2015年9月1日火曜日

雑談の散歩道:其の弐

一気呵成に物事を進めようとすれば、弊害も出る。

あまり短時間に解決を望むより、少し落着いて頭を冷やしながら、そして足下を確認しながらでないと、ロクなことにならないようだ。

カメラバッグに限らず、お道具類というのは実際に使ってみないと分からないことも多いのだが、昔と違って得られる情報も格段に増えている。同好の士が語る経験談や評価記事も然る事ながら、最近の高画質動画からは、従来にはなかった新たな視点からの情報が得られるだけでなく、それこそ量的な換算だけでは表せないほど、膨大な情報量をもたらす。

意図的な映像というのも、確かに存在するだろう。だが、主観という点においては書かれた文章より、もう少し見る側に委ねられているような気がするのだ。映像を眺めながら、旅行気分に浸るのと同様に、登場する道具類について色々調べてみたり、…と。

そんな、インドアで楽しむアウトドアがあっても良い。

で、ネタとなるのはご存知の通り、例の「YAMAHA Serow Solo Camp Touring Movie」である。

基本的には、ヤマハが考えるセローの一般的な使われ方を映像化した作品だが、そのわずか6分ほどの映像は、まるでアウトドアカタログのような構成になっている。80~90年代に、WOWOW で盛んに放映されていた、オートキャンプ番組をギュッと圧縮したようにも見え、ちょっとした懐かしさもある。

これといった公式情報もないので詳細については不明だが、たぶん富士五湖あたり(本栖湖とか)を想定した、ソロキャンプのイメージ映像だ。そんな所には行った事もないので断言出来ないが、おそらく映像に登場する経路は、必ずしも実際のものとは限らない。

だが、そんなもんイメージ映像に決まってらあと断言したくなるほど、見事なシチュエーションが演出されている。それでも、色々なキャンプをしていれば、いつかはこんな状況にも出会す可能性もあるかもしれないね、と思わせるあたりがたぶん製作意図だろう。

そんな、イメージ映像としての全体的な流れとは別に、さりげなさを装いながらも、各場面では登場アイテムがいちいちアップで紹介される。いっそ、各製品に関するテロップでも流せば即座に完成する、商品カタログのような要素も合わせ持っているのだ。

冒頭のシーンでは、ひと目で分かるヤマハのメッチは別にして、個人的にはそれほど興味もない服装の類いは、良く分からんのである。既に廃盤になってしまったのか、着ているモンベルの合羽も公式サイトには見当たらない。背中に背負ったバックパック、履いているブーツやグラブ、極端にデカいベゼルの腕時計(SUUNTO?)なども含めて、メーカや製品の特定は出来ていない。

だが、不自然にもキャリアを介さずリヤシートに縛りつけているのは、間違いなく私も使っているタナックスのシートバッグだ。わざとらしく、上に括り付けているのは映像後半に登場する、ファイヤスタンドに違いない。

とてもキャンプ場への道程とは思えない樹海を抜けると、見渡す限りの草原というのも、まるで夢の世界を映像化しているようだ。そのわりには、モンベルのクロノスドーム(これも偶然同じモデルで色まで一緒)を設営している背景の対岸には、数人の人影も散見される。

だが、そんな興醒めな割り込みも、以降の映像には全く無い。それどころか、後半にはその対岸さえも消えて無くなり、夜が明けると突然富士山が現われるという、時空転移なサプライズまで用意されている。

主人公がテント設営後に始めるのは、珈琲を淹れるという行為である。それも、わざわざ豆からミルで挽いて淹れるという懲りようで、アルコールバーナへ着火の儀式から始まる。ただ、ここでのガストーチによる着火の動作は、あまりにもバタバタして頂けない。

この場面、なぜ製作側がNGにして撮直さなかったのか甚だ疑問だが、およそスマートとは言えない慌て振りである。また、実際にも屋外では着火したことが確認し辛いアルコールバーナーの炎も、何らかの演出により強調した方がそれらしく見えるような気もする。陽炎も立っているので、着火していることに間違いはないが、それはあくまでも高画質に依存した結果論に過ぎない。

不自然な方が自然に見えるというのも可笑しな話だが、DVD などの特典映像にも良く語られている手法の一種であり、映像表現とはそういう世界だと、既に一般にも知れ渡っているように思う。まあ、そんなスレた観客、端っから相手にする気はないのかもしれないが。

その後の、レザーマンのサイドキックがやたらに活躍する場面は、たとえ少々わざとらしくても道具好き、特にナイフ好きには喜ばれるだろう。まるで嘗て憧れた、サバイバルナイフを使いこなして危機を乗り切る、ランボーを見るような思いさえ湧いてくるのだ。

ただし、レザーマンの同シリーズ、ウィングマンのハサミに換えて、ノコギリを搭載したのがこのサイドキックである。その所為で、珈琲豆の袋をナイフで切らねばならないシーンなどを見ると、私にようにキーホルダーにマイクラでも付けとけよな、と思わざるを得ない。

