2014年7月25日金曜日

スーパーいなばと因美線:其の参

さて、スーパーいなばと因美線のラストである。

大してネタもないのに、いったいいつまで引張るつもりなのか、正直自分でも良く分からないところはあったが、なんとか締めよう。

前回は、ロクな写真もないから動画をベタベタ貼ったおかげで、激重なページに成り果ててしまった。

だから、どうするというわけでもないのだが、通信環境によってはリンクをクリックする前に、覚悟が必要であることを警告しておこう。

智頭駅に降りて、津山行きの普通列車が発車するまでの、僅かな時間にスーパーいなば(キハ187)について振り返ってみた。親の仇とまで言ったわりには、けっこう楽しんでしまった感もあるが、その印象は必ずしも良いわけでもない。

たしかに、キハ187系のパワフルさには驚かされた。従来の気動車に対する、鈍重なイメージを覆すに充分過ぎる程の性能を持っている。

制御付自然振り子式車両ということもあって、曲線区間ではまるで単車でコーナーを攻めるような雰囲気もある。純粋な乗り物として捉えるなら、こんな面白いモノはないだろう。

しかし、どうもシックリ来ない。特別急行という名称から連想されるような華やかさはないし、それほど特別という感じもしないのだ。

ま、そのへんの結論めいたことは、最後にとっておこう。

そんなわけで、スーパーいなばと因美線の後半である。

津山行の普通列車(675D)に乗ると、これはその車両であるキハ120-339 に対するものだが、鉄道というよりバスのような雰囲気だ。

津山寄りの前半分はベンチシートで床のスペースが大きく取られ、後半分はボックスシートである。その詳細は未確認だが、一応トイレも完備しており、若干視界が遮られる代わりに、長時間におよぶ行程でも安心して乗れるメリットはあるだろう。

最も新しい、3次車であるこの300番台の車両には、コマツ製のそこそこに強力なエンジンが奢られている。キハ187系に搭載されている総排気量15.24リッターの小排気量版で、11.04リッターのSA6D125-H1 (330ps) が一基のみだが、27t 弱の軽量ボディに対しては充分な出力といえる。

走行中の印象も、旧式な変速機しか持たない以前のキハ40のような、頑張っている割に悲惨なほど遅い、という感じではない。満員の状態で確認したわけではないが、山岳部においてもそれなりにスムーズな加減速を実現していた。

ただ、いかんせんチャッチイのが頂けない。たしかに、これに比べりゃスーパーいなばは特急列車の風格はあるのだろうが、それは全体の評価基準を下げ過ぎである。少なくとも、当代の列車を語るのであれば、本来はもう少し高いハードルで評価するべきだろう。

というのも、以前上月駅で目撃した、キハ127系(キハ122)の印象が大きく影響している。こうなると、アイツにも乗ってみないことには断言できないが、同じ鉄道でも路面電車と一般的な電車(たとえばクハ115系)の違いは、さほど鉄でもない人でも認識できるのではあるまいか。

ま、そんなオタッキーな話はさておき、因美線である。

鳥取を起点とする因美線であるが、今回はその途中駅である智頭がスタートになる。

智頭を出ると、土師〜那岐〜美作河井〜知和〜美作加茂〜三浦〜美作滝尾〜高野〜東津山の各駅に停車する。終着津山までの営業距離は、たかだか 41.5km ほどの行程でしかないが、そこをたっぷり 70分もかけて念入りに走ってくれる。

山岳区間であることを考慮しなければ、原付だって頑張りゃ勝てる可能性だってあるぐらいだ。(やってみようとは思わないが)

ただ、これはある程度予想できたこととはいえ、車での移動と違って各駅の紹介が出来るほど、材料となるべく写真を撮る時間的な余裕がない。このあたりは、今回痛切に感じたことで、もう少し密度の高いダイヤであれば、途中下車を繰り返して撮影することも可能だろう。

しかし、そんなダイヤが組まれている路線に、果たして撮影意欲が湧くとも思えないので、これは絶対矛盾である。よほど厳密な計画か、または宿泊も辞さない覚悟と予算がなければ、実現不可能である。

