2015年7月26日日曜日

雑談:テント〜など

火遊びの続き、である。

恥多き80年代、L.L.Bean やら Coleman やらのカタログに感化され、アウトドアグッズを買い散らかした苦い想い出も、いつしか忘れ去られていた。

かつて購入したものの使う機会に恵まれず、そのまま倉庫や押入れの肥しとなっていたモノも多い。それでも、最近ではそれらの一部は防災グッズの一環として日の目を見ることもあり、この季節になると意気揚々と購入した頃を懐かしく思い出している。

ミニによる撮影行では、ディレクタチェアやガスバーナーなど、定番のアイテムに限っては撮影現場での脇役としてそれなりに使用されることもあった。だが、それ以上に踏み込んだ使い方をしようとは思わなかった。

ところが、撮影行の足としてセローが加わってから、少し様相が変わってきたのである。せっかく遠方にまで出掛けても、夕方には帰路につかねばならぬ。日が暮れたら良い子はお家に帰りますでは、小学生の遠足レベルでしかない。常々、夜の部も欲しいオヤジとしては、少々物足りなさを感じていた。

夜の火遊びといっても、文字通り山や河で火を焚いて遊ぶ方である。くれぐれも火傷をせぬよう、大火事にならぬように気をつけた方が良いという点においては、まあどちらも同じかな。

時系列通りで行けば、未だ公開していない在庫写真も少なくないが、あまり冷めない内が華という話もあるので、そのあたりの順番はこの際無視する。

といっても、もう先週のことになるので、それほど鮮度が高いわけでもない。当初、もう少し早めに晒そうと思っていたんだが、いろいろと想定外なアクシデントもあったりで、精神的なショックから立ち直る時間も必要だった。したがって、最速でこのタイミングである。

予定では、今回ソロツーリング用に調達したテントのことなどを中心に、楽しいお道具談義にでも花を咲かせてやろうかと考えていた。しかし、設営練習も兼ねて出掛けた18-19日は、折悪く台風一過の翌日であり、その事が後々に悪影響を及ぼすこととなった。

普通、台風一過といえば、風は多少強めながら爽やかに晴れ渡った空模様を期待するところだ。しかし、今回の台風11号は足が遅いだけでなく翌々日まで雨が残るといった、まことに往生際の悪い台風である。

県南では、すでに道路も乾いていたのだが、そんな天気に対する不安もあって、普段より少し遅めのスタートとなった。どちらかといえば、満載した荷物の積み方に手間取ったことが、遅れた原因といえなくもない。

タナックスのミニフィールドシートバッグは、拡張機能を使用するとデフォルトの19リッターから27リッターへと、その容量が増える仕様となっている。締めつけているチャックを緩めて、両サイドへ7センチずつ拡がる機能で、普段はそれを縮めてコンパクトを装っているだけなんで、どっちがデフォかは不明。

それでも、横幅が合計14センチも拡がるわけで、収納サイズだけ見れば今回の積荷の大半はその中に収めることが出来る。ただ、トータルの体積の制限で全てを同時にというわけにもいかず、優先順位(使用頻度)による選択は必要だ。

そんなわけで、夜の部が始まるまでは出番の無いお道具が、必然的に収まることになる。今回は、何が必要で何が不要かを見極める為のシミュレーション的な要素もあり、決して単車にどこまで荷物を積めるのかを試してみたかったわけでは無い(たぶん)。

一応、今回の積荷の主な内容を紹介しておこう。

◎ソロ用テント:mont-bell Chronos Dome #1
◎グラウンドシート:mont-bell No. #1122493
◎タープ:mont-bell Mini Tarp DKFO
◎ストーブ1:Solo stove
◎ストーブ2:UNIFLAME Nature stove
◎ストーブ3:Esbit Pocket stove
◎バーナー1:Primus P-115F
◎バーナー2:Trangia TR-B25
◎クッカー1:Primus P-CK-K101 & 202
◎クッカー2:Trangia Mess tin TR-209 & 210
◎ランタン:Primus IP-2245A-S
◎燃料ボトル:Trangia TR-506003 (0.3L)
◎水タンク:Evernew ECB-211 (1L)

以上が、シートバッグに納まった物の数々である。もちろん、その他の小物も多数あるわけだが、いちいち挙げればキリがないので割愛する。そして、以下がサイズ的な問題または、容量の制限から外へ追いやられた物。

