2015年11月22日日曜日

雑談の散歩道:其の四

今月で、そろそろ半年が経過した。

なんのことかといえば、5月に購入してから順調に走行距離を伸ばしているセローである。燃費の方も、だいたい 37km/ℓ前後で推移していたのだが、最近3回目のオイル交換を終えてからは、ついに40km/ℓ越えを連発するようになった。

これは、時間の経過と共にだんだん擦り合せができたせいに違えねえなどと勝手に納得していたのだが、よくよく考えたら無謀な林道アタックを控えるようになったことが、一番の要因のような気もする。

非力な小排気量の単気筒故に、大人しく走ればそれなりの貢献もしてくれるようだ。おかげでミニの方は活躍の頻度が下がってしまったが、燃費でダブルスコア以上の差をつけてりゃ経費的には良い傾向といえるだろう。

とはいえ、そろそろ秋も深まり冬の気配も近づくにつれて、またまたミニの出番が増えてきそうな、根性無しの今日この頃である。

ま、そんなこたあどうでもいいのだ。

「インドアで楽しむアウトドア」シリーズの第二弾、久しぶりに購入したスイスアーミーナイフの続きである。

そもそも、アーミーナイフという呼び方に対する誤解もあるように思う。いわゆる、軍用というやつだが、モノが刃物だけに即、兵器に結びつけられやすい。

いかに軍用といえども、ペンチやドライバなどの工具類、フォークやスプーンのような食器類も軍隊が制式採用すれば軍用品だが、必ずしも銃剣やサイドアームのような武器ではない。アーミーナイフも、小銃のメンテぐらいには使われるかもしれないが、せいぜい工具の延長か軍用食のカトラリ補助と考えた方がよいと思う。

何かにつけ、規制の対象となりやすい刃物類だけに、軍用品のイメージが悪い方に取られやすい。そんな風潮から、 業界の方でもアーミーナイフというより、マルチツールと呼ばせたいのだろう。

だが、どんな道具であっても、それを使う人間がその用途を決定するのだ、ということを忘れてはなるまい。

前回、ビクトリノックスとウェンガーの製品のデキについて、言いたい放題、好き勝手なことを書いたのだが、少々補足しておこう。

この手の製品、田舎で調達するのはそう簡単ではなく、それはもう至難の技といっても過言ではない。最近のようにネット通販の態勢が充実する以前は、おのずと出張などで首都圏や関西圏へ赴いた時に、その筋の店を回ることで賄っていた。

ウェンガー製品は、どこの店も品数は少なく選択肢も限られていたし、実売価格でも有利なのはビクトリノックスの方だ。要するに、限られた予算でどちらかの選択を迫られたら、コスパに優れる方を、もっといえばデキの良い方を選んでしまうのである。

実際、製品の精度やそれに伴う動作を具に観察すれば、どうしてもビクトリノックスに軍配が上がる。

あくまでも比較の問題だが、スプリングが強めで各ツールがバッチーンと閉まる、ビクトリノックスのカチッとした作りは、使っていて気持ちの良いものだ。それに対して、ウェンガーの方はパタンとかポテンといった感じで、おいコレ大丈夫かと心配になるほど、全体にユル〜いのが特徴である。

各パーツの作り込みも、あらゆるアイデアや努力によって改善を続けるライバルに比べると、比較的ノンビリしたもので、いつまで経っても改善されない部分も多い。

前回、欄外で言及した缶切りに関してだが、大して図番の材料もない状態で見切り発車したために、本文との不一致な部分も多かったので、ここに再編集した。

両社の製品を比較する場合、押切と引切という外見的な違いだけでなく、あらゆるパーツに渡って個性?が見受けられる。

ウェンガーの場合、その尖った刃先は嫌が上にも刃物感を強調する。だが、見た目は良いのだが、実用面では缶のエッジに引っかける顎の位置がハンドルに近過ぎて、特に四角い缶やRの大きい缶だとまずかからない。

原因は、栓抜き缶切りがペアなったツールである。向かい合わせに仕舞う場合、少しでも長さを稼ごうとすれば、お互いが干渉しないように刃先をオフセットする必要がある。そうでなくとも、サイズ的に標準オフィサー(91mm)に比べて 、85mm を標準としているウェンガーには不利な状況である。

ところが、ビクトリノックスの場合、手元にある一番旧いモデルでも 4mm 近く交差している。それに対してウェンガーの方はかなり後期のモデルでさえ、やっと 1mm 程度でしかない。旧いモデルだと、お互いに先端をオフセットさせているにも拘わらず、全く届いてさえいなかったりする。

この点は、ビクトリノックスはウェンガーより小さい、 スモールオフィサー(84mm)でも 3mm 以上交差させている。その上、前述の顎の位置もハンドルの縁から遠いので、缶の形状に影響されにくい。従って、缶切りに関しては最初は慣れない押切であったとしても、ビクトリノックスの方が使い易い。

また、対照的な尖端のデザインも、結果的には周囲に不必要な警戒感を抱かせない効果もある。小さめなマイナスドライバーも兼ねるなど、ウェンガーとは違う意味で良く考えられたデザインになっている。

次に、比較されることが多いハサミについても、少々触れておこう。結論から言えば、使い心地の点だけに言及するならビクトリノックスの方が優れている。

たしかに、如何にも危うい形状のスプリングに関しては、ウェンガーの方が耐久性もありそうだし、見た目のデザインも良い。マイクロセレーションが施された刃先も、テンションの掛かっていないラインの切断などには有利だろう。