そう考えて、もう乗り鉄に徹することにしたのである。そうなれば、運転士も含めて五人しか乗っていない車内は貸し切り同然で、調達しておいた弁当など食いながら、車窓の景色を楽しみ、時々気が向いたときだけ DP2 Merrill を構える、という完全に遠足気分である。

当然、このようなおちゃらけた姿勢でロクな写真など撮れるはずもない。一脚でさえ邪魔になるという、撮り鉄としては言語道断以ての外な姿勢に、不甲斐ない思いもしたのだが、まいっかである。

この路線、観光気分で乗るには長閑で良いのだが、公共交通機関としては機能しているとは言い難く、途中駅でも何人かの乗降客はあったが、その大半は津山が近くなってからである。

代わりの交通手段がある地域でしか利用客がいないのでは、存在する価値も意義も限りなく無に等しい。採算性を前面に出せば、いとも簡単に消え去ってしまいそうな危うさは、何もこの路線に限ったことではないが、やはり線路が無くなるのは寂しい。

その行程で、車窓からの景色は十分に堪能できたが、駅舎やかつての設備等にもなかなか興味深いものも多く、いずれ別の機会があれば訪れてみたいと思う。

津山駅 09:25 着の列車を降りてから、まあ予想通り閑散としているのをいいことに、構内で何枚かの写真を撮ることもできた。

ここから先の選択肢は、幾つかある。そのひとつは、津山線の 09:44 発岡山行快速ことぶき(3935D)である。これに乗れば、岡山駅到着10:52 なので、へたすりゃ午前中には帰宅できてしまうというお手軽さであり、一瞬迷ったのも確かである。

もうひとつは、姫新線の普通列車10:05 発の新見行に乗って、伯備線経由で帰るというもの。新見着は 11:44 だが乗換時間わずか10分ほどで、11:54 発の伯備線・山陽本線経由普通列車長船行きに乗れる。それでも、岡山到着は 13:19 なので、遅い昼食には間に合う。

ただ、そこまで慌ただしく走り回っても、大して写真も撮れそうにないし、結局最後が電車(たぶんクハ115系)では、フツー過ぎて面白くもない。いっそ岩山あたりで途中下車という手もあるが、今日のようなピーカンでは、前回の土砂降りに勝てる写真も撮れる気はしないし、もちろんその後路頭に迷いたくもない。

だいたい、前日の徹夜明けからの気紛れで出てきたので、さすがに少々眠たい。天気は快晴、日陰のホームでベンチに座っていると、そのまま寝てしまいそうになるほど、ここちよい風も吹いてくる。岡山駅と違って、朝っぱらから人も少なくて静かだし、…。

こんな状態では、新見に着くまで間違いなく爆睡してしまいそうなので、どうせなら気動車で帰れる津山線を選択することした。ただ、かつての急行と同じ所要時間、1時間少々で岡山に着いてしまう快速ことぶきでは、途中駅も通過中の車窓からわずかに見えるだけになりそうで、イマイチつまらない。

そんなわけで、この行程の最後(厳密には備前西市までの宇野線があるが、これには選択の余地がない)を飾るのは、快速ことぶきの一本後に発車する、津山線 10:23 発岡山行普通列車(951D)である。

定刻通りであれば、12:02 に岡山駅着の予定であり、岡山発 12:45 の普通列車児島行(537M)に充分間に合う。備前西市に 12:51 到着だから、津山線の気動車でのんびり1時間39分もかけて帰っても、新見を回るよりは早く帰れるのだ。

実際、そのまた後の津山線 11:30発の快速ことぶき(3937D)でも、岡山着が 12:39 だから、こっちでも間に合う。だが、津山駅周辺にさほど撮影意欲が湧くものもなさそうだし、駅構内でもあまり興味を惹くものは見つかりそうもない。

で、同じ運賃(1140円)で長く乗れる方を選択して、運良く眠気に勝つことができれば、車内で今回の行程を振り返ってみるのもよかろうと考えたのであるが、…。

特急スーパーいなばについて、シックリ来ない違和感の原因を考えてみた。

それは、初めて乗った新幹線(0系ひかり)と、ある時期以降の新幹線、たぶん300系のぞみあたりとの違いのような感覚に近い。新幹線は特急であるとは頭では理解していても、それはあくまでも分類上の話であって、特別の意味が少し違う。

