2014年5月16日金曜日

鉄撮りの練習:其の九ノ弐(智頭急行後編)

インターネットでは、鉄道関係の情報には不自由しない。

十年前から知っていたように書いてあることでも、実はほんの15分前に初めて知った情報の可能性だって無いとは言えない。

何でも、一度知ってしまえばそれは常識となり、えっそんなことも知らないのと、エラそうにウンチクを垂れるのである。

もちろん、ネットで手に入る情報にも、間違いや捏造の様なものだってあるし、実体験であっても古い記憶で曖昧だったり、思い込みや憶測、単なる勘違いの場合もある。

とりわけ個人的な感想や印象については、各々の経験や体験、考え方や趣味趣向にも左右されるので、真に受けてはならない。あくまでも、参考程度に留めておく必要はある。

中には、ここのように全く参考にならない情報があったとしても、それが情報化社会の光と影である。真実がが知りたければ、自分の目で確かめるしかない。

そんなわけで、前回に続いて鉄撮りの練習シリーズ第九弾の後編だ。

スーパーいなばへのリベンジと、あわよくばスーパーはくとも上手く撮れたらいいなと考えた智頭急行線へのプチ遠征だったが、ロクに事前の調査もしていない、毎度の行き当たりばったりな撮影行である。

あまり時間に余裕もないので、その場のノリで思いついた、姫新線岡山県側シリーズの企画は次の機会に譲り、上月駅を後にした。

この季節、線路周りでは何処も雑草に阻まれ、地図で探したぐらいでは良い撮影ポイントを見つけることは難しい。結局、実際のフィールドワークに頼るしかないのだが、それでもなかなか落ち着いて撮影できる所は、そう簡単に見つかるもんでもない。

上月から佐用までの間、国道373号線は美作方面からの国道179号線の下敷きになって、途切れているように見える。

たぶん、50センチも掘れば顔を出すに違いないが、佐用駅を過ぎて千種川を渡った所から、北へ向かって再び現われる。

ここから平福駅を過ぎて石井駅辺りまでは、智頭線も国道に沿って北上する。その中間の峠と名の付いた地域で、良さそうなポイントを発見した。

グーグルのストリートビューでは、昨年の工事中の景観しか確認できないが、既に高架線周りの小谷川砂防流路工整備工事と思しきものも、終わっているようだ。

ちょうどこの辺りの、トンネル手前の高架線に沿って登ることができるようになっていたので、そこへ上がってみたのだ。

山岳部では、その殆どが高架線とトンネルで構成されているようにも見える智頭線だが、高架線よりも高い位置に陣取ることができれば、何とかなりそうな気もする。

かなり急な坂道の途中だが、ここへ入る道は軽トラかミニでなければ進入できないほどに狭いので、あまり他車の邪魔になる心配もない。

若干逆光気味ではあるものの、DP3M の画角なら収まりそうなので、手持ちによるテスト撮影の後に、三脚をセットしてみた。

一応、バックアップも兼ねていつもの2台態勢システムである。場所も広いので、SLIK 500G-7 に iPhone もセットして動画用も欲張ってみた。

ひとつ問題があるとすれば、付近に踏切もないので、列車の接近を知る手立てがないことだ。(智頭線は、基本的に踏切は少ない)

時刻表を参考にして大体の時間を推し量り、後はひたすら耳を澄まして待つしかないのである。幸い下の国道を通る交通量も、平日の午後とあってそれほど多くはない。

そよ風と木々の葉の騒めき、鳥の声などに耳を傾けながら、接近してくるディーゼルエンジンの音を聞き分けるのだ。実際、かすかに音が聞こえて特急がやって来るまでには5秒ぐらいしかないので、例によって臨戦態勢を維持し続けなければならない。

ま、毎度お馴染の肝心な時のバッテリー切れや、待機時間が長過ぎて電源がオフになって、撮影モードがリセットされることは何度かあり、未だに失敗写真の量産に貢献してくれる。

各優先モードでは、直前の状態を記憶しているにもかかわらず、なぜかカスタム設定だと電源が切れる直前の状態は維持されず、絞りやフォーカスポイントから設定をやり直す必要がある。

この辺りは、もう一度マニュアルを深読みする必要がありそうだ。

また、あくまでもこちらのミスではあるが、極付けはいつもの2両編成のつもりでシャッターを切ったら、3両編成だったりというお粗末まであって、なかなか飽きさせない。

日が高いうちに、もう少し別の場所も撮っておこうと、その先の岡山県側に移動した。

あわくら温泉駅の先にある、2連の鉄橋からも狙ってみたが、一両のローカルならまだしも、3両編成以上になるとちょっと苦しい。未だ、スーパーはくとのまともなショットも撮れていないし、できれば5両編成を丸ごと収めたいので、今少し智頭よりへ移動してみることにした。