◎タープ用ポール:mont-bell Mini Tarp Pole 165×2
◎スリーピングバッグ:Coleman Performer C5
◎テーブル:UNIFLAME UF Side Table
◎チェア:Helinox Chair One Camo BTC

最近、巷で評判の製品がどんなもんか検証してみたいという要望もあって、ストーブやバーナーなどの類いは機能的に被っているモノも多い。いずれ、定番みたいなものに絞られてくるだろう。

この中でも、今回のハイライトはテントとストーブだろう。だが、設営練習がメインとはいえ真っ昼間からテントを張って篭城というわけにもいかない。そちらは夜の部、せめて日が暮れかけてからお楽しみに取っておくことにして、設営場所の候補探しに走り回ることにした。

以前、ミニで訪れたこともあり、それなりの景観に好感を持った柿ケ原ダムあたりが第一候補である。八塔寺の北に位置する柿ケ原だが、そこへ向かう途中でもそれらしい場所はあるだろうと踏んで、極力脇道を選んで走ってみる。

国道484号線から、県道52号線へ外れて少し入ったところに太田池という、けっこう大きな池がある。池の辺には割と広めな草地の空きスペースもあって、テントを張るにはお誂向きに見える。近くには竜天天文台や、かつて利用したこともある竜天オートキャンプ場などもあり、環境としては野営向きな場所も多い所だろう。

後で知ったことだが、この溜め池の堰堤を通る道はこの辺りの生活道路の一部になっていたようだ。というのも、県道52号線がこの池の側の一部で工事のために通行止めになっており、その迂回路として利用されていたのである。最初に訪れた午前中には全くそんなことは知る由もないのだが、絶対的な交通量が知れているので、そのことに気づくのは夜になってからである。

まあ、そんな状況確認の最中にも、携帯電話のエリア内にいれば電話はかかってくるわけで、以前の少し山間部に入れば即座に圏外になっていた頃が懐かしくもある。

電話の主は例によってK氏である。前日に、ソロキャンプの設営練習に出掛けることをつい漏らしてしまった。冷やかし目的なのはミエミエなんだが、無視するわけにもいかない。

どうやら、夜の部のみに興味がおありのようで、最終的な設営場所が決まったらバーベキューセットを持って駆けつけてやるから、必ず連絡せよとのことである。何事にもやたら参加したがる性癖は相変わらずで、ひとり静かに孤独を楽しもうとする者にさえ、何の配慮も遠慮もないジャイアンなのだ。

まあ、道具立ての割に自分自身で用意持参した食材はきわめてショボイので、新鮮な野菜を筆頭に豊富に食材を持込むことを条件に承諾した。取りあえず、昼過ぎまでは今後のためにも設営地の候補は探しておきたいので、柿ケ原方面に向けて移動する。

空飛ぶ円盤や消し忘れビデオなどとともに、一部にはその存在も信じられている「つちのこ」だが、看板まで立てて町を挙げて力を入れているのは、吉井町ぐらいのもんだろう。国道484号線から、県道265号線(その発見現場として、その筋には有名な場所らしい)へ短絡する険道なども通ったのだが、記録するほどではないので今回撮影は割愛した。

途中、県道414号線から県道90号線を経由して、県道46号線を滝宮あたりまで走ってみたが、さずがに主要県道から近い所にはそれらしい場所は見当たらなかった。県道360号線と合流して暫く北上すると、柿ケ原へ入る道との分岐点がある。

そこから、わずか2km弱(道は登っているのだが)南へ下りたところに、柿ケ原ダムがある。その景観は、ダムというより堰堤のある溜め池であり、最初の堰堤からは眼下に民家も数件見える場所である。たとえ夜になっても、それほど寂しい環境ではないので、逆に安心感もあって良かろうと思う。

どうしても、絶望的な孤独感を味わいたいなら、もう一つ二つ先にも堰堤があるのでそちらを選択することも可能だが、なにやら大きな動物用の檻も見かけたので、それなりの覚悟は必要かも知れない。

当初、ここで軽く昼飯でも食って、もう少し北の方へ行ってみるつもりだったのだが、昼にはちと早い中途半端な時間である。ダム湖脇の林道が少し気になっていたので、取りあえず行ける所まで行ってみたくなった。荷物も満載状態なんで、あまり無理は出来ないと考えていたのだが、ついつい面白がって深入りしてしまう。

