2013年3月30日土曜日

更新のモチベーション 〜完結編

気がつけば、とんでもない大作になってしまったが、乗りかかったタイタニック、航海先にたたず、更改役に立たず、後悔後を絶たず。

ということで、かまわず続けることにする。

SIGMA DP2 Merrill、めりるすげえ、と思うが、個人的にはひとつふたつ問題があった。

ひとつは、発売開始時の10万円近い価格に加えて、例の苦手な標準域レンズ固定という(あくまでも個人的な)問題。ま、価格は中判の画質(に近いもの)が10万なら、文句もいえないが、果たして使いこなせる(使い倒せる)のか、という不安。

聞けば、少し遅れて広角(換算 28mm)の SIGMA DP1 Merrill も f2.8 で出るらしいので、少し様子を見ることにした。(大人になったなあ)

しかし毎度、毎度、換算何ミリというのは面倒な言い方だ。みんながフルサイズのカメラになっちまえば、こんな面倒な言い回しはなくなるんだろうが、…。

で、ふと思ったのだが、苦手な標準域とは言いながら、換算2倍のフォーサーズなら標準域、仮に50mm付近とするなら(実際の焦点距離は25mm)、換算1.5倍の APS-C サイズである SIGMA DP2 Merrill (30mm) は、それに近い 45mm 相当になる。

だが、SIGMA DP2 Merrill の作例を見るかぎり、さほど違和感は感じないし、なにか懐かしささえ感じる。

同じレンズの画像をフルサイズセンサーで受ければ、まんま 30mm の画角が得られるはずだし、フォーサーズや APS-C サイズのセンサーは、その真ん中辺りをクロップしているだけで、写る絵自体は 45mm ではなく、30mm で撮影された写真を単にハサミで切っただけの結果ではあるまいか。

光学の理論はよく判らんが、フルサイズデジカメは持っていないんで、確認のしようがない。

ま、そのために D800E でも一個買ってみるか、というわけにもいかんだろう。そんな理由づけが無理無理すぎであることは、さすがに自分でも判る。

ただ、何となく換算何ミリを基準に苦手な標準域というのは、なにか違うような気がしてきた。フォーサーズで 80-100mm 辺りの方が、自分的にはシックリくるというのは、逆に標準域だからであって、本当に苦手なのはそこからもう少し外れた領域(38mm 付近)にあるのではないだろうか、という疑問が湧いてくる。

以前使っていた、フルサイズ機(一般的なフィルムカメラなら、6×7判やハーフでない限り全部フルサイズだろう)CONTAX T2 も、それ以前のキヤノンオートボーイ2も焦点距離は同じ 38mm 固定、明るさも同じ f2.8 だ。この両機種は、過去に結構な枚数を量産しており、ひょっとすると苦手なのではなく、単に見飽きた画角だから避けてきただけなのかもしれない。

ただ、人の撮影した作例(結果)だけ見ても、実際に自分がシャッターを切る瞬間までは想像できないので、実験してみるまでは明確な答えは出てこないだろうなあ。いやいや、またもや SIGMA DP2 Merrill に向かって、好材料をねつ造しているだけのような気がする。(あぶねえ、あぶねえ)

当然のように、件のサイトでは DP1 Merrill も発売開始と同時に作例がアップされ、期待通りの画質が披露された。以前であればこの時点でもうすでに、物欲に抗うことは不可能な精神状態に陥るところなんだが、先立つものに先立たれて久しい状況を鑑みて、断腸の思いで保留とせざるを得なかった。

ここはひとつ、大人になって冷静になろう。買わない理由を探してみるも良しということで、たいして探さなくとも幾らでも出てくる、DPシリーズのデメリット。

●データサイズがデカイよな

(4,600万画素ですから)
●したがって、書込みも遅いしシャッターチャンスは期待できんぞ

(どうせ、風景写真がメインだろ人物苦手だし)
●バッテリーも持たないし、使い勝手悪そう

(標準で2個同梱、その上追加で買っても安い価格設定。)
●手振れ補正も無いから、遠景は三脚必修
だな
(そういえば、久しく使っていない三脚があったぞ)
●光学ファインダがないぞ

(三脚に載せたら、結局ライブビューを使うだろう)
●いまさら、VGA 動画はないよな

(HD Movie なら iPhone 5 で撮れる)
●なんか、Foveon って宗教っぽくね

(信じればあ、救われるう、それより画質を思い出せ)
●ズームないよね

(横着をしてはいけない、自らが動く)
●レンズ交換もできないのに、異なる画角をどう選択するんだ

(広角 DP1 と標準 DP2 の2台買っても、高価な交換レンズより安いかも♪←おっと、危険な考え)

