2013年8月3日土曜日

三脚のことなど…、その後(2)

とりあえず、マンフロットの三脚については概ね良好である、と結論づけた。

この手の製品に関して、絶対的な基準を持ち合わせているわけもないし、なにせ比較対象が色々な面でアレなだけに、大枚はたいたんだから良くて当たり前。ま、こんなもんだろうというのが、正直な感想である。

どのようなジャンルの製品にも言えることだが、トータルバランスで評価しないとその本来の価値は見えてこない。

シスコンよりバラコン、プリメインよりセパレートというのが、オーディオ製品に対して盲信されていた(そして盲信していた)時代もあったことだし、その是非はともかく趣味人が必ず通ってみる道程のようなものである。

これは、ある意味自身に対する戒めでもあるが、何かに嵌まると価値観が大きく変わることもある。

以前は高いと感じていたモノが、いつのまにかさほどでもないように見えたり、およそ買える訳ないと思っていたモノに対して、気がついたら何かと口実を探していたりと、モノの値段ほど曖昧なものはない。そのことによって、一つステップが上がったような気がするものだが、あとから冷静になって考えると、往々にして只の勘違いであることも少なくない。

お目が高いという言葉があるが、商売人から言われた場合は、まず疑ってかかる必要がある。

ただ単に、高い場所から見れば同じ高さ(値段)も低く(安く)見えるという物理的な結果に過ぎず、物事の本質を鋭く見抜く力である、炯眼(けいがん)とか慧眼(えげん)とは別の意味であること多い。

ましてや、煽てられて幻の階段に登っていることに気付かなければ(または、気付きたくなければ)、受け入れるしかない。それによって、節穴に少しでも眼力が備わるなら、それは授業料である。

「五十を過ぎた男が何かに嵌るとしたら、それは収穫と考えねばならぬ事態である」とは、小田嶋隆の著書にあった言葉だが、そんな事態にあと何回遭遇できるかを考えると、今しばらくハマり続けてみようと思う。

ただ、バランスを崩して階段を転がり落ちないようにと、常々肝に銘じておこう。

[2013.08.09, 16] 追記・補足:Update

閑話休題(前フリが長いのは、もはや定番となっている)

しかし、雲台の値段というのも不可解であるが、デジモノと違い簡単に複製が出来ないこともあって、iTunes Store で購入(使用許諾権?)するモノよりは、なんとなく満足感が得られるような気がするものだ。

富裕層向けのアルカや RRS はほっといて、多少は庶民的に見える中華の製品について書いてみる。

今回選定したのは、サンウェイフォト(Sunwayfoto)とシルイ(SIRUI)である。

ネットで眺めるのはタダとばかりに、良く覗いてウィンドウショッピングしていた RRS のサイトには、あらゆる機種に対応した L型プレートというのがある。SIGMA DP 用にもグリップまで装着できる BDP2 Set というのがあり、当初はアルカ互換のクイックシューというより、グリップ取付用金具ぐらいにしか見ていなかった。

現地価格の $180 という金額もちょっと高いが、なぜか邦貨で4万円近い価格と選択の余地などないひどく限られた流通状況から、アマゾンで取扱いのあった UNX-9121 へと導かれたことは自然の流れであったように思う。(BDP2 Set の現地価格に比べても半値以下だし)

最初の DP3 Merrill 購入前は三脚必修という要件に対して、三脚ならあるぞという認識であったのだから、致し方あるまい。要するに底面に穴さえ空いてりゃ、それで良かったんである。ただ、今となってはアルカ互換になるよう、ちょっと削っといてくれりゃ良かったのにと思わざるを得ない。しかし、それをすると値段は倍以上になるのだろうか?

