元々それほど評判が良かったアプリでもないのだが、それでも Mac OS との親和性の高さから、好んで使っていたユーザはたぶん少なからずいたと思う。
個人的にも、どうしても必要な場合以外では、あえて使い慣れたエクセルでなくナンバーズを利用することも多かった。今回も出来が良ければ、ペラペラなアイコンには目を瞑って新しい iWork も使ってみようか、とも思っていた。
だが、そういうわけにもいかない状況のようだ。
かつて、マイクロソフトエクセルはペイントやドローとならんで、マックユーザの間では定番となっていただけでなく、マックの使いやすさを象徴するアプリの旗頭であった。
ま、少なくとも日本語環境という面において、当時のマックライトやワードごときでは、一太郎相手に真っ向勝負を挑むのはどだい無理な話であったが、それでもマルチプランやオフィスグラフの使いにくさに比べりゃ、エクセルだけはマック陣営にとって完全勝利をもたらす自慢のアプリであった。
取っつきやすさでは、アシュトンテイトの dBASE に初代のファイルメーカでも十分に対抗できた時代であり、まだやっと MS DOS が主流になりつつあった PC-9801 を相手にアップルジャパンが七転八倒を繰返していた太古の話である。
いまさらそんな、ジュラ紀や白亜紀の話をしても不毛なことは重々承知しているが、マックといえばエクセルという時代もあったのだ。
しかし、ウィンドウズ版のエクセルがロータス123 を完全に駆逐した頃から、マック版エクセルの機能強化も遅れ気味になり、また逆に機能が増えるほど、だんだんと使いやすさも色褪せてきたような印象がある。
現在の OS X 以前は、しばらくの間提供されていた統合型ソフトを利用することが多くなって、クラリスインパクトやワークスを好んで使用してきた。ウィンドウズとの互換性など全く無いにもかかわらず、純正アプリを信頼していたマックユーザは少なくない。
ところが、ある日突然アップルに裏切られたのである。
統合型ソフトのデータ、特に使用することが多かったドロー系のデータに関して全く引き継ぐソフトが皆無な状態は、当時誰も予想だにしていなかったはずである。それ以来、アップル純正のアプリに対して不信感を抱いたユーザは多い。
クラリスからワークスを引き継いだ時は、クラリスインパクトのデータはほぼ全滅したし、最初の iWork が発表された当時も、当然アップルワークスに対する上位互換性など、あって当然という期待はあった。
マックで使える、ドロー&ペイント系のマシな純正アプリがなくなって、もう15年以上にもなる。そんなマックユーザの期待は全て無視されたのだから、iCloud 絡みの使いにくさと相まって、そうでなくても敬遠されがちなアップル純正である。
今回、マーヴェリックスとならんで、新規購入者に対して無料提供という太っ腹な一面を見せたアップルであるが、前バージョンから大幅に機能を削るという悪い癖を全く懲りもせず、ここでも発揮したようである。
今回の新しい iWork、iPhone や iPad での使用を優先するあまり、マックユーザに対する配慮に欠けたダウングレードといえるだろう。
古くからマックを使用しているユーザで iWork を使っているのは、よほどのアップルファンである。そんな、数少ないユーザからもバッシングを受けるような改悪をしていれば、もはやタダでもいらないソフトに成り下がってしまった、と言われてもしかたがない。
以前ティム・クックは、マイクロソフトのパソコンとタブレットの統合は、冷蔵庫とトースターを合体させるようなものだと評したが、今のアップルがやっていることは、それよりもっと酷い。
統合どころか、まるでトースターサイズの冷蔵庫をユーザに押し付けるようなもので、どう見ても iOS が OS X の足を引張っているとしか思えないのである。
数だけは多く売れている iOS 機器の悪影響は、もうすでに Mac にも及んでいる。おそらく、アップルは Mac ようなコンピュータなど、さっさと止めてしまいたいのだろう。
となれば、アップルと決別する日は、意外と近いのかもしれない。
さて…、どうしたものか。
…ということで、ヒトツよろしく。
2013年10月某日 Hexagon/Okayama, Japan
http://www.hexagon-tech.com/
[2013.10.27] 新しい iWork 〜より転載&加筆修正
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