を設けた組合せでは、同時に二台以上を高い精度で調整することは不可能ではないにしても、それにかける時間はもっと別のことに費やしたい。

そんな時、システムの中に自由雲台があると、対処しやすい。

[FB-36 使用感と問題点]
以前、自由雲台が唯一その自由度を奪われ、トッププレートの動きがティルト方向のみに制限される特性を利用しようとして挫折した、という経緯がある。

簡単に言えば、パンベースで水平が出ている場合、縦位置方向へ回転すると、90°を少し越えた位置まで倒れてしまうので、再度の水平確認後にロックする必要がある、というもの。

従って、パンベースの水平を維持したままで、ティルト方向がフリーにならず、常に微調整&ロックが必要になる。これは、SIRUI K シリーズの仕様上の問題であり、本来想定される単独使用では、それほど大きな障害とはならない。

しかし、レベリングベースまで導入し、その上2台態勢まで組上げてしまうと、そう簡単にはベース部分の水平を崩したくはない。そのような、個人的な使用方法から SIRUI K シリーズをシステムに組込むことが、精神衛生上スッキリしない影を落としていたのである。

製品個々の仕様とはいえ、現実に Sunwayfoto FB-36 シリーズでは、ノッチ部分では90°、ノッチ以外でも45° と明記されており、実際に検証しても正確に水平が出ている。

もちろん、微調整やロックなど必要なく、フリーでティルトアングルは可変自在であり、これが当たり前のような気がする。製品に対するポリシーが異なるとはいえ、後々障害となりえる可能性を予見できていないと言わざるを得ない。

あくまでも対シルイ比較に過ぎないのだが、雲台専業と異なり三脚屋の詰めの甘さみたいなものを感じる。この点においても明快かつ真っ当な設計による仕様で、不必要な制限のないサンウェイフォト製品の方に惹かれるのである。

ま、あまり持ち上げ過ぎて調子に乗られても困るので、一応苦言も呈しておく。

個人的な推奨モデルの FB-36DDHi では、トップは単独製品のパンニングクランプ(DDH-02i)が載っており、オフィシャルサイトの写真でもそれが確認できる。(まいど、実際とは微妙な差違があることも多いが…)

DDH-02i 自体、汎用性をもった製品なので、通常の細ネジ(UNC1/4)がスルーできる径(UNC3/8)の穴が開いている。したがって、ボール雲台に取付ける場合は、スペーサを介してより細いネジ(M5)で取付けられる。

だが、FB-36DL のトッププレートである DLC-42 は、名目は汎用プレートでありながら前回指摘した DDC-26(or MCP-01)と同様に、他のプレートのように太ネジ(UNC3/8)ではなく、細ネジ(UNC1/4)のネジ山が本体に僅かながら切られており、そのままだと、 DT-02D50 などのトップに完全に締めつけることができない。

サイトにアップされている写真を拡大してにても、たしかにネジ山らしきものは見えるので、個体の問題ではなく仕様であると思われる。

この理由は定かではないが、クランプキット(MCP-01)などと同じ仕様であり、同製品に付属しているような、ねじ山が先端のみに切られた特殊なモノが必要になる。

クランプキットのような特殊用途でなく、雲台のトッププレートは汎用性の高い製品を付属している同社の他シリーズに比べると、イマイチな仕様といわざるを得ない。

新しいものをユーザに提供するにあたって、以前と比べて必ず何かが犠牲になるようでは、まるでアップルと同じでユーザの信頼を失うだろう。

これが果たして新しい仕様なのかコストダウンのせいなのかは、全く不明だが、メーカにとっての改良がユーザにとっても改良にならないと、おのずと評価は下がる。(逆に、コッチが旧仕様なら評価は上がるけどね)

個人的には、クランプキット(MCP-01)も所有していたので事無きを得たが、現状では国内でその特殊ネジが、単体で販売されている様子はない。クランプによってはノーマル状態のままで、全てが互換性を持っているわけでないことも事実である。

クランプキット(MCP-01)の構成要素であるミニクランプ(DDC-26)単体は、既にオフィシャルサイトの製品情報には見当たらず、特殊ネジが付属しているのかどうか確認できていない。

やっかいなことに、この手の情報は販売側が公表しているスペックにも表記されていないので、各人が人柱となる覚悟も必要である。

また、この DLC-42 は、ノブ/レバーとの併用タイプというのが曲者で、ロック解除のためのスライドスイッチみたいなモノがレバー内部に仕掛けてある。だが、これがけっこう面倒くさい。

後述のシルイでも同様に、車のシートベルトのように安全装置に関するウザッタイ印象は共通したところであり、たしかに転ばぬ先の杖ではあるものの、どうも製品紹介のビデオで見るほどの使いやすさは感じないのである。

それ以上に、アルカスイス互換といえども微妙に異なるメーカ間の誤差のようなものが、使い勝手に影響を及ぼすことも多い。

一例を挙げれば、シルイ製品には必ずオマケで付いてくるクイックシュー(TY-60 or 50X)は、サンウェイフォトのシューやプレートに対して、締付ける爪の角度が異なるせいか、開口部が同じではそのまま入らない。

シルイの方が、少し余計に開く必要があって、その度にレバーの反対側にあるノブで微調整をしないとレバーロックできない。微調整のために、ノブを操作するぐらいなら最初からノブだけの方がクイックなわけで、あまり併用の意味はないのである。

もちろん、サンウェイフォト製品だけなら多少は違うのかも知れないが、それでもロックの固さが完璧に一定であるわけでもないので、常に微調整の手間は意識しておかなければならない。

このあたりは、メーカを統一することで三脚メーカ製の雲台でも不満のないユーザも意外と多い所以であろう。各メーカが、互換性より独自の便利な機構による製品開発を続けている現状も、それなりに理解できるというものだ。(個人的には、そちら側に行くつもりはないが)

たまに、三脚メーカ製の雲台に触れる機会もあるのだが、どうも雲台専業の製品とは目指している方向が異なるような気がしてならない。これは、シルイだけでなくマンフロットやジッツォの製品にも、ある程度共通する部分であると感じるのだ。

本家(アルカスイス)を使ったこともない者が、御託を並べた所で不毛な話ではあるが、当面、Arca Swiss や Gitzo などを使う可能性は少ない。

ま、美味しんぼの山岡みたいなヤツが現われて、本当のアルカスイスとジッツォを教えてやる、これでも喰らえ!とばかりに Z1 や D4、オーシャンなどを置いていったら、もちろん喜んで拾いますけどね。

