2014年4月11日金曜日

自由への回帰:巡航

機材が揃ってくると、不思議と使う機会の方が減ってくる。

三脚などというものは、集合写真を撮る時に自分だけ写らないのは寂しいから使うのだろう、と思い込んでいた時代もある。つい最近までは、カメラから手を離しても地面に落ちなけりゃ、それで十分機能していると考えていた。

ぶっちゃけ、さんきゃく何それ美味しいの?という連中と、たいして変わらない。

最近よく使うのは、SLIK 500G-7 というオモチャのような三脚だ。

お勤め品の例に漏れず雲台の交換など以ての外であり、コイツにアルカ互換のトッププレート(Sunwayfoto DLC-42)を無理やりねじ込んで、車のシート下の隙間に転がしている。

一般的な縦位置の方向から、どう考えても逆だろうという側に邪魔なハンドルが出っ張っている。その動作もおよそスムーズとは言えず、止めたいところで止まったためしはないし、総重量は 600g もないので確かに軽いが、そよ風にも揺れているのがハッキリと分かるぐらいに弱い。そんなモノに、重さがあるだけでも腹が立つぐらいだ。

今なら、ご自由にお持ち帰りくださいと言われてもご辞退申し上げたいが、なぜかこの頃出番が多い。

マンフロット(190CXPRO3)がブツ撮りの被写体側へ移ったりとピンチヒッター的な場面もあるが、それだけでもない。値段も安いから扱いも雑になりがちで、すでにボロボロのガタガタだが、道具というのはこれぐらいになってから使う頻度が上がることも少なくない。

手に馴染むというほど出来の良いモノでもないが、凝りがない気を使わなくて良いというのは、十分に一つのメリットとなり得る。

昔観た映画かドラマで、ボロ車に乗った男が全損の憂き目に遭い、仕方なくもっとマシな車を手に入れるのだが、あまり気に入らない。程なく事故ってボコボコになった車を前にして、だいぶ良くなったなと呟く。あの心境が、分かるような気がするのである。

マンフロットも、いつかはそうなるぐらいに使い込めたらと思うが、分不相応なモノを無理して買うと大事に扱い過ぎて、却って使用頻度が下がってしまうのが貧乏性の辛いところだ。

ま、そんなこたあどうでもいいんだが、畳みかけた風呂敷は最後まで畳まねばならぬ。

何とかたどり着いた、折り返し点の三回目は、現行機材の使用感や問題点などについて言及してみる。

なるべくアラ探しにならないようにとは考えているが、さほど探さなくてもけっこうあることも事実で、はたしてどうなることやら。

システム展開を前提とした機器の場合、以前のような想定外な問題に遭遇することは、かなり少なくなった。たまに浮気をした途端に、予期せぬ問題が発生することもある。だが、それも経験であり楽しみの一つと笑っていられるのは、相手が機材の場合に限られることは言うまでもない。

お約束のように、機種ごとに付属する水準器の精度やバラツキに不満を感じながらも、現場での検証を元に実用範囲に収まる妥協点を模索してきた。

その過程において、必ずしもスペックに現われない仕様上の問題点が、使い勝手に大きく影響を及ぼすことを知るきっかけとなった。

レベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)導入以来、水平基準が設定できることのメリットは痛切に感じているが、レベリングベースによる水平出しは、少々コツがいる作業でもある。

あくまでも個体の話ではあるが、レベリングベースに付属の円形水準器は、水準器を手前に来るように回転させた状態で、気泡が基準線と三時の位置の交点あたりが、本当の中心点であることを何度かの検証で把握した。

最終的には、その時使用するオプションを組上げ、カメラ上の気泡管水準器(UNX-5685 or HCL)で再度確認するが、それほどズレていることはない。

ホットシュー水準器の場合、気温にもよるが基準線に気泡が触れる程度の傾きで、だいたい ±07〜09° ぐらいであり、気泡と左右の基準線の間隔が均等になれば水平、基準線に触れないまでも間隔に微妙な差があれば、±0.3°ぐらいの傾きが生じる。

これは中心点で撮影した写真と、基準線に触れた状態で撮影した写真を比較してみた結果である。機種によって多少の誤差はあるものの、±0.7° 程度の角度補正で修正できたので、概ねこの範囲に収まる。

水準器に関する試行錯誤は、割と長期に渡って続いており、慣れという以外根本的な解決策と言えるほどの結論には、残念ながら現時点でも至っていない。

[現行機材の運用]
ロケーションが決まったら、現場での設定作業は三脚の設置から始まる。

現行機材では三脚ベースではせいぜい気泡が端っこに張付いてしまわない程度の設置に留め、レベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)が一つの基準を作る。