いちいち言い訳というか、心の声で逃げが用意されているのも問題だが…。

とりあえず以上をまとめると、
レンズ交換無し、光学ズーム無し、手振れ補正無し、内蔵フラッシュ無し、HD 動画無し。
あれ?どこかで…

パワステ無し、パワウィンドウ無し、オートマ無し、カーナビ無し、ABS 無し、エアバッグ無し。なんだ、ミニとおんなじかあ。う〜む、いっそ清々しくも潔いではないか。

いかんいかん、付和雷同は禁物である。とりあえず、中望遠マクロ版でも出たら再度検討しよう。てなことを妄想しながら、半年ぐらいは作例サイトを眺めて遊んだものだ。

そうこうしているうちに年が明けて早々に、SIGMA DP3 Merrill 発表である。な、なんと、まさかの 50mm (換算75mm) 単焦点、中望遠マクロだあ。

これは、もうダメでしょう。たぶんダメだわな。退路は完全に断たれた。勝負あった、参りました。(ポチッ ←買い物カゴに入れた音)
いや〜実際、我ながら半年も良く我慢したよなあ。(しみじみ、ズズゥ〜 ←茶をすする音)

で、現在に至る…、である。

一応コンパクトデジカメに分類されている DP シリーズではあるが、撮影自由度はデジタル一眼レフとなんら変わらない。

というか、一般的なコンデジのお手軽な撮影方法では、まず良い結果が出ない。それほど酷くない、失敗写真とも言えない程度のモノなら、撮って出しのJPG では無理な調整もRAW からの現像では何とかなる場合もある。したがって、基本は RAW+JPG という点も一眼レフと同様である。

ただ、カメラ内で生成される JPG は、確認用と考えている。なにせ、マイナーなことでは人後に落ちないメーカであり、その点では肩身の狭かったオリンパスでさえ、SIGMA に比べりゃメジャーな存在である。

なんと、現状では OS X 上で SIGMA の RAW Data (.X3F) は、サポートされていない。アップルだけでなく、アドビもサポートしていないんで、iPhoto はもちろん、Aperture も Lightroom もペケである。RAW ファイルの現像は SIGMA Photo Pro が絶対必修であり、他の選択肢は少なくとも現時点で、皆無である。

あろうことか、アップルなどは宿敵 SAMSUNG の RAW をサポートしているにもかかわらず、SIGMA のシの字もない。ほんまに、アップルはアホである。

ま、有る程度覚悟はしていたが、マイナーもここまでくると見事であり、いっそ清々しい。

ここ、2週間ほどいろいろ設定を変えて、自分の使い方になじむように調整をしているが、コンデジで露出補正やホワイトバランスにまで気を使わなければならない機種がこの時代にあったとは、なかなか楽しいカメラである。

しかし、撮影された画像には、毎度驚かされる。ここまで、写っていいの? というのが、正直な感想。

その昔トリミングは、主に撮影時のフレーミングを尊重するため、また画質の低下の要因となる、戒められるべき行為として忌むべき悪行のように教えられた気がする。

しかし、その十分な画像サイズと等倍でちゃんと解像している写真を見ていると、何処でも必要な部分を切出して使用することが、忌むべき悪行どころか最大の恩恵のような気がしてならない。縦長横長、正方形はおろか、たとえパノラマでも、自由自在なんだから。

自分で撮影してみて分かったことは、メーカサンプルの解像感はけっして誇張などではなかった、ということ。もちろん絵画的な意味では到底およびもつかないが、あんなものは画家か詩人でなければ撮影できるものか、と思っている。

撮影時にはおよそ肉眼では確認できていないモノまで、シッカリと写し出されており、マクロ領域ではまるで電子顕微鏡のようだ。おのずと、そのような(どのような?)被写体を選びがちで、ピクセル等倍で見るのが楽しみになってしまう、あぶないカメラでもある。

デジカメ写真のピクセル等倍の鑑賞については、数多意見がある。明確に表明はしていないが、ベイヤー型センサー陣営(SIGMA 以外のすべて)は、ピクセル等倍では見て欲しくないと考えているらしい。

デジタル化されてずいぶん時間が経つカメラ業界は、いまだに写真はプリントして見てもらうことを、前提にしているように見える。Flickr や Picasa なども、あくまでも写真をストックしているだけのサービスだと思っているのだろうか。6〜8インチ程度のフォトフレームで見るなら、iPhone でも十分すぎるぐらいである。

また、業界のプロは看板やらポスター、雑誌(もう見ることも無くなったが)を媒体とした出力も考慮する必要はあるのだろうが、アマチュアにはあまり関係がない。実際デジカメ黎明期以来、もう久しく手札サイズの写真を見ることはない。例外は iPhone だが、コンデジの背面液晶と同じで、これは観賞ではなく確認作業でしかない。

鑑賞と呼べる行為には、最低でも高解像度 9.7インチ(2,048×1,536 いわゆる Retina)、今現在は24〜27インチモニタ(1,920×1,200 or 2,560×1,440)で見るのが当たり前になっており、いずれもかつての写真の見方とは大きく異なる。

