2013年9月19日木曜日

撮影アングル決定のプロセス

今回のレベリングベースの導入自体は、とりたてて大きな落とし穴があったわけでもなく、概ね期待通りの効果を得られた。

問題は使用者側にあり、人間の欲深さというものは果てしないという、今更な事実に呆れるのである。

姑息な手段ばかりを選択していると、ひとつの問題が解決すればまた新たな問題が発生して、当初考えていた理想と微妙なズレが生じてくるものだ。主として中間に介在する要素の数と精度が、そのズレの要因となる。

大人数でやる伝言ゲームみたいなもので、最初と最後はかけ離れた内容になってしまうのだ。

ちなみに、前回の百パー雑談に比べりゃ、今回は撮影機材について言及している部分は多少含まれそうだが、所詮はネタに過ぎず大きな期待をしてはならない。

ここは、雑談と余談が主題であり、デフォルトなんである。

ある地点から別の地点に、最短距離で到達しようとすると、目標に向かって一気に直線で行くのが手っ取り早い。しかし、そのルートには様々な障害がある場合も多々あり、時には迂回せざるを得ないこともある。

写真機材を選定するにあたり、それぞれの機器が持つ機能を子細に検討することで、ある程度は最適な選択の助けになることはある。しかし、実際の使用においては必ずしも期待通りではないことも少なくないし、無知による想定外の落とし穴に気が付くこともある。(が、これは学習と言えなくもない)

この場合の障害は価格であったり、迂回路は代用品であったりする。

かつて、平面的な地図だけをたよりにツーリング計画を立て、単純に一日に走行可能と思われる距離から、宿泊地点を適当に決めて出発した。

西日本ではもう暖かくなり始めた三月下旬であり、目的地は九州地方であることから、シュラフも持たないアホな高校2年生にとって、テントによる安上がりな宿泊計画に全く不安などなかったのである。

その杜撰な計画に従った三泊目の宿泊地は、高千穂高原でありその季節でも最低気温は零下になることも、珍しくない場所である。

日も暮れかけて、どこか野宿できる適当な場所はないものかと、近くの交番で問うてみたものの、おまえら自殺するつもりかと叱咤される始末。

結局、安い民宿を紹介され一命は取りとめたものの、以降の計画立案には標高など高さ方向の位置関係や、訪れる地方の特質なども細かく検討する必要性を痛感したものである。(実際には同行のM尾と二人で、ま、そんなこともあるわなあ、と笑い話ですましていた、…やっぱバカである)

この場合の障害は宿泊地点の標高であり、迂回路は民宿であり、そして余談である。

使いもしない機能のためにより多くの対価を支払うことは、できれば避けたいと考えるのは庶民として真当な人情であり、ただ単に安物買いの銭失いとして片づけられる問題ではない。

安価な代用品とはいっても、その価格は使用者の要求レベルに対して相対的な価値である。必ずしもその製品自体に、本質的な問題があるとは限らない。あくまでも用途に向くか向かないか、何処までの機能を望むのかにより、評価は変わってくる。

写真機材の場合、似たような機能を持つ製品でもその価格は幅広く、個々の基準によりベストなコストパフォーマンスを追求すれば、おのずと最適な選択になるはずである。

ただ、その基準が変化してしまうことは避けられない。学習機能と言えば聞こえは良いが、その実態は欲である。欲望がなければ、進歩は望めず現状に満足するしかない。

レンズ沼、三脚沼、雲台沼とカメラ趣味にはあらゆる沼が存在し、入門者にとってその底は果てしなく深い。日常生活が平穏であることを望むなら避けて通ることが懸命であり、本来近寄ることも憚られるべき不吉な沼である。(某価格掲示板などでは、沼へようこそ、と自虐的に歓迎の言葉をかけられるが、喜んでいる場合ではない)

レベリングベース Sunwayfoto DYH-66i を使用して気が付いたのは、複数の水準器が必ずしも一定のレベルを正しく表示してくれるわけではない、という事実である。

以前のホットシュー水準器(HAMA5411)には、その価格とドイツ製という根拠のない漠然としたイメージから、その精度を過信したことにより大量の失敗作を生成した経緯がある。

