2016年2月11日木曜日

雑談の散歩道:其の九

ここ最近、本当に出不精になっちまった。

運動不足もここに極まれりで、もうGパンが苦しいったらありゃしねえ、のである。

季節柄、厚着せいかと思って油断していたら、この期に及んで体重は4キロ以上も成長を遂げており、たぶん今なら転がった方が速い。

これも全て巡り合わせの所為で、私の所為ではない。それは、天候だったり気温だったりは、まあおんなじことだが、要するに雨が降ったり寒かったりという、自然現象には勝てないという話だ。

そこで、一句
衣更着と 出不精の所為で ああデブ症
…、なんちゃって。

ま、そんなこたあどうでもいいのだ。

今回も「インドアでも楽しめるアウトドア」シリーズの続きで、去年より溜まりに溜まった在庫処分だ。

前回は、ビクトリノックスのチャンピオンをネタに、カスタムモデルをデッチ上げてみた。

ターゲットに選んだのは、あえてプライヤのない6レイヤモデルのチャンピオン(1.6783)だ。

プライヤが追加された、最近の7レイヤモデルは、製品名もスイスチャンプ(1.6795)に改名されており、現在ではチャンピオンという製品は、主にプライヤのない6レイヤモデルを指す。だが、 国内向けの製品ラインには、このモデルは存在しない。

どちらも、2007年以降はエクスプローラと同様、縁が透明の新しいタイプのルーペに変更されている。しかし、アイテム番号はそれ以前の、おそらく最初にプライヤが搭載された1985年頃から変更がないので、識別の為にマルチフックが追加された 1991年頃を境に、勝手に前期・後期と分けて呼んでいるのが現状だ。

ま、全部入りを標榜するチャンピオンの名を冠するにあたって、プライヤが無ければ様にならぬという見方もあるだろう。スケール機能を持ち、針外しと鱗落しを一体にしたツールは、アングラーやフィッシャーマンなど、釣り師向けの専用品みたいなものだだが、そんなツールでさえ網羅するのがトップモデルの役割だ。

もうこの辺りになると、何かが無いこと自体が許されないモデルで、それが必要かどうかなどは全く無関係だ。現在のスイスチャンプは、そんな要望をも具現化した、最高峰に君臨する名実共にトップモデルなんである。

プライヤを装備したモデルは、スイスチャンプ以外にも幾つか存在する。海外モデルでは、国内版のスパルタン PD に相当するティンカーを基本形として、プライヤを加えたモデルがメカニックという名前でラインナップされている。

それにしても、コルクスクリューに換えてプラスドライバを搭載するこのモデル、正にメカニックという名前がマッチして、それらしい雰囲気を盛り上げてくれる。

かつては、国内版にも同様の機能を持つモデルが存在したらしい。PLI スパルタン PD といういささか苦しい製品名で、国内版のネーミングセンスの無さが際立つ典型的な例だが、それも既に廃盤になっている。

現行モデルでプライヤを搭載するのは、いずれも4レイヤ以上のモデルに限られる。基本形のスパルタンではなく、ハサミを持つトラベラーをベースにした、PLI トラベラー PD と、フィッシャーマンと同じ針外し/ウロコ落しを搭載するアングラーの2機種が、もっとも小型軽量の4レイヤモデルである。

これ以外では、もうそこまで行ったらスイスチャンプでいいだろうと思ってしまう、6レイヤのハンディマンしか選択肢はない。そうでなくともこのレイヤ、他のツールに比べて背面ツールも無いくせに、やたら幅が広くなりがちで、主に重量と厚さ方向のサイズで不利になる。

あくまでも個人的な意見ではあるが、実用面や運用面だけで考えれば、我メインツールには、プライヤ命と言って憚らないレザーマンがラインナップされているわけだし、なにもそんなものに無理して対抗する必要もあるまいと思ってしまうのだ。

特にキーチェーンツール更新に伴い、ハサミメインからプライヤメインへの変遷を遂げたメインツール、スクォート PS4 が実戦配備された現在においては、ビクトリノックスに対してプライヤの支援要請が必要となる可能性は極めて低いのである。

その点においても、プライヤの無いモデルの方が、機能も重複しなくて無駄がない組合せになる。今のところ、背面ツールも無いから、このレイヤを省略することで機能減のデメリットは最小に押えつつ、小型軽量化とのメリットが得られると考えたのである。

その分メガネドライバやボールペンなど、元々が装備されていないツールを追加することで、機能面においても不足のないように改良してみたのが、件のなんちゃってチャンピオン・プラスモデルなんである。 