その後導入した、手持ち撮影がメインの DP1 Merrill は、その画角(換算 28mm)から手振れによる許容範囲も DP3 Merrill ほど了見の狭いことを言わなかったので、ハクバの扱う Flipbac FBG4 という黒いケシゴムみたいな、貼付けグリップで当座は凌げたのである。

しかし、三脚を使用することが多い DP3 Merrill では、E-410/E-620 当時にはさほど気にならなかったお勤め品の使用(仕様?)上の制限が、日々どんどん不満の種として蓄積され、いつ爆発してもおかしくないほどにその圧力を高めつつあった。

一般的に、低価格な三脚には 3WAY 雲台と呼ばれるようなモノが、脚とは分離不可能な形式で取付けられているのだが、パンやチルトではその操作感に不満はあるものの、とりあえず機能はしていた。しかし、ローテイト(縦横の切替え)時には少なからずとまどう。ベルボンは左へスリックは右へと、メーカによって回転方向が違うのである。

これはあくまでも手持ちの場合だが、縦位置撮影の場合右回転だとシャッターが右下に来てしまい、押しにくいだけでなく安定しない。左手でカメラの重量を支えつつ、右手を添えるようにして軽いタッチでシャッターを押さないとブレやすくなる。また、かつての光学ファインダを右目で覗いた場合だと左目の視野が遮られ、直視での比較確認もしにくいので、左回転が基本と親父に教えられたように思う。

だいたい、縦位置グリップやL型プレートで、右側を下にした製品は見たことがないが、カメラの形状や使われ方も時代とともに変わってきているので、最近では必ずしも左回転が絶対的なものではないのかもしれない。

ただ、昔から慣れた方向に統一したいのも人情であり、両者を揃えようと思えば、スリックの場合パン棒(と呼んでいいのか)はカメラ前方に位置することとなり、もともと邪魔な角でしかないものが、見た目も滑稽な絵図を展開するのであった。

加えて、当たり前だがローテイトはレンズを中心に行われるわけではないので、画角の中心を合わせようとすれば、三脚本体を移動する必要がある。持ち上げたら途端に、ユルくヒワヒワの脚は閉じてしまい、再度設置する作業も高級品を使用している連中から見れば、爆笑モノであるに違いない。

もともと水平もいい加減に立てて、カメラ側で適当に水平を出しておきながら文句も言えないのだが、当然パンすればズレるわけで再度調整という繰り返しである。仮になにかの拍子に三脚側の水平がバッチリ出たとしても、超軽量が信条のお勤め品ちょっと触れただけで全体が動いてしまうこともしばしばであり、そんな労力もいとも簡単に水泡に帰するのである。(最悪コケるしな)

そんなわけで、グリップも捨て難いができればL型プレートもセットで安けりゃ嬉しいな、と都合の良いことを考えていた矢先に、サンウェイフォトから、アルカスイス規格互換の PML-DP が発売された次第で、渡りに船とはこのことである。

価格も一応想定内の9千円前後と、価値基準を普段の生活に戻せばたやすく容認できるものではないが、すでに基準は UNX-9121 に移行しているのだから、何も止める要素は存在しない。

となれば、当然雲台についてもアルカ互換に向かって一直線である。

一応、サンウェイフォトにもボール雲台は数多くラインナップされているので比較対象としたが、アルカスイスを意識するあまりその精度と同様に価格まで上昇したかのようである。メイド・イン・チャイナに対するこちらの認識と大きく乖離した価格から、選択には至らなかったが、同じ中華のシルイの製品に付けられた価格には、その感覚近いものがあった。

安いんだから、ある程度のネガティブな面を受け入れることにさほど抵抗はなかったが、その品質は意外にも良好なものであった。

およそ同価格にある製品といえば、三脚で選択したマンフロットの製品群にも、最下線を設定以前にピックアップしていたものがいくつかある。しかし、色々と条件を付けていく過程で脱落していくものも多く、ぜってぇ譲れねえ線といいながら、一時は条件の緩和も検討したぐらいである。

SIGMA DP シリーズに見合う製品で言えば、ラピッドコネクトを装備する Manfrotto 496RC2 あたりが価格も安く1万円を切っていることから、真当な選択ではあろうが、独立パン機能を考えるとより上位の Manfrotto 498RC2 でないと条件を満たせない。そのサイズと重量は 496RC2 の高さ 10cm(420g)から、12.5cm(610g)と一回り以上に肥大化してしまう。