これも今さらなんだが、セローのオフロード走破性というのはかなりのもので、それはさほど技量が伴わなくても、どんどん進んで行けるという恐ろしさでもある。

当日の搭載重量から、サスも普段より沈み込んでおり、それが足付き性を良くさせていたことも影響していたかもしれない。この日も、何度か転びそうになりながらも、相当なガレ場を全く転倒無しで走破できたことに気を良くして、引返すタイミングを逸してしまった。

峠に差しかかった頃には、もう今来た道を引返すことなど到底考えられなくなっていた。それほど酷い道に感じていたのだが、この先の過酷さに比べりゃ可愛いもんであり、もちろんそのことに気づくのは、もっと後になってからであることは言うまでもない。

峠の時点でも少々不安が過っていたので、そこでの昼食は簡単に済ませた。全く未舗装な往路に比べて、反対側への下りは一部はコンクリートで舗装されている。ただし、カーブの曲率が極端にきつく余程の特殊車輌でもない限り、四輪車ではまず通行は不可能と思われた。

それでも舗装しているのだがら、一応道としては管理されているのだろうと考えて下って行く。まあ、これが間違いの始まりで、その後の迷走は筆舌に尽くし難く、ほとんど泣きそうになりながらの行程である。

最初の難関は、土砂崩れである。以前、ハーレーで挫けた、布原から河本ダム脇の林道で遭遇した落石とは、全く異質なものである。諸悪の根源は、前日までの台風の影響による雨で、鉄砲水的な泥の河があちこちに見受けられる。その一部は、林道を跨がる形で行く手を阻む。

質的には泥の塊だから、乗越えるというより、寧ろ分け入りつつ通過するという感じで、まるでウンコの塊に突っ込むようなもので、あまり良い感触とは言えない。おかげで、車輪と言わずフェンダーと言わず、全てが泥だらけになる。

第二の難関は、山から流れてきた雨水で河が幾つか出来ており、それが林道を分断している。場所によっては、かなり土砂が流されて深い溝になっている。だが、セローで渡れない程には深くないので、通過すること自体はそれほど困難ではない。

ところが、山を下って行くに従ってその河の規模が、どんどん大きくなっているのだ。よって、第三以降の難関は、渡河に次ぐ渡河となり、およそ覚えているだけでも5〜6回は渡ったと思う。その水深も回を追う毎に深くなり、次第に河底の状態も、基本的には岩だらけと相場は決まっているのだが、それさえも把握し辛くなる。

防水機能がウリのライダーブーツ、ELF Synthese 14 も、さすがに水深が 50cm 近くもあると意味がない。膝から下はびしょ濡れで、ブーツの内部まで水が入っているが、ホールド感にはさほど影響はないので助かる。

何度か目の渡河を繰返して、このままでは埒が明かないことに気づき、セローを停めたまま徒歩で先を確認することにした。時間はまだ早いが、天気も下り坂で木々の密集する林の中では、心なしか暗く感じる。実際にもかなり暗いはずで、今さらだが渡った後に道が無ければ早めに引返すことも考えないと、このまま脱出に手間取っていると、とんでもないことになりそうである。

というのもここに至る前、例のウンコの塊越えを敢行した直後に、三差路に遭遇していたのだ。そこにあったのは、一体いつの時代に作られたかさえ不明な、きわめて怪しい石の道しるべである。

一方は、来た道で柿ケ原方面を示し、もう一方は滝宮(たきのみや)と読める。三差路の最後の一本に関しては、全く示されていなかった上に、その道はかなり登っており、険しさにおいては少し下っている滝宮方面にも勝ると思われたので、見なかったことにしたのである。

しかし、ここに至って選択肢が無いとなれば、そちらを選ぶしかない。または、柿ケ原方面へ敗走するかである。少なくとも、徒歩により斥候した結果は、絶望的であった。最後にセローを停めた位置から、200mほど行った先には道らしきものはなく、おそらく雨によって流された、かつて林道であったろう崖のような壁面が、岩肌を覗かせているに過ぎない。

いよいよ、切羽詰まった土壇場である。

結局、選んだのは行き先も不明な登りで、三差路まで帰る道でも何度か転倒しそうになるも、なんとか堪えて凌いだ。だが、搭載していた荷物に気を配る余裕はなかった。iPhone で撮影した記録によると、その時間はほんの15分程度でしかないが、永遠のように長く感じた。