不整地であることが多いので、お定まりの開脚角度(25°/46°/66°/89°)では対応できないこともあり、適当に脚の長さを変えたりもする。

こんな時は、GITZO のエクスプローラシリーズの様に、どんな角度でもロックできたら便利だ。そのかわり、脚を均等に開くのは面倒という意見もある。

だが、三脚の脚が均等に開いたぐらいで水平が出るパターンなど先ず無いし、不整地が多い場合は、レベリングベースとの併用に向いているように思う。(ただ、値段が向いていないのが第一の問題だが、なんであんなに高いのに人気があるのか、不思議だ)…余談である。

最もシンプルな構成はと言えば、構成も何もない、雲台も無しにダイレクトにカメラが載る組合せだ。

この場合、カメラ側にはアルカ互換のL型プレートが付いていれば、レベリングベース直上にクランプを付けることで対応出来る。

水平基準は、カメラレベルで取ることになるので、レベリングベースが自由雲台の役割を担う。アングルの変更には限りがあるが、もともと水平は出ていないので、時には三脚の設置状態まで動員することもある。だが、状況によっては、これでも十分実用にはなる。

レベリングベースのトップには、シンプルな円形クランプ(Sunwayfoto DDY-64iL)を専用のネジ穴を使って取付けるのが、位置決めもキッチリ行えるし最もスマートである。ネジを締めている時のヘキサレンチに伝わる感触にも、高い精度で製作されていることを実感できる。

通常 UNC3/8 をもった雲台をクランプに取付ける為には、アルカ互換のクイックリリースプレートをアダプタ(UNC1/4-3/8)を介して付けておく必要がある。

カメラを交換するのと同じ感覚で、雲台を交換するシステムである。ユニット化した機材を搭載するに当たって、昨年末まではこの組合せを基本として使用してきた。

この構成では、レベリングベースと雲台との間にあらゆるオプションを挟むことができる。

パンニングクランプ(DDH-02/03)などを載せれば、独立パン機能のない1ウェイ雲台でも、水平を維持したままティルトとパンが可能になる。

インデックスローテイタ(Sunwayfoto DDP-64M/64S)を挟めば、パンニングしても正確に戻すことができる。その動きに慣れれば、面倒なロックアンロックを繰返す必要もない。

構図を変えて何枚か撮影した後で、元のポジションで再度設定を変えた撮影を繰返すことも簡単であり、単なるパンニングクランプより、制御された動作がもたらすメリットも多い。

パノラマ撮影にはノーダルスライドも含めて、インデックスローテイタは必修の構成要素となる。垂直スライダー(Sunwayfoto DMC-200)やノーダルスライド(Sunwayfoto DMP-100/140/200)等を追加しパンニングクランプと組合せることで、雲台さえも必要としない構成も可能だ。

ただ、14センチ版のノーダルスライド(Sunwayfoto DMP-140)は、厚さが他の同シリーズの15〜16mm に比べると 10mm なので、薄くて軽くて良さそうに見える。だが、その薄さが災いしてスケールの刻印が見にくいという欠点もある。

8cm(±4cm)以上のスライドストロークが必要ない場合は、10cm版(Sunwayfoto DMP-100)が推奨だ。オフィシャルサイトのスペックでは、未だに 10cm版も厚さは 10mm と公表されているが、真っ赤なウソである。(実測 15mm:検証済)

また、DMP-100 は唯一クランプ直下までレールが延長されているので、スライドストロークは14センチ版と変わらないし、十分な厚さがあるのでスケールも一般的なサイドに刻印されている。

バックアップも含めた2台以上の構成の場合は、ローテイタ上に汎用レール(Sunwayfoto DPG-210/2416/3016)を介して複数の雲台を、搭載することができる。

上記の中では、汎用レール(Sunwayfoto DPG-210)もまた、厚さが 10mm なので DMP-140 と同様にスケールが上面に刻印されており、クランプを付けるとスケールが隠れて見えない。裏返せば見えるが、いちいち下から覗き込むのも実用的ではないし、サンウェイフォトがいったい何を基準に刻印しているのか大いに疑問である。

この製品だけなぜか3桁型番であり、210 というのは 21cm ではなく長さ20cm/厚さ10mm という紛らわしさである。だいたい、長さ20cm だと2台態勢にはちと短いような気もするので、推奨は 24cm 版(Sunwayfoto DPG-2416)になる。