どのような製品にも個体差があるので、個々の製品の評価として断定できるものではないが、その個体差がより少ないことを期待して、高価格なものを選択する場合もある。

裏を返せば、安価な物でも当たれば、実用に十分な精度を持つものもあることは事実である。重要なことは、精度を期待するのであれば事前に独自の検証を行い、要求に足るものかどうかを確認しておく必要がある、ということである。

幸い HAMA5411 は2ウェイ構造になっており、縦型として使う分には精度は出ていた。したがって、全く使えないモノにはなっていないのがせめてもの救いであるが、再び購入する可能性はない。

また、当たれば精度も期待できるとはいえ、低価格な製品にはもっと根本的な問題、気泡の動き方や、筐体の歪みによる特定の方向に対するバラつきなどもあるので、非常識な価格のものは高くても安くてもそれなりの覚悟(または割切り)が必要であろう。

その後に購入した、ユーエヌの V.H.S. レベラー(UNX-5685)は、精度上大きな問題はないようだが、これとて個体差の可能性を否定出来るわけはない。

したがって、実際使ってみなけりゃわかるもんか、という身もフタもない現実に直面するのである。

他人の評価があてにならないのは、実際に使用する前に開封の義などと称して、外見やスペックのみを基準にあたかも製品の善し悪しまで検証したように見える(見せる)評価記事が多いことだ。

さすがに、アフィリエイトだけが目的な商魂サイトは一見して分かるので、そのようなサイトにも決して悪意があるわけではない。購入前の、誰かに崖から突き落として貰いたい時には、重宝するのも事実である。だが、ここも含めて気分で書かれた個人のブログなどの評価を、真に受ける方がバカなのでる。

あくまでも、その評価を参考に自身で実証してみることが、肝要であろう。それにより、当たらずしも遠からず的な印象を受けるモノもあれば、大きく視点が異なっていたことに気が付くものもある。

繰返すが、そんなもん自分で使ってみなけりゃわかるもんか、というのが厳しい現実である。

Sunwayfoto DYH-66i にも少し大きめな水準器が付いているが、その精度以前に水平が出たという基準をどの辺りにもってくるかという難しさもある。

購入前アマゾンで確認した製品画像では、水準器の中央に+印が付いているが、実際に到着した製品にはない。かわりに、+印の周りに描かれたサークルがより小径のものになっている。

またもや、手違いによる不具合の一環かと思ったのだが、ネットで検索するかぎりどうも2種類のバージョンが存在するようで、詳細については未だ判明していない。(型番末尾の i が何を意味するのかも不明)

中華製品に限らず、ロットによって多少異なる製品が存在することは、さほど珍しくない。実用上大きな問題になるわけでもないが、購入前にはそのあたりも考慮しておく必要はある。

ま、油性マジックなどで印を付ければ済む程度の問題なんで、前回の付属品手違いの時のような、返品騒ぎにまでは発展していない。実際どちらがいいのかは未だ判断しかねるが、前述の精度も含めて今少し検証が必要かもしれない。

ただ、水平レベルに関して個人的な要求度も以前より上がってきているのも事実であり、レベリングベースが全てを解決してくれるわけではない。また、そこまで大きな期待をしていたわけでもない。

ここ最近の失敗作をつぶさに検証してみると、自分の中である基準ができているように見える。

それとわかる対象物が写っている風景写真の場合、許容できる水平レベルのズレは ±0.2° までだと考えている。よほど絵的に見るべきモノが無い限り、それはボツ写真であり現像さえもしない。(DTP は端っから編集加工が前提なんで、この限りではないが、…)

これほど水平レベルに拘りだしたのは、DP Merrill シリーズを使い始めてからである。その写し出すピクセル等倍画像が素晴らしいだけに、極力オリジナルのクオリティを維持したいがための拘りである。

加工できることが最大のメリットであるデジカメ写真なんだから、写真の角度ごときソフトで修正すりゃあいいんである。リサイズや再サンプルを前提とした、以前の写真加工プロセスの中では、そう考えていた。

もちろん、いまでも基本的な部分では変わっていない。そのためのデジタルデータであり、押入れ現像所で印画紙に焼き付けていた時代には到底考えられない自由度が手に入ったのだから、本来はそれを最大限に生かすべきなのだ。

当然プロと呼ばれる人達の中にも、そうしている人はたぶんいるに違いない。(ここでは、職業写真家と芸術家はあえて区別していない)

