2013年9月22日日曜日

理想の三階建て?

iPhone 5s の金色が人気らしい、などという情報にも全く無関係にもくもくと更新を続ける。

雲台沼の入口で右往左往し、この沼で思う存分泳ぎ回れるならさぞや楽しかろうと思うが、飛び込む度胸も技量も経済的余裕もないので、淵から恐る恐る覗いては片脚を浸けてみる、今日この頃。

前回の撮影アングル決定のプロセスでは、ティルト(上下)方向の調整とパン(回頭)方向の調整はどの段階で行うか、によりレベリングベース(Sunwayfoto DYH-66i)だけでは解決できない問題があった。

少なくとも、独立したパン機能を持つが独立したティルト機能は持たない、一般的な自由雲台である SIRUI K-20X との組合わせでは解決できない。(たぶん)

そこで、思いついたのが一脚用の1ウェイ雲台 SIRUI L-10 を三脚で使用することである。

カメラベースで水平出しを行っていた段階では、自由雲台(SIRUI K-20X)が、レベリングベースの役割も担っていた。だが、ティルト方向を修正した途端に水平は崩れるわけで、雲台のベースラインを水平から外すことでカメラの水平を保っていては、その独立したパン機能も有効に働かない。

逆にレベリングベースには、角度的に制限はあるものの自由雲台としての一部機能もある。したがって、1ウェイしかない SIRUI L-10 を使用してみたのである。

1ウェイ雲台なので、アングルの調整方向はティルトかローテイトに限られるが、先日入手した 90° 単位でいずれの方向にも対応したアルカ互換のクイックシュー Sunwayfoto DPG-39 のおかげで、どちらでも(ローテイトは使うことはないが)選択可能である。

パン(回頭)方向の調整は、センターポールの回頭機能で何とかなるのではないかという、予想に基づいてやってみたのであるが、…。

結果は、ぜんぜんダメ。

第一の問題は、センターポールの軸受けの精度がさほどでもないことにより、回頭した後に締込むとレベリングベースでせっかく出した水平は、物の見事に崩れるのである。そうでなくとも、アクロバティックな水平展開を可能とする Manfrotto 190CXPRO3 のセンターポールには、もともとそのような精度は盛り込まれていないので、そんな期待自体が間違っていたのだろう。

また、第二の問題は事前に判っていたことだが、SIRUI L-10 のティルト方向に対して平行にしか取付できないので、L型プレートを付けた場合にはティルト機能が使えないないことである。したがって、ティルト方向はレベリングベースの水平を崩さない限り微動だにしないので、全く意味はない。

次に行ったのが、見た目は少々不細工だが、三脚+レベリングベース+自由雲台+一脚用1ウェイ雲台という三階建てシステムである。

SIRUI L-10 のベース部分は、アルカ互換のクイックシューの形状になっており、このような親亀子亀的な使用にも対応している。

まず、レベリングベースで自由雲台の水平を出す。自由雲台はパン機能のみを担い、一脚用1ウェイ雲台でティルトを行うという、考えただけでも頭痛がしそうな旅館の建て増しシステムである。

だが、この場合は全ての要求、すなわち水平レベルを崩すことなく、独立したパンおよびティルト機能が実現する。実際に使用してみた結果は上々であり、高さが稼げるのでセンターポールを最大まで伸ばすことなく、実用的なポジションが採れる。

当然、重量は増加しトップヘビイになるが、一脚の頭に付いていようが三脚の頭に移ろうが、常に両方を持ち出しているかぎりトータル重量は全く変わらないので、重量の増加は実質ゼロである。

問題があるとすれば、操作に迷うほどつまみやネジの類いが増えてしまい、お世辞にも使いやすいとは言えないことと、三階建てのあまりにも不細工な外見である。

しかし沼の入口とはいえ、どんどん深みに嵌まっているような気もする。

で、考えたのは、もっとシンプルに解決できないか、1ウェイ雲台にできて、自由雲台にできないことがあるのか、と。言い換えれば、1ウェイ雲台と同じことはできないものか、である。

自由雲台がその自由度を制限される状態が、ひとつだけあったのだ。
それは、カメラを横から縦に切替えたとき、すなわちローテイト(横回転)した時である。

この機能は、一般的な自由雲台の一ヶ所だけ(二ヶ所ある機種もあるにはあるが)ある切欠き部分に倒した場合、トッププレートの動きはティルト方向のみに制限される。独立したパン機能を持たない、低価格な機種ではその時点で1ウェイ雲台になるのである。

幸い SIRUI K-20X は独立したパン機能を持つので、2ウェイとなる。

したがって、最初の定義が間違いである。ローテイト(横回転)した時は、独立したパン機能とティルト機能のみの2ウェイ雲台に変わるので、この組合わせでも解決できるかもしれないのである。

もともとのヒントはジンバル雲台であり、アルカスイスやアクラテックなどの高機能/高価格な雲台には、たいていこの機能も盛り込まれている。L型プレートを併用して縦方向にカメラを取付けてローテイトすると、トッププレートはジンバル雲台のような動きでティルトを実現する。

厳密にはパン方向の中心軸がオフセットされてしまうのだが、わずかな方向修正程度なら実用範囲内である。近接の物撮りやパノラマ写真でも撮らないかぎり、単写の遠景の場合にはさほど問題にならないだろう。

レベリングベース無しでは実現できない(やる気にならない)方法でもあり、そういう意味において前向きなアプローチである。

が、残念ながら結果は…。

水平を保ったまま実現できるのは、パンかティルトのどちらかだけである。

SIRUI K-20X は、ローテイト方向に 90° 以上にほんの僅かだが倒せることが災いして、水平を出すためにはメインノブを緩めたまま、フリーにティルト可能な状態にはならない。

水平レベルを再度調整した時点でロックする必要があり、ティルトを優先するならレベリングベースによって水平を崩して、またもやカメラレベルの水平出しに戻ってしまう。

これでは意味がない。なかなか、理論道理にはいかないものだ。

自由雲台と比べて、2ウェイ雲台メリットは各方向に制限を設けることによって正確性を維持できることだが、例外に対処できない不自由さも持つ。

ある基準を元に積み上げていくしかないのだが、最終的にはカメラレベルでの結果が全てであり、その基準を崩してでも対応しなければならないことも当然ある。

そのような場合、レベリングベースはイザというときの柔軟な対応に適したディバイスであり、基準を作ることも崩すことも、また別の基準にシフトすることもできる、全ての三脚にあって欲しい機能である。

見た目はさておき、実用面ではこちらの要望をほぼ実現できている三階建てシステムぼんやり眺めながら、ため息をつく。

ネットでたまに見かける、心惹かれる写真の中には必ずしも水平レベルがキッチリ出ているものばかりではない。多少ズレていようが、構図的には違和感のないものも少なからずある。

だがいつかは、水平などいつでも正確に出せるがコレはあえてこうしたのだ、と言ってみたいがためにもう少し探ってみることにしよう。

たまたま、手元には自由・不自由の両雲台があるので、これを一つの基準としていろいろやってみたわけであるが、もう少し追加機能が必要な段階になってきたのかもしれない。

せめて一脚用雲台に独立したパン機能さえあれば、レベリングベース上に直付けできるんだが。…はて、どこかで見たような。

そうか、アレはそういう意味だったのか、と。おそらく、まだつづくような気がする。


…ということで、ヒトツよろしく。
2013年09月某日 Hexagon/Okayama, Japan

http://www.hexagon-tech.com/
[2013.09.22] 理想の三階建て? 〜より転載&加筆修正

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