それにしても、淹れ立ての珈琲を飲んであんな満足そうな表情を見せられると、思わず自分でもやってみたくなる。そんな、魅せられる効果は絶大だ。

ここまで前半に判明した、お道具類をまとめてみると以下のようになる。

◎ ヤマハ:ヘルメット(YX-3 GIBSON Version-T)
◎ タナックス:ミニフィールドシートバッグ(MFK-100)
◎ モンベル:クロノスドーム1型(#1122490)
◎ エバニュー:チタンアルコールストーブ(EBY254)
 &チタンアルコールストーブ用ゴトク(EBY253)
◎ ソト:スライドガストーチ(ST-480)
◎ ナルゲン:広口0.5L Tritan ストレートブルー(#91303)
◎ トランギア:燃料ボトル0.3L(TR-506003) 
◎ キャプテンスタッグ:アルミテーブル(M-3713)
◎ スノーピーク:チタンシェラカップ(E-104)
 &チタンシングルマグ No.2(MG-002※廃盤)
◎ ユニフレーム:コーヒーバネット(cute)
◎ ポーレックス:セラミックコーヒーミル(#46173)
◎ レザーマン:マルチツール(Sidekick)

と、いったところか。

まあ、テーブルについては確信はないのだが、たぶん一般的に考えて、あまり高価なものではないだろうと踏んでの結論だ。というのも、このテーブルのサイドに取付けられたポール(後にランタンをぶら下げる用途だと判明する)が、分からんのである。

一見アイリスオーヤマのメタルラックの一部のようにも見えるのだが、わざわざキャンプ用品でもないものを登場させるとは思えない。で、ここからは想像だが(というか、今迄も全て想像なんだけどね)、リアリティの演出のために在り物の流用という線もあるので、百均グッズではないかと考えた。

先日、ダイソーで如何にもアイリスオーヤマ19mm ポールのパチモンと思しき製品を見かけたので、これに違いないと確信したのだ。ただし、取付に使っている、滑り止めの黄緑がチラッと見えるパーツについては全く不明である。

そうこうしているうちに、本編は夕暮れから夜の部へと突入して、いよいよ焚き火の登場だ。やっとウィングマンにはない、ノコギリを装備したサイドキックならではの活躍の場面である。薪割りよろしく、かなり念入りに薪を作っている。

焚き火のベースとなるのは、冒頭で言及したユニフレームのファイヤスタンド II だが、それが他社のパチモノかどうかはこの際あまり意味がないだろう。収納サイズも約60cm ほどあって収まりが良いとは言えないアイテムである。バックパックに入っていた事にしておけば、さほど文句が出るとも思えないのだが、あえてシートバッグに括り付けていた意図を想像してみる。

それは、一度でも焚き火に使用したファイヤスタンドを、おそらく着替えや寝具の類いが収まっていそうなバックパックに入れるだろうか、と考えればシートバッグの上辺りが、もっとも無難な収まり所になるのだろう。(もちろんこれも想像だ)

ただ、ここでも着火に関しては、いまひとつ納得がいかない。ライトマイファイヤを使うなら、前半のアルコールバーナーの着火に登場させる方が相応しい。サイドキックで、わざわざ木の枝を細かく切り刻んだ上に、枝の表面を燃え易くするために表皮を削ぐような動作をしておきながら、火打ち石での着火では見ている方がイラついてしまう。おい、ほんのさっきガストーチを使っていたよな、とついツッコミも入るというものだ。

ちなみに、個人的には魚釣りをする趣味はないし、どちらかといえば魚が欲しけりゃ魚屋へ行く方である。どうしても漁がしたいなら、ダイナマイトやバッテリーはさておき、網でも投げた方が手っ取早いだろうと考えている。そういう意味では、こと釣りに関しては身も蓋もないのである。

だが、道具の使い方やそのシチュエーションについての拘りについては、ある程度の理解を示す方であり、何でもかんでも正味を求める方ではないと思っている。ただ、もし自分がその立場にいたら、前後の流れからトランギアの燃料ボトルに残っているエタノールを木の枝に降注いで、やおらガストーチで着火におよぶと思う。

なにも、あえてライトマイファイヤに付属の金属片を使わず、いかにも火花が飛びにくいであろう、サイドキックのノコギリの背で着火しなくてもいいだろうと思う。

だいたい、ロック機構も無いナイフで峰打ちなどしようものなら、大怪我をする可能性だってある。ひょっとすると、サイドキックのメインブレードには、ロック機構が付いていることをアピールしたいが為に、レザーマンがやらせたのかと疑いたくなるぐらいだ。何かしら意図があっての事だと思うが、そのへんは良くわからんね。

そんな焚き火に火が点いたら、おもむろに夕食の準備に入る。このシーンが言うなればアイテムカタログとして、この映像作品のハイライトだろう。至ってシンプルな構成とはいえ、数々のアウトドアグッズが登場する。

メインのアルミロールテーブルとは別に、スノピのオゼンかソトのフィールドホッパーかは識別出来ないものの、サブテーブルの存在も確認できる。前述のポールも、パッキングを考慮すればおそらく2本を繋いで 90cm 近い高さを稼いでいるのだろう。

