2011年12月29日木曜日

iPad ミュージックアプリの憂鬱

今年も残すところあとわずかだが、そんなこととは全く関係なく、iPad のミュージックアプリの使いにくさにはうんざりする。

Mac OS X の iTunes のように、ユーザが任意で表示方法を変更できない仕様になっていることが、諸悪の根元である。

画面下部には、プレイリスト/曲/アーティスト/アルバム/その他等のボタンは配置されているが、いずれも表示モードの選択ではなく、ソート順位の変更に過ぎない。ソート順位なんぞはわざわざボタンに設定するほどのものではなく、iTunes と同様にリストの項目名を選択すれば済むことなのに、そのような機能は全く用意されていない。

検索機能もインデックスがあればさほど必要とも思えないが、使えるのは画面右端にインデックスが並んでいる時に限られる。インデックスが無く検索機能が必要な時にはなぜか使えないという、ムカつく仕様である。

そのキャパから数千曲が格納できる iPad であるが、それを曲名のアルファベット順に並べて順番に聴きたいユーザがどれほどいるのだろう。せめてアーティストやアルバム単位でまとめて一覧表示できればと思うが、曲名一覧機能のみでジャケットすら表示する機能もない。かといって、アーティストを選択したらしたで、複数アルバムに跨がった連続再生機能がない。複数アルバムが表示されているにもかかわらず、最初に選択した曲があるアルバムを1枚聴いたらそれでお終いになってしまうなどという呆れた仕様は、一体どこのバカが決めたのだろう。(スティーブが生きていたら、即刻クビ間違いなしだな)

ま、プレイリスト編集機能も一応備わっているし、曲の選択に関しては非常に使いやすくできているので、面倒だがわりと頻繁にプレイリストを作成して凌いでいる。
しかし、でき上がったプレイリストから再生しようとすると、これまたジャケット表示機能なしという、液晶画面の小さかった iPod 以来全く進歩していないインターフェイスである。それどころか、再生中の曲でさえ別ルートで検索した結果には、同一アルバムの同じ曲であっても再生マーカーはついていない点などは、旧来の iPod 以下である。

再生中のアルバム表示機能はあるが、アルバムジャケットの全画面表示から曲名リストヘ移行した時のインターフェイスは選択画面とは異なる黒バックで、再生中の曲名に付くマーカも曲名の右側から左側へと変化するという統一性の無さだ。選択画面のグレー背景よりは遥かにマシだと思うが、なんでこっちのインターフェイスにしないのか明確な理由は解らないし、わざわざ2種類のインターフェイスを持たせる意味はもっと理解不能である。

プレイリスト自体を選択するモードでは、写真アプリのようにそれらしくスタックされたジャケットを表示するのだが、こちらも黒バックではなくグレー背景で、プレイリスト選択が終われば縦にしようが横に向けようが、ただひたすらリストのみでまるでそっけないことこの上ない。

また、写真アプリとちがってプレイリストごとに作成されるスタックをピンチアウトしても何も起こらない。せいぜい下に隠れたジャケットが表示される程度で、それなら最初からスタックになどせず、広げときゃいいだろうが、と思わずにいられない。

ソート順位のボタンも、iPhone の様に編集機能で配置変更できるわけでもなく、邪魔なミュージックストアへ誘導するボタンを視界から消すこともできない。個人的にはよく使う、ジャンルごとの分類もアルバム・アーティストの違いはは全く無視され、曲名のアルファベット順オンリーで全く使えない。

だいたい、ひらがなと漢字の全角の間に半角アルファベットが食い込むような並び方をおかしいと思わないのだろうか?

ジャンルの選択も「その他」の末席に押しやられ、その一覧表示には例によってあのダサいジャンルアートが表示される。いっそ、iPhoto のイベントのようにそのジャンルの代表的なアルバムジャケットをユーザの任意に選択させてくれりゃ可愛げもあるんだが、前述のように全くユーザにはカスタマイズを許さないガチガチの石部金吉金兜仕様である。

唯一救いは、複数アルバムがあるアーティストを選択したときの表示で、ジャケットも表示されるだけでなく、リストをスクロールさせても次のアルバムジャケットが表示されるまでその場に残って、曲とジャケットの関連性を保とうとするという秀逸さである。iPod や iPhone ではなかった年代の表示機能まであり、デフォで年代の古い順に並べられる。願わくば、ソート順位の選択と表示モードの切替え機能つけてもらいたいものだ。

iPod、iPhone と比べて画面が大きい分、音楽再生機能が使いやすければ非常に強力なオーディオ装置の一翼を担う可能性を持つ iPad であるが、あまりにもマヌケなユーザインターフェイスに落胆させられる。同じ純正アプリである「Remote」とも全く異なるユーザインターフェイスを持たされた背景にどのような事情があるのだろうか。そもそも「Remote」自体別アプリである必要もないと思うのだが、ビデオ再生機能などどんどん分断化され使いにくくなっているような気がする。

「Remote」に関して言えば、「逆 Remote」の機能があれば、と思う。Mac から iPad をコントロールする「逆 VNC」みたいなモノで、Mac の iTunes の音楽やビデオを少し離れたところにある iPad とそれの接続されたスピーカに音を飛ばすことができて便利だと思う。要するに、Apple TV の iPad 版だな。機能の直交性という観点からの興味に過ぎないのだが、これができるのならあれもできるだろうという単純な発想。

かつて、Macintosh のユーザインターフェイスはそういうところからユーザに使いやすさを提供してきたはずだ。あれとこれは別だから…と、コマンドや機能の直交性、最近は随分少なくなったように思う。

ゲームセンターみたいなアプリを出荷時プリインストールするくせに iBooks や Find iPhone をわざわざ後からダウンロードさせてみたり、標準で時計や電卓さえも無い環境には、理解に苦しむことが多い iPad である。

ネットではすでに次期 iPad の仕様についてまことしやかに噂されているようだが、このまま安易にハードウェアの新製品で性能向上を図るより、アプリ周りの足下を見直した方が良いと思うんだけどね。


…ということで、来年もヒトツよろしく


2012年12月某日 Hexagon/Okayama, Japan



[2011.12.29] iPad ミュージックアプリの憂鬱〜より転載&加筆修正

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