2013年9月26日木曜日

評価基準

モノの良し悪しを判断する場合、その評価基準が曖昧だと選択の妨げにしかならない。

よくある雑誌などの製品評価に、最後まで読んでも結局どっちがいいのか判らない記事を見かける。

対象となる製品がメーカからの貸与によるものだったりすると、まともな評価など端っから期待できないのは当然であり、いっそ広告の一種であると考えた方が分かりやすい。

前回までの提灯記事もどきの評価基準は、SIGMA DP シリーズで使用することが前提で、やたら水平レベルに拘る風景撮影をメインとして、何かとチャレンジしたがるわりに長続きしない、さほど経済的に恵まれていない撮影者が、なけなしの身銭を切って行った実体験をもとに、所詮趣味の延長でしかないカメラや写真機材の使用感などを、その時の気分で適当に書いた雑談と余談のすきまに埋め込んで、多少なりとも共感や反感をもった方々によって、人道支援の一環としてアフィリエイトでもクリックして貰えたらこの上なく嬉しいな、という思いをこめて評価した、たいへん分かりやすいものであった。

したがって、極端にバイアスのかかった内容であることは言うまでもなく、しつこいようだが、実際に使ってみなけりゃ本当のところはいつまでたっても判らない。どうしても本当のことが知りたければ、これはもうバナー広告をクリックするしかないのである。

ま、冗談はさておき、サンウェイフォトのその後である。

以前、Acratech Long Lens Head のように、トッププレートが簡単に回転できたら完璧だろうなどと考えたこともあったが、目的と手段を取り違える危険性をはらんだ、近視眼的思考と言えよう。

本来トッププレートの回転機構など、ティルト方向を変換するための一手段に過ぎず、雲台に対してカメラの向きが変わりさえすれば、その方法論などなんでも構わんのである。

機材が持つ機能そのものにあまり拘り過ぎると、本来その機能が達成するべき目的を見失う結果になりやすい。誰もが陥りやすい迷路の入口であり、これこそがあらゆる沼に仕掛けられた罠であるといってもいい。

冷静になって考えれば、解決法の一つは以前紹介した、どちらの方向にも対応するシュープレート(DPG-39)であり、もうひとつはパノラマクランプである。

パノラマクランプ、またはパンニングクランプ(Sunwayfoto DDH-03)について、少し補足しておこう。現時点で個人的にかなり惚込んでいるので、適当に割引く必要はあるかもしれない。

これは、機能的には Sunwayfoto DDH-02 と同様に、同社または規格上互換のある雲台の交換用のプレートであるが、サイズも裏面のホールの配置も全く異なる別製品である。

Sunwayfoto DDH-02
トップベース直径:52mm/パンベース直径:51mm/重量:74g
Sunwayfoto DDH-03
トップベース直径:58mm/パンベース直径:57mm/重量:126g

重量差は付属のプレート(AM-02)の重量も含むので、実際の本体重量は 110g である。(我家の料理用秤による実測値)

ただし、DDH-02 の底面にはプレート(AM-02)を取付けるためのホールはないので、汎用性を求めるなら DDH-03 を推奨する。

シュープレート(DPG-39)と比較すれば、コスト的には大きな開きがあるが、その応用範囲も価格以上の差があり、これはもう素晴らしい万能パーツ…、とまで言ったら、ちょっと過言だろうな。(冷却、冷却)

パノラマクランプの最大のメリットは、シュープレートの取付方向は全く無視できることであり、取付方向を変更できないL型プレートを使用する場合に、最大の効果を発揮する。

仮に取付けた方向がティルト機能の上下アングル側だったとしても、そのまま 90° 上向きまたは下向きに持っていき、パノラマクランプのパン機能を使用すれば、ただちにジンバル雲台として縦位置用の独立ティルト機能が実現する。

また、トッププレートの交換ができない製品に対しても、アルカスイス互換品であれば装着できる。(親亀子亀状態だな)

Sunwayfoto DT-02D50 との組合わせでは、シューの付直しはおろかトッププレートの回転さえも必要なく、2ウェイ雲台でありながら自由雲台以上の自由度と使い勝手の良さが実現できるのである。

すなわち、独立したパン機能のない1ウェイ雲台である SIRUI L-10 の底部に取付ければ、機能的には Sunwayfoto DT-02D50 と同等の機能を持たせることができ、SIRUI K-20X のトップにつければ、Sunwayfoto FB-36DDHi のようなカメラレベルでのパンニングや、縦位置ではジンバル機能を持たせることも可能である。

もし、新たに雲台の買い替えまでを考えているなら、何処に問題点があるのか洗い出した上で、今一度再検討してみたほうが良い。

現状の機材に機能が追加できるもので解決策を模索した方が、無駄な投資を押えることができるので、候補として検討する価値はあると思う。

その価格も安価な自由雲台並であるが、応用次第でかなり広範囲にわたって使用でき、ひとつ持っておいても絶対損はない。(超個人的意見)

ま、良いことばかりを書いていては、本当の提灯記事に成り下がってしまうので、一応問題点というか、気になった点にも言及しておこう。

現時点で既に問題になっているわけではないが、ひとつ懸念材料を挙げるとすれば、耐久性に多少不安を感じることだ。

相当精密に作られているようだが、サイズ的にはかなり小さなものであることから、軸受け部分がその機構を十分な強度を持ったまま、どのぐらい維持できるのか。カタログスペック上の耐荷重は、DDH-02 で 18kg、DDH-03 では 20kg というのが明記されているが、あくまでも上方からの荷重を平面的かつ静的に保証するものであると思われる。