再度峠越えかと思われた道も、際立った乢には気がつかなかった。心の中では、もうしませんもうしませんと、念仏のように唱えながらの敗走であり、ぶっちゃけその行程は殆ど記憶にないのである。

吉永ファームという畜産関連の処理場付近に出てから、そのまま県道368号線を上月あたりまで北上したのである。やっと生きた心地が戻ってきたのは、国道179号線を美作土居から江見へ向かう頃である。

びしょ濡れな足下が気になり出したので、江見のホームセンターで草履と靴下だけでも買おうと駐車場に入った時、初めて荷物が少し減っているのに気づいた。

よく見れば、背中で邪魔になってしょうがなかった、コールマンのスリーピングバッグが無くなっていた。どおりで、背中の圧迫感が朝のうちと変わっていたはずである。今回のソロキャンプ用に調達した、全くの未使用新品であっただけに、安物とは言え悔しさも一入だ。

おそらく、落下地点は帰りの渡河の最中か、三差路分岐点に至る以前だろう。したがって、あの地獄へもう一度出向かなければ、回収は不可能である。そう考えれば諦めもつきやすいのだが、かといって何もせずに放置してしまうのもまことに遺憾である。

そこで、急遽予定変更して、不本意ながら今来た道を戻ってみることにした。本来は、国道179号線から国道374号線へという、至極真っ当な経路で朝訪れた太田池へ向かえば、時間的にK氏と落ち合うにも丁度良い按配になろうと考えていた。そろそろ、最終設営地を連絡する時間だが、極めて薄い望みに懸けてみた後で連絡することにして、反対車線の落とし物に気を配りながら戻って行ったのである。

我ながら諦めが悪いというかケチ臭い話だが、それほど高いリスクでもないので、可能性がゼロで無い限りは懸けてみても良いだろう。どうせ、あの険道の入口まで行けっても回収できなければ、スッキリと諦めもつく。 

運良く、県道沿いで運良く回収出来たなどという、理想的な展開にでもなれば、このことは墓に持って行く秘密として闇に葬るのも良かろう思った。

案の定、そんな展開にはならなかったのだが、まああの場所では、まず他人に拾われる可能性も極めて低い。願わくば、スリーピングバッグも静かに永眠して、迷わず成仏して欲しいものだ。

そんな、勝手な妄想をしながら県道368号線を戻って行く。生憎この辺りは携帯も圏外で、K氏にそのあたりの経緯を連絡しようにも出来ない。県道90号線へ出てから、やっと太田池を最終目的地としたことを連絡し、塩田辺りで落ち合うことになった。

吉井川へ出て、国道374号線から竜天方面に向かうべく国道484号線との分岐点近くまで来ると、既にK氏は到着していた。今日はセカンドカーの青いデミオであるが、ひとしきり待たされた不満の弁を聞かされる。池の側までセローに乗せろといって、メッチを取り上げられたと思ったら、サッサと一人で走り去ってしまう。

慌ててデミオに飛び乗って追いかけるが、最近買い替えた新車とあって、その内装や装備などはミニ乗りのとっては異次元世界の景観である。取り合えず、寒いほどの冷房と流れっ放しな中島みゆきをどうにかしたいが、まったくわけがわからんのである。

さすがに、国道から脇道に入って暫く行った辺りで、道が分からなくなったと見えてK氏が停まった。それでも、この辺りはハーレー以前の CB1300 当時に、良く走った散歩道と豪語するだけのことはある。あと1kmもない場所までは来ていたので、その後はこちらの先導で太田池の辺まで行った。


スリーピングバッグを紛失した経緯などは、夜の宴会ネタにとっておくことにして、テントとタープの設営である。一応、独りで設営することを想定したシミュレーションであり、ニヤニヤしながら眺めては何かとチャチャを入れるK氏を無視しながら、順調に設営は終った。

タープの張り具合に今一つ不満は残るが、アウトドア製品も進歩しているのだろう、初めて張るソロ用テント(クロノスドーム)はいとも簡単に張れた。

半パンに着替え、江見のホームセンターで買ったゴム草履を履いてリラックスする。そこいらに落ちている、枯れ木を集めてソロストーブに点火しようとするのだが、早く肉を食いたいK氏は炭への点火が待ち遠しいらしく、ソロストーブに関するウンチクにも上の空である。

