2014年7月6日日曜日

Quattro Look vs Merrill Look

SIGMA Photo Pro 6.0.2 が、公開された。

初期バージョンから、わずかな期間に二回目のアップデートだ。

だが、相変わらず再起動が必要なエラーは出るし、カラー調整のキーボードによる操作を受け付けなくなったりと、ありとあらゆる不具合を連発している。

現時点で関連性は不明だが、OS X 10.9.4 (13E28) においては、エラー発生後に Safari 7.0.5 (9537.77.4) のマウスオペレーションにも、影響を与える現象を確認している。

いずれも、再起動後には復帰しているので、ごく限られた環境での問題である可能性もある。果たして原因は OS 側にあるのか、アプリの問題なのかは今のところ判明していない。

だが少なくとも、Mac 版の SIGMA Photo Pro は、最新の OS X に対して対応しているとはいえず、度重なるアップデート版リリースも根本的な解決には至っていないようだ。

また、現像後 JPEG の Exif データには撮影日時が記録されないなど、設定によってそういう選択肢もあるのかと探してみたが、この点も未解決で不明である。

ま、個人的にはいましばらく dp Quattro には縁がなさそうなので、旧バージョンの SIGMA Photo Pro 5.5.3 でも、大きな問題はない。

どうせ、以前のバージョン、延いてはメリル世代に更なる磨きをかけるような、地道な努力をシグマがするとも思えないし、ソフトウェアに関しては劇的に改善される可能性も無いとはいえないので、新しいバージョンを気長に待つことにしよう。

しかし、新バージョンでないと現像作業ができない Quattro ユーザはたいへんだろう。Mac 版とWin 版の不具合も微妙に異なるようで、SIGMA Photo Pro 6 に対する評価も、一様ではない。

ネットでの dp2 Quattro の評判も賛否両論で、現像ソフトよりハードウェアの方が、より深刻な問題を抱えているように見える。(ちなみに、全く話題にもなっていないが、個人的には期待した内蔵電子水準器は、なんと iPhone 以下の ±2°!だそうだ)

だが、すでに新製品を入手した者と、未だ購入を検討している者では、評価のスタートラインも異なる。ユーザ自身の評価基準で改善点の方が上回れば、それほど大きな問題にはならない。

前機種からの乗換え、または追加購入した場合は、画質だけでなく使い勝手などの快適性、機能性なども含めた評価になるのは至極当然のことであり、従来の不満点が解消されていれば、おのずとプラス評価につながる。

新規購入ユーザにとっては、古い機種との比較など全く意味はないし、折角購入した製品のアラ探しをすることなど、バカバカしいかぎりだろう。

あらゆる作例が披露されつつあるが、それに対する評価もまちまちであり、否定的な意見ばかりではない。

デジカメの画質に大きく影響を及ぼし、それがメリル世代では大きく進化したことで、一部に人気を博したという経緯がある3層構造の Foveon X3 センサ。それは唯一のフルカラーセンサであり、シグマのカメラだけが享受できる恩恵だ。

製品発表時、従来からのシグマユーザの間でそのデザイン以上に話題になったのが、Foveon X3 センサの最新型であるクアトロセンサである。

以前は、Foveon Look と呼ばれ、シグマユーザの間ではひとつの共通認識として、確立された基準のように語られていた。

ところが、新しいクアトロセンサの技術的な背景が明らかになりだすと、その是非を巡って俄に物議を醸した。そして、やっとそのセンサを搭載した新製品が登場した途端に、Foveon Look は Quattro Look と Merrill Look に別れて、喧々諤々の論争を展開している。

どうも、画質に関する評価基準というのは、曖昧過ぎてすれ違いな論議になりやすい。解像度などは、チャートによりある程度機械的な判断も出来ようが、さしたる基準のない解像感のようなモノに対して、評価を下すのは簡単ではない。

ましてや、写真の画質に関しては、解像感の方が与える影響も大きいこともあって、より混迷を深めている原因でもある。

相当な遠景でさえ、ピントがしっかり合っているように見えるのが、もともとフォビオンセンサの魅力にもなっていた。ベイヤ型ではどうしても補完によるピクセルの無駄遣いが避けられず、画像サイズのわりに不自然でリアリティに欠ける絵になりがちだ。

不毛なことに、それがリアルかどうかの判断を人の好みで評価しているのが現状である。その論議の対象となる作例も、元になった現場を知っているのは撮影者だけであり、論議している連中は誰もその画質に対して、確固たる評価基準を持ち合わせていない。