ここ最近は、新幹線に乗る機会もめっきり減って、最近の事情には全く疎いのだが、その乗車券はたしか特急券とは別になっていたと思う。自由席か指定席かの2択しかないのだから、特急券が必修である新幹線の乗車券で、それを分けていること自体にあまり意味はない。

新幹線の線路を走るのは、少なくとも山陽地区では新幹線車両のみであろう。特別には、比較対象があるから特別なわけであって、鉄道を利用するにあたり他に選択肢が無い場合、それは普通になる。

山陽新幹線の岡山開業当時は、まだ在来線の特急もいくらか残っていた時代である。そのため遠方への交通手段として、鉄道を選択しても在来線の選択肢は今よりは多かった。その中でも新幹線は超特急 (^^) と呼ばれたぐらいで、如何にも特別な雰囲気が漂っていた。

しかし、2階建て車両(100系)など、サービス面を中心とした展開から、スピードをウリにした「のぞみ」が登場した90年代あたりから、特急は主に速度面だけのプレミアムとなってきたように思う。

車両の外形デザインでは、個人的にはなんといってもロケットみたいな 500系が別格であるが、それを除くと最も新幹線らしいと思えるのは、300系の初代「のぞみ」である。だが、実際に乗ってみると 100系までの「特別」という印象は薄れ、新築の安マンションかコーポに入居した時のような違和感を、その特別な料金とのギャップにも感じたものである。

それは、良くも悪くも正味を優先したあくまでも普通でしかないが、それこそが鉄道に対して、一般から求められていたものなのだろう。このあたりにも、時代の変化を感じないわけにはいかない。

ただ、帰りの津山線で乗ったキハ40 は、姫新線のキハ120 に比べりゃ、遙かに快適であったことも事実で、必要にして充分な乗り心地を提供しているように思う。

それは、以前の急行砂丘号などに感じた、当時の普通列車(キハ20系)などと比べてほんのわずかな高級感、といえば語弊もあるが、急行券として支払う料金には、速度面のメリットだけでは不十分だった時代もあった。

準急や急行が、追加料金を必要としない快速に置き換えられたのは、速さ以外のそのプラスアルファを取除くことで、帳尻を合わせた結果である。キハ40 とキハ120 に感じる差は、そのわずかな差以上のものがあるような気がしたのである。それは、高級感ではなく快適性といった方が良いだろう。

あえて難点を言えば、未だにボックスシートには、例の姿勢を正して座ることを強いられる、直立した背もたれの座席が設置されている。このおかげで、折角のマイルドな乗り心地もリラックスして享受できないところも、普通列車過ぎる点だろう。

見た目は旧態依然としたキハ40・47系も、サービス面によりコストをかければ、新しいだけで徹底的に安普請なキハ120などより、今以上に快適な環境を提供できる要素を多く残している。

だが、JR西日本が行っている、キハ40・47系の延命策には、ベンチシート化など効率ばかりが優先されいる。それで、効率が上がっても乗客が減っては本末転倒であろう。丈夫がなによりな、キハ40・47系にはもう少し頑張って貰い、できれば機関だけでなく内装面にもリニューアルとバージョンアップを期待したいものだ。

現代の車両やそれを取巻く環境、一般的な価値観の変化なども含めて考えれば、古い記憶も曖昧な、かつての特急と比べても仕方がないことは分かっている。

個人的にサンライズエクスプレスに惹かれるのは、285系特急形寝台電車こそが、このあたりでは唯一無二の存在で、おそらく最後の特別急行であろうことが影響していると思う。

そういう点において、キハ187系特急形気動車「スーパーいなば」の印象を一言で表現するなら、観光気分で浮かれていたら、宿泊は駅に近くて便利なビジネスホテルだった、みたいなものかもしれないな。

で、そんなことを考えながら、津山線も堪能しようと考えた普通列車である。亀甲駅の駅舎の屋根が亀甲になっているのを見た記憶も写真もある。

だが、それが最後でその後の記憶は、終着の岡山駅到着まで見事に欠落しているのであった。(なんのこっちゃ、意味ね〜)


…ということで、ヒトツよろしく。
2014年07月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.07.25] スーパーいなばと因美線:其の参 〜より転載&加筆修正

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