各種クランプ(Sunwayfoto DDY-58/64i/64iL)を上手く組合せれば3台態勢も不可能ではない。実用性はさておき、ボディ交換のメリットを生かす為にも、設定およびポジショニング等の準備ができた状態を、あらがじめ作っておくことが必要になることは多い。

ま、現状ではやってみただけな感は拭えないが、本気を出すなら、もう少し追加機材が必要になる。

この構成の場合、前述の円形クランプ(Sunwayfoto DDY-64iL)を取付けたレベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)を前提として、雲台にはアルカ互換のクイックリリースプレート(Sunwayfoto DP-39)などを取付けていれば、マルチクランプ(Sunwayfoto MCP-01/DDB-53/DDT-53)を介して比較的短時間でセットアップが可能になる。

円形プレートを底面に付けたインデックスローテイタ(Sunwayfoto DDP-64MX 相当)を始めとする上はクランプ下にプレートという、各ユニットを積み上げていくには都合の良い、規格に沿ったお手本通りのシステムである。

カメラが1台ならこれで問題はないが、個人的な使用法では2台での使用も多く、汎用レールの使用頻度が高い。レール自体は、プレートを上下に2枚張り合わせたようなものなので、当然レールの上下には、クランプがあることが前提となる。

導入当初は、クランプ類もそれほど持っていなかったので、雲台をレールにネジ止めする方法で実現していたが、設置と撤収に時間がかかり面倒であった。解決策として、両面タイプのミニクランプ(MCP-01)を追加して、プレート同士の結合を簡単に行える態勢を作った。

その後、メインの雲台(DT-02)底面にはシュープレートではなく、ボトム径(54mm)のサイズに最も近い 58mm 径の円形クランプ(DDY-58)を取付けた。汎用レールの使用頻度を考慮し、レールへの脱着を短時間で行うための工夫である。

2台目は、底面がアルカ互換の SIRUI L-10 をミニクランプ(MCP-01)で固定。汎用性のないトップには、パンニングクランプ(DDH-02i)などを設置し、極力弱点をカバーする試みだ。単独でのベースレベルのパンニングはできないが、ローテイタの機能で何とか凌いでいた。

ところが、この構成だと1台での使用時に、少々問題があった。レベリングベーストップが円形クランプのロングノブ版(DDY-64iL)なので、必然として如何なる場合でもレールを間に挟む必要がある。

しばらくは、ノーダルスライドとして導入した、Sunwayfoto DMP-140 または、フィルタ枠との干渉問題を機に追加した Sunwayfoto DMP-100 を暫定措置として利用していた。だが、両者ともクランプ機能を持っているにもかかわらず、単なる接着剤としてしか使用しないのも、如何なものかという印象である。

ここ最近は、原点に返ってシンプルな構成で使用したいという要求から、なんとかレール無しでも対応できる組合せはないものかと模索していた。

レベリングベースは鉄板としても、パンニングベースを持ったメインの雲台(DT-02)では、トップにパンニングクランプ(Sunwayfoto DDH-03)を常設しているので、単独でもボール雲台以上の自由度がある。

シンプルな構成も2台態勢もとたいへん欲張った要求だが、機材は十分に揃っているので実現できる確信はあった。だが、実際の撮影現場での検証も含めて構成しないと、後からけっこう不具合も露見する。頭の中で考えただけでは上手くいかないことも、何度か経験済みである。

そこで、レベリングベース以降に取付ける方法を再考してみた。

アルカ互換の汎用レールを中心に、大幅に構成を変えてみたのだ。すなわち各機器がボトム側にクランプを持つことで、ダイレクトに取付可能な方式は維持しつつ、単独での使用においても最少の構成要素で使用可能にするシステムである。

インデックスローテイタ(Sunwayfoto DDP-64M)にはトップの円形クランプ(DDY-64i)はそのままに、ベース部分に付いたプレート(AM-01)から、円形クランプに交換、それを上下逆さまに取付ける。

要するに、円形クランプでサンドイッチにするのだ。ロングノブ版(DDY-64iL)とショートノブ版(DDY-64i)のどちらが良いか迷ったが、上下を一見して識別出来るように、ボトム側にはあえてロングノブ版(DDY-64iL)を選択した。

最初は、インデックスローテイタを付けたまま三脚バッグへの収納した場合を考慮して、なるべくコンパクトに収まるようにショートノブ版(DDY-64i)を付けていた。だが、現場で慌てて設置した時に、上下逆さまだったこともあった。