明らかなのはスノピのランタンハンガー、その先にはたねほおずきに加えて、地べたに置かれているのは、ジェントスのエクスプローラーと思しき LED ランタンだ。椅子はハッキリ写っていないので特定は難しいが、脚の形や横バーの位置、背もたれの高さなどから、たぶんヘリノックスのチェアワンだと思う。

どうやら、献立はレモンとパプリカのポークソテーらしいが、流石にサイドキックを使い回すようなデリカシーに欠けることはしない。調理用には、ちゃんとオピネルのナイフを用意しているあたり、武骨なだけの男ではないぞという演出か。ちょっと百均っぽいまな板の上で、かなりゴツイ肉がどんどん切り分けられていく。

オリーブオイルと思しきものが入った小瓶(たぶん、モンベルのミニクリアボトル 20ml)や MSR の調味料入れ、スノピのチタンカトラリなども見える。プリムスの黄色いガスボンベもチラッと見えるが、ガスバーナはあえてソトのマイクロレギュレータ仕様ウインドマスターに、オプションの4本ゴトクという拘り様である。たぶん、ソトの純正ボンベは色が地味過ぎて却下になったのだろうが、メーカは推奨しない組合せだと思うな。

そして、着火した途端に唐突に置かれるフライパンは、クッカーのフタみたいなチャチなものではなく、グリッパーで掴む本格的な山用品だ。最初は、MSR のブラックライトかと思ったが、どうも底のアールが異なるようにも見える。グリッパーにもフライパンにも刻印は確認出来ないが、たぶんエスビットのアルミフライパンではないかと思う。

ただ、クッカーに関してはフライパンのみで、鍋釜の類いは一切見受けられない。飯は食わんのか飯は、…と思うが、ともすればボンカレーやラーメン、せいぜい焼肉ぐらいしか思いつかないような下世話なキャンプとは違うのだ、というのを強調しているのかもしれないな。

ここまで後半に判明した、お道具類をまとめてみると以下のようになる。

◎ ユニフレーム:ファイヤスタンド II(#683064)
◎ ジェントス:LED ランタン(EX-777XP)
◎ ソト:ミニテーブル・フィールドホッパー(ST-630)
◎ スノーピーク:ランタンハンガー(LT-006)
 &ソリッドステートランタンたねほおずき(ES-040GY)
 &ワッパー武器(SCT-001)
◎ オピネル:ステンレスナイフ(#7)
◎ モンベル:ミニクリアボトル 20ml(#1124424)
◎ MSR:ソルト&ペッパーシェイカー(#39338)
◎ ソト:ウインドマスター(SOD-310)
 &4本ゴトクフォーフレックス( SOD-460)
◎ エスビット:グリッパー(ESG130HA00)
 &アルミフライパン(ESP185HANS)

まあ、オピネルのナイフなど、サイズや材質まで特定する材料がある訳ではないのであくまでも想像だが、一般的にはカーボンスチールより錆びにくいステンレスを選ぶだろう。サイズも調理用なら7cm 前後で当初 #6 あたりかと考えていたが、ハンドルにリーフ柄も見えるので、No.7 のネイチャーエングレーブドかもしれない。

もっと言えば、映像では全く見えないテント内の照明にも言及してみることだってできる。最近の売れ筋から想像すれば、ジェントス LEDランタン(SOL144S)に違いねえ、なんてね。

こうしてみると、結構メーカはバラついており、如何にもありがちな特定メーカ一色にはなっていない。というか、バーナーとボンベの組合せなどを見れば、逆に不自然なほどのバラケ方という気もしないではない。

また、山善やロゴスは当然としても、コールマン製品が1つも登場しないのは、何か裏事情があったのかと訝ってみるのだが、ファミリーキャンプとは一線を画したいという製作意図なのかもしれない。

その服装からも、まだ寒い時期だろうと想像するが、いちいち食器になど使わず、焚き火を眺めながらフライパンを食器がわりにダイレクトに食べるあたりも、いかにも男のソロキャンプっぽくていい。

焚き火の火もそろそろ消えかかる頃には、テントの中に引上げて就寝の準備だろう。ここから先は、所帯臭くなるからあえて映像化はしていない。内側からランタンに照らされたテントを前景に、満天の星空と寄り添うようなセローのシルエットが雰囲気を盛り上げる。

そして、富士山をバックにした湖の水面が夜明けと共に明くなり、全編の幕を閉じる。パチパチパチ♪

ぶっちゃけ、キャンプスタイルなど、個人の趣味で行われるものだから色々なやり方があっていいと思う。それ故に、自分ならランタンポールなど使わなくてもセローのクラッチレバーやブレーキレバーで十分だろうとか、LED ランタンだけでは寂しいだろうなどと、あらゆるツッコミを入れるのも楽しいものだ。

そろそろ夏も終わり過ごしやすい季節になってくるので、これからが本格的にキャンプシーズンの到来だろう。よっしゃあ、ワシも行ったるど〜という気にさせてくれる、なかなか味わい深い映像作品である。


…ということで、 今月もヒトツよろしく。
2015年09月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2015.09.01] 雑談の散歩道:其の弐 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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