国道373号線も、この辺りでは自動車専用道の無料区間となっており、昔訪れた頃とは随分印象が違って見える。

鳥取県側に入ると、恋山形駅を過ぎたあたりから国道と並行した智頭線は西へ向かい、南側にある智頭線は完全に逆光となる。また、この付近の高架橋は、それまでと違って尋常ではない高度を通っており、下からでは列車もまともに見えない。

ふと高架線の向こうの山を見ると、「すぎの町ちず」と大書きされた、花粉症なら裸足で逃げそうな程デカイ看板が見える。その近くで、先程の峠で目にしたのと似た、なにやら新し気な道が山の上に向かって伸びている。

あそこまで上がれば、先程と同様に線路より高い位置、あわよくば俯瞰での景観も可能なのではないか。実際、1速でしか登れないほどの急坂だ。かなり上の方まで登ってみるが、上に行けば行くほどうっそうとした杉の森に阻まれて、何も見えなくなる。

これでは埒が明かないので、引き返して高架線と同程度の高さで妥協することにした。ここも、峠付近の撮影ポイント以上に急な坂の途中である。

駐車中は、サイドブレーキだけでは不安なので、常に1速または後退にギヤを入れておくのだが、ここももちろんミニの軟弱なサイドブレーキなどで止めることは到底不可能な傾斜だ。念のために、山側に目一杯ステアした上に、前輪にもそのあたりに転がっていた岩をかます。

三脚をセットしてファインダを覗くと画面中央、ちょうど線路との中間に一本の桐の木があり、その枝と花が邪魔になるポジションしかとれない。

だが、それはあくまでも鉄道写真としてであって、風景写真の一環として捉えるなら、それもノープロブレム。ということで、ここに陣取ることにした。

さすがに、ここからの距離だと DP3M 以外の出番はなさそうなので、レベリングベース上には DT-02 のみのシンプルな構成にした。だが、例によって SLIK 500G-7 に取付けた動画用の iPhone は、一応用意してみる。少し浅い角度でセットしてみたが、 iPhone の画角ではどうしても左の杉の木をフレームアウト出来ない。

かといって、メインの三脚からあまり離れた位置に置くわけにもいかない。あまりバッテリーも残っていないので、なるべく手元に置いて無用な長回しは避けるべく、列車の接近と共に録画を開始しようと企んだのだ。

毎回、あまり欲をかくとロクなことにならないのは、既に何度も経験済みであるはずだが、今回も全く学習機能は発揮されなかった。

如何に軽量な iPhone といえど、アングルを決定する時に思ったところで止まった試しがない SLIK 500G-7 である。フォーカスロックをかけようとして液晶に軽く触れただけでも、微妙にポジションがズレてしまう。やはり、いざとなるとお勤め品では頼りにならない。

少し風も出てきたこともあり、そのセッティングに手間取っていた。そんな矢先に現われたのが、特急スーパーはくと9号(59D)である。

慌てて iPhone の録画を開始したが、もうすでにトンネルから先頭車両が出ている。なんとか、撮影ポジションに入るまでの3秒以内に DP3M に戻ったものの、セーブモードを過ぎて電源が切れており、シャッターを押しても全く反応無し。

なんと、ご丁寧にもこの特急スーパーはくと9号は、それまで撮った何れにもなかった前後とも非貫通形先頭車(HOT7010/7000)の構成であり、絶好のシャッターチャンスを逃すという為体である。

思わず自己嫌悪の叫び声を上げてしまった、が後の祭り万事休す。

失意のどん底から復帰するまで、およそ15分は要したであろう。ちょうど、10分後に通過する12号(62D)の後追いにも、まったく力が入らない。(先頭車両は HOT7020 だが、鳥取側の最後尾は HOT7000 がせめてもの慰め)

その後、意気消沈で智頭町からは慣れた道、国道53号線を今日の反省点などを振り返りながら、大人しく帰って行くことにしたのである。

やはり、遠征する場合はもう少し綿密な撮影計画を立てて、撮影現場では準備を怠らないようにしないと結果はなかなか向上しないという、あまりにも分かり切った教訓を痛切に感じた一日でした。

ま、たぶんこの次も、おんなじようなことを繰返して、おんなじようなことを書くと思うけどね。


…ということで、ヒトツよろしく。

2014年05月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.05.16] 鉄撮りの練習:其の九ノ弐 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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