いやいや、当面?は言い過ぎだろう。今後とも可能性は、極めて極めて少ない少ない、が正しい。(大事なところだから、二度言いました。スイスなだけに、エコーな余談である。いや、独逸かな?やっほ〜)

自由雲台としての Sunwayfoto FB-36DL は、SIRUI K-20X に比べるとボール径が僅かに小さい 36mm だ。ボール径 38mm の K-20X と並べてみると少しコンパクトで、もう一つ下位の SIRUI K-10X(33mm)のサイズに近い。

サンウェイフォト製品全般に言えることだが、良く言えば女性的で繊細な高級感、悪く言えば女々しく華奢で線が細いことは、この FB シリーズにも共通している。それが極太で質実剛健、丈夫で何が悪いと言わんばかりの、マッチョなシルイ製品との大きな違いであろう。

分かりにくい例で言えば、(なぜ、分かりやすい例で言わない?)かつてのマークレヴィンソンとアンプジラの違いみたいなものを連想してしまうのである。ま、レヴィンソンも言い過ぎだが、あくまでも個人的なイメージで思い浮かんだだけであり、…これも余談である。

FB-36 本体の使用感については、特に変わったところはない。一般的な範疇であり、その点においてはシルイと言えども、使い始めに大きな不満はないところも同じだ。

テンションのかかり方や調整も、双方で共通した操作で迷うところはないし、見た目は確かに線が細いが強度の点で劣るようなこともない。

だが、精密機械を使っているような印象は、サンウェイフォトの方が遙かに強く心地良いものである。実際にカメラを載せて、アングルを変化させた時の初動の滑らかさや、微調整のしやすさにもそれが表れており、ひとつふたつ上のランクを感じさせる。

その点においては、昨年時点での価格差もあながち不当でもない気もしてくるのだが、それさえも比較対象がなければ、なかなか気がつきにくい。

ただ、シルイのようにロック開放位置を示すガイド(ユーザが任意で移動できる単なるインデックスに過ぎないのだが)もないので、わりとそっけない感じはする。この点においてはシルイのサービス精神旺盛なところの現われだろう。(その割に肝心なところが抜けているが)

ただ慣れてくるとそのそっけなさも、心地よく感じることも事実である。

シルイ製品にはお約束の、さほど必要性もない製品ごとにオマケで付いてくるゴツくて使いにくいシュープレートや、慣れてもウザイ雲台側トッププレートに付いているロック機構など、本来良かれと思い付けている機能でさえ、最初は有難くもあるが、ある程度機材も揃ってくると鬱陶しくなるモノもある。

そのあたりは、少し距離感を持った親愛の情というか、犬好きより猫好きの琴線に触れる部分かもしれない。ただし、ウチの猫達は完全家猫のせいか、実家のワン公などよりもっとストレートな、全く距離感などない愛情表現をするし、こちらもそれに合わせて応じるので、あくまでも一般論である。(ほとんど生きたぬいぐるみだな、アレは…、またもや余談である。)

機材関係も現在の撮影対象に限れば、十分な機能と性能を持つ物が揃ったように思うし、懸案の三姉妹が揃ったことで、カメラ本体も一区切りした気はしている。

未だ、結果としての写真には明確に表れていないかもしれないが、こと撮影に関連した大きな問題や、機能的な不足を感じることも少なくなってきたことは事実である。

もちろん、現時点でも試行錯誤は続いているし、欲を言えばキリがないのだが、解決策が見出せない、または現在のラインナップでは、該当する製品が見当たらないなどの、逆に限界を感じることも多くなってきた。

そういう意味では、そろそろ沼の底に当たったかな、と思うこともある。

ただ、この沼も深さは一定ではなさそうだから、いずれより深い場所へと誘われる可能性も無いとは言えない。あくまでも一段落、第一章の終わりであり、新しい章の始まりなのかもしれない。

今後も、新たな被写体への興味でも湧いてくれば、機材関係やカメラ本体にも物欲が沸立つ日が訪れるであろう。

しかし、今回の少なからぬ散財から得た貴重な経験は、無知による無駄な投資を極力押えることができる可能性を多く含んでおり、必要に応じた効率の良い機材運用に必ずや役立つものと確信している。

その点においても、あたかもレゴのような感覚で組合せを構成出来ることは、サンウェイフォト製品のシステマティックな設計によってもたらされる、最大のメリットであると感じている。

[提言]
カメラ本体関係(SIGMA DP Merrrill シリーズ三姉妹)については、良いところやもう一つなところも含めて事あるごとに書いてきたし、これからもそれは続くと思うので、今回あえて割愛した。

ただ、ひとつだけ書いておきたいことがある。

それは、現行最新機種も含めたトレンドになって久しいので、ごくマイナーな見解かもしれないが、ファインダの無い機種で背面液晶を見ながら写真を撮るとのは、どうしても馴染めないのである。

腕を半端に伸ばして撮影するスタイルは、おそらく携帯電話のカメラが普及したことで一般的になったのだろうが、一端のカメラメーカまでがその是非を問うこともなく、なし崩し的に導入している現状は如何なものかと思う。

一般的なコンパクトカメラのユーザ層を考慮すれば、商品的にごく当たり前なのかもしれない。だが、シグマのようなメーカまでもが、一眼レフではないという理由で(か、どうかは知らないが)、現在の形状に疑問さえ持っていないように見える。

ましてや、新しい dp Quattro シリーズでは、そのような撮影ポジションに向いた、特異なデザインまで発表する始末である。きちんと構えて撮影するためには、現状を受入れていては根本的な解決など出来るはずはない。

不満があれば、後付けの光学ファインダを付ければ良いという問題ではない。その効果の割に高価であるだけでなく、撮影情報を同時に確認できるメリットを捨ててまで、導入する価値は認められない。

また、高画質な EVF(エレクトロニックビューファインダー)を重複して付けるぐらいなら、背面液晶を高画質化した方が無駄にコストアップしなくて済むだろう。

日頃、ペンタミラー機のお粗末な光学ファインダを見慣れていると、たまにプリズムを採用した高級機の広く明るいファインダを覗くとそれだけで感激してしまう。機構が異なる DP にそんなモノを望んでも仕方がないが、せめてレティナレベルの液晶と、デザイン的にそれに見合う純正のビューファーがあればと思う。

