2014年6月27日金曜日

姫新線:新見方面(中編)

というわけで、姫新線:新見方面の後編あらため中編である。

午後の部で訪れた経路は、以下の通り。

坪井・美作追分・美作落合・古見・久世・中国勝山・月田・富原・刑部・丹治部・岩山・(新見)

ただし、月田以降は次回にゆずり今回は中国勝山まで、である。

駅の数だけ見れば相当な過密スケジュールであるが、所詮県内のローカル線であり、営業距離も津山以西では高々70km 少々でしかない。

県北の長閑な風景の中、ノンビリとミニを走らせるのはそれだけで楽しくもあり、ましてやカメラを持って巡る行き当たりばったりの撮影行だ。

ドライブを楽しみ、撮影を楽しみ、そして帰宅後にはその日の収穫である写真を楽しめるのだから、一粒で三度美味しいなんとやら、である。(結果に愕然とするのは、帰ってからだし)

そういえばころっと忘れていたが、美作千代へ行く途中にはガンダムがあった。いろいろあるらしい、ガンダムの種類については疎いので詳細は割愛するが、とにかく目撃したことだけは記載しておこう。

美作千代から、国道181号線を久米川に沿って3km ほど西に行くと坪井駅がある。

開業は大正時代であるが、当時の駅舎は既になく相対式ホームにそれぞれ待合所があるのみだ。

駅入口に近い新見方面行きの待合所は、今まで見てきたいずれの駅よりも小さく狭く、庭に設置する物置程度でしかない。対面の津山方面行きのホームにあるものは、ほとんど屋根だけの吹曝しである。

行き違い可能な2線だけでなく、保線車両用の引き込み線まである駅としては、ずいぶんな扱いに見える。

相対式ホームが災いして、津山方面行きの列車を待つためには線路を渡って吹曝しの待合所で待たねばならない。そのホームも新見方面行きに比べるとかなり低い上に、待合所の背後は雑草が生え放題茂り放題で、今にも壁を越えて進入しそうな勢いである。

背後には、とても営業しているとも思えない廃虚のようなラブホも見え、いやが上にも不気味さを煽る。(2013年2月時点のストリートビューによれば、既に廃れて久しい廃虚そのものである。その名前から想像するに、開業は80年代ではないかと思われるが、…夜鳥?釈迦宅?)

これはあくまでも勝手な想像だが、夜8時以降の津山方面行きをこの待合所で待つ気にはなれないだろう。ましてや、雨や雪でも降ろうものなら、別の交通手段を探すに違いない。

端から見ている分には、呆れ返っていれば済むが、この駅を利用する(または、せざるを得ない)立場なら、客を舐めるなと文句のひとつも言いたくなる状況である。

ま、そのあたりの事情は、気紛れに立ち寄ってみただけの者がどうこう言えるもんでもないのだろうし、廃止にならないだけめっけものな可能性もあるので、ごく私的な感想に留めておこう。

坪井駅から、さらに西へ5kmほど行くと次は美作追分駅である。国道から、おいわけ茶屋という名の小さなドライブインとガソリンスタンドがセットになっている所を南に入った。だが、ここは道幅が狭く、本来ならもう少し先の県道411号線を高梁方面に左折するのが、一般的なルートだろう。

道の駅のような広場に、「キリタローの館」と名付けられた、何やら公民館のような建物が見えると、そこが美作追分駅だった。というか、駅自体はその隣の建物なんだが、ニコイチになっており、坪井駅とのあまりのギャップに駅の看板がなければ通り過ぎてしまうところだ。

駅舎内には、木の郷らしく中央に一本の大きな柱があって、待合室もやたらに広い。一日平均乗車人員では、坪井駅の2/3程度(23人/2011年)でしかない美作追分駅だが、落合町の町を上げての地域活性化の一環として改築されたらしく、ずいぶんと立派な駅である。

ちなみに、このキリタローは桐の木に関連するのかと思ったが、実は霧だそうで、岡山県北でも屈指の濃霧地帯であるこの地域の厄介者を逆手に取って、村おこしのマスコットキャラとしたそうだ。

ホームは、かつての交換線はすでに廃止撤廃されており、現在は1面1線の棒線駅でしかない。名目上、全ての快速列車が通過する駅、という不名誉な情報もあって、何かと地元の努力も空回りな感もある。

姫新線の津山〜新見間のダイヤによれば、日中5〜6本しかなく津山発の半数は中国勝山止まりである。これで利用せよというのがどだい無理な話だが、沿線自治体と民間企業であるJR西日本の双方にとって、さぞや頭の痛い問題であろう。

そんな美作追分駅を後にして、姫新線はそのまま県道411号線に沿った経路を辿る。このあたりは、国道、県道とも山あいを縫って通るので、新見方面には北の久世方面へ直接向かうか、南の落合へ迂回するルートしかない。

国道313号線との合流地点手前に、次の美作落合駅がある。姫新線では、中国勝山と並んで一日平均乗車人員も三桁を誇る駅であり、さすがに駅前広場、駅舎とも立派な佇まいである。

ただ、土曜日の白昼とは思えない閑散とした風景は、その他の姫新線各駅と共通で、駅舎近くの駐輪場に置かれた自転車や原付の数が、せめてもの救いである。

駅の構造は、相対式ホームで2面2線が跨線橋で結ばれる、この手の駅としては一般的なレイアウトである。

ここから姫新線は、大きく北に向かって、旭川沿いにヘアピンカーブのような曲がり方をする。新見までの道のりは、その距離以上に紆余曲折を経なければ到達できない。

このあたりは、県道国道も入り乱れておよそ真直ぐな道はない。姫新線も負けず劣らず南北へ迷走しており、未だ乗ったことはないのだが、よほど暇であればさぞや面白かろうと想像する。