その点、シルイには G シリーズと、より上位の K シリーズの2つのラインナップがあり、それぞれ G-10/20、K-10/20/30/40 という、用途に合わせて松竹梅どころではない、まことにきめ細かな選択が可能となっている。おまけに、後述の一脚用に L-10 というどこかで見たような、なんちゃって版的な製品も取揃えて、一部のスキもない商品群である。

サンウェイフォトにも、DT-01D50 という一脚用雲台があり、如何にも RRS MH-01 をパチったような L-10 より、デザインはマシに見える製品があるのだが、いかんせんシルイの倍近い価格なんで諦めた。あまり一脚に雲台という感覚は持ち合わせていなかったんだが、たしかにチルトやローテイト方向に向きが変われば、便利かも知れないという欲も出てきた。実際L型プレートと併用すると、バラエティに富んだ撮影スタイルが可能になるはずだ。

今迄は、DP3 Merrill を三脚に据えてじっくり風景を切り撮る合間に、DP1 Merrill の広角でその場の全体像を手持ちで収める、というのがお決まりのスタイルであった。しかし、天候が悪化したり、端から雨天覚悟で出掛けた時などは、19mm(換算 28mm)でも手振れが気になる、低速シャッターを余儀なくされることも多い。

そんな時は、気休めに ISO200 までは上げてみたりもするのだが、なにせ高感度は呆れるほど苦手とする SIGMA DP である。モノよってはモノクロに逃げるという手もあるが、そんな安易な考え方ではロクな写真にならないことは分かり切っている。

カラーに比べて、明暗だけで勝負するモノクロ写真には被写体にパワーが必要だという意見もあるが、それ以上に撮影者の気合いが必要とされているような気がする。

酸っぱい臭いの押入れ現像所が懐かしい昔は、モノクロが当たり前というかそれしか無い、で撮っていたはずなんだが、そのへんのところは未だによく判らんのである。

そのように環境や撮影条件が悪くなったら、三脚を使えということになるんだが、手持ちのフットワークも出来れば失いたくない。ましてや、広角のためにもうひとつ三脚を持参するもの、体力に限界が来つつある身にはツライものある。

そんなわけで一脚、それもカーボンで携帯には軽く短く(縮長 38cm/419g)。しかも全伸高 154cm と十分な高さを確保できる SIRUI P-326 である。脚としての高級感はマンフロットより上であり、その精度と強度にも十分以上に満足できるもので、ムダに伸ばしたり縮めたりが癖になりそうで怖いぐらいだ。

DP1 Merrill には、L型プレート(Sunwayfoto  PML-DP)を奢ったので、雲台(L-10)との組合わせにより自在な設定が可能である。

クイックシュー対応機能の製品であるにもかかわらず、底面/側面ともに細ネジ(UNC 1/4 インチ)用の穴があけられており、シュープレート等に異常があった場合を想定して、ダイレクトな取付けにも対応している。

このあたりも、RRS などには見られない、中華製品ならではのサービス精神の現れであろう。(パチモノには、本物以上により上を目指す気概がある、と貝木泥舟も言っているしな)

しかし、L型プレートとしての機能には不満もない PML-DP だが、グリップに関してはイマイチである。UNX-9121 に比べると、グリップ部分の前方への出っ張りが少く縦方向にも短いので、ちょっと頼りない。あくまでも比較であるが、小指がかかるかかからないかで、安心感が大きく違うものだ。

プレート部分からグリップに至るステーがそのまま真直ぐ太いまま伸ばせば良いものを、変に凝ってボディラインに沿わせるデザインにしたものだから、強く握ると若干たわむのである。全金属製で、普通の使用では強度的に問題はないのだろうが、感覚的には違和感を覚える。(ステアリング強度が不足気味の車で、峠を攻めた時に感じるアノ微妙な感覚って、却って判りずれえだけだな)