最初に DP3 Merrill を購入して直ぐに、UNX-9121 というゴム性液晶カバーを取付けた。その後、フッドアイ(HE-3XA)という製品の存在を知ってからは、現在までそれを常用している。液晶の解像度には未だ不満はあるものの、これらの存在無しでは日中の屋外では、まず撮る気にはならない。

今から思えば、もしこのようなビューファインダーがなければ DP3 Merrill だけで、その後シリーズの追加購入も、ひょっとすると今回の機材も大半は導入することは無かっただろう、と思うのである。

[結び]
自由への回帰などと大仰な標題を掲げたものの、その内容は不釣り合いなほどケチ臭い機材自慢のようになってしまった。

写真機材としては、さほど高級とも言えないレベルに過ぎないのかもしれないし、上には上があることも十分承知しているつもりだ。

しかし、井の中の蛙大海なんか知りたくねえ、が基本路線であるので分相応、いや精度や満足感だけなら、これでも十分贅沢すぎる製品群であると思う。

日頃スーパーで、5円10円レベルの価格差に凌ぎを削っている主婦層に、水準器(どうみても、只のアクリルのサイコロだ)一つでさえ稟議を通すには、それなりの正当な理由が求められる。

ましてや、カメラや撮影機材、三脚雲台の類いとなると、その価格を納得させるのは至難の技であり(ほぼ不可能だけど)、日頃からの弛まない努力も必要になる。

したがって、あまり浮かれてもいられないのが厳しい現実であるが、そんな日々の生活の中でも、己の価値観を信じてそれに従うことを忘れずに、精進していきたい。

ちょうど一年前の SIGMA DP3 Merrill 購入から、撮影機材に関していろいろと試行錯誤を繰返す中で、その時点でのコスパを優先するあまり、多少遠回りもしたようにも思う。

電子機器としての進歩も目覚ましいデジカメ業界の中でも、高感度性能、手振れ補正や電子水準器などを筆頭に、電子化のみで万全の対応が出来る所までは、残念ながら到達できているわけではない。

まだまだ、非電子機器のサポートがなければ、成り立たない世界である。
また、それが楽しみにも繋がる世界でもあることで、多少旧くても実用になる製品、末長く使っていける製品が生き残れているように見える。

使い捨てばかりの、電子機器一辺倒な現状を憂うわけでもないし、業務用途の単なる道具としてなら、一定期間その役割を果たせば、それ以上を望むつもりもない。

しかし、趣味の世界では愛着のある機器、手に馴染んだ道具に対しては、少しでも長く使いたいと思うのが人情である。

幸いにして、アップルに限らず、コンピュータ本体関係の進化はここ2〜3年停滞しているように感じる。仕事柄、コンピュータ関連の機器を扱うことも多いが、一時期の製品寿命の短さにはついて行けない、いや正確にはついて行きたくなどないとまで感じていた。

製品寿命の短さの一番の要因は、それが単に新しいだけのゴミに過ぎないからであり、その見極めさえ出来ない未熟な市場が肥大化することによって出来上がった、幻の世界である。

どうしても、古いものや変わらないものばかりに魅力を感じる世代になりつつある現在、新しいものや、珍しいもの、変わった物などを受入れるキャパシティは、確かに歳と共に小さくなっている。

だが、伊達に経験は積んでいないことの証明と炯眼にモノを言わせて、そんな目にも適いどうしても欲しくなるような製品が、まだまだこれからも現われることを期待している。

いまだ、進化の途中で何かと不満の多いカメラや写真の世界なら、その可能性も全く無いわけではあるまい。

ただ新しいとか古いとかではなく、ましてやこれでいいではなく、これがいいを基本に選んでいきたいものだ。

「いやあお客さん、さすがにお目が高い」と、言われるように。


…ということで、ヒトツよろしく。
2014年04月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.04.15] 自由への回帰:段落〜終章にかえて 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

2014年4月11日金曜日

自由への回帰:巡航

機材が揃ってくると、不思議と使う機会の方が減ってくる。

三脚などというものは、集合写真を撮る時に自分だけ写らないのは寂しいから使うのだろう、と思い込んでいた時代もある。つい最近までは、カメラから手を離しても地面に落ちなけりゃ、それで十分機能していると考えていた。

ぶっちゃけ、さんきゃく何それ美味しいの?という連中と、たいして変わらない。

最近よく使うのは、SLIK 500G-7 というオモチャのような三脚だ。

お勤め品の例に漏れず雲台の交換など以ての外であり、コイツにアルカ互換のトッププレート(Sunwayfoto DLC-42)を無理やりねじ込んで、車のシート下の隙間に転がしている。

一般的な縦位置の方向から、どう考えても逆だろうという側に邪魔なハンドルが出っ張っている。その動作もおよそスムーズとは言えず、止めたいところで止まったためしはないし、総重量は 600g もないので確かに軽いが、そよ風にも揺れているのがハッキリと分かるぐらいに弱い。そんなモノに、重さがあるだけでも腹が立つぐらいだ。

今なら、ご自由にお持ち帰りくださいと言われてもご辞退申し上げたいが、なぜかこの頃出番が多い。

マンフロット(190CXPRO3)がブツ撮りの被写体側へ移ったりとピンチヒッター的な場面もあるが、それだけでもない。値段も安いから扱いも雑になりがちで、すでにボロボロのガタガタだが、道具というのはこれぐらいになってから使う頻度が上がることも少なくない。

手に馴染むというほど出来の良いモノでもないが、凝りがない気を使わなくて良いというのは、十分に一つのメリットとなり得る。

昔観た映画かドラマで、ボロ車に乗った男が全損の憂き目に遭い、仕方なくもっとマシな車を手に入れるのだが、あまり気に入らない。程なく事故ってボコボコになった車を前にして、だいぶ良くなったなと呟く。あの心境が、分かるような気がするのである。

マンフロットも、いつかはそうなるぐらいに使い込めたらと思うが、分不相応なモノを無理して買うと大事に扱い過ぎて、却って使用頻度が下がってしまうのが貧乏性の辛いところだ。

