2015年12月21日月曜日

雑談の散歩道:其の六

巷では、クリスマスセールも酣である。

アマゾンでも今なら「クリスマスイブまでにお届け 」という文字も踊って、如何にもシーズン真っ只中という雰囲気を盛り上げてくれる。

景気回復、延いては日本経済の更なる発展のためにも、せめてこの時期だけでも、せいぜい無駄遣いをしようではないか。

ところで、この酣(たけなわ)という言葉、耳で聞いている分にはごく自然に聞き流せるのだが、文字にしてみると思わず、へ?、す?となっちまう。何が酢(す)だって?酢酸か?

ま、平仮名で書きゃいいんだが、宴もたけなわとか飲み会とかの酒の席ぐらいでしか聞かない。酩酊状態の酔っ払いには、いったいどんな竹と縄なんだろうというあらぬ疑問も湧いてくる。そんな配慮から、一応本来の意味である、最も盛んな時を表す言葉として、漢字で書いてみただけである。

通販の場合、幾ら宅急便が頑張ってもイブを過ぎちゃ興醒めだ。よって、今日辺りがピークだろうから文字通り、酣なんである。

とまあ、酉(さけのとり)が付く文字をいろいろ釀してみたわけが、さて幾つあったでしょう。

ま、そんなこたあどうでもいいのだ。

「インドアで楽しむアウトドア」シリーズの第二弾、久しぶりに購入したスイスアーミーナイフのそのまたまた続きである。

前回は、数ある製品ラインナップの中から最適なモデル選択の助けになればと考え、各パーツの単価などを算出してみた。

公式サイトには、定価として税抜き価格が表示されており、これが各製品のグレードを表す指標となる。いうなれば一種の価値基準だが、オープンプライスが導入されて以降は、あまり定価を公表したがらないメーカも多く、たいていはメーカ希望小売価格などという、卑屈な名称でお茶を濁しているのが一般的だ。

その点、実売価格とは事程左様にかけ離れた値段を、何の臆面もなく正価として堂々と公表しているビクトリノックスは、きわめて珍しい存在だ。おかげで、メーカの考える各製品のグレードランクは大変把握しやすい。

本来、定価というのは購入する側にとっては必要不可欠な情報であり、それがなけりゃ販売価格が高いのか安いのか俄に判断し辛い。だいたい、オープンと称して物の値段を曖昧にしてしまうことが、いったい誰のメリットになるのか常々疑問に感じているのだが、少なくとも消費者の側に配慮した制度ではない。

一般消費者にとって、定価など幾らであろうと一向に構わない。どんな小売価格を希望しようがメーカの勝手だが、実売価格は流通業者の都合で決定されるのが市場経済のお約束となっている。

従って、各モデルのコスパについては、購入価格を踏まえた上でどんな機能を重要視するのか、実際に使う場面を想像しながら決めていけば良いと思う。

たとえば、無人島に漂流したことなどを想定すれば、おのずとスイスチャンプのような多機能モデルになっちまうだろう。スイスチャンプのコスパは決して悪くないし、お買い得の筆頭モデルと断言してもいいが、それが最適な選択かどうかは別の問題だ。

個人的には無人島には、大量の食料やちゃんとした道具箱と一緒に流れ着きたいものだと常々考えているが、ここでは、あまり贅沢を言ってられない状況に遭遇した時のことを想定した方が良い。

普段の生活の延長線上にありそうな緊急時を想定すれば、必ずしも他の道具が全く無いという状況は考え難い。そんな状況では、マルチツールに頼る機能は必要最低限でよい。あくまでも何かの代用品として、他に頼るモノがないときに役立ってくれれば御の字なんである。

それより重要なことは、イザという時に手元に無ければ全く意味がないということだ。日頃から緊急時に備えて、道具類は整理整頓して1つにまとめて緊急持出し袋などに入れたはいいが、その袋を丸ごと忘れたり所在が不明では、悲劇を通り越して喜劇ですらある。