昼は、ラージメスティンを使ってレトルトと簡単に済ませたので、夜はメスティンレギュラーで飯を炊いてみることにした。さすがに、火遊び用のソロストーブでは火力も安定しないので、トランギアのアルコールバーナーを使ってみる。事前の、台所シミュレーションでは、燃料用アルコールも 50ml ほどあれば1合の炊飯に十分であることは確認している。

風はそれほどで吹いてはいないが、念のために60mlほど入れてみる。小道具の使い勝手については、機会を改めて言及しようとは考えているが、恐ろしく出来の悪い、ハイマウントの風防と悪戦苦闘しながらも、何とか炊飯は上手くいったようだ。当初、メスティンのご飯には見向きもしなかった手巻き寿司持参のK氏も、ついお焦げの香につられて手を出し始めたようだ。

日も暮れて、あまり良い天気とは言えない一日だったが、それ以上に波乱に富んだ一日であったことをK氏力説しようとする。だが、ホルモンの焼け具合ほどには興味はないようで、バーベキューというか焼肉パーティの方は、いつものように盛り上がったのである。

夜も更けて、引上げて行ったK氏に主だったゴミや残飯整理を頼んだおかげで、明朝の撤収は少し楽になりそうだ。気温はさほど下がっていないので、スリーピングバッグなしでもなんとかなるだろうし、イザとなれば夜中に撤収しても、わずか2〜30Kmほどの近場である。

と油断していたら、なんと飲料水の確保を忘れていた。焼肉にはコロナエキストラと、個人的には決めていたので、そちら方面の調達に抜かりはなかった。だが、昼間の暑さでコンビニ調達のお茶の類いは既に飲み干しており、先程淹れた食後の珈琲で最後の水を使い果たしていたのである。

池の水を煮沸してまで、飲む気にもなれない。かといって、朝まで水分無しは、焼肉後の体にとっては厳しいものがある。しかたがないので、設営はそのままにランタンの灯を最小に絞って、買い出しに出掛けることにした。たぶん、国道484号線に出れば自動販売機ぐらいはあるだろうし、たしかドライブインもあったはずだ。

昭和40年代よろしく、短パンに草履履きという出立ちだが、さすがにノーヘルとまではいかない。とうに酔いは醒めているが、素手で握るスロットルの感触も、その昔免許を取る前を思い出す感覚で、生暖かい深夜の風が無茶苦茶懐かしくもあり新鮮である。

そんなアホなことばかりやっていれば、いつかはバチが当たるわけで、翌朝の忘れた頃にやって来る。今回は通った道の過酷さに反して、一度も転ばなかったことは思いもよらない幸運であった。だが、そのツケでスリーピングバッグが犠牲になったに違いないと、昨日の宴会でK氏に話していた。人間、万事塞翁が馬であると。

明けて、早朝になってから雨が降り出した。就寝した時間ははっきり覚えていないが、午前3時頃ではなかったかと思う。フライシートにあたる雨音を聞いたような気もするが、そのあたりの記憶は定かではない。

小雨が降り続いていていたので、防水ヤッケを羽織る。Gパンは、前日の度重なる渡河の影響で濡れてから、未だに乾いていない。合羽をだすのも面倒なので、下はそのままである。撤収も恙なく終わり、付近を確認した上で積荷を再検証し、搭載状態にも問題がないことを確認した。

いろいろと反省点の多いソロキャンプ練習編であるが、どうやらツケは払い切れていなかったようで、最後の最後に大きな災難が待ち受けていた。

堰堤から、舗装された林道に入った直後、いったい何が起こったのか全く分からないまま、いきなり左側へ転倒である。思わず、なんでぢゃ〜と叫び声を上げたほどで、速度は低くたぶん30km/h にも達していない。だが、下り坂の所為かすぐには停まらず、そのまま5mほど滑って右側の溝に後輪を落として止まった。

多くの荷物により、横幅が普段より膨らんでいるシートバッグのおかげか、転倒の衝撃はかなり荷物が吸収してくれたようだ。だが、起きようとするとシートバッグと地面の間に入った足が抜けず、左足の膝あたりに激痛が走る。なんとか抜け出して辺りを見回すと、転倒した場所はやはり直線であり、止まった場所から緩やかな左カーブとなっている。

