2012年11月2日金曜日

アップルの陰謀

自分自身、全くスティーブを信仰しているつもりはないのだが、勝てば官軍負ければ賊軍のように、更迭されたスコットの影響に対して悪評を流すのがトレンドのようになっているのは、いささかうんざりさせられる。

前回「どうせ、スコットはハメられたんだろう」と書いた背景には、今回の更迭騒動には素人レベルで考えても不可解な部分が多すぎる、というのがある。

昨今、やり玉に上げられているマップアプリの問題も、ネット上には批判的な意見が大半をしめている。だが、どのような場合でも擁護派(賛同者)より反対派の方が声が大きいのは、珍しいことではないし、スコットが早々に謝罪文を公表することに対して、過剰反応だと反発しても不思議はない。

だいたい、アップル規模の会社組織において、如何に上級副社長といえども最高経営責任者の承認もないままに、未完成なソフトをリリースできるはずがない。クックの肩書きには、最高という文字も経営責任という文字も入っているように見えるのだが、Chief Executive Officer ってのはいったい何する人なんだろうねえ?

ここからは全くの想像だが、せっかくスティーブの呪縛から開放されたのに、未だにその継承者がいることに我慢できない連中が仕掛けた巧妙(でもないけど)な罠にハマったようにも見える。

現在では、アップルの収益の大半を担う重要な役割をもった iOS 機器。そのソフトウェア部門のトップであるスコット・フォーストールと、ハードウェア・デザイン部門のトップのジョナサン・アイヴ。スティーブはその絶対的な権力のもと、この相容れない二人に相当な権限を持たせることにより上手くコントロールしてきたが、キャプテン・クックには荷が重すぎたようだ。

一時は、イギリスに帰ると駄々を捏ねたとの噂も流れたアイヴ、隠居を表明していたマンスフィールドも、結局はスティーブ不在のアップルで、ミニ・スティーブと揶揄されるスコットとの軋轢に耐えきれなくなって、取締役会に泣きついたのだろう。

アイヴのデザインによる、iPhone 5 の外装が傷つきやすいことが批判の対象になった時、フィル・シラーによって早々に行われた公式見解「それは自然なこと」に対して、マップに関するアップルサイドからの擁護発言は無く、責任者は完全に孤立状態に置かれたに等しい。

Google との契約通りあと1年程度、Siri で実施したようにベータ版として育て上げれば、今回のような批判の対象にならなかったはず。にもかかわらず、Google との契約終了以前に、前バージョンの Google Maps を早々に引き上げて、iOS 6 では継続利用ができないようにした政策に対する説明もない。

おそらく、iOS 6 のリリーススケジュールを急き立てながら、一方では秘密裏にGoogle との契約を終了させ、iOS の責任者として逃げ場をなくしておく必要があった。窮地に追い込まれたスコットが苦し紛れに、以前と同様のらりくらりと逃げおおせると言い出すのは計算通りで、その往生際の悪さを際立たせ不誠実を印象づけること目的であったに違いない。署名捺印に関しては、念のためにトドメを刺したに過ぎないのであろう。(想像、ここまで)

毎度主張していることだが、純正マップはソフトウェアとしての出来自体が悪いわけなく、現状はデータが不足しているだけである。いずれ情報量が増すことによって改善される性質のものであり、要するに時間の問題でしかない。

Google Maps と比べて、どちらが優れているかは関係ない。その他のアプリ同様に選択肢さえあれば、それはユーザが決めることであり、iOS 担当責任者レベルでも、ましてや純正マップ開発チームレベルの問題などでは、全くない。

マップ問題の本質は、従来の Google Maps を使用できなくしてユーザの選択肢を狭め、結果として iOS 機器のユーザ体験の質を低下させた、アップル社自身が行った政策(政治)の問題であることを銘記しておく必要がある。

その最も重要な本質の部分がすり替えられて、突然の謝罪文の発表である。

謝罪文には、Mobile Safari から Google Maps を使えとか、ご丁寧にアップル自ら特集ページまで組んで、もっと出来の悪いサードパーティ製品を推奨するなど、呆れた内容である。そんなこと、わざわざアップルに言われなくても不満のあるユーザは、勝手にやっていることだ。当初は、どうだいこんなのに比べりゃ純正マップの方がマシだろう、と思わせる巧妙な作戦かと思ったぐらいである。

スコットの性格を知る者なら、そんな茶番に署名を求められれば、当然ブチ切れるだろうと容易に想像できるはずだ。ましてや、スティーブの忠実すぎる継承者として、内外から認知されているスコットに対して、アップルの文化に合わないなどという発言が、公然と語られるに至っては何をか言わんやである。

今のアップルの文化とは、いったいどのようなものなのか、猿にも分かるように教えて欲しいものだ。またもやアップルが、80年代に犯した大きな間違いを繰り返そうとしているように見えるが、二度目のラッキーはたぶんないと思う。


おおっと、今月は初っぱななら、二本立てだぜい。



…ということで、ちと飛ばしすぎですが、ヒトツよろしく。
2012年11月某日 Hexagon/Okayama, Japan


[2012.11.03] アップルの陰謀 〜より転載&加筆修正

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