そのため、常時身に着けていたり普段使いのバッグなどにも分散して常備しておくのが確実だ。そんなシミュレーションも兼ねているのが、EDC(Everyday Carry)なんである。

マルチツールとはいえ、SAK(Swiss Army Knives)の基本機能は、やはりナイフであって工具ではない。その点、野外における実用性を考えれば、レザーマンのようにペンチ(プライヤ)を中心に据えたアプローチの方が有利なのかもしれない。

だが、どちらが良いかではなく、どちらも良いという視点を持つべきで、どちらか一方に決めてしまう必要などは全くない。ましてや、日常において必ずどれかひとつを選ばなけりゃならぬという、ゲームの縛りみたいなものがある訳でなし、双方の利点を上手く組合せたセットみたいなものを考えれば良いのだ。

従来よく持ち出していたのは、キーホルダツールとしてのビクトリノックス・クラシックと、レザーマン・マイクラという組合せが多かった。

そのマイクラも、最近スタイル PS やスタイル CS などを経て、スクォート PS4 という新人に取って代わられたのだが、そのあたりの経緯についてはまた別の機会に譲ろう。

キーホルダなどのサブツールとしては、機能よりも小さく軽いことが重要で、極端な話その存在さえも忘れるほどが良い。ま、持っていたことを本当に忘れてしまうとイザという時に役に立たないから、多少の自己主張はあったほうが良いかもしれない。

その上で、メインとなるツールは、どんな場面を想定するかで決まってくる。

EDC のメインツールがナイフであった時代、90年代は上記組合せに加えて、メインとしてスパイダルコ(デリカ)が常にポケットに入っていた。

当時は仕事柄、いろいろな荷物(主に段ボール箱)の梱包を解くことが多く、ほとんど制服であるかのごとく履いていたベトナムズボン(最近ではカーゴパンツと呼ぶらしい)のサイドポケットには、常にクリップで留めたハーフセレーション(半波刃)のデリカが定番だった。

他に何もなければ、クラシックやマイクラの小さなブレードでもこなせなくはないが、ある程度数がまとまったり、開梱だけでなく段ボール自体の解体までとなると、さすがにちと頼りない。

この手の作業、カッターナイフでも比較的大型なものが必要になるが、携帯するにはイマイチなものが多いし、刃厚の薄いカッターで自在に切るのは結構骨が折れる。ある程度厚みのあるナイフのブレードの方が、却って使い易くて便利でだったというのも理由のひとつだ。

もちろん、スパイダルコの特徴であるワンハンドオープンも然る事ながら、常時持ち歩く道具としての拘りがあったからこその選択であったのは、言うまでもない。

ビクトリノックスも併用で持ち出すこともあったが、道具としての使用頻度が上がれば上がるほど、取出してから使えるようになるまでの時間が重要になる。

当時メインで使っていたデリカは、何時如何なる場合においても、ズボンのサイドポケットから3秒以内に、その気になれば1秒前後でも使用可能になっていた。そんなもん相手に、他のナイフではまず勝負にはならない。

ただ、刃高や刃厚もそれなりにあり、切っ先も鋭い刃渡り7センチのハーフセレーションである。日頃からなるべく手のひらで刃体を隠すようにして使っていたが、私的には大変お気に入りの爬虫類的なデザインも、その凶暴な全体像が明らかになれば緊張する者は多い。

客先などで、お〜い何か切るものないかと問われて、即座に出て来るのがこのデリカでは当然ヒンシュクものであり、その動作自体もあまりにも電光石火すぎて、周囲の者をドン引きさせることも少なくなかった。

そんな人目のある所では、やはりビクトリノックスに限る。それも小さなクラッシックあたりが、見た目も可愛いから誰しも騙されやすく、大変重宝した。

今世紀に入ってから、あまり大きな箱を相手に格闘することも少なくなり、また時節柄刃物に対する周囲からの風辺りなどもあって、徐々にスパイダルコのシリーズから遠ざかってしまった。

