2016年1月30日土曜日

雑談の散歩道:其の八

雨の降る日は、天気が悪い。

一見当たり前の話だが、だからといって晴れさえすれば良い天気というわけでもない。

先週あたりから、やっと冬らしい気候になったと思ったら、県南でさえ氷点下5〜6度である。おいおい幾ら何でも寒すぎるだろう、もう少し手加減しやがれと思う。

おまけに、今週末は雨模様で出掛ける気にさせてはくれない。おかげで現像作業は捗りそうなものだが、ここ最近はあまり目新しい写真もないし、そもそも iPhone 以外では何も撮っていない。

昨年来、撮り合えず撮ってみただけで、そのまま忘れ去られた記録と記憶などを掘り返してみる。懸案に懸案を積み重ねて高くなり過ぎ、もう倒れそうになっているものをなんとかまとめてみようとするんだが、中々思うようにはいかない。

ま、そんなこたあどうでもいいのだ。

今回も「インドアでも楽しめるアウトドア」シリーズの続きで、去年より溜まりに溜まった在庫処分だ。


こんな時、気候が良ければ単車で気晴らしに逃避行となるところなんだが、寒い上に天気も悪いとなればそれも侭ならぬわい。

仕方がないので、部屋に篭って錆びたナイフでも磨いて過ごすことにしよう。

その昔、仕事でしょっちゅう配線作業なども行っていた頃は、あらゆる工具を満載した道具箱を持ち歩いていたので、各々の工具に対して携帯性は望んでいなかった。

もう、かれこれ10年以上前の話だが、身近にあるべき EDC のメインはあくまでもナイフであり、それ自体何も問題はなかったのだ。ところが、職場環境の変化からそんな道具箱を持ち歩く頻度も下がってくると、かつてはいとも簡単に対応出来たことさえ覚束なくなる。

必要な道具が必要な時に、手元に無いことに苛立ちを感じ始め、次第に EDC に対する要求も上がってくると、必然的により高機能なモデルに興味が湧いてくる。

そんな時代に購入したのが、ビクトリノックスのサイバーツールである。

それ以前、高機能の筆頭モデルであるスイスチャンプもいくつか持っていたのだが、残念ながら工具系のツールが少ないので、持ち出しても仕事上で活躍することはあまりなかった。

その点、ビットドライバを持つこのシリーズ、正に渡りに船といった感じであり、ここに来てやっと趣味百パーの世界から一歩踏み出した感はあった。最初はサイバーツール 34T を購入、数ヶ月後にはヤスリとノコギリが追加された 41Tも買い増すなど、矢継ぎ早に増殖していった時期である。

まあ、ポケットナイフとしては、おい冗談だろうというほどゴツくて重たいのだが、どちらのモデルもビットドライバに加えてプライヤも搭載している。

その割には、サイズ的にはかなりコンパクトにまとまっており、重量も大きい方の 41T でさえせいぜい 190g に過ぎず、小さい方の 34T なら 150g 程だから、道具としてはさほど目くじらを立てるほどでもない。

今から思えば、最近のお気に入りであるスイスピやレザーマンのウィングマンのような、プライヤ主体のマルチツールよりは十分に軽いのだ。

また、プラマイのドライバだけでなく、ヘキサやトルクスにも対応できるので、末期の Power Mac G4 や G5 などのデスクトップを始め、初期の MacBook 系のメンテツールとしても、一時はたいへん重宝していた。

だが、それも長くは続かず、時代と共にコンピュータ関連製品の小型化に伴い、必要なツールのバリエーションも多岐に渡るようになると、再び専用工具にその道を譲らざるを得なくなる。

専用工具といっても、以前の電工セットなどと違ってそれぞれのツール自体が非常に小さいので、道具箱で持ち出すほどではない。ポケットにも入ってしまうサイズだから、マルチツールのメリットも出難く、結果的にはその2機種を最後に、ビクトリノックス自体からも遠ざかってしまった。

今回のコンパクト購入を機に、「インドアでも楽しめるアウトドア」シリーズのネタ資料の為に棚の奥から引っ張り出した、歴代ビクトリノックス達である。

ここ暫く目にすることもなかったのだが、パーツボックスに収まっている一連のシリーズを眺めていると、実用性をマジで求めていた時期もあったことを、懐かしく思い出したりしたものである。

保管状態に関しても、取り立てて気を使っていた訳ではないが、いずれのモデルも錆びることなく、当時のままの比較的良好な状態を保っている。

もうこれ以上増えることもないと思われたラインナップも、久々にコンパクトを追加して以降、俄に SAK に対する興味が再燃、再び増殖を始める。

某ヤフオクなど、嘗ては存在しなかった入手経路もその選択肢として追加されたことで、以前とは比較にならない速さで増え続け、あっというまに現行モデルの殆どを網羅するほどになってしまった。

もちろん、その大半は中古であり、中には殆どジャンクに近いものもあるが、そのせいで価格的にも以前より随分と安く手に入れることができたのは言うまでもない。

ビクトリノックスに関しては、ウェンガーやレザーマンに比べたら、全般に程度は良いものが多いように思う。また、レザーマンに比べて、耐久性という観点からは少々弱いように語られることが多い SAK だが、あくまでも見た目の問題に過ぎず、各ツール自体の耐久性に関しては、なんら引けを取るモノではない。

それは、アルミハンドルの旧ソルジャーシリーズを引合いに出すまでもなく、ハンドルの強度、延いてはその材質に由来する、表面上の外傷に関するものが殆どであり、実用上で問題になるわけではない。

