2013年12月18日水曜日

伯備線遠征:其の弐

前回に続き、伯備線遠征シリーズの「布原〜備中神代編」である。

長距離の移動を伴う撮影というのは、時間的、状況的な制限もあって、必ずしも思い通りの撮影が出来るとは限らない。

一箇所を目的地とした場合と違って、気紛れ要素が多く面白くはあるのだが、結果としての写真は満足できるものが少ない。

よほど気に入った被写体に巡り合えれば、その後の計画を大幅に変更することもあるが、そんなことは滅多にない。

たいていは行き当たりばったりとはいえ、大して目的地などないにもかかわらず、ハイお次、ハイお次とばかりにスケジュールを消化しているだけのパターンに陥りやすい。

ま、それはそれでその過程も楽しめれば何も問題はないし、あまり綿密な計画を立ててもその通りになることの方が少ないので、今回も気分次第の雑談と余談を絡めた、超適当な撮影行である。

第7高梁川橋梁の惨劇に泣きながら、井倉を後にして布原信号所へ向かった。結局、その場でシャッター切ったのは例の DP3M5721 のたった一枚のみであり、そそくさと退散の体であったことが情けない。

新見から布原までの山道も、所々にアイスパッチがある程度で、懸念された積雪は四駆に切替えるほどではない。

林道から、谷あいにある布原駅に降りていく道の途中で、やくもの俯瞰撮影を行った。それから、一応定番となっている布原駅前の橋の上で、ジムニーの記念撮影をしてみるが、天気がいまいちスッキリしない。

背景の緑も褐色になり、絵的にはやはり新緑の季節の方が様になる。定点観測とまではいかないものの、これも季節モノということで、訪れるたびに行っている定例行事である。

前回の緑の中のミニのように、背景に溶け込んだかのようにも見える絵的な一体感がないのは、季節のせいだけではない。無機質なアルミの地肌丸出しで、やたら四角いボディは、車単体では決して嫌いではないのだが、客観的に見て自然の中にあると、どうしても浮いてしまう。

その点、50〜60年代の丸みを持ったミニは、その辺に適当に転がしておいてもあまり違和感がないように思えるのは、贔屓目に過ぎるだろうか。

いっそ、軍用車のようなオリーブドラブか、はたまたカモフラージュカラーならば、…いやいや、それはちょっと方向が違うだろう。

布原から備中神代までの道は、曲がりくねっているが、途中のトンネル以外、道幅自体はさほど狭くはない。周りの山々はうっすらと雪景色で、時折強く吹く風に飛ばされた雪が視界を妨げる。

グーグルマップで見ると、この辺りも伯備線に沿っており、いかにも撮影に向いたポジションが多くありそうに見える。

しかし、道路と線路の高低差が結構あったり、雑草や立ち木または民家にブロックされたりで、布原までの行程、またその先の備中神代へつながる道中には、それほどお手軽な撮影ポイントはない。

ランボーになったつもりで森林に果敢なアタックをかけるか、羽でも生えていない限り、思い通りのショットは望めない。

伯備線には、特急しか走っていないのではあるまいか、と思えるほど頻繁にやくもと遭遇する。

新見駅の時刻表を見ても、ほぼ毎時運行しているやくもに比べて、その他のローカル列車は日中6〜7往復程度しかないので当然だが、通過駅でしかない地元では、この路線いったいどう見えているんだろう。

山の天気は変わりやすいというが、日が差したと思えば小雪が舞い散る吹雪の様になったりで、まるで猫の目のように変わり、およそ明るさは一定しない。 

何枚かやくもの写真を撮ってみるが、撮影時点ではあまり良い手応えはない。

気温は氷点下にはなっておらず、路面凍結の心配はなさそうだが、30分も外にいると結構冷える。

ジムニーも、ミニに比べたら暖房が良く効く点は気に入ったが、如何せん一般道では遅いのである。

直進安定性の悪さは、その車の性格上仕方がない所ではあるが、オーバードライブのない三速 AT の実速80kmは3500回転にもおよび、およそ静かとは言えないエンジン音も相まって、あまりアクセルを踏み込む気にはなれない。

サスペンションもコイルスプリングとはいえ、コンサバな3リンク形式のせいか、横にスライドするような動きが顕著で、上半身が常に揺らされている感覚に慣れるまで、少々時間を要する。車重も軽いので、路面からの突き上げもかなり激しく、その乗り心地はスパルタン極まりない。

比較対象とするべきではないのだろうが、同じ形式のラダーフレームにリジットサスを採用しているレンジローバーは、その点優れた車であったように思う。

それほどパワフルとはいえない4リッターV8 だが、エレガントに走るには十分なトルクとスムーズさを持っていたし、いかなる路面でも快適なセダンに乗っているかのような感覚を与えてくれたことに、いまさらながら気付かされる。

リアゲートも上下二分割で開くので、下側はテーブルとしても使えたり、上だけ開けば雨の日の撮影には、便利なことこの上ない。背中にタイヤを背負うような無粋なことはしないし、リヤワイパーでさえコンシールドにして見えないように配慮されている点などからも、力の入れ具合の方向が全く違う車である。

乗り心地の良さに貢献しているエアサスも、速度によって自動で車高を変えたり、乗り降りの際には低くなるなど、なかなか芸達者な一面も持っていたが、その多芸が災いし故障の原因にもなっていたことが、残念でならない。

ただ、全長こそ4.7mちょいだが、2メートル近い車幅は今回のような狭い林道では持て余すことは間違いなく、取り回しの楽さは軽四輪サイズでしかないジムニーに軍配が上がる。一般道のコーナーでは多少不安がある着座位置の高さも、山道に入ると前方視界の見やすさのメリットに変わる。

ミニで来ていれば、ちょっと躊躇するような泥濘地や深いブッシュにも、お構いなしで入っていけるし、また拍子抜けするほどいとも簡単に脱出できてしまう。デリカやレンジと違って小型軽量ボディで、その走破能力を最大限に生かしていることが、この車ならではの魅力である。

あまり調子に乗って、崖から転落というお馬鹿なシチュエーションにならぬよう自重は心がけているものの、ついつい深みに嵌まって仕舞いがちになる、危ない魅力だ。

とはいえ、床から生えた2本目のレバーで、走行中も二駆/四駆の切替えは可能な点もマニュアルトランスミッションなら歓迎されるところだろうが、フルタイム四駆に慣れたら面倒なだけで、お手軽なオートマ車にはあまり似つかわしくない。

その昔、友人が所有していた(で、時々スキーに行く時借りていた)スバル・ジャスティ4WD のように、シフトレバーのボタンを押せば切り替わる機構でもあればと思う。

しかし、たぶんパジェロではなくジムニー選んだ時点で、それは決して言ってはならない禁句のような気がしないでもない。

ミニ乗りの感覚からすれば、ごくフツーのことも、マーチから乗り換えた娘にとっては、唖然とすることも多いのだろう。だが、贅沢を言えばキリがないので、この車の美点を探していこうねと諭している。

親父は、もう完全に慣れたけどね。いやあ、おもしれ〜わこの車。


…ということで、たぶんつづく。
2013年12月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.12.18] 伯備線遠征:其の弐 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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