ショートノブ版は、デスモンド(PC-1:ロングノブ)とペアを組ませて汎用パンニングクランプとして使うことが多いので、こちらも合わせて取付時の識別性を優先したのである。

これに伴い、レベリングベースにはクランプではなく、インデックスローテイタのベースに付けていた 64mm 円形クランプ用のプレート(AM-01)を取付け、各雲台ベースのクランプにより取付ける組合せに変更。

これならインデックスローテイタ自体は、いつでも雲台との間にセットできる態勢を維持しつつ、レベリングベースにはダイレクトに雲台も取付けることができる。

その結果、一台のみ使用の場合は比較的短時間で、最小の構成要素によるセッティングが完了する。めでたしめでたし。とまあ、結果論だけで言えば、サクサクと事が運んだように見える。

ところが、実際は白鳥もビックリするほど水面下ではドタバタな試行錯誤もあるわけで、機能さえ実現できればそれで満足するほど、無欲で慎ましい性分ではない。機材に対しても、面食いであろうとする天性の気質が、何かにつけイチャモンを付けたがるので、物事スムーズに行った試しはない。

本来、雲台の底面には UNC3/8 のホールがセンターに一つだけあるのが一般的な仕様である。

ここに、UNC1/4-3/8 アダプタを介してクランプを取付ける。できれば、DDY-58 のように回転方向の位置決めも行えるような、専用ホールを設けた円形クランプによる常設が理想だが、現状ではそのような製品は見かけない。

当初、ミニクランプキット(Sunwayfoto MCP-01)をバラして DDC-26 相当×2として、DT-02 および FB-36 に取付ける予定だったが、ここで問題が発生した。従来導入した、パンニングクランプや円形クランプでは予想できなかった、仕様上の問題である。(ま、知らなかっただけなんだけどね)

DDC-26 およびその後に入手した自由雲台(Sunwayfoto FB-36DL)のトッププレートである DLC-42 の中心には、パンニングクランプを含めたその他のクランプと異なり太ネジ(UNC3/8)ではなく、細ネジ(UNC1/4)が切られている。

このおかげで、クイックリリースプレートを持たないお勤め品三脚(SLIK 500G-7)などにも、アダプタなしでダイレクトに付けることができて便利なのだが、それが災いして汎用性に難点がある。

アダプタが必要ない、ということは要するに専用であり、アダプタさえ交換すれば如何様にもなるという汎用性の裏返しにもなるのだ。(なんか詐欺師の論理に近い気もするが…)

この DDC-26 を2個組合せたミニクランプキット(MCP-01)には先端のみにネジ山を持つ特殊な UNC1/4 が付属しており、回転防止のプレート(MPP-01)とともにセットとなっている。(MPP-01 自体、購入当初からなにか胡散臭い製品だとは思っていたが)

したがって、雲台に取付ける場合は、雲台底面に UNC1/4-3/8 アダプタを挿入して、締付には通常の UNC1/4 ネジを使用するのだが、クランプ側のネジ山を通るので貫通して受け側のネジ山にダイレクトに到達できない。

締付を確実にしようと思えば、まずクランプ側にネジ(UNC1/4)を締めつけた上で、アダプタもクランプの裏から完全に締付け、クランプ本体を回転させるしかない。

この場合、最終的にクランプ自体がどこで止まる(締まる)のか、受け側の雲台ベースのネジ山の切り始めの位置に依存するので、任意には決定できないというジレンマに陥る。

特に独立したパン機能をを持つ雲台では、スケールとインデックスの位置関係が思うようにならないのが難点である。

また、ネジそのものを緩めようとしても、クランプのネジ山が邪魔して固着状態になる場合もあり、最悪はネジ山を痛めてしまうことにもなりかねない。クランプのネジ山を通過させるためには、ミニクランプキットに付属するようなネジを調達するか、同様のネジを作成でもしないかぎり、不可能である。

よって、付属品の特殊ネジで1台は何とかなるが、2台目には DDC-26 は使いたくないし、かといって汎用性のある DDC-50 あたりだとカク vs マルで見た目が悪い。

仕方なく現状では FB-36 には DDC-26 を、DT-02 には外径が近い円形クランプ DDY-58 を取付けている。

プレート自体、機種によってネジ径が異なるという仕様にも、今ひとつスッキリしない。それでも構成要素は一通り揃っているので、必要とあらばいつでも変更は可能であるから、いまだ検討の余地はありそうだ。

以下、次回につづく(といいな)
…ということで、次回もヒトツよろしく。
2014年04月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.04.11] 自由への回帰:巡航 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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