液晶モニタも長期間使用すれば劣化するはずだが、手元にあるもっとも古い Cinema Display で見ても、Foveon X3 センサーで撮影された写真の素晴らしさは十分に認識できる。当然観賞用のモニタも質が高いことは理想ではあるが、多少条件が悪くとも十分にわかるほどに、その差が大きいことを確認できたこと自体が収穫である。

デジカメ黎明期より、様々な機種を使用してきたが、画質という点では未だに満足できたものはない。さほど不満が無いというのは、満足とは言えずただの妥協に過ぎない。

凝りがない、こんなもんだろう、というレベルなら、今まで使った中で iPhone 5 が満足度ではベストであり、その点においては、オリンパスの一眼レフでさえ iPhone 5 ひょっとすると iPhone 4S 以下である。

誤解の無いように断っておくが、携帯電話のオマケカメラとデジタル一眼レフでは、ユーザの期待度(期待の絶対値)が異なる、という意味である。iPhone のカメラは電話を買ったら勝手に付いてきたものであり、デジタル一眼レフは写真を撮るために購入したものである。

あまり同じ土俵で評価されるべきではないと思うが、そんな戯言はポケットに入ってからほざけと、iPhone が言うならつい同意してしまうような気がするのである。

満足できなかった原因は、主に解像感(≠解像度)とリアリティである。たぶん、その両者は実態として同じだろうと思うのだが、少しニュアンスが異なるような気もする。もちろん、この辺りになると、携帯のオマケの出る幕はなくなる。

被写体にもよるが、風景写真の遠景、とくに森林や樹木の枝葉、草木のディティール、近いところでは、堅さが感じられない金属や岩肌の質感などの描写に、違和感を抱き続けてきた。

ビデオ画像から切りだしたような、初期のデジカメ画質に比べたら格段の進歩ではあるが、それは単にビデオの静止画を極端に高解像度化したモノでしかない。かつての写真(といっても、既に記憶の彼方なんだが)とは、すこし違うように思っていた。

まあ、どこの製品もランクにより程度の差こそあれ、その点では同じだから、あえて公に口にしたことはなかったんだが、最初に見た DP1の作例により Foveon X3 センサーの写真を見た時、すでに時限爆弾はセットされていたのかもしれない。ただ、生で見ていない被写体を、写真だけで判断できるほどは、自分の目に自身はなかった。

SIGMA DP3 Merrill で自分自身が撮影し、その結果である写真を見て、それが個人的な錯覚ではないことがはっきりした今はもう、ローパス外した程度のベイヤーセンサー機の画質云々に対しては、どんな高級機が写す作例を見ても(作品ではなく、あくまでも作例ね)、なにも興味はわかない。

ただ、カメラとしての完成度は、他社が一歩も二歩も先を行っているのは事実で、前述の D800E などにも高級ハードウェアとしての魅力を否定する訳ではない。単に財布が否定しているに過ぎないのだが、買えもしない高級機でなく、現実的になんとか手の届くエリアで製品化している SIGMA が偉い、と思っているだけだ。

事実、SD1 より DP Merrill の方が結果としての画質は上だと思うが、撮影からのすべてのプロセスで上かどうかは、また別の話だ。SD1 の作例「自衛隊観艦式事前公開」などのリアリティは圧巻であり、こんなものを見ると DP シリーズではどうにもならない部分は確かにあると思う。あえてリンクは張らないが、↓で画像をググれば、一発で出てくるゾ。( º-º)>
(SD1+SIGMA APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM)

当初 4,600万画素がハッタリだと思っていたが、逆に従来のベイヤー型センサーの画素表示の方が、誇張のように思えてくる。というか、センサーの総画素数と同等の画像出力を期待すること自体に、ムリがあるように思う。

解像度オタクの戯言と聞き流してもらっても結構だが、補完で作り出すなら、現在の1/3か、せめて50%程度にリサイズと最適化をしなければ、期待する解像度は得られていないように見える。

その点においては、画素ピッチを狭めてまで、さほど高画質に貢献するとも思えない高画素化になぜ業界が邁進するのか、何となく分かったような気がする。

一般ユーザからは「デジカメに一千万画素もいらない」などという声をたまに耳にするが(自分もそう感じていた)、作る側にしてみれば、まず極端に狭められたピッチでもそれなりに使えるようにする技術を培い、時期がきたらそのノウハウで大型化するというプロセスの一環である。

昨今の大型撮像素子採用のコンデジやミラーレスが多く製品化されるのも、画素ピッチはもちろんのこと、まだまだ画素そのものが足りないことを、結局はメーカ側ではちゃんと分かっているんだろう。

現在のセンサー方式では、まともな一千万画素を作り出すためには、三千万画素は最低必要だ、ということを。


…ということで、今月はもう後がないので来月もヒトツよろしく。

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.03.30] 更新のモチベーション〜完結編 〜より転載&加筆修正

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