ま、そんなこたあどうでもいいんだが、畳みかけた風呂敷は最後まで畳まねばならぬ。

何とかたどり着いた、折り返し点の三回目は、現行機材の使用感や問題点などについて言及してみる。

なるべくアラ探しにならないようにとは考えているが、さほど探さなくてもけっこうあることも事実で、はたしてどうなることやら。

システム展開を前提とした機器の場合、以前のような想定外な問題に遭遇することは、かなり少なくなった。たまに浮気をした途端に、予期せぬ問題が発生することもある。だが、それも経験であり楽しみの一つと笑っていられるのは、相手が機材の場合に限られることは言うまでもない。

お約束のように、機種ごとに付属する水準器の精度やバラツキに不満を感じながらも、現場での検証を元に実用範囲に収まる妥協点を模索してきた。

その過程において、必ずしもスペックに現われない仕様上の問題点が、使い勝手に大きく影響を及ぼすことを知るきっかけとなった。

レベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)導入以来、水平基準が設定できることのメリットは痛切に感じているが、レベリングベースによる水平出しは、少々コツがいる作業でもある。

あくまでも個体の話ではあるが、レベリングベースに付属の円形水準器は、水準器を手前に来るように回転させた状態で、気泡が基準線と三時の位置の交点あたりが、本当の中心点であることを何度かの検証で把握した。

最終的には、その時使用するオプションを組上げ、カメラ上の気泡管水準器(UNX-5685 or HCL)で再度確認するが、それほどズレていることはない。

ホットシュー水準器の場合、気温にもよるが基準線に気泡が触れる程度の傾きで、だいたい ±07〜09° ぐらいであり、気泡と左右の基準線の間隔が均等になれば水平、基準線に触れないまでも間隔に微妙な差があれば、±0.3°ぐらいの傾きが生じる。

これは中心点で撮影した写真と、基準線に触れた状態で撮影した写真を比較してみた結果である。機種によって多少の誤差はあるものの、±0.7° 程度の角度補正で修正できたので、概ねこの範囲に収まる。

水準器に関する試行錯誤は、割と長期に渡って続いており、慣れという以外根本的な解決策と言えるほどの結論には、残念ながら現時点でも至っていない。

[現行機材の運用]
ロケーションが決まったら、現場での設定作業は三脚の設置から始まる。

現行機材では三脚ベースではせいぜい気泡が端っこに張付いてしまわない程度の設置に留め、レベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)が一つの基準を作る。

不整地であることが多いので、お定まりの開脚角度(25°/46°/66°/89°)では対応できないこともあり、適当に脚の長さを変えたりもする。

こんな時は、GITZO のエクスプローラシリーズの様に、どんな角度でもロックできたら便利だ。そのかわり、脚を均等に開くのは面倒という意見もある。

だが、三脚の脚が均等に開いたぐらいで水平が出るパターンなど先ず無いし、不整地が多い場合は、レベリングベースとの併用に向いているように思う。(ただ、値段が向いていないのが第一の問題だが、なんであんなに高いのに人気があるのか、不思議だ)…余談である。

最もシンプルな構成はと言えば、構成も何もない、雲台も無しにダイレクトにカメラが載る組合せだ。

この場合、カメラ側にはアルカ互換のL型プレートが付いていれば、レベリングベース直上にクランプを付けることで対応出来る。

水平基準は、カメラレベルで取ることになるので、レベリングベースが自由雲台の役割を担う。アングルの変更には限りがあるが、もともと水平は出ていないので、時には三脚の設置状態まで動員することもある。だが、状況によっては、これでも十分実用にはなる。

レベリングベースのトップには、シンプルな円形クランプ(Sunwayfoto DDY-64iL)を専用のネジ穴を使って取付けるのが、位置決めもキッチリ行えるし最もスマートである。ネジを締めている時のヘキサレンチに伝わる感触にも、高い精度で製作されていることを実感できる。

通常 UNC3/8 をもった雲台をクランプに取付ける為には、アルカ互換のクイックリリースプレートをアダプタ(UNC1/4-3/8)を介して付けておく必要がある。

カメラを交換するのと同じ感覚で、雲台を交換するシステムである。ユニット化した機材を搭載するに当たって、昨年末まではこの組合せを基本として使用してきた。

この構成では、レベリングベースと雲台との間にあらゆるオプションを挟むことができる。

パンニングクランプ(DDH-02/03)などを載せれば、独立パン機能のない1ウェイ雲台でも、水平を維持したままティルトとパンが可能になる。

インデックスローテイタ(Sunwayfoto DDP-64M/64S)を挟めば、パンニングしても正確に戻すことができる。その動きに慣れれば、面倒なロックアンロックを繰返す必要もない。

構図を変えて何枚か撮影した後で、元のポジションで再度設定を変えた撮影を繰返すことも簡単であり、単なるパンニングクランプより、制御された動作がもたらすメリットも多い。

パノラマ撮影にはノーダルスライドも含めて、インデックスローテイタは必修の構成要素となる。垂直スライダー(Sunwayfoto DMC-200)やノーダルスライド(Sunwayfoto DMP-100/140/200)等を追加しパンニングクランプと組合せることで、雲台さえも必要としない構成も可能だ。

ただ、14センチ版のノーダルスライド(Sunwayfoto DMP-140)は、厚さが他の同シリーズの15〜16mm に比べると 10mm なので、薄くて軽くて良さそうに見える。だが、その薄さが災いしてスケールの刻印が見にくいという欠点もある。

8cm(±4cm)以上のスライドストロークが必要ない場合は、10cm版(Sunwayfoto DMP-100)が推奨だ。オフィシャルサイトのスペックでは、未だに 10cm版も厚さは 10mm と公表されているが、真っ赤なウソである。(実測 15mm:検証済)

また、DMP-100 は唯一クランプ直下までレールが延長されているので、スライドストロークは14センチ版と変わらないし、十分な厚さがあるのでスケールも一般的なサイドに刻印されている。

バックアップも含めた2台以上の構成の場合は、ローテイタ上に汎用レール(Sunwayfoto DPG-210/2416/3016)を介して複数の雲台を、搭載することができる。

上記の中では、汎用レール(Sunwayfoto DPG-210)もまた、厚さが 10mm なので DMP-140 と同様にスケールが上面に刻印されており、クランプを付けるとスケールが隠れて見えない。裏返せば見えるが、いちいち下から覗き込むのも実用的ではないし、サンウェイフォトがいったい何を基準に刻印しているのか大いに疑問である。