落合から、県道329号線を旭川沿いに北上すると古見駅がある。田んぼの真ん中に1面1線の単式ホームで、駅舎はなく待合所のみが設置された棒線駅だ。

駅東側のあぜ道から撮ってみるが、残念ながら直線区間にあるので、西勝間田のような絵的な面白さはない。

三脚を立てようかとも考えたが、あぜ道とはいえ付近の生活道路になっているので、あまり腰を据えるわけにもいかない。

せめて列車でも写っていなけりゃ、いったい何を撮りたかったのかわからない絵になりそうだ。で、スカスカな時刻表を確認してみると、幸運にも 13:20 発(861D)が近いので、少し待ってみることにした。

他の駅では、閑散としたホームばかりを撮影しているように見えるかもしれないが、いや実際そうなんだが、この路線では各駅で列車の写った写真を撮ろうとすると、二泊三日ぐらいの長期戦を覚悟しないと難しい。

または、この気動車(861D)のように、津山から新見まで通しで走る列車に乗って往復しながら、停車の度に飛び降りては撮ってまた飛び乗るという、離れ業をやってみるかしかない。いずれにしても不毛であり、あまり楽しい撮影にはならない気がする。

個人的にはやってみようとは思わないが、普段の生活が如何に恵まれているかの再確認ぐらいにはなると思うし、そのために犠牲になっている何かが見つかれば、それが収穫だ。

県道329号をさらに川沿いに北上すると、国道181号線に出て少し賑やかになったところに久世駅がある。駅は、国道から一本北側の旧道に沿った所にある。

駅舎自体はそれほど古くもないが、周りの景観はいかにも昔の駅前といった雰囲気である。都市部の駅周辺では、あまり見かけなくなった個人商店も多く並ぶが閉まっている店舗が多く、とても景気がよさそうには見えない。

人の流れは表通りの大型店舗に集中しており、それは他の町と同じである。駅周辺に、新しい店舗ができれば相乗効果も期待できるのだろうが、なかなかそんな例は見かけない。

というより、駅を避ける形で展開している方が一般的で、何かと根深い問題がありそうだ。そのへんにツッコム気もないので、あくまでも表面的かつ無責任な感想でしかない。

久世駅の駅舎は、勝間田、林野駅あたりと似通った年代に見える、建物自体はそれほど目を惹くものではない。駅の構造は美作落合駅と同じく、交換線を持つ2面2線の相対式ホームを跨線橋で繋ぐ形式である。

落合町と同様に、現在は真庭市の一部である久世町だが、町自体が姫新線やその駅にかける期待や予算は、落合町に比べるとあまり大きくないようで、それは町の人口割合とも無関係に見える。

ほんの二駅しか離れていない両駅ではあるし、その反対側へ5km もない一駅で姫新線の津山新見間では、乗車率も最も高い中国勝山駅がある。せっかく線路があるんだから、せめてレールバスでも走らせりゃいいのに、と思うのはたぶん素人考えなんだろう。

その勝山に向かって、旭川沿いに国道181号線を西に向かう。地形的には、美作落合と非常に似通っている中国勝山であるが、駅舎も落合以上に立派な建物である。

あまりにも立派過ぎて、まず駅には見えない。天守閣がないのが不思議なぐらいで、さしずめお城のようなドライブインだな、これは。

駅名の看板も、およそ似つかわしくない細い明朝体だが、勘亭流あたりのフォントで、徹底的にコテコテ感を打ち出した方が、いっそ爽やかで潔い気もする。

付近の駅が美作を謳うのに反して、ここだけは頭に中国がつくところなども、唯我独尊なジャイアン的雰囲気を感じる。発音しにくいからというのがその理由らしいが、それはあくまでも表向きの話だろう。駅舎を見りゃ分かる、というものだ。

どうせ福井県にある(らしい)、えちぜん鉄道の勝山駅に対抗心を燃やしたに違いないのだ。あちらは、大正時代に建てられた駅を修復再現するという直球だし、上品過ぎる。

あまり事情も知らない者が、好き勝手言うのも憚られるので、このへんにしておこう。で、駅の構造だが、相対式ホーム2面2線を持ち跨線橋で繋がる、この規模の典型的な形態であり、別に面白くもないのである。

かつては、既に廃止になった国鉄倉吉線とつないで、山陰方面への路線となる予定だった南勝線も計画のみで消滅している。(まだ)廃止にならないだけマシな、姫新線の筆頭稼ぎ頭である中国勝山駅には、ぜひともこの調子で、これからもブイブイ言わせて欲しいものだ。

とまあ、撮影とはあまり関係ない話を書いていたら、いつのまにか無駄に長くなってしまった。

この後の、月田・富原・刑部・丹治部・岩山の各駅の方が、絵的には気に入っているという関係もあり、後編あらため中編ということで、もう少し引張ってみようと思う。

実際、現像を終えた時点では、午前中の撮影枚数に対してカルく倍以上あったのだ。

無理を承知で見切り発車したのは、行き当たりばったりにも程がある、あくまでもこちらの不徳の致すところだが、全く反省などはしていないことは言うまでもない。

で、今度こそ、次回姫新線:新見方面(後編)へつづく…、といいね。


…ということで、ヒトツよろしく。
2014年06月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.06.27] 姫新線:新見方面(中編) 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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