だが、その刃体と並行するバネレイアウトのせいで、どうしても指に当たるハンドル部分が薄くなってしまい、指への当たりがあまり心地よくない。ビクトリノックスの方は、バネ受けを兼ねてハンドル部分は刃体の倍の厚みを持たせているので、指に当たるタッチが良いのだ。

これは、ウェンガーのフルサイズと、ビクトリノックスの場合、たとえば最小のクラシックを比べても、遥かに太く作られているのだ。野外ではさておき、室内において文房具的な使い方をすると両社の差は拡がる一方で、ビクトリノックスの細かい拘りのようなものを感じる。

実際に切る動作をしてみれば分かるが、軸となる側の刃先までが動いてしまうウェンガーの構造は、前述の指に対する感触と同様に、最後まで改善されることはなかったようだ。

肝心の切れ味に関しても、デフォルトの状態でもビクトリノックスの方がシャープでスパッと切れる。ハサミの開口部も大きく開くので磨ぎ易さでも優るが、波刃のウェンガーではそれも難しい。

また、スプリングに関しては消耗品と割切って、交換部品をオプションパーツとして格安で供給し続けている。まあ、この辺りになると流通や供給能力にも自信があり、効率を重視するビクトリノックスのドライな割切りみたいなものを感じるところだ。

しかし、その一方で細かい改善に対する努力も怠っていない。最近のモデルをよく見ると、ハサミのスプリングが当たる裏側には、僅かな溝が彫ってあり、少しでも外れにくくしようとした跡が見られる。実際の効果と製造過程に於ける手間暇を考えれば、これはもう涙ぐましい努力といっても過言ではあるまい。

また、それ以外にも旧モデルと最近のモデルでは、細かいところがかなり異なる場合が少なくない。もう、既に完成の域に達したかにみえるスイスアーミーナイフだが、随分と細かいところまで検証され未だに改良を続けていることが分かる。

まあ、何かとそつの無い商売上手な同社のことだから、顧客を喜ばす演出という見方もあるが、そんなパフォーマンスにもしっかり魅了されている私のような顧客は、たぶん結構な数に上る。ウェンガーに欠けていたのは、そんな所ではないかと思ってしまうのだが、…。

そんなウェンガーにも、ビクトリノックスよりも好きだと感じる要因の1つに、同社のロゴマークがある。

どちらも、赤地に白十字で似たようなモノなんだが、ビクトリノックスの方は、十字の左右が盾の外枠と繋がれている。メタルインレイの仕様上、どうしても一筆書きのように繋がっている必要があるらしいのだが、それが気にくわないのである。

また、一般的なオフィサーモデルでは、ハンドルが赤いことを利用して外縁のみの線画として描かれており、何かしら手抜きっぽい感じがする。人によっては、高級感を感じるメタルインレイなんだろうが、ハンドルよりも明るい赤をバックにしたウェンガーのマーク(十字も白い)の方が、より魅力的に見えるのだ。

もちろん、ビクトリノックスのラインナップにもちゃんと背景の色でなく、赤バックの盾マークも存在するが、逆にそちらはメタルインレイでもないのに外枠と繋がっていたりする。まあ、メタルインレイのロゴを中心に考えれば、繋がっている状態がデフォルトであるという事なんだろうが、それもイマイチ納得し難いものがある。

また、海外でも似たような心情のマニアを多いらしく、マークの背景色については、”with red shield” と注釈が付くほど、レア物として特別扱いのモデルも存在する。一般的な視点から見れば、高がハンドルの色や素材など、道具として良し悪しには無関係だろうと思われるかもしれない。だが、自分の所有物には、徹底的に拘りを見せることを信条としている連中に、そんな殺伐とした一般論を押付けても納得するわけがないのである。

そんな拘りを全て捨て去り、流れに任せて生きられりゃいっそ楽だろうとは思うが、まあ、そこはそれアレだから、…ね。つい逆らって己を通そうとするから、無価値のモノでも価値が生まれるのであり、その方が面白いから止められないし、辞められない、病められないから停められないのだ。なんのこっちゃ?

いずれにしても、そう簡単に割り切って余り無しとならないのが、マニアでありオタクである所以だ。

今後、ビクトリノックスによってウェンガー製品の良い所や優れた所が、どの程度フィードバックされるのか分からない。願わくば、デレモンコレクションに限らず、メインストリームの製品にも是非採入れて、より進化させた形で登場させて欲しいものだ。

そうでなくても耐久性には優れる製品であり、一度購入すれば余程のことがない限り、買い替えや買い増しなど期待出来ない類いの製品だ。

年代による細かい差違に一喜一憂する姿は、端から見れば呆れた所業に過ぎないかもしれないが、そんな違いを見つけることを楽しみにしているマニアも少なくないのである。

そんな効果もあって、実用性云々とは無関係に、どんどん増殖してしまうのが困ったものなんである。

まだまだ、語りきれないことも多いので、もう暫くは続きそうな予感。


…ということで、ヒトツよろしく。

2015年11月某日 Hexagon/Okayama, Japan


http://www.hexagon-tech.com/
[2015.11.22] 雑談の散歩道:其の四 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

0 件のコメント:

コメントを投稿