また、UNX-9121 はカメラ本体に傷が入らぬようにという配慮から、グリップ裏側にナイロンテープのようなシートが貼付けられているが、PML-DP の裏側は黒塗装のアルミがむき出しである。この点は、サービス不足であり少しは日本製品からもパチッて見習って欲しいものだ。(保護シートの類いに関しては、日本は少し過剰な気もするが)

正しく取付ければ、本体との間に微妙な隙間ができるので接触しない設計なのだろうが、それはあくまでも静的な仕様である。動的には握るとたわむヤワな構造なので、SIGMA のロゴあたりに接触することがある。したがって、ユーザレベルでなんらかの対策は必要だろう。といっても、せいぜいウラ側にセロテープでも貼れば済む程度の問題だが。

Flipbac FBG4 を購入前には、貼付けグリップもいろいろと物色し、一時はアルミ製の高級グリップも検討した。しかし、SIGMA のロゴを完全に隠してしまうデザインなので、却下した経緯がある。

個人的には、メーカロゴが半分隠れてしまうような PML-DP の中途半端なデザインの方が気になる。それも、SIG が隠れて MA だけが見えるのは、如何なものかと思う。メーカロゴに対するサードパーティの配慮の無さに腹を立てるのは、マックユーザだけなのかもしれないが。

RRS BDP2 Set のリッパ過ぎるグリップまでパチって無駄にコストを上げる必要もないと思うが、せめてステーをもう少し太くして下に1cm 程度下げれば使い安くなっただろう。 いずれにしても、サンウェフォトがグリップはオマケ程度にしか考えていないのが、ミエミエな仕様である。

ま、そのおかげでメモリやバッテリーの交換は楽である。周りが囲まれたようになって、強度の点では全く問題の無い UNX-9121 だが、バッテリー交換頻度の高い SIGMA DP ではそれが邪魔になり結構なストレスにもなる。

したがって、現状ではアルカ互換のL型プレートでオマケにグリップも付いて、というトータル機能を考えれば、PML-DP を選ばざるを得ない。グリップ重視の DP3 Merrill でも一脚の使用が増えるようであれば、いずれ追加ということになるかも知れないが、改良版の登場を期待したい。

L-10 については、従来 1WAY 雲台を使ったことが無いので微妙であるが、決して握りやすい形状とは言えない。機能としては、こんなもんだろうと思うが、質感はハッキリ言って過剰なぐらいシッカリしている。チルト雲台なんぞ、クイックシューなどと贅沢を言わなければ、安いモノは2千円程度で幾らでもあるが、一様に使用感はイマイチというものが多い。

たぶん、プラス5千円ぐらいのメリットはあったに違いないと思うし、見た目がカッコイイというだけで、Sunwayfoto DT-01D50 にそのまた倍の対価を払う度胸はない。

L-10 を使って不便に感じるのは、トッププレートの取付方向が固定なのでL型プレートと併用するとチルト方向に対して平行にしか装着できない。これだと縦横の切替えは可能だが、ちょい上向きとか下向きにするためには、一脚自体を傾けなければならないことだ。

もちろん、普通のクイックシューを利用すればシュー自体の取付け角度を90度回して対応できるが、少々面倒だしL型プレートとの2段重ねはあまりにもブサイクである。価格の面から全くクラス違いだし、用途が異なるかもしれないが Acratech Long Lens Head のように、トッププレートが簡単に回転できたら完璧だろう。(Sunwayfoto DT-01D50 もヘキサレンチがあれば可能だが、簡単ではない)

ただ、クイックシューにも対応しない安価なチルトトップなどを使えば、いとも簡単に出来てしまうことであり(だって締込むときに適当な向きを選ぶだけだし)、だいたいカメラを外してシューの方向を変えるヒマがあったら、チルトトップにねじ込んだ方が早い。いっそ素直に小型でフル機能のボール雲台を付けてしまう方が、近道だったりする。