この製品だけなぜか3桁型番であり、210 というのは 21cm ではなく長さ20cm/厚さ10mm という紛らわしさである。だいたい、長さ20cm だと2台態勢にはちと短いような気もするので、推奨は 24cm 版(Sunwayfoto DPG-2416)になる。

各種クランプ(Sunwayfoto DDY-58/64i/64iL)を上手く組合せれば3台態勢も不可能ではない。実用性はさておき、ボディ交換のメリットを生かす為にも、設定およびポジショニング等の準備ができた状態を、あらがじめ作っておくことが必要になることは多い。

ま、現状ではやってみただけな感は拭えないが、本気を出すなら、もう少し追加機材が必要になる。

この構成の場合、前述の円形クランプ(Sunwayfoto DDY-64iL)を取付けたレベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)を前提として、雲台にはアルカ互換のクイックリリースプレート(Sunwayfoto DP-39)などを取付けていれば、マルチクランプ(Sunwayfoto MCP-01/DDB-53/DDT-53)を介して比較的短時間でセットアップが可能になる。

円形プレートを底面に付けたインデックスローテイタ(Sunwayfoto DDP-64MX 相当)を始めとする上はクランプ下にプレートという、各ユニットを積み上げていくには都合の良い、規格に沿ったお手本通りのシステムである。

カメラが1台ならこれで問題はないが、個人的な使用法では2台での使用も多く、汎用レールの使用頻度が高い。レール自体は、プレートを上下に2枚張り合わせたようなものなので、当然レールの上下には、クランプがあることが前提となる。

導入当初は、クランプ類もそれほど持っていなかったので、雲台をレールにネジ止めする方法で実現していたが、設置と撤収に時間がかかり面倒であった。解決策として、両面タイプのミニクランプ(MCP-01)を追加して、プレート同士の結合を簡単に行える態勢を作った。

その後、メインの雲台(DT-02)底面にはシュープレートではなく、ボトム径(54mm)のサイズに最も近い 58mm 径の円形クランプ(DDY-58)を取付けた。汎用レールの使用頻度を考慮し、レールへの脱着を短時間で行うための工夫である。

2台目は、底面がアルカ互換の SIRUI L-10 をミニクランプ(MCP-01)で固定。汎用性のないトップには、パンニングクランプ(DDH-02i)などを設置し、極力弱点をカバーする試みだ。単独でのベースレベルのパンニングはできないが、ローテイタの機能で何とか凌いでいた。

ところが、この構成だと1台での使用時に、少々問題があった。レベリングベーストップが円形クランプのロングノブ版(DDY-64iL)なので、必然として如何なる場合でもレールを間に挟む必要がある。

しばらくは、ノーダルスライドとして導入した、Sunwayfoto DMP-140 または、フィルタ枠との干渉問題を機に追加した Sunwayfoto DMP-100 を暫定措置として利用していた。だが、両者ともクランプ機能を持っているにもかかわらず、単なる接着剤としてしか使用しないのも、如何なものかという印象である。

ここ最近は、原点に返ってシンプルな構成で使用したいという要求から、なんとかレール無しでも対応できる組合せはないものかと模索していた。

レベリングベースは鉄板としても、パンニングベースを持ったメインの雲台(DT-02)では、トップにパンニングクランプ(Sunwayfoto DDH-03)を常設しているので、単独でもボール雲台以上の自由度がある。

シンプルな構成も2台態勢もとたいへん欲張った要求だが、機材は十分に揃っているので実現できる確信はあった。だが、実際の撮影現場での検証も含めて構成しないと、後からけっこう不具合も露見する。頭の中で考えただけでは上手くいかないことも、何度か経験済みである。

そこで、レベリングベース以降に取付ける方法を再考してみた。

アルカ互換の汎用レールを中心に、大幅に構成を変えてみたのだ。すなわち各機器がボトム側にクランプを持つことで、ダイレクトに取付可能な方式は維持しつつ、単独での使用においても最少の構成要素で使用可能にするシステムである。

インデックスローテイタ(Sunwayfoto DDP-64M)にはトップの円形クランプ(DDY-64i)はそのままに、ベース部分に付いたプレート(AM-01)から、円形クランプに交換、それを上下逆さまに取付ける。

要するに、円形クランプでサンドイッチにするのだ。ロングノブ版(DDY-64iL)とショートノブ版(DDY-64i)のどちらが良いか迷ったが、上下を一見して識別出来るように、ボトム側にはあえてロングノブ版(DDY-64iL)を選択した。

最初は、インデックスローテイタを付けたまま三脚バッグへの収納した場合を考慮して、なるべくコンパクトに収まるようにショートノブ版(DDY-64i)を付けていた。だが、現場で慌てて設置した時に、上下逆さまだったこともあった。

ショートノブ版は、デスモンド(PC-1:ロングノブ)とペアを組ませて汎用パンニングクランプとして使うことが多いので、こちらも合わせて取付時の識別性を優先したのである。

これに伴い、レベリングベースにはクランプではなく、インデックスローテイタのベースに付けていた 64mm 円形クランプ用のプレート(AM-01)を取付け、各雲台ベースのクランプにより取付ける組合せに変更。

これならインデックスローテイタ自体は、いつでも雲台との間にセットできる態勢を維持しつつ、レベリングベースにはダイレクトに雲台も取付けることができる。

その結果、一台のみ使用の場合は比較的短時間で、最小の構成要素によるセッティングが完了する。めでたしめでたし。とまあ、結果論だけで言えば、サクサクと事が運んだように見える。

ところが、実際は白鳥もビックリするほど水面下ではドタバタな試行錯誤もあるわけで、機能さえ実現できればそれで満足するほど、無欲で慎ましい性分ではない。機材に対しても、面食いであろうとする天性の気質が、何かにつけイチャモンを付けたがるので、物事スムーズに行った試しはない。

本来、雲台の底面には UNC3/8 のホールがセンターに一つだけあるのが一般的な仕様である。

ここに、UNC1/4-3/8 アダプタを介してクランプを取付ける。できれば、DDY-58 のように回転方向の位置決めも行えるような、専用ホールを設けた円形クランプによる常設が理想だが、現状ではそのような製品は見かけない。

当初、ミニクランプキット(Sunwayfoto MCP-01)をバラして DDC-26 相当×2として、DT-02 および FB-36 に取付ける予定だったが、ここで問題が発生した。従来導入した、パンニングクランプや円形クランプでは予想できなかった、仕様上の問題である。(ま、知らなかっただけなんだけどね)