まあ、改良といっても、改造や改変と異なり、せいぜいお飾り系のドレスアップといったところでしかない。

だいたい、プライヤをメインに据えたミドルサイズ以上のレザーマンに比べると、ビクトリノックスのプライヤは、如何にも非力に見える。

しかし、室内に於いては、その持ち味を生かした用途は意外と多く、ゴツいボルトやナットの類いより、例えばホッチキスの針外しとかピンセットの代わりなど、おのずとその対象も異なるのだ。

野外武闘派のレザーマンに比べて、室内文系文房具としての傾向が強い。そんな、活動領域も違う両者を同じ土俵で比較することに、あまり意味はないのである。

とはいえ、ビクトリノックスのプライヤも、その小綺麗な見た目ほどお飾り系という訳でもないし、また必ずしもデカい方が勝ち、という訳でもない。

その点も含めて、実証しておいた方がよかろうと思い、今回はプライヤ比べだ。

レザーマンほど、プライヤに凝っていないように思われがちなビクトリノックスだが、強度はさておき精度に関しては、全く引けを取らない優れモノなんである。

年代によっても、その幅とか機能も微妙に追加および改良されており、手元にあるモデルだけ見てもその年代によって、以下のように少なからず変遷を遂げている。

* 1985-1986年頃:プライヤ初搭載(厚み 2.5mm)
* 1987-1995年頃:プライヤの厚みを 3.0mm に拡張
* 1996年以降:プライヤに端子つぶし機能追加

このように、幅方向の改善だけでなく機能の追加も怠っていない。また、現行モデルではハサミと同様に、プライヤにもスプリングガイドとしての溝が追加されているのだが、それがいつ頃からなのか正確には分からない。

手元にあるモデルの中にも、ハサミには溝があるがプライヤにはないというバージョンも存在するので、プライヤの場合、少なくともハサミと同時ではないようだ。

レザーマンのプライヤも、全体のサイズこそ大きいが、どのモデルも口先は幅が狭く、どちらかといえばラジオペンチといった方が、シックリくるぐらいなんである。

それほど多くの製品を使ってみたわけでもないのだが、どの製品を見てもあまり代わり映えはしない。プライヤの幅に関しては一様に狭く、いずれも現在のビクトリノックスのものより狭い。

その幅も、フルサイズのウィングマン/サイドキックが 2.8mm、ミドルサイズのスケルツール/フリースタイルで 2.4mm、より小さいキーチェーンツールのスクォート PS4 やスタイル PS に至ってはやっと 2.0mm といった具合に、軒並みビクトリノックスに負けている。

まあ、何かにつけモノのサイズ、特にその大小で勝ち負けを論じるのは、旧来より男としての悲しい性である。

しかし、家庭内でもわりと遭遇する現実問題、例えば前述のホッチキスの針を引っこ抜こうとした場合など、幅は広い方が奇麗に抜けるのも事実である。もちろん、これ以外にも幅は広い方が有利な場面はあるし、少なくとも狭い方が有利だとは思えないのである。

現状でも、レザーマンのハンドル側の収納スペースにはまだまだ余裕があるので、もう少し幅を広げることぐらいは出来るだろう。せめて、支点と同程度の幅を確保して欲しいような気もするのだ。

というか、製品によってはバリエーションのひとつとして、あっても良かろうと思うのだが、そんな製品展開は為されていないし、そのこと自体、取り立てて問題視さえされていないようにも見える。

プライヤの使い心地に関しては、黎明期のレザーマンから比べたら、格段に改善されている。それは、ハンドルの形状に複雑な折返しを採入れることで、手に当たる部分のタッチがソフトになったことが大きく効いている。

副次的な効果として、メインツールを展開しなくても使用可能な、ツールの収納場所が確保できている。どっちが副次的なのか知る由もないが、結果的にデザイン上の自由度も上がっているようだ。

そんなレザーマンとビクトリノックス、ことプライヤに関しては全く勝負にならないようにも見える。ましてや、ミドルサイズ以上のモデルでは、絶対的なヘッドサイズの違いから、ナイフがメインのオマケプライヤに勝ち目はないと考えるのが妥当だろう。

ところが、実際にはそう単純な話でもないのだ。

というのも、ハンドルの形状と角度によっては、そのサイズほど力が入れ難い場合もあるのだ。また、掴む対象物によっては逆に大きいことが災いし、支点から作用点までが長くなるレザーマンにとって、必ずしも圧勝とはいかないのである。

ビクトリノックスの場合、プライヤの先端はハンドルの幅と同一の約3.0mm を確保している。だが、ハンドル自体の長さは、収納される形を考えれば高が知れており、少なくともボディ全長を上回ることはありえない。

ところが、もう一方のハンドルはボディそのものであり、プライヤを展開した時の全長は、なんとフルサイズのウィングマンやサイドキックをも上回るのである。

ナイフを使う時と同様に、ボディをシッカリ握れることでわりと安定するという結果を生み出している。また、その形状から、どうしても親指または人差指一本での操作にはなるのだが、テコの原理により力点から支点までが多少短くなっても、支点から作用点までもが短いことで、小さい入力でも大きな出力を得られる。

斬新なデザインを採用したスケルツールとフリースタイル、またその縮小版といった風情のスタイル PS だが、ハンドルの形状という点では、それが多少不利に働いているように思う。先端に向って、緩くカーブしたその形状から、どうしても力を入れると前方に滑ってしまい、ある一定以上に力が入らないという、悪く言えば道具としてはデザイン倒れな面も見受けられるのである。

ウィングマン/サイドキックに関しては、多少マシな形状になっているが、それでもスイスピの見事としか言いようのない、微妙な逆反りカーブに比べたらもう一つと言わざるを得ない。

意識的に開こうとしない限り、頑として開いてくれないスケルツールやフリースタイルは問題外だし、スプリングによって開放されるタイプも、時と場合によっては結構ウザイものである。

この点も、やはり重力によって自然に開いてくれるスイスピが理想的で、個人的には最も使い易い。意外なことに、この点に限ってはレザーマンではジュースのシリーズが最も使い勝手が良いのだが、それ以外があまりにも残念過ぎて評価対象にはならない。

そんなわけで、プライヤに関してレザーマンの実用性にケチをつけるつもりもないのだが、ビクトリノックスのプライヤも結構使えるぞ、というお話でした。

ぶっちゃけ、現在では機関車の修理や解体を日常的にするわけでもないので、道具の類、特にマルチツールの実用性に関して、何処まで追求するべきか疑問も多い。

また、従来より役立つ文房具としての実用性は、十分に実証済みと思っているのだが、それでは野外活動においてどこまで使えるのかというと、未だ未知数な点も少なくないのである。

単純な刃物のように、そこそこ切れさえすればその機能の大半が有効に働いたとも言えず、わずかばかりの検証で結論めいたものを引き出せるわけではない。

もちろん、ナイフも切れ味ばかりが重要な要素ではないし、何事も嵌まり込めば奥が深いものであることに違いはない。だが、極めるレベルに到達しなくても楽しめるのも事実であり、また無理して極める必要もない。

特に道具の類いに関しては、使いもしないのに集めるばかりの輩は、往々にして馬鹿にされる傾向がある。

原形を留めないほど研ぎ減りした刃物を見て、どう感じるかは人それぞれだろうが、少なくともその外観や機能としてのデザインに惹かれて購入した者にとっては、必ずしも理想的な道具の使われ方とは思えないのである。

何でもかんでも朽ち果てるまで使い切って、用が済んだら捨ててしまえば良いという考え方なら、姿形はどうでもよいのだろう。だが、それではあまりにもつまらないし、そこにはモノを愛でるという視点が欠落している。

それは乗り物、例えば自動車でもバスやトラックなどの業務用ばかりでは面白くないし、決してその道のプロではなくとも、アマにはアマの楽しみ方があって然るべきだろう。

要するに、何が言いたいかといえば、道具としての良し悪しよりも、時には好きか嫌いかの方が優先されることもあるのが、アマチュアの真骨頂だ。

先日のシフトレバー脱落事件においても、ウィングマンのプライヤは、六角レンチの代用をキッチリこなしたとは言い切れない。しかし、取り合えず急場を凌げたのだから、それはそれで良かろうと考えている。

この手のツール、最も重要な要素は半端な実用性より、持っていてるだけでわくわくさせてくれる魅力があるかどうかなんである。それこそが、おそらく本当必要になった時、果して手元にあるかどうかの分かれ道になる。

いずれにしても、今さら慌てることもない。ゆっくりでいいのだ。楽しみながら、現在位置から少しづつでも選んだ方向へ進んで行けば、それでいい。

そんな楽しいツールの話だから、まだまだ続くぞ。




…ということで、今月もヒトツよろしく。
2016年02月某日 Hexagon/Okayama, Japan


http://www.hexagon-tech.com/
[2016.02.11] 雑談の散歩道:其の九〜より転載&加筆修正
本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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