セリドール樹脂という、いわゆるセルロイド系のハンドルは、一般的なプラスチック、ポリカや ABS 比べて、新しく無傷のうちは輝きや発色という点で、大変美しくもある。だが、アルコールなどの一部化学薬品には弱く、経年変化よりも外傷によるダメージを受けやすい。

よくあるのは、さほど使用していないにも関わらず、道具箱などに放り込んだままになっていたことで、他の工具類との接触によるキズである。

使用するにあたって、直ちに支障をきたすような割れなどの場合は、メーカにハンドル交換を依頼すれば、それほど高くもない費用で新品状態に復帰する。ツール自体にも影響が及ぶダメージの場合は、オーバーホールということになるらしい。

ただ、ビクトリノックス製品の場合、新品が比較的安く流通しているせいもあって、モデルによっては新しく買い直した方が安くつく場合もあるので、送料なども含めた費用の総額から判断する必要があるだろう。

何かにつけ、ひとつの道具を手をかけながら、少しでも長く使うことが美徳のように語られるご時世でもある。

だが、新しく買い替えたからといって、以前のものを捨てる必要など全く無いし、無駄に費用を掛けてまで、古い道具を使い続けることに拘る必要もない。

ましてや、未だに改良された現行モデルが手に入るならなおさらで、それまで使ったツールはその想い出と共に保存しておけば良いのである。従って、道具の更新については、モノを大事にすることに何ら変わりはないのだから、躊躇することもあるまいと考えている。

また、各ツールの消耗に関しては、個人では及ばない範囲もあるだろうが、パーツによっては補修部品として手に入るものもあるので、自分自身でレストアすることも可能だ。

そこで、今回は ebay で取寄せたプラスタイプのハンドルを使って、国内では販売されていないエクスプローラ・プラスというのをデッチ挙げてみたのである。

カラーもノーマルのレッドやブラックに加えて、透明系もいくつかラインナップされているので、オリジナリティ溢れるレアモノを捏造することだってできる。

セリドールのハンドル、表と裏の2枚に加えて爪楊枝とピンセットがセットになったキット販売のみで、価格は13ドル(当時のレートで約¥1,500)である。

ただし、何セットかまとめても、なぜか送料も一緒に増える不思議なシステムで、単品で7ドルの送料が2セットだと3ドル追加されて10ドルにもなる。国内の通販業者なら、同梱すれば送料は同額で済むのが一般的だが、諸外国では必ずしもそんな常識は通じないらしい。

従って、さほどお買い得とも言えない微妙な価格ではあるのだが、他に対抗馬もなさそうだし、背に腹は代えられない。まあ、互換性の確認がてらという意味合いもあって、取り合えず発注は2セットとした。

当面は、以前手に入れた中古のエクスプローラを何とかしてやろうと考えたのが発端である。製品自体は最新版に相当するモデルでありながら、ハンドル表面のキズがやたらに目立っており、それがあまりにも不憫だった。

危惧されたサイズ的な互換性にもなんら問題はなく、さすがはビクトリノックス、といわしめる精度である。仕上がりも当然のことながら、まずまず期待通りの出来であり、見事にピカピカのエクスプローラ・プラス・ブラックモデルに生まれ変わったのである。

これに気を良くして、他のモデルにもプラスハンドル化のバージョンアップを施してやることにした。

以前より、最近のチャンピオンモデル、それもあえてスイスチャンプ(#1.6795)ではなく、プライヤのない6レイヤモデル(#1.6783)を探していたが、たまたま安く出品されているのを見つけた。それも理想的な、マルチフックが追加された後期モデルだったので、見た目の程度が良くないことに目を瞑って、即ゲット。

案の定、ハンドルの傷みだけでなくツール類もかなり酷い状態だったが、幸い使用されたことによる消耗ではなく、あくまでも保存状態が良くないせいで発生した僅かな錆と、大半は汚れによるものであった。

こちらも、早速ハンドルを外して灯油洗浄に浸す。目立った汚れも落ちたところで乾燥させ、5-56 とサンドペーパーによる錆落しを敢行。動きが渋いツールも幾つかあったが、注油後の開閉動作を繰返しているうちに、幾分スムーズになって、本来のタッチに近づいてくる。

だが、バッチコーンといったビクトリノックスらしさには未だほど遠く、どちらかといえばウェンガーっぽいユルい動きに留まっている。使用しているうちに、だんだん回復することを期待して、削り粉など錆落し作業で生じた汚れの洗浄に入る。

以前メガネ用に通販で買った、なんちゃって超音波洗浄器にかけてみた。まあ、この洗浄器の方はほんの気持ち程度で、たぶんメガネブクほどの効果もなさそうなんだが、気は心である。

ハンドルを外した状態なら、乾燥はドライヤの熱風が手っ取早い。だが、ルーペが変形しそうなのでそういうわけにもいかず、低温で気長にやるしかない。

あらかた乾いてから、専用シリコンオイルを注油して各部の動きを再確認するが、大きな不具合は認められなかった。そこで満を持して、こちらもプラスハンドルを奢ってやることにしたのである。

作業の方にも熱が入ると、見えない所にまで磨きをかけるなど、どう考えても無駄としか思えない、数々の行程も含まれるのはご愛嬌である。で、そんな幾つかの虚しい作業も経て、完成したチャンピオン・プラスである。

こいつもエクスプローラ・プラスと並んで、お気に入りのコレクションとなったのだ。いずれも、ブラック・ビューティと呼ぶに相応しいクール振りである。

まあそんなわけで、取り合えずはめでたしめでたしといった、平和で穏やかな今日この頃なんである。



…ということで、来月もヒトツよろしく。
2016年01月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2016.01.30] 雑談の散歩道:其の八 〜より転載&加筆修正
本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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