まあダル子の場合、趣味というより実用の側面が強かったので、そのへんはビクトリノックスとは少し異なる接し方であったかもしれない。

それ以前の80年代には、出始めのレザーマンにも興味は示したが、どちらかといえばやはり刃物メインとなる用途の方が多く、ナイフがオマケ程度でしかないマルチツールにはあまり惹かれなかった。個人的には、黎明期のレザーマンの出来自体にもあまり満足できず、導入には至らなかった。

後年、その後追いともいえるガーバーなども面白がって幾つか買って暫くは持ち歩いてもみたが、あまり使った覚えはない。業務用として実用性や使い勝手を望めば、どうしても専用工具に軍配は上がり、それ以外の部分で余程魅力がないと、持ち出す気にもなれない。

逆に仕事を離れて、当時のレザーマンやガーバーより魅力的だったのは、何と言ってもバックツールだ。

バックといえば、同社の定番ともいえるフォールディングハンター(#110FG) を腰にぶら下げていた時期もあったが、さすがに街中ではどうよという外観とサイズである。いかに時代が違うとはいえ、その点においてはスパイダルコ以上に警戒されること間違いなしである。

それ以前から使っていたより小型なスカイヤ(#501)も、サイズ的には何も問題はなかったのだが、野外での使用と違ってオフィスや倉庫では、刃を出しっ放しというわけにもいかない。頻繁に出し入れの必要があると結構面倒で、メインのナイフもバックのようなクラッシックなモデルから、次第により現代的なスパイダルコに変遷していく。

加えて刃物以外の要求も出てくると、サブとしては俄然マルチツールの方に興味の対象も移ってくる。バックツールの場合、ガーバーでは満足出来なかった実用以外の部分もそれなりに網羅されており、ただの工具レベルから一歩踏み出していたように思う。必然的に、持ち出す機会もガーバーより遥かに多かった。

野外活動においても、活躍することが多かったバックツールだが、まあマルチツールとしての出来自体はそれほど褒められたものではない。レザーマン(ミニツール)やガーバーと比べても、全般的な強度に関してはイマイチ弱い。強く握るとグニャって少々頼りないのだが、初期のレザーマンやミニツールと比べても手に当たる感触が柔らかく、そのタッチが気に入って常用していた。

また、ナイフ屋らしく全てのツールにロック機構を持った点や、その展開の仕方などに独自性を持っていた。それほど安くもなかったはずだが、ただの後追い製品ではないと感じたのも、購入のきっかけとなった。その後の実使用においても取り立てて不満もなく、それ以上マルチツールの類いに入れ上げる事もなかった。

件のレザーマンも、ミニツールになってやっと初めての導入となったのだが、その携帯性以外にはそれほど魅力もなく、決してメインツールになることはなかった。おそらく、その後に購入したマイクラをキーホルダに付けてから以降、マイクラこそが自分にとってレザーマンを代表するツールのようになっていたように思う。

そんなわけで、ごく最近まで野外で活躍するのはバックツールを筆頭にバックのナイフ群であり、ここ十年ほどはメインのナイフも、フォールディングハンターやスカイヤに戻っていったのである。

屋外での使用においても、片手でも即使用可能になるスパイダルコの方が薄くて軽いし、携帯には持ってこいなのは分かっていた。

ただ、作業では重宝したハーフセレーションも、いざ研いでやろうなどと考えたら、とてもじゃないが無理がある。ストレートブレードのダル子もいくつかあるわけだし、だいたい研がなきゃならんほど使わんだろうというのも、紛れもない事実だ。

ぢゃ、なんで使わないかといえば、あまりにも仕事絡みでの使用が多かったので、全てが業務作業の延長のように思えてしまい興醒めにも程があるという、極々個人的な理由だったりする。

ツーリングやキャンプが前提なら、間違いなくバックのナイフ群がメインになるのだが、普段の EDC には、ビクトリノックスのコンパクトというのが、ここ最近の定番になりつつある。