しかし、自分にとってはあくまでも個人の趣味である。何を以て良しとするか、他人から見れば常識外れな基準も拘りも、その是非については、大きなお世話であることに変わりない。

これはレベリングベースを使いだしてから気付いたことなんだが、自分が普段行っている撮影アングル決定のプロセスに関して、市販されている製品ではそれに向いた製品と、必ずしもそうでない製品があるということだ。

撮影アングル決定までの手順(三脚+自由雲台の場合)
1.三脚の設置と水平出し(不整地においては、諦める場合も多い)
2.カメラを載せ、おおまかなフレーミング
3.ローテイト(傾き)方向の調整と水平出し
4.空をどの程度入れるかなど、ティルト(上下)方向の調整
5.場合によっては、再度水平出し
6.被写体の中心を何処に持ってくるかなど、パン(回頭)方向の調整
7.場合によっては、当然再々度水平出し
8.最終的なアングルが決定したら、水平を確認後、撮影開始

とまあ、常に水平レベルを確認しないと何時崩れるかわからないのが、自由雲台のデメリットである。レベリングベースがこのプロセスに入ると、以下のようになる。

撮影アングル決定までの手順(三脚+レベリングベース+自由雲台の場合)
1.三脚の設置(開脚角度のみで決定し、センターポールの多少の傾きは無視する)
2.レベリングベースで、水平出し
3.カメラを載せ、おおまかなフレーミング
4.空をどの程度入れるかなど、ティルト(上下)方向の調整
5.被写体の中心を何処に持ってくるかなど、パン(回頭)方向の調整
6.最終的なアングルが決定したら、水平を確認後、撮影開始

都合2ステップほど簡略化できるだけだが、レベリングベースが無いと第1ステップが最も手間がかかり、その割には正確性に欠ける。結局各段階で再確認と調整が必要になるので、トータルでは大幅に改善される。

実際に撮影に入ったら、5.6.のプロセスは繰り返しになるので、ステップ2の確度がその後の手順に与える影響は大きい。毎回この手順でのみ行うなら、今回のレベリングベース導入だけで問題はない。

問題は、ティルト(上下)方向の調整が、どの程度の頻度で行われるかで、不満も出てくる。またパン(水平回頭)は雲台のベース部分で行うべきか、それともカメラ直下のクランプベースで行うべきかである。

そんな疑問が、新たな問題を誘発しモヤモヤの原因となる。

風景撮影の場合、主題となる被写体に対してティルト方向で正対するアングルは滅多にないが、皆無でもない。その場合は、ベース部分のレベルは関係なくカメラ直下のクランプベースでパンすれば良い。自由雲台のメリットを生かすなら、そういう状況にも対処できる可能性を探るべきかもしれない。

自由雲台の不自由な点は前にも指摘したが、この点については3ウェイや3D雲台を使えというのが、一般的な回答であろう。

たしかにこの段階では、3ウェイ雲台が有利であり、ティルトすることにより水平レベルが崩れることはない。一時は、3Dギヤ雲台(Manfrotto 410)も検討したが、その重量と汎用性の無いクイックシューが二の足を踏ませる。

しかし、3ウェイであろうが3Dであろうが、全ては雲台ベースの水平レベルが確実に出ていることが、大前提であることに変わりはない。また、自由雲台ならではのメリットを完全に放棄できるほど、悟りが開けているわけではない。

ネットには、Manfrotto 410 を3軸から2軸に改造したり、はたまたアルカ互換のクイックプレートを直付けする加工など、ありとあらゆる情報に溢れている。が、改造前提で新規購入というのもハードルが高い。(グラインダーの費用までを考えたら、いったい幾らかかるのか)

また、L型プレートを使用すると、ローテイト方向(横回転)は必ずしも必要ではない。いずれは、ビデオ用のように2ウェイ雲台も検討する必要はあるかもしれないが、当面の問題に対する対処療法(姑息療法)として、もう少し現有機材を有効に生かす方向で探ってみたい。

以下、次回にたぶんつづく…と思う。


…ということで、ヒトツよろしく。
2013年09月某日 Hexagon/Okayama, Japan


http://www.hexagon-tech.com/
[2013.09.19] 撮影アングル決定のプロセス 〜より転載&加筆修正

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