一脚での使用には、1WAY 雲台が最適という固定観念に囚われすぎた結果かもしれないが、もう少しその辺は探って見る必要はあるだろう。まだ、特殊な使い方は試していないが、DP1 Merrill + Sunwayfoto  PML-DP + L-10 + P-326 には、今後色々なアングルに挑戦してみようと考えている。

で、本題の SIRUI K-20X である。

当然のことながら、家電量販のデジカメコーナーにも並んでいる、国産のお勤め品などとは比較にならない高級感はある。もちろん、ベルボンやスリックにも高級品はあるんだろうが、注文して取り寄せるほどの気合いは入らない。

残念ながら、田舎町ではアルカはおろかマーキンスさえも目視で発見するのはたぶん不可能であり、やっと見かけた Manfrotto 496 や 498 より、マグでハイドロな 468MGR よりも、見ためだけなら精密感に溢れる外観である。

ネットの写真で見ると、ノブの表面がかなりケバい青色に見えるが、実際はちょっとメタリックなライトブルーである。角度によっては上品にも下品にも見える、微妙なバランスではないかと思うが、嫌いではない。

190CXPRO3 とは太ネジ(UNC 3/8 インチ)を介して取付けられる。若干頭デッカチな感はあるが、小振りな SIGMA DP を載せるとそれがかえってどっしりとした安定感があるように見える。クイックプレート上面と側面にも水準器が備わっており、サイドは水平と垂直に対応した二本のチューブを無理やり詰め込んだサービス満点なプレートである。

実際、縦用は短過ぎて無いよりマシという程度だが、なによりこのサービス精神が大事だと思うな。(今回は特別にアレもコレもお付けして、というテレビショッピングがあると聞いたが、よくは知らない)

ノブによる締付は、レバーに比べるとちょっと手間だが、シッカリ締めたという感覚が得られるので、こちらの方が好みである。標準添付のシューは、TY-60(60×49×10.8mm)という長編方向が 60mm のタイプが付属している。ちなみに、L-10 も同じ TY-60 であり短編の取付部分は 39mm で、規格なんで当たり前だが Sunwayfoto  PML-DP と同様であり、付替える場合も同じ開度で相互に行えるので楽である。

この当たり前のことが、オラが規格のシューを採用している雲台では、なかなかスムーズに行かずストレスの原因となる。三脚を換える度に、シューを付替えていたのではクイックシューとは言えないだろう。(ま、色々と大人の事情もあるのだろうが、そんなもんに付き合ってはいられない)

最初にアマゾンで注文した K-20X には、国内では流通していないはずの、TY-50X が付属していた。長編が 50mm と短いだけの TY-50 と異なり、ストッパーのツメもなく取付けネジはコインがないと手締め出来ないタイプであり、使い勝手は良くない。シルイのホームページでも確認したが TY-50X の記述はなく、再度アマゾンの商品説明の欄を見てもやはり TY-60 と明記されている。

追記:08/09
*8月上旬より販売が始まった新しいGXシリーズには、TY-50、60 に換えてこの TY-50X が付属品となり、別売部品としても流通が開始されるもよう。 また、上位のKXシリーズは従来通り、ストッパーと手締めが可能なリングのついた TY-50、60、70 が付属。今回の付属品に関する手違いが、新しいGXシリーズとどう関係したのかは全く不明。

アマゾンに一応文句を言ってみたら、(これはナイショの話だが)ラッキーなことに別売部品として売られている TY-60 を無料で頂けることになったので、個人的にはこの件はマイナス評価とはならない。

このツッコミのせいで、K-20X は調査のためとして、7月中旬頃しばらくの間販売停止となっていた。卸元の手違いであったことが後に報告されたが、卸がヌルけりゃ売りでカバーするという、かつては対面の店頭販売に期待されていたメリットだったんだが、今は昔だな。

赤字でも頑張るアマゾンはエライ、というちょっと PR な余談である。(実際の経緯はもうちょい複雑だが…、でも事実だからね)