在るはずのモノが写っていないのか、または無いはずのモノが写っているのか、それさえハッキリしない状態でいくら論争を続けても決着はつかない。

画質を比較する場合、同一条件で撮影された写真から判断するのが一般的だが、これだけでは基準が曖昧である。

Quattro Look と Merrill Look の違いを論ずるのであれば、先ず為されるべきことは評価の拠り所となる基準の設定である。その基準を共通認識として、そこから始めなければ実在の物体とノイズの区別もつかない。

仮に、500m 先の風景を比較するなら、特定の部分だけでも 50m とか 5m の距離で撮影したモノと比較すれば、それがひとつの現実となり共通認識となって、判断の基準になりやすい。50m 先の建物や壁面、街路樹の類いなら2〜3mの距離で撮影すれば、たとえそれが iPhone によるものであったとしても、充分参考になるはずだ。

比較評価用のサンプルを作成するに当たって、そのようなアプローチがあってもよさようなものだが、あまり見かけない。(ま、面倒だしね)

しかし、シグマファンの中にも、Merrill Look を良しとしないユーザも少なからずいたようで、より一般的なデジカメ画質の方向に向かった(とも思えないのだが)今回の新製品にも、意外と高い評価を与えている。

人の好みは、十人十色だ。昨日まで同じモノを見ていたはずの者同士が、ある日突然、別のモノを見ていたことに気がついたようなものである。

誰しも、奇麗な写真を撮りたいという願望はある。極論すれば、現実より奇麗な写真を望むユーザもいるだろうし、たぶんそちらの方が一般的だ。現実がどうなっているかなどはあまり重要視されず、どう写って欲しいか、どう見せたいかばかりがカメラに求められる。

カメラに関する技術は日進月歩であり、いつかは革命的な新技術で、現状の不満点を一掃してくれることを望んでいるとしても不思議ではない。

アップルが、iPhone に行っているのは正にこのアプローチであり、結果として得られる絵が最重要項目で、写真機としてどうかという評価は的外れだ。

携帯電話に搭載されているカメラに対してユーザが求めているのは、撮影のプロセスが簡単であることと、その結果が期待以上であることの2点に集約される。特にスマートフォンと呼ばれる、多機能電話機にとってカメラは、電話やメール、その他数多ある機能の一部でしかない。

かつて、キレイに撮ってねと言われりゃ俄然その気になって、光線の加減やアングルを工夫したり、凝った構図を考えたりもしたものだ。

だが、現代においては撮影者の腕に頼るよりも、カメラそのものがその重責を担う時代であり、各メーカのフラッグシップといえども、当代のお任せ機能なくしては評価されない。

また、それがカメラの性能のひとつとして認識されるようになれば、性能に対する基準も変わってくる。

今回の dp2 Quattro もそのような、さまざまな期待に応えるべく進化の道を歩もうとしているに違いない。その過程においても、さまざまなトラブルに遭遇するだろうが、いずれソフトウェアによる技術的な改善で解決できる、と考えての見切り発車なのかもしれない。

個人的には、Merrill Look と呼ばれ始めた画質に関しては気に入っているので、製品発表時に期待したのは、これをよりいっそう進化させた画質であった。

現状の DP Merrill シリーズには、カメラとしてはいろいろ不満もあるが、購入時点である程度割切って飛び込む覚悟が出来たのは、当たれば場外と揶揄された画質であり、主にその解像感に依るところが大きい。

自虐的にフォビ厨を自任している身からすれば、メリルセンサの叩きだす解像感こそが、その他の問題点をほんの些細なこととして、視野の外に追いやってしまうのである。

今回の製品発表時に、その新しい技術であるクアトロセンサに少なからず不安を感じた。理論上の可逆圧縮であることについて、理解できなかったことも原因の1つだが、それ以上にメリルセンサの問題解決や、未だ進化の途中である技術に対して放棄したかのように感じたのである。

だが、それとは全く無関係に、システム構成上の個人的な理由により、一年以上遅れた DP2 Merrill 導入となった。

経済的な障害がなければ、もっと早い段階で行われたに違いない、予定調和を完成させたかったのが最大の理由であるが、ハードウェアであるカメラ本体よりも、それによって得られる写真の方に、興味の対象が移っていたことも影響したのだろう。

メリルセンサの現状には、カメラ同様に不満がないわけでもないが、基本的な画質に関する部分では、幸いにして他の選択肢がないことにより、精神的な迷いを払拭してくれる。

だが、そのことを拙策であったと後悔する展開も、心の何処かで期待していたような気がするのである。


…ということで、ヒトツよろしく。
2014年07月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2014.07.06] Quattro Look vs Merrill Look 〜より転載&加筆修正
なお、本家には余談と写真も多数貼ってあるので、こちらもヒトツよろしく

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