したがって、ジンバルのように横方向や斜めからの偏心した荷重にも、同様な性能を期待してはなるまい。

特にパンロックのノブは非常に小さく、その締付力も自由雲台のベース部分に比べたらかなり華奢である。単なるクイッククランプとさほど変わらないサイズで、回転機構を内蔵する精密機械であり、取扱いにはそれなりの配慮が必要になるだろう。

耐久性については、長期にわたって実証してみないと何とも言えないところである。

また、サンウェイフォト製品の付属品および別売品のクランプについて、気になった点を少々。

比較対象が、シルイ製品のみなんでアレなんだが、クランプを締めつける時のタッチはシルイの方が良い。強度的にも K-20X のトッププレートなどは交換できないことで、その強度を高めることができていると思う。

シルイに比べると、精密感や高級感はあるのだが、サンウェイフォトのクランプ類はどれも華奢な感じがするのである。

マットブラックで統一されたボディにクッキリと浮かぶ白い文字、ノギスやマイクロメータなどに感じる、その如何にも測定機器然とした外見は、個人的に非常に琴線に触れる魅力を持っている。

決して安っぽくはないのだが、いかにも丈夫が一番と言わんばかりに少々テカリ気味の塗装が施されたシルイ製品にはない、高級感を演出している。だが、如何せん全般に線が細いのである。

その強度を反映したかのように、サンウェイフォトのクランプの締付時にはノブを持つ指に、あからさまにグググッという感覚が伝わってくる。

細かいことだが、SIRUI K-20X のクランプノブにはゴムが巻かれており、わりとソフトなタッチを維持したまま締付けることができ、指に伝わってくる感覚にも、かなり差違があるのだ。

このあたりは、メーカによる味付けの違いというか個性みたなものかもしれないが、同じ中華製品でありながらその差は意外と大きい。

また、Sunwayfoto DT-02D50 を使用してみて感じた、イマイチな点についても書いておこう。

DT-02D50 をメインで使ってみてすぐに気が付いたことであるが、最も不便に感じるのがフリクションのコントロールが出来ないことである。

出来ないと言い切ってしまうのも語弊があるが、言い方をかえれば、フリクションコントロール機能のある自由雲台 SIRUI K-20X と同じ感覚で使うと、メインノブを少し緩めただけでお辞儀をしてしまうのである。

全く抵抗がないわけではないのだが、メインノブの調整が微妙過ぎてコントロールが難しい。慣れの問題というにはあまりにもセンシティブに過ぎるのだ。

ただ、剛性感は十分にありその動きも精密感に溢れているので、お勤め品にありがちな締めたつもりが強度不足で動いてしまうようなチープな感覚ではない。フリクションを持たせた状態では、SIRUI L-10 と同様な抵抗感を維持しているのだが、そこから少し緩める場合の調整が難しいのである。

あくまでも比較の問題かもしれないが、サンウェイフォトの自由雲台は使用したことがないので、同社のフリクションコントロール自体がどうこうというレベルの話ではない。

個人的には許容範囲であり、自由雲台(ボール雲台)と同列に比較することは避けるべきだろう。だが、人によっては致命的な不満点と感じる場合もあるかもしれない。

SIRUI L-10 も、本来一脚用雲台であることから、自由雲台のようなフリクションコントロールは装備されていないし、メーカの公表している仕様にもそのような記述はない。

仕様の上では DT-02D50 も同じなのだが、シルイの場合少しノブを回したぐらいではかなりの抵抗感があり、まずカックンとなることはない。完全に開放した状態でも、わずかな抵抗を残しており、安心感がある。

購入後、何かと不満も多かった SIRUI L-10 であるが、この点については Sunwayfoto DT-02D50 より優れている。メリットもデメリットも、比較対象があって初めて分かることであり、その判断は容易ではない。

SIRUI L-10 と同等の機能を持つ Sunwayfoto DT-01D50 には、アマゾンでの価格において約2倍の開きがある。どちらもボトム部分はアルカスイス規格互換の形状であるが、DT-01D50 は正方形になっておりクランプの方向に関わらず、取付位置を選択できる。

シルイはこの点、コストダウンのためか一方向にしか切削されていない。この差は、ユーザが必要としなければ全く問題はないが、運用していく上で要求に変化があった場合にも対応できることが、サンウェイフォト製品が持つ利点である。

ただ、一脚用として比較対象が下位モデルの DT-01D50 となると、前述のフリクション機能を考えれば SIRUI L-10 で初期投資を押え、パンニング機能などは必要になってから後で追加という選択も決して悪くない。

だが、最初から独立したパン機能を必要として、上位モデルである DT-02D50 と比較するなら、こちらを選択した方が無難だろう。 確かにパンニングクランプ(DDH-02/03)を追加すれば、 SIRUI L-10 を選択しても価格的にも機能的にも同等となるが、トッププレート交換など汎用性と拡張性を考えると DT-02D50 の方に分がある。

したがって、個人的にはコスパという観点において、DT-01D50 との比較では、SIRUI L-10 が有利であり、価格差はより大きくなるにもかかわらず、DT-02D50 が比較対象なら SIRUI L-10 に対しても同等以上とであると考えている。

あくまでも選択はユーザに委ねられており、優先事項によって判断が別れるだろう。

まるで、煮え切らない雑誌の記事のような表現になってしまうが、私的にはその評価に至るまでにすでに両方を所有しているのである。したがって、この場合どうしても本当のことが知りたければ、裕福な方にできる助言はひとつしかない。迷ったら両方、である。

ま、両方買えるだけの予算があるなら、全く別の選択肢を模索した方がたぶん幸せになれると思うな。

というわけで、提灯記事もとい紹介記事の補足でした。


…ということで、ヒトツよろしく。
2013年09月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.09.26] 評価基準 〜より転載&加筆修正

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