肝心の K-20X(ボール径:38mm)であるが、 このサイズは SIGMA DP には十分過ぎる大きさであり、実際もっと安けりゃ K-10X(ボール径:33mm)でもよかった気がする。

その動きはなかなかスムーズであり、テンションの調節がメインダイアルの中に埋め込まれている定番のデザインである。一度決めたら他そう頻繁に調整するわけでもないので、別のノブで行うGシリーズや、似たような価格の Manfrotto 498RC2 などより使い勝手が良いように思う。また、重量も約400g と軽く 600g 越えの 498RC2 の2/3以下というのもメリットになるだろう。

前回、190CXPRO3 の開脚抵抗が結構大きいことを書いたが、運用面ではカメラを付けたままセンターポール下端を持ち上げてちょっと移動する時などはこれがメリットにもなるので、やはりトータルで検証しないと評価は難しい。

また、購入前の予想通り、やはり独立したパン機能は正解であった。

自由雲台というぐらいだから、自由に動くモノになんでパンが必要かと思われるかも知れないが、チルトに比べると水平方向のフレーミングはわりと頻繁に変えるので、一度出した水平を崩したくないというのが主な理由である。

そうなると、三脚レベルで水平を出さなくてもいいレベリングベースに物欲が湧いてしまうのが、欠点といえるかもしれない。(とにかく水平出すの苦手なんで、そのせいでボツにした写真は多い。たまに iPhone の水準器もあててみたりもするが、イマイチなんでシグマには是非次期機種では、電子水準器を内蔵して欲しい)

相対的な比較はできないが、水平方向にもヌルっとした滑らかさと抵抗をもって回頭できる。ただし、ボール部分のようなフリクションのコントロールまでは出来ないので、あくまでも水平での回転が前提であり、極端に角度を変えた場合は注意が必要である。

この極端に角度を変えた場合が、実はもう一つの理由。

Manfrotto 190CXPRO3 のように、センターポールを横向きにして使用する時は、通常のセット方向だとカメラは縦位置に変わる。この状態でボール雲台の機能を利用して横向きに変更するのだが、そのためには一ヶ所だけ90度に対応した切り欠き部分で起こすことになる。だが、パン機能のないボール雲台では、その切り欠き部分が自分の思う方向にあるとは限らないのである。

通常の垂直で使用している時なら、センターポールを回転させれば問題はないが、アングルを横向きにした時は、センターポールの回転機能は戦車の砲塔のような動きに限定されるので、雲台側で対応しないと、思いどおりのアングルに変更できない。

この場合に、独立したパン機能があると(チルト方向に)自由な角度でセットできるが、前述のようにフリクションは効かない。ちょっとユルメただけでカックンとお辞儀をしてしまうから、あくまでも特殊な使い方になるのかもしれない。

ま、欲を言えばキリがないものであるが、一応、必要な機能はある程度の高いレベルで、実現している組合わせではないかと思う。

実用本位の低価格重視も、一点豪華主義も個人の好みであるが、道具がお粗末だと撮影に対するモチベーションは上がらないし、さりとて限られた予算内で限り無い物欲とどう折合いをつけるか、物事ハマると悩ましい限りである。

そういう点において、なかなか魅せる SIRUI K シリーズ。少なくとも個人的には、精度や使い勝手と価格のバランスに対して、新たな基準が出来たように思う。

全体のバランスとしては、トップのカメラが軽いおかげで非常に安定したもので、以前のそよ風が吹いても…、という状況には遭遇しない。ただ、天気は良くても雲があれば光の加減なんぞ毎分毎秒変化するし、一時風が止むのを待ってシャッターを切るという精神的な余裕も、風景撮影では必要だろう。

じっくり構えて撮るしかない SIGMA DP には、その高画質に見合う少し過剰なぐらいの撮影機材があったほうが、その楽しみも倍増するというものだ。



…ということで、今月もヒトツよろしく。
2013年08月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.08.03] 三脚のことなど…、その後(2) 〜より転載&加筆修正

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