2013年3月29日金曜日

更新のモチベーション 〜つづき

前回につづいて、デジカメネタ。

一枚の写真が何かを大きく変えてしまうことは、我が半生を振り返ってみると、結構よくあることなんで自分にとっては大して珍しくもないんだが、その何度か目の覚醒である。

だいたい何かに対して物欲が湧きだすと、最終的に崖から突き落としてくれるパワーのあるものを探しだす。それは、たいていチラシやパンフ、カタログに掲載された写真などであることが多く、割と簡単に触発されたりする。

ただ、写真には侮れない力があると思う。

端から見れば何ということもない写真から、イマジネーションの拡がりというか、上手く表現できないが、想像力をかき立てる何かを感じることがある。それは目から入った情報が、人それぞれの体験や趣味指向の違いによってさまざまに変化しながら脳に到達し、または到達後に脳内で化学変化を起こす。人によってはそのまま消え去ってしまう場合もあるが、衝撃として感じたり、爆発することだってある。

その衝撃や爆発(暴発?)は、かならずしも即時性があるとは限らない。時限装置のようなものを持って、何日も何ヶ月も何年も脳の奥深くに潜んでいて、ある日突然何かがトリガーになる、というパターンもあるから恐ろしい。

最初のデジイチ購入当時、コンデジに比較して多少マシな画質に、そこそこ満足していた。機種選定の段階でも、ある程度その業界の状況なども一応調べてみたわけだが、それまで使っていたコンパクトカメラに対してあまり大きく重たいものは敬遠しよう、という決め事が自分の中には既にでき上がっていた。

したがって、軽量コンパクトが信条の Olympus E-410 の選択も、ある意味必然の帰結であったわけで、画質の優先順位は必ずしも高かったワケではない。

その後、デジカメ関連のサイトを訪れることも多くなったが、目に触れる「毒」の数々の誘惑に誑かされるほど、経済的に恵まれていなかったことが幸いして、大事には至っていない。

たが、その頃に見た中判デジカメの画質には、正直かなりの衝撃を受けた。広大な風景の隅から隅までことごとくピントの合った写真は、お勤め品などの写し出すそれとは全く別次元のモノである。当然、下世話な庶民としては、すぐさま価格にも調査は及ぶ。

いちじゅうひゃくせんまん…、え゛〜デジタルパックだけで六百万!? あ〜、カメラは別売りなんですね、ハイ了解です、失礼します。(←Phase One)

門前払いである。いや、門の前にも行ってない。ま、関係ないしな。ただ、その画質だけは脳裏に焼き付いてしまったようだ。

で、一枚の写真なんだが、(いつにも増して長い前フリである)

昨年の夏ごろのこと、常設デスクトップピクチャにも飽きてきたんで、ネットで風景写真を探していた。いかにもプロが撮影しました〜と言わんばかりの写真に混じって、住宅の屋根ばかりが写された写真を目にすることが多々あり、これはいったいなんぢゃと思って、そのサイトを訪れてみた。

どうやら、SIGMA というメーカのカメラ(+レンズ)で撮影した作例を公開することに、只ならぬ熱意と愛情を持って運営されておるらしい。後から知ったことなんだが、その筋には「西船橋の屋根おじさん」として有名を馳せている御仁のサイトである。

SIGMA(シグマ)については、レンズメーカとしてかなり前から(まだあったのか、という印象で)知っていたし、50mm F1.4 EX DG HSM のフォーサーズマウントも発売していた。

明るいレンズに対する漠然とした興味から E-620 との組合わせによる作例も何度か見て、値段がこなれた頃を見計らっていってみるかな、と考えていた。しっかし、ボディのみなら 375g の E-410に 500g のレンズはねえよなあ、やっぱ35マクロかなあ、てなことを妄想してるうちに、その製品は市場から消えてしまった。(マイナーな4/3マウントには、中古市場も純正以外はほぼ皆無)

2008年頃に発売された、初代 DP1 も作例も含めて目にしていたが、その広角 28mm は F4 と暗く、1400万画素とハッタリをかましている割には実質460万画素程度の写真にしかならない。

画質には興味を持ったが、レンズ交換もできないコンデジのくせにズームもないことなどから、あまり本気では見ていなかった。その後、レンズを F2.8 と他社並になった DP2 を発売したが、今度は焦点距離が 41mm とまことに的を外すのが上手いメーカだなあ、と感心したものだ。

