2013年12月24日火曜日

伯備線遠征:其の四

伯備線遠征シリーズ、改め「気紛れ、米子〜境港編」である。

予定は未定にして決定にあらず、の典型のようなパターンだが、当初の計画どおりに事が進んだ方が少ないので想定内であり、ある意味予定どおりなのかもしれない。

「秘境駅」のことをいろいろ検索してみると、なるほどと思える場所も多い。その場へ赴くには、その路線の鉄道に乗れば行けないことはないが、帰って来られるとは限らない。

秘境というぐらいだから、降りたら最後次の列車が来るまでの時間は相当あるわけで、周りの景色を撮るなりして時間を調整すれば良いのだが、それを逃すとその日の内に帰れないことも、覚悟しておく必要がある。

おのずと、お手軽な別の交通機関(主に車だが)を利用して訪れることが、一般的になっているようだ。

気合いの入った鉄オタなら、野営も辞さない覚悟で当該路線を利用した撮影行を敢行するというのもアリかもしれないが、なかなか真似をしようという気にはなれない。

古い余部鉄橋があった頃、ただミーハー的に餘部駅にも行ったことがある。たしか、まだ鉄橋を渡るディーゼル特急が運行されていた 1998年頃なので、今から思えばそれを撮ってみたかったような気もする。

余部鉄橋、実は実際に特急に乗って通ったことがある。鳥取から京都までと、逆に京都から鳥取までの2回で、少なくとも京都からの2回目は特急「あさしお」だったと記憶している。

津山線の気動車(たぶんキハ20系)には、一時通学で飽きるほど乗っていた。当時その路線にはキハ28系の急行「砂丘」までしかなく、いっぺん気動車特急というものに乗ってみたかっただけの、カルイ気持ちからだ。

もちろん、餘部鉄橋を通った恐怖も覚えているが、当時それよりもっと記憶に焼き付いているのは、福知山を過ぎて山岳部に入った時のこと。

轟音とともに、車体を震わせながらエンジン全開で登坂中の特急を、並行した林道を走る郵便配達のカブが、悠々と抜いて行ったのを目撃した。

得も言われぬ脱力感とともに、口に頰ばっていた鯖寿司を床に落としてしまったことが、とても印象深く忘れられない。あいた口が塞がらないとは、このことであると実感した瞬間であった。

いずれも学生時代、京都に住んでいた70年代後半のことである。おそらく、12気筒500馬力のキハ181系ではなく、より非力な8気筒180馬力のキハ80系だったのかもしれない。…余談である。

当初、日野、江府、伯耆あたりまで、伯備線を撮っていくつもりだったのだが、生山を過ぎた頃から中途半端な雪景色では、あまり期待した絵にはならないと思い、後藤まで行ってみることにした。

峠を越えて米子が近づくと、岡山県側とは少々異なる印象の景色が拡がる。

山陽側に住んでいると、県南の瀬戸内の風景と県北の山岳部の風景を撮るには、それなりの移動距離もあって、その途中にはさして面白くもないありふれた景色が続く。

その点、山陰側は海の景色と山の景色が一度に楽しめるし、おまけに冬は雪景色と、写真を撮るには何かと好都合である。高層建築もないので、心なしか空も広く感じる。天気もそこそこ晴れて、大山(おおやまぢゃなく、だいせんね)もよく見えた。

途中でも何箇所か、撮ってみたい場所はあったのだが、陽のある内に着きたかったので、雪の無い一般道では少々鈍重なジムニーにムチをくれてやったのである。

ま、結論から言っちまえば、坊主である。

後藤駅付近にサンライズエクスプレスが停まっている写真を、出掛ける何日か前にグーグルのストリートビューで見たことが災いした。

たまたま、その時に写っていただけで、いつもいるわけではないことなど分かっていたのだが、つい出来心でやっちまった感は否めない。

後藤駅で見かけたのは、回送中のキハ120 一両だけであり、全くのスカだ。時間も午後3時を回って、すでに夕暮れの日差しになりつつある。

それなら、と思い富士見町まで引き返して後藤総合車両所へと赴いた。当然、ターゲットはちっこいサンライズ出雲バス、である。

せめて、あいつがちゃんと撮れてりゃ「我サンライズ出雲、激写に成功せり!」と大々的に公開して、それなりの笑いも取れたのに、…。

ま、結論から言っちまえば、当たり前だが門前払いである。

守衛のおっちゃんに、なんとか頼み込んでみたが、委託の外注社員らしく埒は明かない。それでも、熱心に総務課と掛け合ってくれたのだが、一般の飛び込みで工場見学など認められるはずもない。くそ〜。

くやしいので、日本海を拝みに境港まで、またもや足を延ばすことにしたのだが、もう日没が近い時間であり、我ながら往生際の悪さに気付いていないわけではない。

美保湾あたりで手を打っときゃ、それなりの絵は撮れたはずなのに、隠岐の島でも見えれば、せめて美保関灯台と欲を張ったばかりに、七類港付近で日没。メテオプラザなどという、まるで景観と不釣り合いで不気味なフェリーターミナルで挫折、万事休す予定終了。

撮り合えず日本海は撮ってみたものの、光量不足では解像感など全く望めず iPhone の写真となんら変わりがない。

境港の侘びしい夜景などで、これ以上恥を晒すのも如何なものかと思い、すごすごと米子自動車道を目指したのであった。

後半は悪い癖が出て、あまりにも気紛れに過ぎる脱線に終始してしまったが、所詮日帰りで山陰地方の絵を撮ろうなどというのは、甘い考えだろう。

本来なら、ノンビリと温泉にでも浸かってカニでも堪能しながら、というのが正しいアプローチである。

ま、福引きにでも当たったら考えよう。


…ということで、ヒトツよろしく。
2013年12月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.12.24] 伯備線遠征:其の四 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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