2016年3月15日火曜日

雑談の散歩道:其の拾

三月になった途端に、もう春である。

正にカレンダー通りの気候というのも、季節感があってたいへん分かりやすい。

このまま素直に暖かくなるのなら、それはそれで喜ばしいことなんだが、そう簡単に冬が終わるとも思えない。

油断していると寒の戻りというやつで、おそらくもう一度や二度は、寒い日が戻って来るに違いないのだ。くれぐれも、体調を崩さないように気をつけよう。

ま、そんなこたあどうでもいいのだ。

今回も「インドアでも楽しめるアウトドア」シリーズの序でに、去年より溜まりに溜まった在庫処分だ。


とはいうものの、やはりこの季節は花がないと春らしくないし、季節感は大事にしたい。実家の裏山では、早咲きの桜がもう咲き始めている。

今月に入ってから、気温もぐんぐん上がっていたので、寺の境内に植えられた河津桜も、辛抱たまらずといった感じで一斉に花を開き始めたようだ。

毎年この時期になると、大勢の大砲を振り回す年配者で賑わう。天気の良かった先日は、多くのカメラマンで参道もごった返していた。

あまり花や植物の写真には興味もないのだが、あれほどの長玉を三脚もなしに構えて、いったいどんな写真が撮れるのだろう、という興味はあるかもしれないな。

そんなお歴々の邪魔にならぬよう、毎度隅の方からコソコソと撮っているのだが、本格的な春を感じるにはまだ少し早いような気もしたのである。

この日はあまり時間もなかったので、落ち着いた撮影にはならなかったのが残念である。…と、出来の悪い写真の言い訳も取り繕ったところで本題に入ろう。

野外活動の方も本格的に再開されるのは、もう少し先になりそうだし、今回もネタはマルチツールである。

我 EDC メインツール選定トライアルも、最終的にはキーチェーンツールのレザーマン・スクォート PS4 の勝利で終わった、というのが前回までのあらすじだ。

ただ、当初予定していた2台の車と単車用に3色とも調達してみたものの、良く考えたらいろいろと問題もあったのだ。実運用に入ってから今更のように気がついた点もあったりで、実際に使ってみないと机上の空論だけでは分からないことも少なくない。

というのも、仕事関係の客先で駐車する場合、キーを付けたまま車を離れることもあるのだが、キーチェーンツールが必要になったからといって、いちいち駐車場まで取りに行くわけにもいかない。

また、災害時など緊急の場合に限っては、原則としてキー付けっぱで逃げる、というのがお約束になっているらしい。キーだけ外して残せば済む話なんだが、そんな悠長なことをしている暇があるぐらいなら、たぶんそれは緊急時とは言わないだろう。

そうなると、イザというときには手元に無いわけで、これでは全く意味がないのである。そんな状況に遭遇する可能性、駐車場問題に比べりゃ限りなく低いのだが、何事も準備を怠っていては、役立つ道具も出番を失う。

このあたりが、キーチェーンツールをメインとした場合の問題点であり、サブツールの方にも機能の重複が必要になるので、選択の幅はかなり限定的になる。

で、結局ビクトリノックスのクラシック AL と役割を交代し、スクォート PS4 は単車や車を離れる時も、常にポケットに入っている家や会社の鍵と一緒にしておくのが最善の策、ということになったのである。

結果的に、スクォートシリーズも一つあれば済むことになっちまったのだが、まあ残り2つはバックアップというか、控え要員に廻ることとなったのである。その分、クラシックが余計に必要になったのだが、こちらは導入後の歴史も長く、必要にして十分以上の在庫もあるから当面困ることはない。

ビクトリノックス・クラシックとレザーマン・スクォート PS4 は、サイズ的には似たようなもので、全長に関しては全く同一(58mm)なんである。だが、サイズと一口に言っても、実際に持ち歩く場合は、長さや幅だけでなく厚さや重さも係わってくる。

この場合、幅や厚さよりもその重量が、最も際立つ相違点である。 なにより、ポケットの中に在ることで感じるサイズ感というのは、主に長さと重さだろう。

クラシックもスタンダードタイプを使うことが多かったのだが、今回重量に関してはより軽量なクラシック AL に交換して、如実にそれを実感したのである。せいぜい、鍵が一つ増えた位にしか感じないのだ。

メインツールをスタイル PS/CS からスクォート PS4 に更新した当初は、若干厚みは増したこと自体はデメリットにはならないと考えていた。また、薄いことが則ち小さいとは感じないが、全長が短くなれば十分小さいと感じると書いたような気もする。