あまりにも不可解なので、滑り始めた場所まで登ってみる。道の真ん中に堆積した泥が盛られ、中からかなり太い枯れ枝の一部が露出している。その辺りは、木々に囲まれ相当に暗い場所で、濡れた舗装路と堆積した泥は区別はつき難い。

え〜い、忌々しい泥めとばかりに、蹴散らそうとしたがズルっと滑って再度コケた。なるほど、こりゃ確かに滑るわい。おそらく、泥に埋っていた枯れ枝を、斜めに踏んでしまったのだろう。前輪が横に弾かれて、直線であるにも拘わらず、完全にグリップを失ったようだ。

今迄も何度か、路上に撒かれた砂などによって前輪を掬われそうにはなったことはある。だが、大抵は低速であることが多かったので、なんとか内側の足が反応して地面を蹴るなどの抵抗で、転倒には至らなかった。

しかし、今回のは全くそんな余裕もなく、いきなりの転倒である。Gパンの左足向こう脛あたりは、激しく破れて血が滲んでいる。痛みはそれほどでもなかったのだが、なぜか血を見ると痛みは激増するようで、その場にへたり込みそうになる。

だが、そんなことをしている場合ではないのだ。倒れたままのセローのタンクからはガソリンが漏れ出している。その構造上仕方がないのかもしれないが、燃料噴射方式なんだからもう少し漏れ難い構造には出来ないものか、と文句を垂れながら引き起こしにかかる。

さすがに、荷物の重量が効いており、そう簡単には起きてくれない。その上、側溝に近い所なんでそのまま起すと前後輪とも溝に嵌まる形になって、後々面倒なことになりそうだ。

両手でハンドルの左側を持ち、転んだ状態のまま、則ち左に一杯切ったまま道の真ん中辺りまで引摺って移動させる。車体へのダメージは気になるところだが、背に腹は代えられぬゆえ、セローには我慢してもらおう。

左足の痛みで力も入り難いが、こんな場合は車体を持って起そうとしても無理である。ハンドルの一ヶ所に力を集中させて、引き起こすのが一番確実である。グリップを握って、思いっきり背筋に力を入れる。転倒に対応したレバーの効果はあったようで、ZITTA のクラッチレバーも先っぽの玉が削れただけで済んでいる。

また、それ以上に効果があったのは、ハンドルへの締付をあまりきつくしていなかったことで、左のバックミラーの接地によって、レバー取付部自体が上の方に曲がっていたことだ。ZITTA に交換して以降にハンドルの高さを調整したのだが、その時レバーの角度を調整後に、たぶんいい加減にしか締めていなかったと思う。それが、怪我の功名となった可能性もある。

なんとか、エンジンを始動して県道52号線まで出て、明るい所で再度ダメージの度合いを確認する。セローに対するダメージは驚くほど少なく、荷物(と左足)で殆どのショックは吸収していたようだ。どおりで痛みも一入であり、出血も未だに止まっていないようだ。

深夜の買い出しの時でなくて幸いだったが、その時に調達したどこぞのお山の天然水が、傷の洗浄に役立つとは思わなかった。シートバッグのサイドポケットに入れてあった救急セットから、消毒用脱脂綿を取出して当てる。ヤッケの左腕あたりの破れ方はたいしたことはないが、Gパンは絶望的な破れ方をしている。

その他、老体の方に損傷はないかと体操の真似事をしてみる。左の腰に僅かに痛みはあるが、激痛という感じではなく、ちょっとした打ち身程度だろう。左手を見れば、甲にもかなり深い切り傷はある。手そのものには痛みもないのは当然で、グローブ(ELF ELG-4262)の甲には、かなりゴツいプロテクタが入っている。表面は相当に削られているので、こちらも転倒に対して効果はあったと言えるだろう。

菊ヶ峠を下りる頃まで降り続いていた小雨も、山陽町辺りまでくると嘘のように晴天に変わる。だが、心のうちはそれから暫く晴れることはなく、立ち直るまでは少々時間がかかったのである。

ま、転んだ後の杖として、速攻で膝用のプロテクタを発注したのは言うまでもないが、紛失したスリーピングバッグの後継は未だ決めかねている。

いい加減、反省も次に生かされないと、またもや痛い目に遇いそうなので(もう遇ったけど)、そのあたりも今一度考え直す必要があると痛感した。

標題通りの雑談:テント〜(転倒)などの顛末でした。



…ということで、ヒトツよろしく。
2015年07月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2015.07.26] 雑談:テント〜など 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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