DDC-26 およびその後に入手した自由雲台(Sunwayfoto FB-36DL)のトッププレートである DLC-42 の中心には、パンニングクランプを含めたその他のクランプと異なり太ネジ(UNC3/8)ではなく、細ネジ(UNC1/4)が切られている。

このおかげで、クイックリリースプレートを持たないお勤め品三脚(SLIK 500G-7)などにも、アダプタなしでダイレクトに付けることができて便利なのだが、それが災いして汎用性に難点がある。

アダプタが必要ない、ということは要するに専用であり、アダプタさえ交換すれば如何様にもなるという汎用性の裏返しにもなるのだ。(なんか詐欺師の論理に近い気もするが…)

この DDC-26 を2個組合せたミニクランプキット(MCP-01)には先端のみにネジ山を持つ特殊な UNC1/4 が付属しており、回転防止のプレート(MPP-01)とともにセットとなっている。(MPP-01 自体、購入当初からなにか胡散臭い製品だとは思っていたが)

したがって、雲台に取付ける場合は、雲台底面に UNC1/4-3/8 アダプタを挿入して、締付には通常の UNC1/4 ネジを使用するのだが、クランプ側のネジ山を通るので貫通して受け側のネジ山にダイレクトに到達できない。

締付を確実にしようと思えば、まずクランプ側にネジ(UNC1/4)を締めつけた上で、アダプタもクランプの裏から完全に締付け、クランプ本体を回転させるしかない。

この場合、最終的にクランプ自体がどこで止まる(締まる)のか、受け側の雲台ベースのネジ山の切り始めの位置に依存するので、任意には決定できないというジレンマに陥る。

特に独立したパン機能をを持つ雲台では、スケールとインデックスの位置関係が思うようにならないのが難点である。

また、ネジそのものを緩めようとしても、クランプのネジ山が邪魔して固着状態になる場合もあり、最悪はネジ山を痛めてしまうことにもなりかねない。クランプのネジ山を通過させるためには、ミニクランプキットに付属するようなネジを調達するか、同様のネジを作成でもしないかぎり、不可能である。

よって、付属品の特殊ネジで1台は何とかなるが、2台目には DDC-26 は使いたくないし、かといって汎用性のある DDC-50 あたりだとカク vs マルで見た目が悪い。

仕方なく現状では FB-36 には DDC-26 を、DT-02 には外径が近い円形クランプ DDY-58 を取付けている。

プレート自体、機種によってネジ径が異なるという仕様にも、今ひとつスッキリしない。それでも構成要素は一通り揃っているので、必要とあらばいつでも変更は可能であるから、いまだ検討の余地はありそうだ。

以下、次回につづく(といいな)
…ということで、次回もヒトツよろしく。
2014年04月某日 Hexagon/Okayama, Japan

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[2014.04.11] 自由への回帰:巡航 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

2014年4月5日土曜日

自由への回帰:邂逅

先日の雨により、桜も既に散り始めたようだ。

例年この季節には、多くの写真サイトで桜の競演となるのがお約束なようで、いずこでも見事な作品が披露されている。

実家のワン公のお散歩コースには、ところどころ花びらを敷き詰めたようになっている道もある。春になると桜の花は飽きるほど目にするのだが、植物関係にはあまり興味がないので、撮り方の作法も実は良く知らない。

かといって、他の作法は知っているわけでもないので、不作法にも程があるのだが、…。

そんなもん、適当に撮ってりゃ絵になるだろうとばかりに、何枚か撮ってみるのだが、どうもお歴々の作品のように奇麗な桜色にはならない。実際、近くで見ても花びらは白いので全くのウソッパチではないと思うが、そこはひとつ、嘘ではないが本当でもない匙加減が必要なのだろう。

ま、そんなこたあどうでもいいんだが、広げた過ぎた大風呂敷は、畳むのもたいへんなんである。

前回までは、一定の選定基準に基づいて選択したものの、その後の使用上(または仕様上)の問題点を潰していく過程で、もっと手っ取り早く解決できる方法があるのではないか、と思い至った経緯を辿ってみた。

特定の機能を必要とした場合、それに見合った製品を購入するのが一般的ではある。だが、写真機材の分野では中華のお勤め品と言えども、庶民にとっては高級品に相当する価格帯である。

極力無駄な投資を避けるためには、システマティックな展開、すなわち必要になった機能は後から追加できることのメリットを検証するという観点から、若干の方向転換を図ってみた結果である。

まだ途中経過と言えなくもないが、なにせこの沼けっこう深いので、溺れないようにしたい。そのためにも情報が不足気味な現状では、掴むべき藁もないのも同然であり、一本のワラとなるべく続けてみることにする。

[現行機材に至るまで]

現在までに導入した機材は、いずれも最短距離でその製品に到達出来たわけではない。

何かの要求に対して、解決策自体が別の問題を誘発することも少なからず経験した。当面の問題だけではなく、根本からの解決が望ましいことは明白であり、未だ改善の余地も多い。

ただ、解決策を模索する過程においていくらか遠回りをしたことで、新たな発見や潜在的な要求に気付くことができたように思う。

アルカスイス互換とはいえ、それほど厳密な規格でもなく、またそれがキッチリ守られているわけでもない。互換製品の中にも、メーカごとに微妙な誤差のようなものは必ず存在するが、逆にメーカを限定してしまえば、誤差は最少に押えることもできる。

そうなれば、ラインナップが豊富なメーカに注目するようになるのだが、この場合価格や入手しやすさというハードルもあって、おのずと候補は限られてくる。

システマティックな展開を模索すれば、必ずといって良いほどサンウェイフォトの製品群に遭遇する。だが、その情報は国内ではまだ限られており、死ぬほど重たいオフィシャルサイトや S.V.C Photography Ideas (http://www.scvphotoideas.com) の情報に頼るしかない。

併用する機材が異なれば、その使用感なども微妙に違い、実際に使用してみないと細かいフィーリングまでは得られない。

稚拙な英語の読解力から何度か失敗もしたが、同じメーカの機材を使用した経験があれば、ある程度類推もできるようになる。したがって、これも撮影と同様に、とにかく場数を踏んで後は想像力で補うしかない。

最近では、サンウェイフォト製品の国内における使用者も徐々に増えて、情報の多様化の兆しも見え始めているが、まだまだ絶対数が少ないのが現状である。

[現行機材のシステム構成]

レベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)上に載るべき機材を選択するに当たって、汎用性を考慮し組換えが簡単にできることを第一条件に構成してきた。

ただ、レベリングベースに直付けできるクランプの選択には、干渉問題から少々難儀をした経緯があり、鬼門といっても過言ではない。

最も単純な機能なら、サイズ的もピッタリな 64mm 径のシンプルな円形クランプになる。だが、ショートノブ版(Sunwayfoto DDY-64i)では、ベース周辺の出っ張りと干渉して完全な締付けはできないので、ロングノブバージョンの円形クランプ(Sunwayfoto DDY-64iL)が必修になる。

ベースのパンニング機能を望むなら、パンニングクランプ(Sunwayfoto DDH-02/03 or DDH-02i/03i)シリーズであれば、ショート/ロングのいずれも取付可能である。パンニングベース分の厚みが、ノブとの干渉を回避するスペーサの役割を果たすので、締付けにも問題はない。

ただし、円形クランプシリーズのような専用ホールが無いので、センターのネジをアダプタを介して使用することになる。ノブの方向は任意に設定できないが、取付に必要なものは各クランプにすべて同梱されているので、特に追加部品は必要としない。

個人的な用途での理想は、単独でパンニング機能を持った上位機種の DYH-90R だ。しかし、無用に径はデカいし、現時点においても流通が整っていないせいかアマゾンでも DYH-66i とは、笑っちゃうほどの価格差がある。

できれば、DYH-66iR みたいな製品の登場を望みたいが、機能の追加ができることもカスタマイズ性に優れるサンウェイフォトのメリットと考え、パンニングクランプ(Sunwayfoto DDH-02i)を追加した。

しかし、外見の不釣り合いも然る事ながら、もともと雲台のトップに取付けることを前提にデザインされているので、ロックノブも小さく少々使いづらい。

また、DDH-03 では完全ロックから開放までのノブの回転角度が 110° 程度であったにもかかわらず、少なくともロングノブバージョンの DDH-02i ではなぜか 270° 近く回ってしまうのだ。(ショートノブの DDH-02 は未確認)

ロックされる位置はどちらも変わらないし、60° も回せば完全フリーになるのに、そこから無駄に 180° 以上回る意味は不明である。これが災いして、取付ける機器によっては、ベース部分と干渉して引掛ることもある。

加えて、レールを介して2台態勢で運用する場合など、パンニングクランプの回転が軽過ぎて使いにくい。軽くロック状態に近づけてテンションを持たせることは可能だが、雲台のベースのようにオイルダンプによる抑制の利いたものではなく、何かゴリゴリと擦れるような感触も頂けない。

よって、暫く使用した後にパンニング機能は当面あきらめ、シンプルな円形クランプ(Sunwayfoto DDY-64iL)の導入を検討しはじめた。

その時、かつてサンウェイフォトも製品化していた、64mm径のパンニングクランプ(Sunwayfoto DDH-01)に目が留まった。すでにディスコンとなっており、流通在庫のバカバカしい価格に呆れながらも、なにか良い方法はないものかと模索を続けているうちに、インデックスローテイタという奇っ怪な機械に遭遇するのである。

価格面でも、当時の DDH-03 と同等かそれ以下であり、当然 DDH-01 などより遙かに安いことが、その面妖な外見(好みではあるが)にも関わらず、チャレンジャー精神を刺激する。

インデックスローテイタ自体、導入時にその機能を全て理解できていたわけではないので、あえて機能的には十分とも思える簡易版ではなく、上位版(Sunwayfoto DDP-64M)を選択した。迷ったら高い方、を実践して幾度となく失敗した経験は、ここでも生かされていない。

機能面においても、単純なパンニングクランプより使いやすいことも判明したので、最近ではより低価格化が進んだ簡易版(Sunwayfoto DDP-64S)が、そのコンパクトさも相まって十分魅力的であると思う。

ただ、国内市場ではまだ見かけないが、角度設定がより細かい方向へシフトされた改良版も既に出荷されており、これならレベリングベースに常設しても良いと思える。(型番が以前と変わっていないので、ややこしい)

主に高さ方向の増加を抑える意味で、前述の 64mm 径のパンニングクランプ(Sunwayfoto DDH-01)を検討していた時期もある。正確には、そのパチモンであるデスモンド(PC-1)という製品だが、海外通販まで利用して導入した失敗談は、昨年十月頃の「憂鬱」を参照して頂きたい。

三脚が前提となる場合が多い DP Merrill を複数台使い分ける上で、設置と撤収が楽になる方法を模索してきたわけだが、こうしてでき上がったのが通称 Pano-3 システム(Sunwayfoto Fluid Pantoscopic Panoramic Pano-3 Modular Versatile Head)相当である。

最初に見た時は、いったい何に使うのやら全く分からなかったシステムだが、全く別方向からのアプローチによる試行錯誤を続けた結果、知らず知らずのうちに行き着いた、というのも皮肉なものである。

最近は、上記の全部入り本チャンシステムも価格が下がってきたので、面倒ならエイヤアッと一気に逝っちまうという手もある。(専用ケース付きというのはちょっと惹かれるが、未だバラで買った方が安いので、あえてお勧めはしないけど…)

Pano-3 は、基本的に固定システムなので、パンニング機能を担当するインデックスローテイタはレベリングベースに UNC1/4-3/8 アダプタを介して直付けされている。その上に 64mm 径円形クランプのショートノブ版(DDY-64i)が専用ホールの2本の UNC1/4 で固定され、汎用レールなどが取付けるのが基本仕様である。

ただ、このままだとレベリングベースを三脚側に固定で使用したい当方としては、少々使いにくい。前述の簡易版インデックスローテイタ(Sunwayfoto DDP-64S)なら、パンニングクランプとして常設もアリかもしれないが、できればシンプルな構成で使いたい場合もある。

インデックスローテイタシリーズには、円形プレート(AM-01)が付属した型番末尾に X が付いた、Sunwayfoto DDP-64MX/DDP-64SX というのもあるようだが、当時の流通価格を考えると随分高くついてしまう。

また、円形プレート(AM-01)単独で販売されていたのは、海外通販ばかりで本体価格と変わらない送料を負担してまで取り寄せるのもバカバカしい。そこで目をつけたのが、前述の64mm 版パンニングクランプであるデスモンド(PC-1)である。円形プレート(AM-01 相当品)が付属した上に、送料込みでも思わずニヤついてしまう価格だ。