だが、その時点で重さについては、あまり考えていなかった。前任者である、マイクラ(51g)と比べてもさほど大きな違いはなかったことで、気にならなかったというのもあったのだろう。

そこで、普段持ち歩く道具として、そのサイズや重量はどの程度までが許容範囲になるのか考えてみた。

我慢の限界とまではいかないまでも、いったいどのあたりまでが許せる範囲なのか、…と。ツールのお役立ち度も関係するのだろうが、かといって百グラム越えはあり得ないだろう、というのが個人的な見解である。

これはスクォート導入以前、小型軽量がウリのフリースタイルを使ってみた体験から導き出された数値だ。

87mm という全長こそ、ビクトリノックスの標準オフィサーモデル群より小さいが、スモールオフィサーシリーズ(84mm)やウェンガー(85mm)を引き合いに出せば、それ自体は何らメリットにもならない。

厚さは、ほぼ4レイヤモデルのハントマン(95g)と同等、重量(128g)に至っては遥かに上回る。本来、ビクトリノックスで比較対象となるべきは、現状ではプライヤを搭載したモデルの中では最軽量のアングラーか、PLI トラベラー PD あたりが妥当な対戦相手だろう。

もし、スケルツールが助っ人として参戦するのなら、機能面においても、対抗上サイバーツールをぶつけてもおかしくはない試合なんである。

いったい、何を言いたいのか分からなくなってきたが、要するに、メインツールとしてフリースタイルを始め、ミドルクラスを候補とするなら、ビクトリノックスの標準オフィサーシリーズをポケットに入れておいた方がマシだろう、という結論になっちまうのである。

屋外では良くても室内での使用を考えれば、機能的にもハサミが無いのはメインツールとして致命的だ。缶切りや栓抜きは無くてもそれほど不自由はないが、プラマイドライバ以上に、出来ればハサミは欲しいところだ。

ま、それ以前に、およそキーホルダ向きでは無いサイズと重量が原因で却下されたわけだから、それも当然の結論だろう。フリースタイルに関しては、機能をナイフとペンチに絞ってこれかよ、という感想しか思いつかないのがぶっちゃけたところである。

とはいえ大きく重たい分、メインのナイフとプライヤもデカいから、実用面においてはそれなりの使いではあるのも事実である。特にこのシリーズでは定番になっている、ワンハンドでオープン可能なナイフの有用性は、以前スパイダルコを使っていたこともあって、捨て難い魅力にもなっている。

その後に導入したスケルツールと比べても、全長が僅かに小さいこと以外に大きなメリットもないので、最近出番も少ないのが残念である。何かとペアにすることで、不足分を補いつつ特性を生かせる組み合わせなどもあると思うので、今後の課題としておこう。

室内使用がメインとなれば、ハサミやナイフは鉄板としても、それに加えて何を盛り込むかでそのサイズ、特に気になる重量が決まってくる。

その点、ビクトリノックスの場合は上手く割り切って、まさに正味を突いている。

ハサミと小さなブレード、そして爪ヤスリの先ににはマイナスドライバという具合に、使用頻度だけならこれで十分という構成である。

それを僅か厚さ 9mm/21g という超軽量ボディに盛り込んでおり、更にピンセットと爪楊枝を省いたアルミボディ版なら、厚さも 6mm/17g まで薄型化と軽量化も可能である。

また、スクォート PS4 がヤスリを木工/金属用と位置づけているのとは対照的に、爪ヤスリとコスメチックな方向へ振っている点も、女性を含めたあらゆるユーザを対象とする全包囲網でポイントも稼いでいる。

だいたい、クラシックと全く変わらないこのサイズで木工/金属用ヤスリもねえだろう、と思わないでもない。だが、そこは武闘派のレザーマン組の構成員としては、立場上譲れない線というのもある。

爪ヤスリでは絶対不可能な、例えば閉込められた牢屋の鉄格子の切断とか、もしもそんな状況にに巡り合うチャンスがあれば、挑戦してみるのも一興かもしれない。

ただ個人的には、マルチツールの場合そのツールを何回使ったかでなく、どれだけ在って良かったかを基準にするべきだと考えている。

各構成ツールに関して、使用頻度だけで決めていくと必ず後悔する。要するに、ツールの使い方に関する応用編みたいなものも考慮する必要があるだろう。

あまり素直に、設定されている機能や用途だけを鵜呑みにしないことが肝要で、発想の転換によっては奇想天外な使用法も思いつくかもしれないからだ。極論すれば、使用頻度などそのツールの生涯で一度あればオッケーという覚悟も、時には必要である。

いずれにしても、ポケットの中には常に在ることには変わりない、スクォート PS4 である。各キーチェーンツールとして再配備されたビクトリノックス・クラシック AL と共に、野外活動においてもメインの足りないところを補いながら活躍してくれることを期待している。

最近、野外で遊ぶ時間も無い時は適当な裏山へ入って、枯れ枝をなどを採ってきては持ち帰ったりしている。家に帰ってから、のんびりとナイフの練習がてらにトライスティックなどを切り刻んだりしてみるのだが、それでもプチブッシュクラフト気分には浸れるのだ。

山の枯れ枝も、そのままではバッチイと家人の不評を買うので、その場で表皮だけ剥いでしまう。そんな時に活躍するのが、ビクトリノックスのハンティング XT だ。

全直刃と全波刃の独立したコンビネーションに加えて、ノコギリもあるので枝の採集には重宝する。まあ、この程度のノコで切れるの太さの枝なら、足で蹴飛ばしても簡単に折れるから必ずしも必要ないという意見もある。

確かに真ん中辺りから一刀両断にするだけなら、手刀や足刀も有効なのだろうが、枝の先端だけを切落したり、切り口が奇麗に揃った枝が欲しいときは結構役に立つ。

また、ソロストーブやネイチャーストーブのような小さめの焚き火には、10センチ程度の枝を大量に揃える必要もあったりで、最近はノコギリ搭載モデルが活躍する機会が増えている。

以前は、旧ソルジャータイプでノコギリを装備するファーマー AL を専ら使っていたのだが、最近は新ソルジャーと同じで少し大きめなサイズのハンティング XT を持ち出すことが増えている。実際、その差はほんの僅かに過ぎないのだが気は心というやつで、ブレードもノコのストロークも長いので、何となく頼りになる気がする。

特に単車の場合は、車と違ってあまり多くの道具類を持ち運ぶわけにもいかない。通り掛かりの野山に気紛れでに寄ってみたとしても、枝の採取ぐらいならこの一本で済んでしまうのが有難い。

近ごろネットで、ブッシュクラフトに関連した動画などを見ていると、いずれもお約束のように大層ご立派な(そして高そうな)斧に加えて、折り畳み式のノコギリを常備品として持ち歩いているのを見かける。

それも結構なサイズで、相当な大木でもやっつけられそうな長さなんである。中には斧だけでも大小2本以上、ナイフなど首から提げているネックナイフのようなモノまで入れたら、一体何本持っているんだと、呆れるほどなんである。

樵(きこり)になるつもりは毛頭ないので、果たしてどこまで真似をして良いやら迷うところでもあるのだが、いったいどのへんを指して装備が減っているのかとツッコミを入れたくなるほど、特に刃物類に関しては充実している連中が多い。

何でも商売が絡めば、必ずしもムーミンに出てくるスナフキンやトゥーティッキのように、プーッコ一本ぶら下げて軽い装備で気ままに旅に出る、というわけにもいかんのだろう。(いや、ぶっちゃけあのアニメ、マジで見たことないから、詳しいことは知らないんだけどね)

なにせ、何でもかんでも現地調達を以て良しとする、そんなスタイルを信条とするには、そのために必要な道具に関してはノーカンということになるのだろう。

私も含めて道具好き、特に刃物好きな連中にとってはまことに都合が良い基本方針であり、そんなところが嵌まりそうになる所以である。

野山でノコやナイフを使って、木を切る削るといった行為そのものがなんともいえず楽しい。気に入った道具を持ち込んで、焚き火をしたり簡単な食事を作ったりという、今迄でもキャンプでは当たり前のように行っていたはずのことである。

ただ単に道具を持ち込むのではなく、創意工夫をしながら試行錯誤も交えて行うことが新鮮に感じる。何を今更と思われるかもしれないが、従来の野外活動ではその程度にしか楽しんでいなかったということなんだろう。

もちろん、道具類に関する興味が薄れたわけでなく、何かちょっとしたクリエイティブな作業が入ることで、あたかも自然に近づいたかのような勘違いを起こさせることに繋がっている、そんな気がするのだ。

というわけで、次回以降は本格的に野外活動での実戦も含めて、いろいろ検証してみようと考えている。

ま、果たしてどうなることやら、…である。



…ということで、今月もヒトツよろしく。
2016年03月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2016.03.15] 雑談の散歩道:其の拾〜より転載&加筆修正
本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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