マルチツールの場合、実用性ばかりでは面白みに欠け、いわゆる工具の一環でしかないとなれば、おのずと興味も薄れる。やはり、机上の空論、想像する楽しさや、文房具としての魅力に欠ける点が、ビクトリノックスとの一番大きい差ではないかと思う。

とはいえ、時代も変れば姿形も変るし、見た目から入ることの多い身にとって、デザインはことさら重要な要素である。その辺りの検証もかねて、最近の動向を調査するべく導入してみたのが、レザーマンのウィングマンと一連のスタイルシリーズなんである。

初期の直線的なライン一辺倒で、いかにも武骨なデザインから大きく代わったのがこのスタイルシリーズで、少なくとも80年代のミニツールとは相当異なる製品だ。

しかし、そのぶん価格も上昇しており、最近の為替レートの影響もあってか、同社のメインラインナップの大半は、まず買う気にさせてくれない。購買欲をそそらない主な理由は、決して高級過ぎてどうこうでなく、ただただ法外に高いとしか思えないのである。

ぶっちゃけ、誰がペンチごときに一万円以上出せるものかという、ごく真っ当な消費者意識からであり、革男命な連中にケンカを売る気は毛頭無い。

その所為もあって、某ヤフオクで入手した廉価版シリーズだけが評価対象、というのも片手落ちかもしれない。だが、ボランティアで製品評価記事など書いているつもりも更々ないし、あくまでも個人の趣味である。その範囲から逸脱した価格帯の製品のことなど知ったことか、というのもぶっちゃけた話である。

ビクトリノックスにも、スイスツールという似たような製品も存在する。見るからにレザーマンの後追いともいえる製品だが、同社のラインナップでは最高級グレードの一角を占める。それでも、レザーマンの価格帯ではせいぜいお勤め品の雄、サイドキックやウィングマンのちょい上程度でしかない。

ここ最近の落札価格では、この両者に市場価格ほどの差はないどころか、逆転しているぐらいなんだが、それを人気の差という一言で片づけるわけにもいかないのだ。

そのあたりの細かい比較は次回以降に譲り割愛するが、この両者似たような形態でも、やはりメーカの思想の違いなどを良く表しており、なかなか興味深い。

屋外で使うナイフ類は、ロック機構がないと安心して使えない。クラシックなバックのナイフを持ち出すのも、そのあたりが主な理由なんだが、少なくとも単体のナイフについてはロック機構が必修と考えているし、今でもその考えは基本的に変わらない。

だが、無ければ無いでそれに向いた使い方があるのも事実で、ある程度刃物類に慣れてくるとその辺りも多少寛容になってくる。要するに、あまり物事全てにこうあるべきで、それ以外は認めず全て排除する、というのも如何なものかと思う。

所詮、道具はその使い方次第でどうとでもなるモノ、ある程度工夫することで便利に使えるものも多い。また、気に入った道具なら、その工夫自体を楽しみに変えることで新たな発見もあったりするから面白いのだ。

ビクトリノックスでは、ハントマン・プラスを搭載するトラベルセットを、荷物の片隅に突っ込んで出掛けたことも何度かある。だが、屋外ではそれがメインで使用されることはまずない。あくまでも、いざという時の緊急用であり、それを使わなければならないような場面には、できれば遭遇したくないものだ。

やはり、緊急用の道具類というのは想像の世界で楽しむもので、ましてや他に有用な道具があるなら、それを差し置いてしゃしゃり出てくるべきではないのである。

しかし、だからといって役立たずなどでは全くないはずだ、…と思う。まあ、そのへんも今さらではあるが、これからツーリングやキャンプに出掛ける時には、意識的に SAK 連中を連れ出して実証してみようと思うのだ。

ほんと、今さらだけど。


…ということで、ヒトツよろしく。
2015年12月某日 Hexagon/Okayama, Japan


http://www.hexagon-tech.com/
[2015.12.21] 雑談の散歩道:其の六 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

0 件のコメント:

コメントを投稿