変わった撮像素子も使っているし、どうせ的を外すなら、絶対売れない 90mm 単焦点でも出してみやがれ、とその時には笑って済ましたんだか…。

毎度あくまでも個人的見解だが、50mm 前後の所謂標準レンズというのは苦手だ。ヘタクソが撮ると、まことに面白みのない写真にしかならない。ようするに、ナチュラルな描写は難易度が高すぎて、今一つ楽しめないような気がする。人間の目で見たままの絵より、多少歪もうが広角の方が、不自然な遠近感が得られる望遠の方が、撮っていて面白いんである。せっかく大枚はたいて買うものに、楽しめないようなモノを選択するのは、やはりツライ。

E-410 のキットレンズ(ZUIKO Digital 14-54mm/f3.5-5.6&40-150mm/f4.0-5.6)で撮影した過去のライブラリを見ると、望遠ズームは、広角端の 40mm(35mm 換算では2倍の 80mm)と望遠端の 150mm(同 300mm)で4割、残りは結構さまざまな画角が散見されるが、広角ズームに至っては3割程度の望遠端 42mm(同 84mm)以外、大半が広角端の 14mm(同 28mm)という有り様。

絶対枚数では、広角ズームの方が7割を占めることから、あまりレンズ交換(面倒くさいもんね)もせず、よほど望遠が必要な場合を除いて、たいていは広角ズーム付けっぱなし。望遠付けたら付けたで中望遠域を多用するという、まことに横着かつ野放図な使用状況が伺える。中望遠域の多用には、80mm 付近では広角ズームの望遠端 42mm/f5.6 より望遠ズームの広角端 40mm/f4.0 と、多少明るさで有利という事情もないとはいえないが…、余談ばっかりである。

で、あらためて一枚の写真なんだが、いや、一枚や二枚ではない大量な作例写真集である。

当時、またもや SIGMA が新しい DP シリーズの販売を開始したという話は聞いたが、それ以前に発表された SD1 の高価格にも驚かされたし、その後の大幅な値下げ(SD1 Merrill)には、もっと驚かされた。

いったい、このメーカは何を考えているんだろう、こんなの買ったヤツは気の毒に、いや、こんな価格帯のカメラを買えるヤツには屁でもないのかも。いずれにしても、もさぞかし怒りを爆発させているに違いない、と思っていた。

が、そのサイトを見るかぎり、俄に信じがたいが SIGMA が発売するほぼ全製品の作例を、ただ淡々とアップし続けている。中の人、というわけでもないのに、である。

なにこれ? あぶないサイト?

呆れるやら感心するやらで眺めていたのだが、その作例(ほとんどがオリジナルサイズでアップされている)には、Exif だけでは判らない、細かい撮影データが紹介されており、さぞや(数少ない) SIGMA ユーザには重宝されていることが伺える。

発売されて間もない、SIGMA DP2 Merrill。そのオリジナルサイズの作例を画面上に拡大表示(ピクセル等倍)にして見た時、まさかと思った。まるで、以前見た中判デジタルパックのそれではないか。

マミヤやハッセルのデジタルパック、ペンタックス 645D などの作例は、余興でたまに眺めてため息をついていたのだが、見方によってはそれよりも生々しい。被写体がメーカサンプルで見受けられる諸外国の景色ではなく、見慣れたそれも現在の日本家屋がならぶ町並みであることも起因しているだろう。

その後に見た、DP3 Merrill のメーカサンプル、プラハの作例にも十分に感動したが、50mm(35mm 換算 75mm)の単焦点コンデジを発売した、SIGMA の度胸と根性の方に感動した。我が身を振り返って、たぶんプラハに立ち寄ることは金輪際ないと思われるが、西船橋なら可能性はなくもない、と思うしね。

もう、この時点ですでに、やれバッテリーがもたないとか、レンズ交換できないとか、高感度に弱い(にも程がある)とか、さまざまなマイナス要因に対する雑音が、ス〜ッと消えうせてゆくのをハッキリと感じた。(←しまった、やっぱあぶないサイトだった)

…つづく。

…ということで、ヒトツよろしく。
2013年03月某日 Hexagon/Okayama, Japan
http://www.hexagon-tech.com/
[2013.03.29] 更新のモチベーション〜つづき 〜より転載&加筆修正

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