で、結果その出来に愕然とするわけで、おまけに期待した円形プレートも皿ネジ用の窪みが僅かに深いことが災いして、付属のネジ(UNC 1/4)とセットでないと締付できないという汎用性の無さである。いや、これはもう汎用性などというレベルではなく、キッチリ精度が出ていないことで、使い回しもできない非互換というべきである。

互換品には互換品の誇りというものがあって然るべきと考えるが、互換性を維持してナンボのパチモンの風上にも置けない為体である。浮気をして初めて分かるなんとかみたいなモノだが、その点においても、サンウェイフォト製品の安定した品質に感心する結果となった。

ま、そうは言っても、サンウェイフォトでさえ根本的な仕様上の問題や、ロットによるバージョン違いなど、けっこういい加減な製品管理(品質管理ではないが)もあって、数え上げれば果てしないほどアラも出てくる中華の一翼を担うメーカだ。

このメーカ、型番の振り方は行き当たりばったりで、サイズを表す数字の後に改良版を表す文字(i = Improve)が付くことになっているが、パンニングクランプシリーズ(DDH)ではロングノブ版に付けられている。(実際、スライド部分のガイドに改良が施され、締付のタッチが僅かながら改善されているが、ノブの長さに比べたら外見からは判別しにくい)

しかし、円形クランプシリーズ(DDY)では、それが必ずしもロングノブ版を表すわけはないらしく、Lの文字が追加された製品が存在する。

また、インデックスローテイタシリーズのように、改良が施されても型番が変わらないこともあったり(Sunwayfoto DDP-64M/Sunwayfoto DDP-64S)、ノブや水準器の形状も公開されている画像と異なるバージョンの存在は珍しくない。

その上、輸入業者の大半は、その全く当てにならないオフィシャル画像を商品情報として流用しているので、現物の確認ができない通販でのハードルを高くしている。

ま、毎回賭けのようなスリル味わえて楽しくもあるんだが、製品仕様としてさほど重要でもないことなら、中華相手にあまり厳格な管理を期待しても仕方がない。改善されれば喜ばしいことだが、結果としてコストに跳ね返ってしまうと面白くはない。

正規代理店と称して高目の価格を提示しているいる業者でさえ、現状ではそのあたりは同レベルでしかない。

これはアマゾンの怠慢でもあるのだが、それよりもっと高い値段と製品情報さえロクに明記していないような、不届き千万な業者も多いのが現実であり、フィルタをかける必要もある。コスパの観点からは、そんなことも含めて、業者の選択はユーザの判断に委ねられている。

ただそんな中でも、肝心な機械的精度こそ高いレベルを維持していることが、魅力であることに変わりはないし、限られたコストでのシステム展開を考えると、現状唯一無二といっても過言ではあるまい。

問題は、流通における真っ当と思える価格が提示できればという条件付きであることは言うまでもなく、それがコストパフォーマンスに大きく影響する。

以上のような経緯から、現行機材は次のようなものになった。

[現行機材]

<カメラ>
SIGMA DP1 Merrill 28mm F2.8
SIGMA DP2 Merrill 45mm F2.8
SIGMA DP3 Merrill 75mm F2.8

<レンズフード>
SIGMA LH1-01DP1M
SIGMA LH2-01DP2M
SIGMA LH3-01DP3M

<水準器>
UN UNX-5685×
・堀内カラー HCL
HAMA5411
Polaroid PL-ABL3

三脚/一脚>
Manfrotto 190CXPRO3
SIRUI P-326

<その他関連>
カメラ用バッグ
Manfrotto アミカ50
CaseLogic SLDC-203
Crumpler 4 Million Dollar Home
三脚用バッグ
Manfrotto MBAG80PN

<雲台>
 2ウェイ雲台
Sunwayfoto DT-02D50
    ボール雲台
Sunwayfoto FB-36DL
SIRUI K-20X
 1ウェイ雲台
SIRUI L-10
Manfrotto 234

<パンニングクランプ>
Sunwayfoto DDH-03
Sunwayfoto DDH-02i
Desmond PC-1

<汎用クランプ>
Sunwayfoto DDY-58
Sunwayfoto DDY-64i×
Sunwayfoto DDY-64iL
Sunwayfoto MCP-01
 (DDC-26×2 & MPP-01
Sunwayfoto DDC-50
 (DT-02D50 付属)
Sunwayfoto DLC-42
 (FB-36DL 付属)
<レベリングベース>
Sunwayfoto DYH-66i

<インデックスローテイタ>
Sunwayfoto DDP-64M

<汎用レール/ノーダルスライド>
Sunwayfoto DPG-2416
Sunwayfoto DMC-200
Sunwayfoto DMP-140
Sunwayfoto DMP-100

<クイックリリースプレート>
Sunwayfoto DPG-39
Sunwayfoto DP-39
Sunwayfoto GHA-01

<カスタムブラケット/グリップ>
 DP1M
UN UNX-9121
 DP2M/DP3M
Sunwayfoto PML-DP×

<ビューファー>
DP2M/DP3M 共用
・フッドアイ:HE-3XA
DP1M
UN UNX-8508/8509

よくもまあ、マメに集めたものだが、自分でも何を持っていたのか持っていないのか忘れそうになるので、一応リストにしてみた。

これ以外にも、オリンパス時代から引き継いだものや、フィルタ類など細かいものまで上げればキリがないし、一般的な機材なら何もこんなところでなくても情報は手に入ると思われるので割愛する。

流石にこれだけ集まると少々の例外には、如何様にも対応出来る。

もう既に、沼の入口とは言えない状態だが、コスパに関してはこれでも優れている方だと自負しており、とりたてて無駄な部分はあまり無いと考えている。(☜自画自賛)

まるで、サンウェイフォトの提灯記事の様に見えるかもしれないが、個人的にはここの製品は、本当に気に入っている。邂逅というほど大仰なものではないが、回り道した分客観的かつ冷静に見ることもできると思う。

だが、あくまでも SIGMA DP シリーズでの使用が大前提の話なので、その適用範囲は意外と狭いことも念頭に置く必要はあると思う。

以下、次回につづく(と思う)
…ということで、次回もヒトツよろしく。

2014年04月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.04.05] 自由への回帰:邂逅 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく