2012年12月7日金曜日

やっぱ、時計はスイスだ!

アップルがパチリ切れていなかった、SBB の公式時計について、その動作を見事なまでに再現した、iOS アプリがある。

SwissRailwayClock 2.0.1(無料)というものだが、このグラフィックスには感激する。

起動時には、必ず全ての針が重なった位置から現在時刻に配置されたり、縦横を切り替える時にインデックスはそのまんまで、針のみが回転するギミックも面白い。また、ハンズの微妙なテーパ形状やインデックスにちゃんと届いている秒針、夜の時間帯になると変わる照明の色合いなども、なかなか味わい深い。

極め付けは、オリジナルと同様に秒針が毎分12時の位置にきた時には一秒少々止り、分針がおもむろに一分進んでから再度秒を刻み始めるのだが、その時の止まり方が堂に入っている。それこそ、カクンと音が聞こえてきそうなほど、秒針も長針も震えるのである。

もちろん、その分遅れが発生するので、再び動き出してから都合約58秒程度で一周するという、まったく細かいことは気にしない大らかな仕様である。

で、いろいろ調べてみると、この掟破りな仕様にはそれなりの深〜いワケがあるらしい。

スイス国鉄のステーションクロックが誕生した1940年代には、その当時の機械的な精度から、各駅に設置している時計に微妙なズレが発生することが避けられなかった。

そのズレを修正するために、親時計を設置して各駅の子時計を制御し、一元管理する方法が採られた。各駅の子時計は秒針が約58.5秒かけて1周し、0秒の位置で一端停止。その後、親時計からの制御信号を受けて各駅の時計が一斉にまた時を刻み始めるという、全ての時計を正確に合わそうとした、聞くも語るも涙の苦労話があるらしい。


ま、何処の国の列車も発車時刻が、×時×分59秒なんてのはないだろうし(1.5秒ほど早く発車することになるけどね)、だれも正確な時計など持ち合わせていない時代だから、これはこれで正解なんだろう、と納得させられてしまう。かつては、銀行強盗だって犯行前には「時計を合わせよう」が合言葉になっていたのだが、最近はあまり聞かれなくなった。


Stop to Go と呼ばれるトリッキーな動作にも、そんな背景があったことを知れば、あまり好みのデザインではないと思っていたモノにさえ、何となく愛着を感じるから不思議なものだ。(欲を言えば、中心軸の描写が欲しい)

アップルも、どうせパチるならここまでやればリスペクトと言えただろうに…。と、最近のアップルに感じる残念感ばかりが気になる、今日この頃。

表面だけを真似た純正クロックと比較すれば、機能上必要ないからといって余計なものを取払ってしまうと、いかにつまらないモノになってしまうかを示す好例といえる。

おおっと、今月も初っぱなから二本立てだぜい。
2012年12月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2012.12.07] やっぱ、時計はスイスだ! 〜より転載&加筆修正

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